アンケートの結果通りサーヴァント諸々とは関係ない一般通過の英雄の子孫です。
言動や能力は似せていますが聖杯は関係ありません。
天魔が気づくと周囲に人はおらず、肩の上の九重だけだった。
トラックの中央に立っており、周囲を見回したところ、どうやら西京極総合運動公園らしい。
「昼間と同じだな。しかも今度は転移のおまけ付きか」
「ここも別の空間に創られた疑似京都なのか? きゃつらの持つ技術は凄まじいのぅ」
九重が感心したように呟いた直後、携帯端末が鳴る。表示されていたのはアーシアの名前だった。肩車のままの九重を一旦下ろし、電話を取る。
「アーシアか? そっちには誰がいる?」
『ゼノヴィアさんとイリナさんが一緒です。他の方は見えませんけど』
「わかった、一回イッセーと連絡が取れるか試してくれ。俺は祐斗に連絡してみる」
『わかりました』
そこで通話を切り、祐斗に連絡する。
一度不通で訝しみつつかけ直すとあっさりと繋がった。どうやら一誠と通話していたらしく、祐斗は匙とロスヴァイセが一緒で一誠は単独らしい。
二条城で合流することになったそうで、それに了承を返して通話を切る。念の為外のアザゼルと連絡が取れないか試してみたが、通じなかった。
フィールド内でのみ通じる携帯に作為を感じつつ端末をしまうと禁手の鎧を纏う。制限も外し、九重に視線を向けた。
「九重、俺から離れるなよ? お母さんが助かってもお前が怪我をしていたら何の意味もない。俺の近くにいる限り、お前には傷一つ付けさせない」
「う、うむ! 良きに計らえじゃ!」
天魔の言葉に九重が顔を赤くしつつ答える。
出発しようとした瞬間に殺気を感じ九重を抱えて飛び退くと、直前までいた場所に剣が次々と突き刺さった。
「お前が来るのかよ。こういうことには興味ないんじゃなかったのか?」
刺さった剣の角度から相手の位置を割り出し空中へ視線を送る。そこにはいつぞやの金髪の男が腕を組んで立っていた。
男は不快そうに鼻を鳴らして答える。
「ふん。興味はない。が、これもしがらみというものよ。此度に限り、聖槍の担い手の指示を聞いてやることになった」
そう言いなが組んでいた腕を解くと、手を挙げる。
周囲の空間がいくつも歪み、そこから切っ先が覗いた。
「叙事詩に記されし英雄の名を継ぐ者として、契約は果たさねばならぬ。せいぜい刻限まで足掻いて、このギルガメッシュを愉しませるがいい!」
手を薙ぐのに合わせ、数十もの剣が天魔達へと降り注ぐ。
九重に負荷をかけぬように気をつけながら加速し、躱せないものを魔法で撃ち落とし空を駆ける。
二条城方面には向かわせないように放たれる剣に舌打ちしながら空中に留まり、九重に配慮して控えめに魔法を放つ。
控えめとはいえ大威力の攻撃をギルガメッシュがあっさりと撃ち落とした。しばらくそれを繰り返し僅かに空いた間に、九重が眉根を寄せながら問いかける。
「母上を攫い、京都の地脈を乱して、お主等は何がしたいんじゃ!」
「まあ、童には関係のない話でもないか……時間潰しに丁度良い、聞かせてやる」
迎撃の音で聞き逃しの無いようわざわざ手を止めると話し始めた。
「あやつ等の目的はグレートレッドよ。京都という術式都市は作り上げた陰陽師共が地脈の流れをまとめ上げ、一つの「力」として完成させようとしたものだ。その楔として九尾の狐が据えられている。その力は龍王のそれと同レベルと言って良い。故にその力の大きさが目をつけられたのだ。奴等は都市の力と九尾の狐の力を合わせ、グレートレッドを呼び寄せるつもりなのだ」
