TS金髪ロリになる、デュエルアカデミアに入学している   作:紙吹雪

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今回こそデュエルなしです。

多分おそらくきっと。



いや、本当にデュエルなしだったか……?
私は「今回はデュエルないです」と確実に言い切れるのだろうか?



仮にデュエル描写がなかったとしてそれが「デュエルないです」と言い切れる根拠なのか?読者さん達が思っているデュエルと私が思っているデュエルは完全完璧に同一のものなのか?デュエルとは一体何だ……決闘か。つまり仁義なき争いのことをデュエルだと思っている人がいたら私の発言はその人にとっては嘘と言うことになる。私は「デュエルないです」と発言したのは別に誰かを騙そうと思った訳じゃない。しかし騙された人がいたのなら責任を負わなければならない。そんな可能性を誰が絶対にないと言い切れるか?いや、言い切れない。私がするべきことは、これから初めてこの話を読む読者さん達に「今回はデュエルないよ」と注意喚起するんじゃないのかもしれない。でもでもじゃあ私がこんな誰もが読み流すだろう前書きで長々と何を書けと言うんだろうか。どうせこんな細かいところ誰も読まないだろと謎に書き込んでいるがこれは正しいことなのか?いいや、それだけはないと断言できるね。要するに、前書きで書くこと何も思い付かないなら大人しく前書き無しでとっとと本文書いて投稿しろと言う読者さん達の心の声に従うべきなのか。うん、そうだ。そうに違いないよね多分おそらくきっと。




カードの精霊と食事と闇のデュエル

 

 

 それは、ジュンコとのデュエルから数日たった頃のことだった。

 

 

 

 

◻️

 

 

 私はデュエルの後は結構疲れるな〜とか思いながらご飯食べてお風呂に入ってデッキのカードを眺めながらデッキ構築を考えつつ横になっていた。

 

 最近はデッキにどのカードを入れるか悩みながら寝落ちするのが日課になっている。

 元々持っていたカード以外にも購買に売られているカードパックから入手したカードもある。

 まあ、大半は見慣れたカードではあるんだけど……たまにアニオリなのかよく分からんカードもあって楽しい。

 どのカードをどう使えば悪用できるのか……デュエリストの血が騒ぐ。

 

 でも、まだまだカードが足りないな……

 私のお気に入りカードだった強制転移は手に入ったから良しとするか。

 後はデメリットモンスターとか押し付けたいところだけど生憎そう簡単に当てられる筈もなく。

 はぁ、ストレージを漁りたい。

 

 1枚10円か20円そこらの安いカードとかでデッキ強化してみてぇ。

 今のところはこの童話がモチーフのテーマデッキを使い続けるけどもね。

 使っていて中々楽しいし、割と好みな分類に入る。

 と言うか好きだ。絵柄も可愛いし。

 ……ツイストテイルズの方?

 あ、あっちも格好良いでしょ(震え声)。

 

 だけど、まだまだ実践経験が足りない。

 もうちょっと積極的にデュエルするべきかな?

 相手によっては多少構成も変える必要があるかもしれない。

 まあ……ガンメタ張る気は今のところないけどね。

 

 

 だが、殺る時は殺るつもりでやる覚悟はしているつもりだ。

 心の用意は……多分出来てる。

 

 

 そんなことを考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

 この世界におけるデュエルの重要性を考えたら、寝る時もデュエルについて考えているのは普通の筈。

 私も、大分この世界の価値観に馴染んできたのだろう……

 良いことなのやら悪いことなのやら。

 

 

 

 私は朝にかーなーり弱い。

 ふと思い出したが、目覚ましは起きたい時間の30分程前にセットしないとベッドから起き上がれなかった。

 二度寝、昼寝も大好きである。あと夜寝も。

 寝起きが悪い分、寝付きは悪くない自信があります。

 

 だから私はそう簡単には朝早くに起きれない。

 目覚ましタイマーをセットしていないなら尚更のこと。

 授業に参加する必要のない私は当然の権利の如くお昼まで寝過ごしている。

 この世界に来てから毎日ですね。

 

 はいそこ!

