TS金髪ロリになる、デュエルアカデミアに入学している 作:紙吹雪
あけましておめでとうございます(半年遅れ)
大変遅れてしまい申し訳ない。
久々の更新なのでデュエルなしかつ短めで、リハビリ的な話です。
十代と翔君が無事に退学を賭けたデュエルに勝利してくれた。
最初はどうなる事かと思ったけど、無事に済んで何よりだ。
あんまり何もしてあげられなくて申し訳ないけど……まあいいか。
どうせ私が特に何もしなくても、話は勝手に進んで行くだろうし。
しかし、毎日のように明日香が部屋に来るようになったのは誤算だったよ。
なんと……とてつもなく恐ろしい事毎朝早くに来て私の事を起こしに来るのだ!
おのれ、そう言うのはギャルゲー主人公によくあるイベントだと思ってたのに!
まさか、自分の身に降りかかるとここまで厄介だったとは……!
お陰で私の生活リズムは夜型から切り替わられつつある。
二度寝の楽しみも分からないなんて、真面目人間め……
「ほら、もう朝よ。布団に包まってないで起きなさい!」
「やだやだ! 後五時間!」
「長過ぎるわよ!?」
と、こんな具合だ。
くそう、明日香とは友達だと思ってたのに……!
『ご主人様が少しだけ真人間に近付いて良かったわ!』
と、ベティが言っていたが……
私としては不本意極まりない。
私は思うがままに寝たい時に寝て、食べたい時に食べる。
そんな自堕落な生活を送りたかったのに……
『あれ、ご主人様ったら何処に行くの?』
「明日香が食事を除いて外に出て来なければ校長先生に頼んでこの部屋に泊まる場所を移させてもらうって脅されたから出掛けてくる……」
『明日香さん……いえ、明日香様! ご主人様を更生させようとしてくれて本当に感謝です!』
……けっ。
だが私にだってプライドがある。
絶対にまた自堕落な生活に戻ってやるからね!
ふんっ、だ。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
さて……出掛けたは良いものの、特に行く先は考えてない。
何となく港のところまで来てみたけど。
『海が綺麗ですね、ご主人様』
「そうだね、プロテインだね」
『何言ってるんですか?』
特に返しが思い付かなかったからだよ。
しかし、見渡す限り海だなぁ。
ここが孤島なんだってよく分かる。
……なんか潮風で髪とかベタついてきたかも。
ううん、あんまり海は好きじゃないなぁ私。
かと言って別に山も好きじゃないけど。
「帰ろうか。このくらい歩けばノルマは達成出来たでしょ」
『ご主人様ったら……はぁ、やっぱりまだ駄目人間が板についてますね』
別にいいでしょ、人間だもの。
貴女は精霊だけど。
「……ん?」
『ご主人様、どうしたの?』
「……ベティ、一旦カードに戻ってて。誰か来る」
まだ此方には気付いてないみたいだけど、誰だろう?
こっちに向かって来ているように見える。
「……なんか、あんまりすれ違いたくない気分。いっそ、隠れてやり過ごしましょ」
『わ、分かりました……』
ベティは指示通りにカードに戻る。
私は何処に隠れようか……うん、ここにしよう。
「よっ、と」
私は波の飛沫が足に掛かるのを感じながらその場にぶら下がる。
手のところは……まあ、きっとバレないよね?
ならべく目立たない場所にぶら下がったし、平気平気。
わざわざ海の下を覗き込もうとしない限りは問題ないかな。
足音が近付いてきた。
やって来た人の顔を、私はこっそりと覗き見る。
万丈目君だった。
え、何しに来てるんだらうこの人。
なんか手にデッキを持ってるんだけど……自分のデッキ?
