沈みゆく旭日   作:ダージリン旭

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2028年はTTO加盟国とカナダによるメキシコ解放作戦が決行された年となった。日本国内でも行政機関を対象としたテロが発生し、数百人もの民間人と鎮圧部隊が犠牲になった。一方で超小型原子炉やロボット歩兵が運用段階に入り、日本は混沌としたこの世界を生き残る手段を着実に増やしていくのであった。


八咫烏 嵐へ発つ

9月2日 日本と英国で自立型機械歩兵ずんだもんの発売が発表された。兵器としての運用はもちろん、警備員として動員したり、戦闘プログラムを抜いて危険な場所での作業をさせる等様々な運動が期待されている。

 

三菱重工総合研究所

 

「イアさん、遂にずんだもん発売ですよ!」

 

「ここまで長かったわね、これからはずんだもんが両国の兵士不足の解消に繋がるはずよ。」

 

「将来的には民間での運用も期待されていますからまだまだ可能性がありますしね。」

 

「でもずんだもんの開発が終わっても私達の仕事は終わらないわよ、次は機関銃ドローンの開発があるからね。」

 

「実はその機関銃ドローンの名前は既にうちで案が決まっているのですよ!」

 

「どんな名前なの?」

 

「オオスズメバチです。」

 

「giant hornet…確かに低空で機関銃を放つこの兵器の特性にぴったりな名前ね。」

 

「我々の仮想敵国は基本的に圧倒的な数で押してくることが予想されるので、こうした無人兵器の開発は必要不可欠と言えるでしょう。」

 

「とりあえず2030年辺りに運用する見積もりだから早速取り掛からないとね。」

 

米国 サンディエゴ海軍基地

 

「ようこそアカネ大将、あなたがここに来てくれるのをずっと待っていた。」

 

「ええ、私も再びお会いできて嬉しいです。ところでマキ大将、現在の戦況はどうなっております?」

 

「現在はチワワ、モントレー、トレオンを制圧したが、統治領のカルテル共の抵抗が激しくなっている。攻勢力が徐々に失われていく中でTTOの共同作戦に持っていけたのはかなり大きい。そのため正義の飛翔作戦は第二フェーズへと移行することを決定した。」

 

「では第二フェーズの概要をお願いします。」

 

「第二フェーズでは私の指揮下に入るカンクン上陸軍とアカネ大将の指揮下に入るサリナクルス上陸軍、ハーバー大将の指揮下に入る南下軍に分かれる。上陸軍はそれぞれ約6万の軍を上陸させた後、ビヤエルモサで合流する。このフェーズが終了すればメキシコシティを南北から挟み打ちにすることができるだろう。また、海軍はカンクン上陸をハルトマン大将、サリナクルス上陸の支援をアオイ大将に任せる。五十嵐幕僚長、この作戦を了承してくれますかな?」

 

「ああ、構わない。」

 

「これより正義の飛翔作戦第二フェーズを決行する。諸君の健闘を祈る。」

 

警視庁公安部

 

「浦霞、我々は新革の件で失敗を犯したことによって権威が失墜した。次はなんとしても成果を出さなければならない。そこで君には黒龍と共に暴力団とつながっているとされる神国再生会に潜入してもらう。」

 

「神国再生会は既に捜査の手が入っているのでは?」

 

「一応な、だが結局大した証拠は手に入らなかった。やはり内側に忍び込むしかないだろう。黒龍は既に我々の管轄下になっている暴力団の幹部としてある程度信頼関係を築いているから、君にも幹部の一人として潜入してもらう。この組織の資料を作っておいた、後は君がなんとかしろ。」

 

「わかりました、必ずや証拠を掴んでみせます。」 

 

公安が国営ヤクザを雇ってるなんて国民に知られたらとんでもないことになりそうだな、と彼女は思うのであった。

 

神国再生会の詳細

2012年に設立された政治団体。太宰府に本部を置いており、東京、大阪、札幌に支部がある。現在は鳴花美琴が会長を務めており、妹の鳴花姫愛が副会長に就いている。組織の主張はカルト宗教や反日活動家の脅威から日本を守ることとなっているが、その実態は政治思想が強い暴力団と言って差し支えない。拠点はそれぞれ暴力団の事務所付近にあり、会員の出入りが確認されているためそこで取引が行われている可能性がある。また、反社会的とされる人物や除隊された軍人の天下り先として戦闘員を雇っていることが確認されている。暴力団以外の支援団体は未だ不明であるが、会長が梅華不動産を経営者であることが膨大な資金を得ている要因の一つになっていると考えられる。

 

神国再生会太宰府本部

 

「浦霞、今回はここの幹部である鳴花姫愛と会談することになっている。くれぐれも怪しまれないようにしてくれ。」

 

「わかっております。」

 

二人が本部についた後、受付に鳴花姫愛との会談があると伝えた。

 

「鳴花姫愛様はもうすぐ帰って来られますので談話室でお待ち下さい。」

 