 私のことを自宅警備員みたいだなって思ったでしょ!

 違います。私はデュエリストです。

 リアリストでもないです。

 失礼なことを言ったら悪夢の拷問部屋に閉じ込めます。

 延々と300バーンを喰らい続けなさい。

 

 なので、私は今日も今日とて平和な朝を幸福な気分で微睡んでいました。

 

 

 

「——きて。ご主人様、起きて」

 

「んん、あと1時間……」

 

 

 もう……誰ですか……私の惰眠を遮るのは……

 誰であろうと……私の絶頂(すいみん)を……脅かすものは……

 あとご主人様って誰だ……

 

 

「……もう、起きてください! もうこんな時間ですよ!」

 

「アベビー!?」

 

 

 瞬間、私の腹部に大きな衝撃!

 私はほぼ反射的に背を起こしてお腹を抑える羽目になった。

 

 これによって私の眠気メーターは一気に大暴落。

 8枚もの手札がたった2枚になったかのような想像を絶する悲しみが私を襲った。

 時間にして一瞬の出来事である。

 

「誰だ私の惰眠を阻む者は!? 名を名乗れぃ!」

 

「……自分で惰眠とか言っちゃうんですね」

 

 いや、待てよ?

 私は部屋の鍵も窓の鍵も閉めてカーテンも閉め切って寝るタイプ。

 なのに誰かいるってことはつまり……

 

「……ど、泥棒だーッ!」

 

「ち、違います!」

 

 私はすぐに変態泥棒(声からして女)の姿を視界に捉える。

 そいつは珍しいことに赤い頭巾を被った、金髪の女の子だった。

 

 あれ、この人何処かで見たことがあるような。

 それも、ここ数日のうちで——

 

 

 

 

 まあいいや、一旦取り押さえてから考えよう!

 

「そいやっ!」

 

「わっ!?」

 

 無駄にスペックの高い身体である。

 私はベッドからカンフー映画チックな起き上がり方で即座にダイナミック起床。

 ボクシング選手めいたのフットワークで少女の背後に回り込み、レスリング選手めいた組み付きで少女を拘束する。

 その過程でベッドのシーツがずり落ちたり床に敷かれたカーペットに皺ができたが直すのは後回し。

 

「さぁ、観念なさい! 懺悔の用意はできてる!?」

 

「あいたた痛い! は、離して!」

 

「往生なさい! もう逃げられないよこの変態め!」

 

 よぉし、無力化完了。

 部屋にロープは置いてあったかな……うん?

 

 

 侵入者を落ち着いてよく見てみると、その姿はカードの赤頭巾の少女と瓜二つだった。

 

 

「……あなた、精霊?」

 

「その認識で間違いないです。あの、だからそろそろ離して……」

 

「……しょうがないなぁ」

 

「なんで渋々なんですか!?」

 

 決して残念とか思ってないよ。

 本当だよ。

 

 ちょっと捕縛する流れが楽しかったなぁとか考えてもないよ。

 本当だよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ちょっと散らかっちゃった部屋を元に戻してから私は改めてこの精霊らしき女の子と向き合った。

 

「改めて自己紹介します。私の名前は赤頭巾の少女……まあ、俗に赤ずきんちゃんと言われていますね」

 

「どうも。私の自己紹介は必要かな?」

 

「いえ、結構です。知っていますので」

 

 ……知っている、ね。

 その範囲がどれだけかによって大分重要度が変わりそうだ。

 

「まず、私と言う存在を認識できてありがとうございます。私達精霊は認識できない人が殆どですから」

 

「あ、はい」

 

 ……それは私が精霊を見ることができる理由が存在するよって伏線か何か?

 

「本当はご主人様が目覚めた日から会いたいと思っていたのですが、私の力が殆ど空の状態だったので」

 

「力?」

 

「精霊としての身体を維持する……気力と言うか、スタミナみたいな感じのなんかそう言うアレです」

 

 急に解説が雑になったね?

