一誠の新たな力―それぞれの成り駒への自由な昇格とその特化形態への変形。特化した分弱点もわかりやすく、消耗も激しいようだった。
そうやって分析していた天魔の視界の隅で曹操は叩きつけられて出来たクレーターの中から歩いてきた。鼻と口から流していた血を拭い、首を鳴らして言う。
「これは赤龍帝殿。先ほどは失礼した。驚くべき変化を遂げたようだ。十分な強さを土壇場で得るなんてね。槍で守らなければ死んでいたよ」
割と平気そうな曹操に一誠は歯噛みする。
「「悪魔の駒」のルールを逸脱した君だけの新たな特性か……。まるでイリーガル・ムーブだな」
「イリーガル・ムーブ?」
一誠が初めて聞く単語に首を傾げ聞き返すと、曹操が答えた。
「チェス用語さ。不正な手を意味する。その攻撃は明らかに「悪魔の駒」のシステムに不正するような手に見えたからね」
『俺としては「トリアイナ」だと感じたが』
ドライグの声が全員に聞こえるように漏らす。
「トリアイナ? どういう意味だ?」
『トリアイナ、ギリシャの海神ポセイドンが持つ三叉の矛のことだ。トライデントという名の方が知られているかもしれんな。先ほどの三種の駒による連続攻撃が三叉の矛のような鋭さを感じた』
「イリーガル・ムーブにトリアイナか。いいね。じゃあ、こいつは「
「予想以上にスタミナとオーラを消耗する。使いこなすにはまだまだということかな。いや、使いこなせたとしてもその消耗は尋常ではないか……。あと十分も禁手状態が保たないと見た」
正確に見抜かれたためか一誠の方が跳ねる。そして諦めたように息を吐いた。
「あんた、やりにくすぎるんだよ。ちょっと俺達のことを舐めたかと思うと、今度は冷静に見てくるしさ」
「いや、キミを少しでも軽んじた俺が愚かだった。本当に済まなかった。強大な力に溺れず赤龍帝の深奥を知ろうと動いているキミはやはり強敵だ。反省しなければいけない」
曹操は肩に槍をトントンとすると続ける。
「楽しい。ペンドラゴンの件で一戦して以来の戦闘高揚かもしれない。やはり、伝説のドラゴンと戦うのは最高だな。俺が心底英雄の子孫だという証拠か」
「あんた、このまま全勢力と激戦をするつもりか?」
一誠の問いに曹操は首を横に振った。
「冗談。この戦力では長期戦に向かない。一人の力が強くても、さすがに各勢力が協力した兵力には勝てないさ。そちらに大損害は出せるだろうが、こちらは全滅だ。不意打ちを狙った一点突破のほうが効率がいい。だからこの組織にいるのは割がいいわけさ」
曹操の言葉に天魔の表情が歪む。しかし、一旦気持ちを切って消耗の激しい一誠に代わり前に出ようとしたところで、空間が裂け始め、孔が生まれ始めた。
「どうやら、始まったようだ」
曹操が嬉しそうに微笑んだ。
「あの魔方陣、そして赤龍帝の膨大なパワーが真龍を呼び寄せたのかもしれないな」
曹操が皮肉気にそう言い、一誠が瞠目する。
「ゲオルク、「龍喰者」を召喚する準備に取り掛かって」
そこまで言って、曹操は言葉を止めた。目を細めて次元の裂け目を確認し、疑問の生じた表情になる。
「……違う。グレートレッドではない? ……あれは、それにこの闘気……ッ!」
「げっ!? まじかよ!?」
孔の先を認識した天魔が顔を引きつらせ震え始める。その変化について問う前に孔から東洋タイプのドラゴンが姿を表した。
緑色のオーラを発し、夜空を舞うドラゴンを見て、曹操が叫ぶ。
「
曹操の視線は玉龍の背へと向けられていた。一誠も釣られてそちらへ視線を向けると人影が玉龍の背から飛び降りる。
人影は高さを感じずに静かに地面に降り立つと曹操へと向き直った。
「大きな「妖」の気流、それに「覇」の気流。それらによって、この都に漂う妖美な気質がうねっておったわ」