談話室

 

「初めまして、黒河組組長の黒河龍也(黒龍)と申します。そして隣にいるのは…」

 

「初めまして、理事長の浦山霞(浦霞)と申します。」

 

「鳴花姫愛です、本日はよくここまでおいでくださいました。」

 

鳴花姫愛 42 取締役 ガイノイド

数々の暴力団と交渉し、神国再生会にとって都合の悪い組織を潰してきた幹部の一人。会長を務める鳴花美琴の双子の妹であり、彼女とのパイプを持つ数少ない人物である。

 

「本日は神国再生会の傘下に入らせて頂くため伺いました。」

 

「自ら我々の傘下に入りたがる組織があるとは驚きました、理由をお聞かせ願います。」

 

「黒河組は貴方達の理念と実行力に感銘を受け、少しでも貴方達に貢献したいと考えております。」

 

「実に素晴らしいです、戦力はどれほどお持ちで?」

 

「我々は警察や国防軍から闇市場へ横流しされた武器を保有しており、組員も精鋭揃いです。」

 

(そりゃ公安が飼っている暴力団なんですから武器を多く保有してますし、なんなら公安そのものも混ざってますからね。)

 

「なんと!2年前に結成されたとは思えない戦力ですな。」

 

「しかし弾薬や維持費の関係で我々の財政はあまり芳しくない状況でして、貴方達の支援を頂きたけますと幸いです。」

 

「勿論支援させて頂きますよ、現状黒河組ほど都合の良い組は中々いませんからね。」

 

「ありがとうございます。」

 

(こんな奴等と同じ様な組織にいるのは腹立たしいけど、これも最終的にこの組織を潰すためには致し方ないこと…本当に公安は手段を選ばないわね。)

 

「それにしても貴方の部下は随分綺麗な容姿をしておられる、もしや娑婆の娘でして?」

 

「いえ、こんなのでもタトゥーを入れてるものでして。」

 

浦霞はスーツを脱ぎ捨て、背中に彫ってあると思われるタトゥーを見せた。

 

「おっとこれは失礼、それにしても良い筋肉ですな。」

 

「これでも霞は私と同じく“目的のためなら手段を選ばない人間"でしてね、血は見慣れているのですよ。」

 

「そのような部下がいるとは頼もしい限りですね。では」

 

帰還中の車内にて

 

「浦霞、どうだ俺のヤクザ風の演技は。オールバックにサングラスを掛ければそれっぽくなるもんだろ。」

 

「私にはホストにしか見えませんでした。」

 

「俺がそれくらい色男だと言いたいんだな?」

 

「はぁ…そういうことにしておきます、それにしてもタトゥーシールでバレないもんなんですね。」

 

「あくまで暴力団を雇っているだけだからな、そんな細かいところまで見てないんだろうよ。」

 

神国再生会太宰府本部

 

「姫愛、黒河組はどんな感じだった?」

 

鳴花美琴 42 会長 ガイノイド

自分達の思想に反対する組織を何度も潰してきた神国再生会の会長。不動産経営で手に入れた膨大な資金で多くの暴力団を買収し、経済的にも軍事的も強大な力を持つ。

 

「かなり使えそうだったよ、警察や国防軍が使うような武器を山ほど持っているってさ。」

 

「そんな経済力を持っているとは…黒河組は本当に支援が必要な暴力団なの?」

 

「曰く、武器ばかり買って弾薬や維持費のことを全く考えていなかったとのこと。」

 

「前言撤回、ただの間抜けだったか。まあ賢すぎるよりかは使い勝手が良い、今日はお祝いとして菅公の酒を飲もう。」

 

「ところで、如月のことはどう思っているの?」

 

「一応支援政党の党首だから何度か話したけど、やっぱり仏教徒というのもあって素直に要求に応じる感じではなかったね。彼女はあくまで宗教は自由であるべきと考えていそうだ。」

 

「それで一体どれだけの人がカルトに苦しめられてるのかがわからんのか…やっぱり神道を重んじる幹部と連携を深めていった方が良さそうだな。」

 

「そうだね、私達は日本人を破滅へと導く脅威から守るために結成された。どれだけの犠牲を払っても日本人の誇る伝統、思想、そして尊厳を守らなければならない。」

 

「でも不動産の利益だけでこれ以上この組織を維持し続けるのは難しいと思うけど?」

 

「安心して、既に私達を援助する組織を味方につけているから。それもかなり強大な権威を持つ組織をね。」

 

クレムリン

 

「ドルフ大統領、遂にロシア製量子コンピューターツァーリが完成しました。」

 

「よくやった、ツァーリを使えばAIによる計画経済が実現できるかもしれん。そうなれば電脳社会主義国家としてソビエトを復活させることができるだろう。」

 

「仰る通りです。しかし、ソビエトを復活させるには政治体制を変えるだけでは不足です。」

 

「わかっているとも、少なくともベラルーシとウクライナを組み込まなければソビエトとは言えない。そのためにも今は“タタールの奇襲"計画を成功させなければならんな。」

 