 何となく伝えたい事は分かるからいいけども。

 

「私は童謡に存在する『赤ずきんちゃん』と言う偶像から生まれた精霊です。他の精霊がどう生まれるのかは知りませんが、私達はそのような経緯で生まれました」

 

「私達……オリジンテイルズとか、ツイストテイルズとか?」

 

「……はい。ですが、ツイストテイルズについては私は全く知りません」

 

 知らないんかーい。

 ああ、でも他のプリンセス達もたしかに皆童謡のヒロインがモチーフだったね。

 つまり、他の子達もこんな風に会話できるってことか。

 なにそれちょっと楽しそう。

 

「私からツイストテイルズに関して言える事はたった1つ……ご主人様」

 

「え、あ、はい」

 

「あなたがこのデッキを手にした時に生まれた存在……それが、ツイストテイルズです」

 

 私がこのデッキを手にした時に生まれた……?

 一体全体どう言う事なんだか。

 そう言えば赤頭巾ちゃんの未来の姿っぽいカードがあった。

 試しにデッキから血頭巾の魔狩人を取り出して見せてみる。

 

「これのことだよね、ツイストテイルズって」

 

「ええ……って、何ですかコレ!? これが、私……?」

 

 赤ずきんちゃんは「うわぁ……私の(ry」って顔で本気でドン引きしていた。

 まあ、自分の未来の姿(仮)がこんな荒んでたらねぇ……

 

「……うう、この私は何があったんですか?」

 

「いや、知らんけど……」

 

 少なくともこうなってしまう理由は必ずあると仮定する。

 彼女の効果テキストとか赤ずきんちゃんの物語を鑑みるに……

 なんだろう、目の前でおばあちゃんを殺す狼を目撃したとか?

 それでこう、殺意の波動に目覚めて……みたいな。

 

 うーん、何言っても与太話の域を出ないようなへんちくりんな予想しかできない。

 今は保留にしておこう。

 私がツイストテイルズを生みの親(?)って話も同じく、だ。

 この子の話が真実とも限らないし。嘘を言ってる風にも見えないけど。

 

 さて、今度は私から質問するかな。

 

「ええと……その、聞きたいことがあるんですが」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「私のことを知っていると言ってたよね。私、実はね——」

 

 

 私は自身の記憶が殆どないことを伝えた。

 流石に中身は男で実は異なる世界で生きていたことまでは伝えていない。

 いきなり「私、男の子なんです」とカミングアウトする勇気は私にはなかったからだ。

 

「記憶喪失? なるほど……」

 

 少し考え込んだ様子で赤ずきんちゃんは私にこう告げた。

 

「残念ですけど、私にも記憶喪失の原因は分かりません。ですが……」

 

「ですが?」

 

「……いえ、なんでもないです」

 

 いや、言えし。

 めっちゃ気になるやつじゃんそれ。

 

「私の知っているご主人様は、殆ど喋らない寡黙な子でした。記憶を失くしたことで性格が変わったのでしょうか?」

 

「そうなの?」

 

 無口な子か……暗い子だったのかな。

 

「その頃のあなたは私達のことを認識できていませんでした」

 

「具体的にはどのくらい前?」

 

「詳細な時間は分かりません。つい最近まで私は眠っていたので……」

 

 ふーん……

 あれ、これ私の知りたい情報知らないんじゃない?

 

「でも、そんなに前でもないと思います。ご主人様の姿は殆ど変わってないので!」

 

「……私の今の年齢なら成長期な筈。半年以内くらいなのかな?」

 

 少なくとも、1年以上前ってことはないと思われる。

 まあ、ヤマ勘だけど。

 

「……私と初めて出会った時は、どんな感じだった?」

 

「私とあなたが出会った時……たしか、個室でずっとボーッとしてましたね」

 

「個室って?」

 

「ええ。この部屋ですね」

 

 この部屋なのかよ。

 ええっと、つまりこの部屋の中に私は目覚める結構前から居たってこと?