「そんなことが本当に可能だと?」
「無論、本来なら龍王を複数使った方が呼びやすかろう。しかし、それは神仏でも容易にはいかん。都市と狐は代用よ」
「それで、呼び寄せて何をするつもりだ?」
「さてな。ひとまず捕らえてみるつもりのようだが、うまくはいくまい。「
そこまで話したところで二条城の方から聖なるオーラが立ち上り、一気に振り下ろされる。
「む? なるほど、聖剣を束ねたか。赤龍帝に与えられた聖剣と掛け合わせたものとは段違いだな。エクスカリバーの成れの果てでも被せたか?」
炸裂したオーラを眺め、ギルガメッシュが考察する。
遠距離からの観察だけでほとんど正解までたどり着いたギルガメッシュは唐突に構えを解いた。
「思ったより早かったな。我の用は終わった」
「どういうことだ?」
「聖槍の担い手の要求は実験がある程度進むまで貴様の参戦を遅らせることだ。流石に貴様を相手にしながら実験を進めるつもりはないらしい。今からならちょうどよかろう」
「九重、捕まってろ。可能な限り飛ばす」
「う、うむ!」
完全に戦意を解いたギルガメッシュに舌打ちすると、九重を抱えて飛ぶ。
様々なオーラが乱れ飛ぶ戦場へ向け、急ぐのだった。
少々時間を巻き戻し、天魔とギルガメッシュが撃ち合っている頃。
一誠達はそれぞれにあてがわれた刺客を倒し、二条城の門の前で合流した。僅かに聞こえる音に天魔の援護に行くか考えるが、八坂が捕らえられ人質のような状況で開き始めた門に抗うことは出来ず、敷地内へと歩を進めた。
祐斗の倒した刺客は曹操が本丸御殿で待っていると言っていたらしく、進んでいくと、本当に曹操達は待っていた。
「禁手使いの刺客を倒したか。俺達の中でも下位から中堅の使い手でも、禁手使いには変わりない。それでも倒してしまうキミ達はまさに驚異的だ」
曹操、ジーク、霧使い、二人の英雄派と思しき人物に加え、和服の狐の耳と尻尾を生やした女性が立っていた。絵巻に書かれた姿から八坂と思われる女性は虚ろな表情をしている。
「お前等、八坂さんに何しやがった!」
「俺達の実験に協力してもらうと言ったはずだぞ、赤龍帝?」
曹操はそう言って槍の石突きで地面を叩く。それを合図にしたように八坂は苦悶の悲鳴を上げはじめ、その身は巨大な獣の姿へと変わっていく。
九つの尾が膨れ上がり、金色の毛皮が全身を覆う。
体長十メートルほどの体躯の獣が咆哮を上げる。しかし、その瞳には何も映っていない。
「曹操! こんな疑似京都まで作って、しかも九尾の御大将まで操って、何をしようとしている!?」
一誠の問い詰めに曹操は槍の柄で肩を叩きながらあっさりとグレートレッドを呼び寄せて捕らえることだと答えた。
「……よくはわからねぇ。よくはわからねぇが、お前等があのデカいドラゴンを捕らえたら、ろくでもないことになりそうなのは確かだな。それに九尾の御大将も返してもらう」
一誠がそう言うとゼノヴィアが剣を曹操に向ける。
鞘のついたまま構えられたデュランダルはその形を変形させていき、激しい音を立てながらスライドした部分から大質量の聖なるオーラを噴出させ始める。刀身をオーラが覆い尽くし、極太のオーラの刃と化す。
「イッセーの言う通りだ。貴様たちが何をしようとしているのかは底まで見えない。だが、貴様の思想は私達や私達の周囲に危険を及ぼす。ここで屠るのが適切だ」
「意見としてはゼノヴィアに同意だね」
「同じく!」