「ひぃっ」
人影は年老いた男性の声音だが、その背は小さく金色に輝く体毛にと黒い肌に覆われていた。
手には棍のような獲物を持ち、首には大きな珠の数珠。さらにサイバーなデザインのサングラスをかけていた。煙管を一つ吹かすと、不敵な笑みを浮かべる。
「おー、久しい限りじゃい。聖槍の。あのクソ坊主がデカくなったじゃねーの」
「これはこれは。闘戦勝仏殿。まさか、あなたがここに来られるとは、各地で我々の邪魔をしてくれているそうですな」
「坊主、イタズラが過ぎたぜぃ。儂がせっかく天帝からの使者として九尾の姫さんと会談しようと思っていたのによぉ。拉致たぁ、やってくれあもんだぜぃ。ったく、関帝となり神格化した英雄もいれば、子孫が異形の業界の毒なんぞになる英雄もいる。「覇業は一代のみ」とよく言ったもんじゃ。のぅ、曹操」
「毒、ですか。あなたに称されるのなら、大手を振って自慢できるものだ」
曹操が畏敬の念を持って接していることもそうなのだが、一誠は天魔が震えているのが気になった。すでに蒼白となっており、このような天魔は見たことがない。
「天魔、知り合いか?」
「初代孫悟空―美猴のおじいさんだ。あっちからしたら、孫が俺のせいでテロリスト扱いなんだよぉ……」
酷いほどに震える天魔は明らかに怯えていた。自分の計画で美猴の立場をテロリストにしたのだから、親族と合うのは避けたいところではあるのだろうが、これほどの反応をする相手なのかと慄いていた。
「赤龍帝の坊や。よーがんばったのぉ。いい塩梅の龍の波動だ。だが、もう無理はしなくていいぜぃ? 儂が助っ人じゃい。あとはこのおじいちゃんに任せておきな。玉龍、九尾を頼むぜぃ」
初代孫悟空は天魔を無視して空を舞うドラゴンに指示を出していた。
すると、玉龍が大声で不満を漏らす。
『おいおい、来た早々龍使いが荒いぜ、クソジジイ! オイラ、ここに入るだけでチョー疲れてんですけど! てか、白龍皇の仲間の魔女っ子に手助けしてもらったんだけどよ! おわっ! つーか、ヴリトラだ! おいおいおい、狐と戦ってんのヴリトラだよ! どれぐらいぶりだぁ?』
「あとで京料理をたらふく食わせる。それでよかろうて」
『ファッキンジジイ! あとで絶対たらふく食わせろよい! オラオラオラ! 龍王様を舐めんなよ! 狐の姉ちゃん! オイラは強ェェぞ!』
文句たらたらに玉龍が九尾の御大将と対峙した。
「さてさて、赤いのには悪いがのー、てっとり早く曹操の子孫にお仕置きせんとなぁ」
初代孫悟空が、曹操達に歩み寄る。ジークフリートが六本の腕を展開させながら、初代孫悟空に突貫していく。
「ジーク! 相手にするな! おまえでは」
曹操は制止しようとするが、ジークは聞くことなく立ち向かっていく。
「お猿の大将! あの孫悟空なら相手にとって不足は」
「伸びよ、棒よ」
初代孫悟空が静かに漏らすと手に持っていた棒が凄まじい速度で伸び、ジークを難なく吹き飛ばした。
「儂にとっては不足じゃったようだの。若い魔剣使い、腰が入っとらん。走り込みからやり直せぃ」
初代孫悟空は一瞥する。そこへ玉龍が悲鳴を上げた。
『うおおおおおっ! おい、クソジジイ! この狐、強ぇぞぉぉぉっ!』
視線を向けると玉龍は九尾の尻尾に締め上げられていた。それを見て初代孫悟空は嘆息する。
「気張れい。龍王じゃろうが」
『オイラは龍王のなかで一番の若手なんだぞ! まだピチピチでい!』
「よく言うわな。その若手が目立った戦が終わった瞬間にいの一番で引退なんぞしおってからに。若さで乗り切れぃ」
『……わかったよ、がんばりたい!』
玉龍は気を取り直して九尾の狐に相対する。