 むむむ……情報が足りなさ過ぎる。

 

「まるで人形みたいでした」

 

「私がこの部屋に居る理由は?」

 

「たしか、この学園に3年間居てもらう為とか……」

 

「誰に?」

 

「さぁ……」

 

 知らないのかよ。

 

「一応会ったことはあるんですが、その時は声しか聞き取れませんでした。なんか、お偉いさんみたいな男の人だったと思います」

 

 曖昧さが天元突破してない?

 どんな声だよそれ。

 井上和彦さんか? それとも子安武人さんかも……

 駄目だ、候補が多過ぎて分からん。

 いやまあ声優の話じゃないけども。

 

「はぁ……私から聞きたいことはこのくらいかな」

 

「そうですか。では、遅いですがお昼ご飯に……」

 

「いや、このまま二度寝する」

 

「えっ?」

 

 だって、まだ眠いし……

 

「いやいや、もう正午ですよ!?」

 

「おやすみなさい」

 

「寝ないでください! あなたは昨日何時に寝たんですか!」

 

「忘れた」

 

 私には時計を見る習慣がないのだ。

 

「もう、人の話を真面目に聞きなさい! ご主人様の耳は何の為にあるんですか!」

 

「それはね、好きな声優さんの声を聞きたいからだよ」

 

「……じゃあ、ずっと閉じている眼は何の為にあるんですか!」

 

「好きなアニメを見る為だよ」

 

 この部屋にはテレビはあるけど生憎私が好むアニメは放送していなかった。

 この島にTSU◯AYAってないのかな。

 

「だったらもはや口は必要ありませんよね! ずっと寝てるんでしたら!」

 

「たしかに。じゃあ盗ってもいいよ……あ、痛くしないでね?」

 

 思えば、特に他人と会話したいとは思わないし口は無くても生きていけそうだ。

 さぁ、目を閉じて夢の世界に旅立とう……

 

「まさか、私のご主人様がこんな性格になるなんて……こら、起きなさい! 駄目人間ですかあなたは!」

 

「駄目人間でもいいよ……今が穏やかに過ごせるなら……」

 

「はぁぁぁ……もう知りません! 明日は絶対に早く起こしますからねっ!」

 

「すやぁ……」

 

「って、もう寝てますよ……全く、毒林檎を食べたあの人みたいに綺麗に寝ますね」

 

 何かぶつぶつと赤ずきんちゃんは言っていた気がするけど、私はすんなりと深い眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◻️

 

 

「……ふわぁ、おはよう」

 

「もう夕方ですけど!? どれだけ寝てるんですかあなたは!?」

 

「……あら、そう」

 

 たしかに、時計を見ると18時だった。

 ふむ、いい加減そろそろ起きるかな。

 

「……さて、ご飯食べてお風呂入って寝ますか」

 

「せ、生活習慣がおかしい……」

 

「だって、やることないもん」

 

 調査の為に床につく前に部屋のパソコンで色々するけども。

 基本的に特にすることがなくて暇なのだ。

 

「よぉし、食堂に行くとしようかな」

 

「ご主人様って、何と言うか……ろくでなしです」

 

「どうとでも言っていいよ」

 

 別に私はその程度の悪口言われた程度で怒るほど狭心ではない。

 自分の外聞に興味が無いだけとも言うけど。

 

「さて、今日の朝ごはんは何かなぁ」

 

「いや、もう晩御飯ですよ?」

 

 あーあー、聞こえないー。

 

 私が聞こえない振りをして部屋の入り口のドアを開ける。

 私の部屋は寮の一番端っこなので、食堂が遠いのが難点だ。

 

「ところでついてくるんだね?」

 

「まあ、部屋にいてもいいですが……暇ですから」

 

「私達、2人とも暇だね」

 

「あなたと一緒にされるのは……」

 