ゼノヴィアの宣戦布告に祐斗とイリナも応じ、それぞれの獲物を手にする。
「グレモリー眷属に関わると死線ばかりだな……。ま、学園の皆とダチの為か」
匙がそう言うと四肢や肩に黒いヘビが複数出現し、匙の身体を這っていく。全身に黒いヘビを纏った匙の足元から黒い大蛇が現れると、黒い炎を迸らせながらとぐろを巻いた。匙の左目も赤くなり、蛇のようなものに変わる。
「……ヴリトラ、悪いが力を貸してくれ。兵藤がフォローしてくれるそうだからよ、今日は暴れられそうだぜ?」
そう呟く匙の周囲にも黒い炎が巻き起こっていた。
大蛇が低い声音でしゃべりだす。
『我が分身よ。獲物はどれだ? あの聖槍か? それとも狐か? どれでもよいぞ。我は久方ぶりの現世で心地よいのだよ。どうせなら、眼前の者どもを全て我が黒き炎で燃やし尽くすのもよかろうて』
プレッシャーを放ちながら話すヴリトラに意識が向いていた一誠達の意識を引き戻すように、デュランダルがオーラを噴出させる轟音を上げ始めた。
視線を向けると十五メートルを超える極太のオーラの刃が屹立していた。ディオドラ戦のデュランダルとアスカロンの二本で生み出した波動を構えながらも周囲に撒き散らすことなく制御出来ていた。
「初手だ。食らっておけッ!」
ゼノヴィアの振り下ろした一撃は轟音とともに前方を薙ぎ払っていく。オーラが収まる頃には尽くが消滅し、大きな平地が広がっていた。
「ふー」
ゼノヴィアは肩で息をしながら額の汗を拭う。デュランダルは元の状態に戻っていた。
「おい、ゼノヴィア! 一発目から飛ばしすぎだろ!」
一誠が興奮気味に言うが、ゼノヴィアは手でVサインをしながら返した。
「開幕の一発は必要だ」
「ロキのときもいきなりだったよね!?」
「安心しろ。これでもまだ威力を調整したほうだ。その気になれば、周辺を丸ごと薙ぎ払えてしまうからな。私としてはお前の本気のドラゴンショットを目指しているんだが。なかなか難しい。うん。お前のパワータイプな戦い方は私の理想だ」
「うん、じゃない! 俺はここまで破壊魔じゃないぞ!」
一誠が「騎士」にも拘らずパワーを追い求めるゼノヴィアに「戦車」の方が合っていたのではと考えていると、ゼノヴィアはデュランダルをコツコツと叩きながら説明する。
「この新しいデュランダルは錬金術により、エクスカリバーと同化したものだ」
言葉の意味を理解しかねた一誠にイリナが説明をし始める。
「私が説明するわ。大雑把に言うと、デュランダルの刀身に教会が保有していたエクスカリバーを鞘の形で被せたらしいの! エクスカリバーの力でゼノヴィア使用時のデュランダルの攻撃的な部分を外へ漏らさず覆う。そして覆っているエクスカリバーとデュランダルを同時に高めることで二つの聖剣の力は相乗効果をもたらして……凶悪な破壊力を生み出すのよ!」
イリナは破壊の跡に指を指して、そう言った。
「なるほど、エクスカリバーをデュランダルのオーラの受け皿にしつつ、エクスカリバーもデュランダルと共に高めるわけか。それで、二つの聖剣は一つとなって、これだけの強力なパワーを出せるってことね」
「そういうことよ、イッセーくん。デュランダルのオーラが他の聖剣にも効果を与えることから研究が始まったらしいのよね」
「あ、夏休みのゲームでゼノヴィアが亜空間にデュランダルをしまったまま、アスカロンにオーラを被せてたな。アーシア奪還のときもアスカロンと相乗効果でオーラを高め合っていたし」
「そうそう、そこから新しいデュランダルの発想が生まれたみたいなの」