そんな会話の間にゲオルクは九尾の狐を縛っていた魔方陣を解き、初代孫悟空へと手を突き出す。
「捕縛する。霧よッ!」
初代孫悟空を包み込むように霧が集まるが
「天道、雷鳴をもって龍のあぎとへと括り通す。地へ這え」
初代孫悟空が呪文をつぶやき、棒で地面を一度叩くと、霧があっさりと霧散した。
「まだ神器の練り方が弱いの。そこの二天龍のように対話したらどうじゃい?」
「ッ! あの挙動だけで我が霧を……ッ! 神滅具の力を散らすか!」
あっさり無力化されゲオルクが驚愕する。天魔は認識されていることに白目を剥いた。
「槍よッ!」
聖槍を伸ばし、曹操が初代孫悟空を奇襲する。しかし、高速の刺突は指先だけで止められた。
「……良い鋭さじゃわい。が、それだけだ。まだ若いの。儂の指に留まるほどでは他の神仏も滅せられんよ。貴様も霧使いも本気にならんで儂にかかろうなどと、舐めるでないわ」
初代孫悟空の一言を聞き、曹操は笑みを引きつらせていた。
「……なるほどバケモノぶりは健在のご様子ですな……。周囲に広く認知されているのは若い頃の強さだと聞く。いまは如何ほどですかな?」
曹操の問いかけに初代孫悟空は不敵に肩を竦める。
瓦礫の中から立ち上がったジークが曹操に告げる。
「曹操。ここまでにしよう。初代孫悟空は「禍の団」のテロを何度も防いでいる有名人だ。これ以上の下手な攻撃はせっかくの人材が傷つくよ。僕も甘かった。強い」
それを聞き、曹操も槍を降ろした。
「退却時か。見誤ると深手になるな」
英雄派が素早く集まり、ゲオルクが転移用の魔方陣を構築し始める。
「ここまでにしておくよ。初代、グレモリー眷属、赤龍帝、天魔、再び見えよう」
捨て台詞とともに退却しようとする曹操達に一誠は左手を向ける。オーラを集めて砲門を作るとエネルギーを集めていく。
「儂の役目、坊やがやるかぃ? まあ、ええ。あの坊主にお仕置きしてみぃ。一時だけ、力が出るよう、おじいちゃんが手伝ってやるわい。ほれ、白いの手伝え」
「はい!」
初代孫悟空の声に鯱張って応じ、天魔が一誠へと仙術を行使する。初代孫悟空が棒の先で一誠の鎧を叩くとオーラが噴き出してきた。
「お咎めなしで帰れると思うのか? こいつは京都での土産だッ!」
曹操に狙いを定め、魔力の一撃が放たれる。
「しゃらくさい野郎だ!」
曹操の盾になろうとヘラクレスやジャンヌが前へ出る。
しかし、一誠は刮目し叫ぶ。
「曲がれェェェェェェッ!」
叫びに応じ、撃ち放たれた魔力はヘラクレス達を避け、曹操へと向かう。完全な不意打ちとなったそれは曹操の顔面を捉え、のけぞらせた。
受けた曹操は右目から鮮血を散らし、狂喜に顔を歪ませながら顔を一誠へと向ける。
「……目が……。赤龍帝ぇぇぇぇぇっ!」
槍を構えると、力強い言葉、呪文のようなものを唱えだした。
「槍よッ! 神を射貫く真なる聖槍よッ! 我が内に眠る覇王の理想を吸い上げ、祝福と滅びの」
「曹操っ! 唱えてはダメだ! 「黄昏の聖槍」の禁手。いや、「
口を抑え諌めるジークに曹操は激情を収め、深く息を吐く。そして、ジークは続ける。
「退却だよ。「魔獣造」のレオナルドも限界の時間だろう。さすがにこれ以上の時間稼ぎは外のメンバーでも出来ないだろうしね。各種調整についてもこれで十分データを得られるし、いい勉強になったよ」
「わかっているさ。初代殿、天魔、そして赤龍帝、否、兵藤一誠。ここいらで俺達は撤退させてもらおう。君はなぜか土壇場でこちらを熱くさせてくれる。兵藤一誠、もっと強くなれ。天魔よりも。そしたら、この槍の真の力を見せてあげるよ」
それだけ言い残して英雄派は去っていった。