 なんか、出会って間もない相手に馬鹿にされてる気がするのは気の所為だろうか。

 気の所為だね。

 

「わーい食堂らぁ」

 

「混んでますね……」

 

 そりゃあこの時間帯だからね。

 お腹の空いた生徒達が沢山いる。

 まあ、ここは女性寮だから女の子の生徒しかいないけど。

 

「それで、何を頼むんですか?」

 

「そうだなぁ……」

 

 昨日はたしかオムライスとハンバーグ定食と鮭のホイル焼きだったかな。

 よし、決めた。

 

「ミートスパゲティと鯛のチーズ蒸し焼きときのこスープにしよう」

 

「ちょ、ちょっと待って」

 

 ん、何よ?

 私はお腹が空いてるのに。

 

「量が多くないでしょうか?」

 

「いやそれが……私、凄くお腹が減っちゃって」

 

「いや、私の知るあなたはおかゆ1杯だけで満足してたような……」

 

「うーん、そう言われても今の私はそれだけじゃ満足できないかな」

 

 そんな会話をしていると、周囲の生徒達が私を見つめてきた。

 私はなんか有名人らしいから元々視線は感じてたけど、それが強くなったのだ。

 

 ……ああ、なるほど。

 赤ずきんちゃんは精霊だから私以外には見えない。

 つまり、この視線は可哀想な人を見る視線なのか。

 

 ……まあいいか。

 別に減るものでもないし。

 

「とにかく注文して食べよっと」

 

「……食べた分運動はした方がいいんじゃないでしょうか?」

 

 残念、私はいくら食べても身体がどうもならないのだ。

 お腹や太ももは勿論胸も二の腕も全然……

 うん、あんまりこのことは考えないようにしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◻️

 

 

「ふぅ、食べた食べた」

 

「滅茶苦茶食べましたね……まさか本当に綺麗に平らげるなんて」

 

 この世界、ご飯美味しい。

 気を抜いたら私はルフィーになってしまうかもしれない。

 

「さて、今日のところは寝るとしますか……」

 

「いやいや、もうちょっとこう……何かないんですか!?」

 

「ないよ」

 

 調査は行き詰まってるし、別にやりたいこともないし。

 デッキの調整はほぼほぼ済ませておいた。

 対十代用やカイザー用のサイドデッキは用意してある。

 本当に対策しないといけない相手は闇のデュエルを仕掛けてきたりする相手だろうけど。

 

「それじゃ、お風呂入るね〜」

 

「……はぁ、どれだけ退廃的な生活を送ってるんですかあなたは」

 

 どうとでも言いなさい。

 私は自由だ。

 誰が何と言おうと私は自由なんだ……

 

「そう言えば、あの人……天上院明日香さんでしたか。あの人とは友達なんですよね」

 

「うん。それがどうかしたの?」

 

「今日は食堂で会いませんでしたよね?」

 

 シャワーを浴びながら赤ずきんちゃんの質問について考える。

 

 言われてみれば、たしかに今日は会ってない。

 でもまあ、明日香だって毎日決めた時間に絶対に食事を取るポリシーなんてないだろう。

 多少時間がズレたりくらいは誰にだってあるよ。

 私だってそう言う経験があるし。

 

 私は湯船に浸かると考えるのをやめた。

 ああ、お風呂は男女関係なく気持ち良いものだね。

 

「……なんだかじじ臭い顔です」

 

「ふにゅ〜」

 

「口頭で可愛らしさをアピールして来たッ!?」

 

 赤ずきんちゃんが何か言っていた気がするがあまり思い出せない。

 ああ、極楽極楽……

 

 

 

 寝巻きに着替えると無駄にデカいベッドの上に寝転ぶ。

 ああ、幸せ〜……

 

「本当にもう寝るつもりなんですね、あなたは」

 

「え、まあうん……ああでも、そろそろ明日香が寝る前の挨拶に来てくれる時間かもしれない」

 

 ちょっと呆れたような顔をした赤ずきんちゃんにそう返す。

 本当、あの人は良い人だよ。

 

 

 

 ……ところが、この日はいつまで待っても明日香は来なかった。

 

 

 

「……あなたの生活態度に呆れられて見捨てられたのではないでしょうか?」

 

 神妙な顔でそんなことを言う赤ずきんちゃん。

 しかし、その可能性は低いと思う。

 

「私は私の生活習慣を明日香にも言ったことはない。それに、明日香は多分見捨てるんじゃなくて正そうとしてくるタイプだよ」

 

「む……それはまあ、たしかに納得できますが」

 

 ……何か事件でもあったのか?