エクスカリバー六本とデュランダルが合体した聖剣をかざし、ゼノヴィアが呟く。
「エクス・デュランダル。この聖剣をそう名付けよう」
名前を決めるとゼノヴィアは剣を下ろし、正面に向き直った。
「ま、初手で倒せるほどだったら苦労もないな」
先程まで英雄派が立っていたあたりから腕が突き出てくると、そこから次々に姿を表す。やや汚れた彼等の身体は薄い霧に覆われており、傷はないようだった。
曹操があごに手をやりながら笑う。
「いやー、いいね♪」
本気で楽しそうな一言だった。
「君達、もう上級悪魔の中堅、いや、トップクラスの上級悪魔の眷属悪魔と比べても遜色がない。魔王の妹君は本当に良い眷属を持った。レーティングゲームに本格参戦すれば短時間で二桁台、十数年以内にトップランカー入りかな? どちらにしても、末恐ろしい。シャルバ・ベルゼブブはよくこんな連中をバカにしたものだね。あいつ、本当にアホだったんだな」
曹操の言葉にジークが苦笑する。
「古い尊厳にこだわりすぎて、下から来る者が見えなかった、といったところでしょ。だから、旧魔王派は瓦解したわけさ。さて、どうするの? 僕、いまの食らってテンションがおかしくなってるんだけど?」
「そうだな。とりあえず、実験をスタートしよう」
曹操が槍の石突きで地面を叩くと、八坂が輝きだす。
「九尾の狐にパワースポットの力を注ぎ、グレートレッドを呼び出す準備に取り掛かる。ゲオルク!」
「了解」
曹操の一言に霧使い―ゲオルクが手を突き出す。周囲に各種様々な紋様の魔方陣が縦横無尽に出現し、魔術文字や数字が猛烈な勢いで動き始める。
「……魔方陣から察するにざっと見ただけでも北欧式、悪魔式、堕天使式、黒魔術、白魔術、精霊魔術……なかなか豊富に術式が使えるようですね……」
ロスヴァイセが呟くのにゲオルクの魔法使いとしての腕が浮き彫りになる。
八坂の足下に巨大な魔方陣が展開し、八坂は雄叫びを上げる。その双眸は大きく見開かれ、全身の金毛が逆立っており、異常な状態なのは明らかだった。
「グレートレッドを呼ぶ魔方陣と贄の配置は良好。あとはグレートレッドがこの都市のパワーに惹かれるかどうかだ。龍王一匹と二天龍が空間内に揃っているのは案外幸いかもしれない。曹操、悪いが自分はここを離れられない。その魔方陣を制御しなければならないんでね。これがまたキツくてねぇ」
ゲオルクの言葉に曹操は手を振って了承する。
「了解了解。さーて、どうしたものか。「魔獣創造」のレオナルドと他の構成員は外の連合軍とやりあっているし。彼らがどれだけ時間を稼げるかわからないところもある。外には堕天使の総督、魔王レヴィアタンがいるうえ、セラフのメンバーも来るという情報もあった。ジャンヌ、ヘラクレス」
「はいはい」「おう!」
曹操の声に金髪の女性と巨体の男が進み出る。
「彼らは英雄ジャンヌ・ダルクとヘラクレスの意志、魂を引き継いだ者達だ。ジークフリート、おまえはどれとやる?」
曹操の問いにジークは抜き放った剣の切っ先を祐斗とゼノヴィアに向けた。それを見てジャンヌと呼ばれた女性とヘラクレスと呼ばれた巨体の男が顔を微笑ませた。
「じゃあ、私は天使ちゃんにしようかな。かわいい顔してたし」
「俺はそっちの銀髪の姉ちゃんだな。随分、気持ち悪そうだけどよ!」
「んで、俺は赤龍帝っと。白龍皇はまだこっちに来ないし、そっちのヴリトラくんは?」
曹操は匙に視線を送る。匙は黒炎を吹き出すが、一誠がそれを制する。