九尾の狐は玉龍と匙のお陰で動きを止めたが、瞳は洗脳の色を残していた。九重は未だ声をかけているが、無反応なままだ。
「さて、どうしたもんかいの。仙術で邪な気を解いてもいいんじゃが、ここではちと時間がかかるのぉ」
初代孫悟空も煙管を吹かしながら、思慮しているようすだった。
ふと、何かに気づき、一誠の方に視線を向ける。
「赤い坊や。お前さん、女の胸の内を聞ける能力があったよなぁ?」
「え、ええ、ありますけど」
「そうか、儂が協力するんでな、そこの小さなお嬢ちゃんとあの九尾のお姫さんに術をかけてくれんか?」
初代孫悟空の提案に一誠は困惑する。こういうときにツッコミを入れそうな天魔は直立不動で静観の構えを取っていた。
「いっけぇぇぇぇっ! 「乳語翻訳」ッ!」
一誠の技が発動したのを確認すると、初代孫悟空が棒をくるくると回して地面を叩いた。
瞬間、新たに妙な空間が発生し、パイリンガルの空間が上書きされていき、天魔達を包み込む。
ややぼやけた視界の中で、初代孫悟空は九重へと視線を向けた。
「赤い坊やの術の応用でな、心に直接語りかけられるようにしたぜぃ。小さなお嬢ちゃん、心の中でお母ちゃんに語りかけてみな」
九重は頷き、瞑目する。すると、天魔達の心にも声が聞こえ始めた。
『……母上。……母上。聞こえますか、母上……。母上……どうか、もとに戻ってくだされ……どうか、どうか……』
声が届いているような感覚はあるのだが、八坂からの反応はない。九重は涙混じりに続ける。
『……もう、わがままは言いません。……嫌いな魚も食べます。夜中に京都に飛びだすことも止めます……。……だから、どうか、いつもの母上に戻って下され……。九重を……許してくだされ……。母上……』
九重は悲痛な声で嘆願する。
『……く、の、う……』
かすかだが、確かにその声は聞こえた。
九重が顔を上げ、再び心の中で叫ぶ。
『母上! 九重はここです! また歌を歌ってくだされ! また舞を教えて下され! 九重は、九重は良い子になります! また一緒に母上と……京都を! この都を歩きたいのです……っ!』
やさしい光が九重を包み、八坂にもそれが移る。
九尾の狐の巨体は光の中で少しづつ小さくなっていき、光が止むと人型に戻った八坂がいた。
「……ここは?」
八坂はふらりふらりと体がおぼつかない様子だが、おぼろげながらも意識が戻りつつあるようだった。
九重が八坂に駆け寄る。その胸に飛び込み、泣き叫んだ。
「母上ぇぇぇッ! 母上ぇぇぇッ!」
「……どうしたのじゃ、九重。おまえは、いつまで経っても泣き虫じゃな」
八坂さんはやさしく九重を抱き、頭をなでる。
「うぅ……九重ちゃん、良かった……」
治療を終えたアーシアも涙を零していた。
二人の姿を確認した初代孫悟空様が締めの言葉を言う。
「ま、何はともあれ、解決じゃい」
こうして九尾の御大将救出作戦はいろいろと巻き起こしながらも幕を閉じる事になった。
戦いも終わった天魔達は擬似空間から戻り、宿泊しているホテルの屋上まで転移した。
出迎えたアザゼルが一誠の方に手を置いた。
「よくやったな、イッセー。お前は休んでいろ。救護班! グレモリー眷属とイリナ、匙を看てやってくれ! ケガはともかく、魔力と体力の消耗が激しい!」
アザゼルの指示を聞き、一誠は全身から脱力する。
作戦は英雄派の撤退という形で集結しており、京都を囲んでいた連合部隊は英雄派構成員と「魔獣造」によるアンチモンスターと戦闘の戦後処理をしていた。
捕縛は叶わず、レオナルドが囮用のアンチモンスターを大量発生させて撤退の隙を作ったという。
無事に戻ったことで気持ちが切れたのかアーシアも眠りにつき、天魔が部屋に運ぶ。戻ってくる間に一誠以外の面々は検査のために運ばれていき、リアスからは顛末が伝わったのか怒りの滲む声での電話があったという。