「……」
あ、やべ。
こっち来る。
彼は港の端まで来て、デッキを持つ手を振りかぶり——
そこでぶら下がっている私と目が合った。
「……」
「……」
「……は?」
うん、それはそうなるよね。
私でもそうなる自信がある。
「お前はたしか……ここで何をしているんだ!?」
「日課の懸垂中だよ」
「そうか……いや待て、何故こんなところでわざわざ懸垂するんだ?」
ちっ、こいつ勘が良い!
ワンチャン誤魔化せそうだったのに……
「えっとね、外に出ないと一緒に暮らすって脅されて仕方なくここまで歩いて来て、君が来たのが見えたから何となく隠れようかなと」
「お前は馬鹿なのか? たしかに俺も人影が見えたが、まさかここに隠れてたとはな」
くっ……今回ばかりは否定出来ない。
自分でも何でこんな選択をしてしまったのか分からない。
「しかし、妙だな。人影ならもう一人……」
……ん?
「それよりも、君こそ何をしに来たの?」
「俺は……」
私は万丈目君の持っているデッキの下……俗に言うデッキボトムを確認する。
ブラッド・ヴォルスだ……なんか妙な落書きがあるけど。
万丈目君ってそのカード使ってたっけ?
「それ、君のデッキ?」
「……ああ、そうだ!」
「それをどうするの?」
「海に捨てるんだよ!」
おいおいおい……捨てるってお前。
デュエルの精霊が実際に存在する世界だぞ?
後で復讐とかされても知らないよ?
……あ、そうだ。
「捨てるんだったら私にくれない? 最近、デッキを改造したくなっちゃって」
「そ、それは駄目だ!」
「えー、何で?」
「何でもだ!」
今何でもって。
むむむ……これは怪しいですよ奥さん。
こいつは何か裏があると見たね。
「ねーねー、どうしてどうして?」
「うるさい、このガキ!」
「え……私、君と同年代だと思うんだけど」
「その身長でか? ハッ!」
「なんだァ、てめェ……?」
こいつ、言ってはならない事を言いやがったな?
デュエルなんて関係ねぇ、リアルファイトでケリをつけてやる!
来いよ、カードなんか捨てて掛かって来い!
「ダッテメッコラー! スッゾコラー!」
「な、何をする! やめろ、引っ張るな、服が伸びるだろ!」
「服なんてどうでも良いでしょうが!」
「ええい、女の吐くセリフかそれは!?」
えいえい、ついでに髪も引っ張ってやる!
「ちょ、やめろ! 離せ!」
「そのデッキを渡してくれたら離してやるぜ? げっへっへ!」
「分かった、分かったから取り敢えず落ち着け!」
「うん」
「うおっ、急に落ち着くな!」
うん、この人結構面白い人っぽい。
私の記憶ではどんな性格だったのかまでは覚えてない。
だけど、この感触ならそこまで悪人ではない気がする。
……カード捨てようとしてたけど。
「全く……いいか、このデッキをお前に預けてやってもいい。ただし条件がある」
「条件って?」
「ああ!」
それお前のセリフじゃないだろ。
ええっと……誰のセリフだっけ?
「そのデッキを俺に渡された事を誰にも言うな。それが守れるなら渡してやってもいい」
「……うん、いいよ。約束する」
「なら、良いだろう。ほら」
万丈目君は素直にデッキを差し出してくれたので、私はそれを受け取る。
わーい、新しいカードら。
「……いいか、絶対に誰にも言うなよ。絶対だからな!」
「えっ、もしかしてそれはフリ?」
「フリな訳あるか阿呆め! ちっ、なんでこいつと遭遇しちまったんだ俺は……」
それからぶつぶつと文句を垂れ流しながら彼は戻って行った。
……?
まあ、いいか。
新しくカードも手に入ったし、デッキをアレンジしてみよう。
さぁて、どんなカードがあるかな……うげっ。
大半のカードに落書きがあるじゃんか。
全部数式かな?