「……匙、お前は九尾の御大将だ。なんとか、あそこから解放してやってくれ」
「俺は怪獣対決、か。……あいよ。兵藤、死ぬなよ」
「死ぬかよ、そっちも気張れ」
「これでもここに来る前、「女王」に一応プロモーションしてんだからさ。最初から気合は十分だッ!」
そのやり取りを得て、匙の体が黒い炎に大きく包まれた。次第に炎は広がり、巨大に膨れ上がっていく。
「「
炎が一層盛り上がると漆黒の炎は形を為していき、身体の細長い、いわゆる東洋の龍の姿を取った。
ヴリトラの姿となった匙が八坂と正面から対峙し、黒い炎で魔方陣を包んでいく。黒炎が包囲を完了すると、炎は妖しく揺らめきながら八坂からオーラが放出されていく。
それに苦しむ様子をみせていた八坂だったが、火炎を吐き出し匙を排除しにかかる。それに匙も黒い炎で対抗し、火炎同士のぶつかり合いで大爆発を引き起こした。
『クソッ! ロキのときみたいにうまく炎の結界が使いこなせない……!』
『集中しろ、我が分身よ。我の力は高い集中力が必要となる。……だが、それだけでもあるまいよ。都市の力を得た状態の九尾の膨大な妖力もそうだが、あの魔法使いが展開したこの魔方陣も怪しげな結界効果を発揮しているな。少々術式が複雑で厄介だ……。これが大きく邪魔をして我の炎を無効化しようとするようだが……。都市、九尾の力、神滅具と魔術の混合か……。九尾の力を散らそうとしても都市から流れてくる力ですぐに復調してしまう。これではこちらのほうが保たぬな』
『俺の譲渡、必要か?』
『いらぬ。我が分身が力を使いこなせていないこの状態で赤龍帝の力が加算されてしまえば暴走しかねぬ。実戦のなかで我が分身が力の特性を覚えていくしかあるまいて』
一誠の提案には余裕のない匙に代わり、ヴリトラが返した。
『……あいよ! お前もそいつらぶっ飛ばしてこいよ!』
『おう、任せろ!』
返事とともに再び火炎同士がぶつかり大爆発が起きる。
未だ睨み合う眷属達と英雄派を見て、一誠が声をかける。
「木場! ゼノヴィア! 少し離れて戦ってくれ! 九尾の御大将からこいつらを少しでも離したい!」
『了解!』
二人が応じて駆け出すのをジークが追う。
二人の剣戟を今回は最初から三刀流のジークが最小限の動きでいなしていく。エクス・デュランダルの鞘は変形し、刃が剥き出しになっていた。
「一本だとどうにもな!」
そう言うとゼノヴィアは鞘の一部に手を掛ける。すると音が響き、柄が現れた。ゼノヴィアがそれを引き抜くと柄から刃が生え、二刀流になる。
得意の形となり調子の上がったゼノヴィアをみて、ジークは笑うと大振りに剣を振るい、スペースを開けた。
「面白くなりそうだね。よし、大サービスだ!」
瞬間、ジークからの重圧が増す。殺気に怯む間もなくジークが呟いた。
「禁手化ッ」
ジークの背から新たに三本の腕が生え、残りの剣を抜き放つ。
「これまで使っていたバルムンクとノートゥングに加え、ディルヴィングとダインスレイブ。それに悪魔対策に光の剣もあるんだよ。これでも元教会の戦士だったからさ」
六本の腕それぞれに剣を握る。その姿はまさに阿修羅だった。
「これが僕の「
これまででも対応されていた相手が強化されたのに一誠が心配する。そのすぐ近くでイリナとジャンヌも激戦を繰り広げていた。
「光よ! はっ!」
イリナは上空から光の槍を幾重にも放つ。並の悪魔でもあっさりと屠れるであろう一撃は軽々と避けられ、レイピアで弾かれていく。