疲労と先行き不安でどんよりとしている一誠に初代孫悟空が話しかける。
「赤の坊や」
「あ、はい!」
「お前さんは独力で「覇」の力とは違う、えらいものを得ようとしているようじゃな。いいこった。「覇龍」は、ろくでもない。ただの力の暴走じゃい。暴力そのもの。それでは、死ぬ。お前さん、大事な女がいるんじゃろ? おっぱいドラゴンと呼ばれる程じゃからな」
「いや、ハハハハ。ええ、いちおう」
「なら、泣かすな。お前さんは夢と女で強くなるタイプだぜぃ。それにな、赤龍帝と白龍皇はもともと力の塊じゃ。なんも「覇龍」にこだわらんでもいくらでも強くなれる。だがの、お前さんはまだ危ういか」
初代孫悟空は一誠の顔を覗き込むと煙管と一つ吹かして笑う。
「……感情は「覇」を呼び込む。それだけは覚えておくとええ。最後の曹操への一撃、ええ攻撃じゃった。ああいう方向で精進せぃ。イメージと努力だけは怠るでない。これは二人共に言えることじゃぞ。さて、天帝のおつかいが済んだらバカを探しにいくかの。あやつめ、やんちゃしおって。見つけたら仕置きじゃな。白いのは、まぁ、明日まで保留にしてやる。旅行の最中らしいしな。それでは達者での。玉龍、九尾のもとに行くぞ」
『あいよ、クソジジイ。じゃあな、ドライグ、アルビオン!』
それだけ言って去っていく初代孫悟空と玉龍を天魔は最敬礼で見送る。足が震えていたが、一誠は見ないふりをして夜空を眺めていた。
修学旅行最終日。
前夜の疲労を残したままのグレモリー眷属と顔色の悪い天魔に桐生達が訝しむのを誤魔化しながら最終日の土産屋巡りを行った。
京都駅の新幹線ホームには九重と八坂が見送りに来ていた。
「赤龍帝、白龍皇はおらんのか?」
「イッセーと天魔でいいよ。あいつは……うん。用があってな……何かあるなら伝えとくぜ」
八坂と手を繋いだ九重の言葉に一誠は遠い目をしながら聞くと、九重は少し頬を赤らめながら言う。
「では、イッセーよ。天魔にもまた京都に来てほしいと伝えてくれんか?」
「ああ、伝えとく。今度は裏京都も案内してくれよ?」
「うむ! 任せるのじゃ!」
笑顔で応じる九重を確認して、八坂が頭を下げた。
「アザゼル殿、赤龍帝殿、そして悪魔、天使、堕天使の皆々、本当に済まなかった。礼を言う。これから魔王レヴィアタン殿、闘戦勝仏殿と会談するつもりじゃ。良い方向を共に歩んでいきたいと思うておる。二度と、あのような輩によってこの京都が恐怖に包まれぬよう、協力態勢を敷くつもりじゃ」
「ああ、頼むぜ、御大将」
アザゼルも笑顔でそう言い八坂と握手を交わした。そこにセラフォルーも手を重ねる。
「うふふ、皆は先に帰っていてね☆私はこのあと八坂さんと猿のおじいちゃんと楽しい京都を堪能してくるわ☆天魔くんは、うん。残念だったわね」
楽しげだったセラフォルーが口ごもるのに九重は不思議そうにするが、誰も真相を語ることなく新幹線は発車する。
手を振って見送る九重に一誠達も手を振り返し、京都でのたびに思いを馳せるのだった。
そして、京都から戻った一誠達を待っていたのはリアスからの説教だった。
ただし、天魔は免れた。寝込んでいたからである。
初代孫悟空からの仕置きを受け、全身の気脈は乱しきられていたためだ。自力では回復は見込めず、黒歌と小猫が外部からゆっくりと治療をすることになった。
動けるようになるまで一日、復調するまで三日を使い、天魔の初めての旅行は苦い思い出で締めくくられたのだった。
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