 気になるし、少し調べてみるかな。

 

 私はこの世界におけるケータイ的な端末でジュンコにメールを送った。

 明日香を見なかったか? と。

 幸い、すぐ返事は来た。

 内容を要約すると、『この島の奥にある閉鎖された寮に行くのを見かけた人がいる』だとか。

 ……何の為にそんなとこ行くんだろう?

 まさか肝試しじゃあるまいし。

 

「よし、向かってみよう」

 

「え、行くの!?」

 

「ええ。既にお風呂は入ったけど、友人の為だし」

 

 お風呂ならまた入ればいい。

 服装は……まあ、別に寝巻きのままでいいか。

 多少袖がダボついていたりはするが、特に運動するのに支障はない。

 使ってる生地が高級なのか割と丈夫みたいだし。

 

「いや、そこじゃなくて……その寮ってたしか、なんか嫌な噂とかあったような?」

 

「まあ、そりゃあるでしょうね」

 

 こんな辺鄙な場所にある学園だ。

 寧ろ噂が一切無い方が不自然でしょう。

 

「うう……ほ、本当に行くの?」

 

「お、なんだなんだ。あっ、もしかして怖いの?」

 

「だ、誰が怖くなんか! 全然怖くなんかありませんから!」

 

 赤ずきんちゃん、そういうの苦手なんだな。

 

 精霊なのに人間の私よりもオカルトが怖いのか……

 まあいい。早く行こう。

 拳銃は……流石に持って行かないでおこう。

 おっと、念の為デュエルディスクとデッキは持って行こうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……ここか。

 

 私はしばらく歩いてジュンコが言っていた寮の前へと辿り着いた。

 何年も前に閉鎖された寮と聞いていただけあって廃墟みたいな建物だった。

 

「ね、ねぇ……やっぱり帰りません?」

 

「ここまで来てそれはないってば。さ、とっとと入るよ」

 

 周囲に人の気配は感じないし、多分明日香がいるとしたらこの建物の中だろう。

 私は寮の内部へと足を踏み入れた。

 

 

 

「……」

 

「ひぃぃ……何か出そうです……」

 

「……あっ、そっちに狼が」

 

「ぴぎゃーっ!? も、もう食べられるのは嫌ですぅぅぅ……」

 

「嘘だよ」

 

「……引っ叩きますよ?」

 

 おお、怖い怖い。

 

「と言うか、怖いんだったらカードに戻っててもいいけど」

 

「……あっ」

 

 赤ずきんちゃんは少しの間固まっていたけど、やがてそそくさと私のデッキへと戻って行った。

 絶対忘れてたでしょ……しっかり者に見えてうっかりさんだ。

 

 さて……ざっと見て回ったけど明日香はいなかった。

 まだ見てないのは、ここか。

 

「地下……流石に何かありそう」

 

 早く見てみるとしよう。

 あまりこんなところに長居はしたくないし、ね。

 

 

 

 

 地面が人工物じゃなくて岩になった頃に部屋に辿り着いた。

 

 そこには、コアラみたいな男の子と水色髪の小さい男の子が。

 ……どっかで見たことあるような。

 

 いや、それよりもよっぽど驚くべき物があった。

 

 邪悪そうな色合いの大きな球体だ。

 なんかバチバチいってる。ナニコレ……?