「いいね! 天使ちゃんは攻撃も素直でお姉さん感激!」
「じゃあ、これなら!」
イリナは滑空すると一気に斬りかかるが受け止められ、拮抗する。
「聖剣よ!」
突如ジャンヌの足下から聖剣が生え、イリナを襲う。それをなんとか避けると空中へ退避し、少々距離が空いた。
「やるやる! へぇ。見くびってたな。さすが天使ちゃん」
「こ、これでも天使長ミカエルさまのAなんだから! 舐めないで!」
「そっかー。ミカエルさんのねー。わかった。お姉さんもジーくんみたいに大サービスで見せちゃう」
そう言ってジャンヌはウインクする。イリナはその言葉に薄ら寒いものを感じていた。
「お姉さんの能力はね。「
ニッコリ微笑むジャンヌ。
例外という言葉に一誠の頭に嫌なイメージが脳裏によぎる。
「禁手化♪」
そしてそれは現実となった。
ジャンヌの足下から大量の聖剣が生み出され、重なり合って形を為していく。僅かな時間で完成したのは聖剣で出来たドラゴンだった。
「この子は私の禁手「
微笑むジャンヌだが、イリナは内心複雑な思いだった。
「……聖ジャンヌ・ダルク……。聖人の魂を引き継ぐ人と戦うなんて、天使としては複雑よね。けど、これもミカエル様と皆のため! 平和が一番!」
イリナは光の剣を掲げて気合を入れ直す。
そこから少々離れた場所では炸裂音が周囲を揺らしていた。
「くっ! 魔術を受けてもモノともしないなんて!」
縦横無尽に魔法を繰り出しているロスヴァイセだが、それらをまともに受けてもヘラクレスは狂喜して突っ込んでいく。
「ハッハッハーッ! いいねぇ! いい塩梅の魔法攻撃だッ!」
笑っているが、無傷ではない。全身に小さく傷は負っているがそれがむしろ頑丈さを表していた。
ヘラクレスが拳を突き出すたびにその場が爆発する。ロスヴァイセが避けた先にあった樹木もその一撃で吹き飛ばされていく。
「俺の神器は攻撃と同時に相手を爆破させる「
ヘラクレスが叫ぶとその身が光に覆われていく。その中で腕、足、背中にゴツゴツとした何かが形成されていく。
光が収まるとヘラクレスの全身に無数の突起が生えていた。先端が細くなったミサイルを思わせる突起は不吉なものを感じさせた。
「これが俺の禁手ッ! 「
ヘラクレスの視線がロスヴァイセを射抜き、突起物も一斉に狙いを定める。ロスヴァイセもそれを認識してその場を離れるように動き始めた。
「このままででは、この場が……ッ!」
苦渋の表情でロスヴァイセが本丸御殿から少しでも遠くの方へ移動しようと足を速めた。
「ハッハッー! 良い女だぜ! 仲間を爆破に巻き込まないように俺の気を逸らそうってか! いいぜ! 乗ってやるよォォッ!」
ヘラクレスは高笑いをしながら構える。ロスヴァイセが振り向きざまに魔方陣を展開した。
一誠はロスヴァイセの回避の援護をしようとドラゴンショットを撃とうとする。
しかし、
「おっと、キミの相手は俺だ」
曹操が割り込んできた。それに構わず打ち放つが、曹操は槍の僅かな挙動で上に弾く。
一誠が歯噛みする間に大量のミサイルがロスヴァイセへ迫り、大爆発を起こす。爆炎の中から落ちたロスヴァイセはなんとか着地し、そこにアーシアが回復のオーラを送る。
「はっ! 回復か! まあ、それもいいわなぁ!」
ロスヴァイセが回復したことに楽しそうにしながらヘラクレスが向かっていく。
それぞれが戦場を分け戦線は混迷を極めていく。
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