うーん、このカード使うのはちょっと恥ずかしいかな……
お、でも、このカードは良いかも。
よしよし、また今度万丈目君にはお礼を言ってあげよう。
うへへ、臨時収入って良い物だね。
……よく考えれば、購買に行けばこのくらいのカード余裕で買える気がしないでもないけど。
別に良いよね?
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
さぁて、ようやく我が城の前まで来た。
これからゆっくり昼寝と洒落込もうかね……
「あらアリス、何処に行ってたの?」
「げぇ、関羽!?」
「誰が関羽よ……」
私の素晴らしき砦の前には悪魔……げふんごふん、明日香が立っていた。
相変わらず大きな胸だね、明日香。
「今、変な事考えなかった?」
「そそ、そんな事ないけど? それより、何か用事?」
「実はね……」
ふむふむ……?
今日、万丈目君と三沢君が試験デュエルをするけど、三沢君のデッキが無くなってたと。
それで今、十代達が探していると。
ほうほう、なるほどなるほど。
「……あっ」
「もしかして、心当たりがあるの?」
ははーん、さてはあいつ……
ううん、これはあまり弁護出来ない行動ですわ。
はてさて、今持っているデッキを突き出そうか。
悩んだ末に、私は明日香にこう返した。
「いいや、何も」
「そう……そう言えば、外に出かけてたのね?」
「何処かの誰かに脅されてね」
「別に脅したつもりまでは無いんだけど……それで、どこに行ってたの?」
「ちょっと、港に懸垂をしに」
「け、懸垂?」
「そうそう。あ、そうだ! そう言えば港に行った時に誰のものか分からないデッキを拾ったんだっけ」
「持ち主の分からないデッキ……? もしかして、それって」
「いやいや、まさかまさかそんなそんな! いくら何でもそんな都合の良い事がある訳が……」
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「間違いない。それは俺のデッキだ」
「な、なんだってェェェェェ!?」
「驚き過ぎ……何だかわざとらしいわ」
おっと、いけないいけない。
ついつい演技過剰になってしまったかもしれない。
「ともかく見つけてくれてありがとう、不二木さん」
「良かったな三沢。これで今日のデュエルも無事に行えるな!」
「いや……元よりこのデッキはテストで組んだデッキだ。今日のデュエルで使うのは別のデッキにするつもりだ」
「あ、そうなんだ」
それならいっそ、返さなくても良かったかな?
まあ、カードに特徴的過ぎる落書きがあったし……使ってたらバレるか。
持ち主に返って良かった事にしよう、うん。
『……ご主人様、腹黒いです』
あーあー、聞こえない聞こえない。
「ん?」
「どうしんたんスか兄貴?」
「今、そこに……」
……あ、そう言えば十代は精霊が見えるんだっけ?
別にバレても特段問題はないけど、今は他の人の目もあるから静かにしていよう、そうしよう。
「うげっ、お前は……!」
試験会場に来た万丈目君は、私を見てかなり動揺しているようだ。
そして、私に渡した筈のデッキを三沢君が持っている事も。
「……アリス、貴様っ!」
「大丈夫、ちゃんと約束は守ったよ」
「は?」
私は彼にしか聞こえない小声でそう返した。
「そう言えば三沢君、今日使うデッキは私が偶然拾ったそれじゃなくて別のデッキだそうだけど、調整とか大丈夫なの?」
「ん? ああ、問題ないぞ」
「……」
万丈目君は黙り込んでしまった。
自分の妨害工作が完全に無駄だったのを知ったからだ。
そこで、私は励ます為に明日香達には見えないようにこっそりと表情を作って彼に見せてやった。
m9(^Д^)プギャー
「っ〜……!!」
「どうしたんだ万丈目?」
「うるさい十代! 髪の毛を引っ張るぞ!」
「わー、やめろって! 何だかよく分かんないけど悪かったからさ!」
人をイジるのって楽しい。
私はそんな悪い事を覚えてしまったのでした。
三沢「む、少しだけカードが足りないような……?」
アリス「ぎくっ」