 

「あ、あれは……」

 

「知ってるの?」

 

 赤ずきんちゃんが再び戻って来た。

 もしかしたら何かあれに関する知識が……

 

「分からないです」

 

 おいっ。

 赤ずきんちゃんは偲びなさそうにまたデッキに戻って行った。

 

「だ、誰ッスか!?」

 

 私の話し声を聞いてか、背の低い方の男の子が私の方へと振り返った。

 

「いや、別に怪しい者では……」

 

「あ、あなたはたしか明日香さんとデュエルしてた! ぱ、パジャマ可愛いッス……」

 

 ……野郎に可愛いって言われてもねぇ。

 物凄く複雑な気分なんだけど。

 って、そんなことはどうだっていい。重要なことじゃない。

 

「あの、私は明日香を探しに来たんだけど……」

 

「明日香さんなら、向こうの棺にいるんだな!」

 

「え、棺に!?」

 

 上に落ちる変態にグラン◯クロスでもされるの!?

 コアラの人が指差した方を見ると、そこには明日香がいた。

 棺の中で眠っているようだけど、なんか触れたら危なそうな球体もあるしとっとと避難したいところだ。

 と言うかなんでこの2人はこんなところにいるの?

 

 ええい、それは後で聞けばいい。

 私は全力で明日香の元へと走る。

 

「明日香、大丈夫!?」

 

 軽く揺さぶってみるけど目は覚さない。

 ま、まず脈を測りつつ呼吸を確認して……

 

「……良かった。取り敢えず息はしてるし脈も平常だ」

 

 多分、ただ気絶しているだけかな。

 私がいない間に何があったんだか……

 とにかく私は明日香を持ちつつ部屋の出口へと向かう。

 

「誰だか知りませんけど、ここを離れた方が良いと思いますが」

 

 取り敢えず、2人にも避難を呼びかけてみる。

 ここに留まる理由がないのなら、とっととここから逃げるべきだろう。

 爆発とかしたら怖いし。

 

「で、でも! まだあの中に兄貴がっ!」

 

「兄貴?」

 

「十代のことなんだな!」

 

 ……落ち着け私。

 このくらいは遊戯王世界ならよくあることだ。

 まるで意味が分からん程お前は初心者じゃ無い。

 

 私の思考がぐるぐるしている内に、やがて球体に変化が現れた。

 球体に裂け目が出来たのだ。

 そして、その中から遊城十代……とハネクリボーが現れた。

 多分、あの球体の中でデュエルしてたんだろう……

 

 もしかしたら明日香が人質になってたりしたのかもしれない。

 

「兄貴!」

 

「十代!」

 

「みんな無事か? って、お前はたしか……」

 

『クリクリ〜』

 

 意外と可愛い声だねハネクリボー。

 と、そんなことを考えていると球体が急に縮小していく。

 それと同時に、球体から風が吹き出て……っ!

 

「伏せろ!」

 

 その声に従い、私はその場に全力で伏せた。

 勿論、明日香を庇うようにして彼女が怪我しないように配慮した。

 

 すわ、爆発か!? と思ったけど、幸い球体はそんなこともなく無事に消滅したようだ。

 あぁ……良かった。

 

「お前、たしかこの前明日香とデュエルした不二木アリス……だよな。なんでここにいるんだ?」

 

「あ、えっと……明日香の姿が見えなかったから、心配になって探しに来たんです」

 

「そうなのか」

 

 っべー。原作主人公と会話しちゃったよ。

 原作ファン私、歓喜。

 

「とにかく、ここを出ましょう」

 

「ああ、それもそうだな」

 

「ところで兄貴、あいつは何処に行ったんですか?」

 

 あいつ……対戦相手かな?

 誰だったにしろ、十代が勝ったみたいだし気にしなくてもいいかな。

 

「デュエルに負けたら慌てて帰って行ったぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 私達が寮から出てちょっとした後。

 

 明日香は無事に目を覚ましてくれた。

 

「お、気が付いたのか!」

 

「あなたたち……って、なんでアリスがここに?」

 

「あなたが来ないから心配になって……」

 

 って、よく考えたら私は明日香にとってはまだ会った少ししか経ってない相手だ。

 そんな人が1日会いに来なかったってだけで探すのはちょっとヤバい人に見られてしまうのでは……?

 

「そう……心配させて悪かったわ」

 

 そんなことなかった。

 

「ううん、平気。それで、体調は大丈夫? 何処かいたいところがあったり、気分がまだ優れなかったりしない?」

 

「ええ、平気よ」

 

 これは本当に平気そうな様子だ。

 逆に心配するとこっちが怒られてしまいそうだ。

 

「明日香、お前を襲った奴はもう逃げたぜ」

 

「生憎、私はそいつの顔を見てないんだけどね」

 

 もし会う機会があったら全身を引っ叩いてやる。

 

「これと、これ」

 

 そう言って、十代は写真を明日香に手渡した。

 

「これ……兄さんの写真!?」

 

 

 ……明日香が目を覚ます前までの間、明日香がこんなところを訪れた理由を十代から聞いた。

 行方不明になった兄を探す為に、彼がいなくなった場所であるこの廃寮に向かったのだと。

 全く……普通に重いよ、本当。

 

「やばっ! おい、みんなが起き出す前に急ごうぜ!」

 

 眩しい……夜明けが来たようだ。

 はあ、今日は結構歩いたから疲れた。

 私も十代達と同じく早いとこ帰って寝るかな。

 

 別れの言葉を告げて十代達はレッド寮の方へと走り去って行った。

 

「……お節介な人。あなたも含めて」

 

「ん、何か言った?」

 

 明日香が何か小声で呟いた気がする。

 くっ、私の聴力で聞き取れないとは……

 

「別に、何も言ってないわ。さぁ、私達も戻りましょう」

 

「ふふ、そうだね」

 

 しかし、このようなことが起きるとは流石はアニメ遊戯王ワールド。

 この程度はきっと序の口なのだろう……時期的に。

 まだアニメ初期の初期な筈だ……万丈目が黒服着てないから。

 いや、判断基準が謎なのは許して欲しい。

 

 まあ、怪我人はいなかったから良しとしよう。

 今日のところは、だけど。

 一件落着ってことで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……良いところもあるじゃないですか、ご主人様も」

 

「おわっ!?」

 

「急にどうしたのよアリス?」

 

 いきなり出てきた赤ずきんちゃんにビビってしまい、明日香に不審がられてしまった。

 出る時は声掛けたりとか、もっと色々あるでしょうに!

 

「……ごめんなさい。ちょっと、今まであなたのこと馬鹿にしてたかもしれません。あなたは自堕落なところが目立つけど、友人を想える優しい人です」

 

「……別に、褒めても何も出ないよ。でも、まあ……私自身、ちょっと反省すべき点があることも理解してるから」

 

「なら、構いません!」

 

 上機嫌に、スッキリとした顔で柔らかい笑みを浮かべる赤ずきんちゃん。

 そう言えば、まだこの子の笑った顔を見ていなかったね。

 まあ……これで本当に、一見落着かな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(アリスったら、誰と会話しているのかしら?)」

 

 





原作でもかなり貴重な明日香がヒロインな回だった。
あとノリオッティ好き。

今回の話でストックが切れました(早い)
これからは不定期更新!


赤ずきんちゃん(カードの精霊)
狼に食べられて、救出されて、反省した子。
基本的に真面目で委員長タイプ……と思いきや、ドジっ子な一面もある。
未だによく人に騙されるし、本当に反省しているのか疑わしいところがある。
学習能力が低いのかもしれない。
身長はアリスと同じくらい。
今後のデュエルでは獣族に攻撃宣言を強制されて食べられる鉄板芸が幾度と無く披露されることだろう。






Q.主人公、精霊に物理的に触れてない?
A.何ででしょうねぇ。


喋る精霊は6人分考えています。
属性の種類分ですね。当たり前ですが神属性はいません。

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