「それに関しましては我々が最も優位に立てるほどの供給をしておりますので問題ないかと。」

 

「うむ、それなら安心だな。では兵器そのものの生産はどうなっている?」

 

「戦車は約一年でT14と近代化改修を合わせて420輌に増えました。また軍用機も戦闘機や爆撃機等を合わせ500機、自走砲は180輌を生産しました。」

 

「足りんな、もう少しペースを上げられないのか?」

 

「ご安心ください、現在建設が終了した工場が一斉に稼働し始めており徐々に生産ペースが上がるものとされています。」

 

「まぁそれなら良い。国内情勢はどうなっている?」

 

「今の所問題ありませんが、自由ロシア連盟という民主活動家の組織が秘密裏に活動しているのが懸念事項ですね。」

 

「その組織の代表は?」

 

「アレクセイ・ゴブォロフです。」

 

「ではそいつにノビチョクでも送っとけ。」

 

「了解。」

 

中国 北京

 

「張国防相、我が国のAI歩兵はまだ完成しないのか?今では米国どころか日英ですら運用しているではないか。」

 

「恐らく来年頃になるかと。」

 

「来年だと?遅い!何故中国がAI歩兵を必要としているのか君はわかっているのか。」

 

「はい、人民が反乱を起こした際に警察と共に鎮圧を行うためであります。」

 

「そうだ、我々は中国全土の至る所に監視カメラを付け、信用スコアよって人民をコントロールしている。だが反乱を起こされて共産党が崩壊したら何の意味もないではないか!」

 

「仰る通りです…」

 

「中国の技術力を結集して半年で終わらせろ。」

 

「了解しました。」

 

「他に何か情報はあるか?」

 

「はい、最近自治区辺りが不穏になっているとの情報を聞きました。曰くあまりにも大人しくなりすぎていると。」

 

「大人しくなったのは良いことではないか。」

 

「しかし、私には嵐の前の静けさに思えるのです。」

 

「自治区に反乱を引き起こそうとしている国の支援が影響しているのだろうか…まぁいい、今はとにかく我が国の要である国防に全力を注げ。統一の日は近い。」

 

9月8日 日本では有事法制の改正が行われた。改正内容は核シェルターの厳密な定義や正式規格が記載された。これにより正式に核シェルターの配備を推進することが可能となった。同月の18日に内閣が自治体に地下鉄や公共施設だけでなく企業やマンション、住宅での核シェルターの配備を推進する政令を出した。国防意識の高い旭日世界の日本でも核シェルターの普及率は20%程度であり、安全保障上の問題があると指摘されていた。この取り組みを行う省庁は主に内閣官房と国防省となっている。

 

自民党本部

 

「いやぁ核シェルターの配備推進が始まってからうちも忙しくなってもう大変ですよ〜」

 

「まぁいいではないか、これであんたが国防大臣の座に居座り続ける妖怪としてまだまだやっていけるんだからな。」

 

「私を地縛霊か何かだと思いで?」

 

「その通りだろう、同じ妖怪の家系である岸家でも令和の方は畏怖される要素なんてないからな。」

 

「はは…中々お厳しいコメントですな。それにしてもそろそろ来る頃だと思うんですけどね。」

 

「誰が?」

 

「遅れて申し訳ないな。」

 

「風見さんが遅れてくるとは珍しいですな。」

 

「税金を扱う人間は常に忙しいのさ、核シェルター配備の予算がえらいことになってるもんだから財務省はまだ電気がついてるだろうな。さっさとデジタル化したいもんだがな。」

 

「ケチな財務省だからデジタル化にかかる金さえも使いたくないんじゃないのか。その結果ずっと苦労するハメになるんだから馬鹿なもんだ。」

 

「黙れ、頑固おやじほど馬鹿な人間はいないんだからな。」

 

「まぁまぁ口喧嘩はそこまでにしてですね、風見さんはデジタル化の先頭を走っている国防省を見習ってくださいな。」

 

「そりゃあ省庁の中で断トツの金食い虫だからな。桜乃くんに説得されたからあれほど予算をかけてやったが、汚職でも働いてたらただでは済まさんぞ。」

 

「そ、そのようなことがあろうはずがございません。」

 

「岸、わざわざそんな怪しい言い方をするな。」

 

「まぁ岸くんが汚職をするような人ではないだろうと思ってはいるがな。それで本題は一体なんだったかな?」

 

「現在国防軍で使われている電子技術とサイバー技術を警察や特務庁にも応用しよう話でしてね。」

 

「……電子とサイバーって一体何が違うんだ?」

 

「そんなこともわからんのか。電子戦は電波を使うレーダーといった物理的な実態を対象としている戦闘、それに対しサイバー戦はソフトウェアを主な対象とする戦闘のことだ。」

 

「???」

 

「例えるならば電子戦をファミコンというゲームハードをぶっ壊すもので、サイバー戦はマリオといったゲームソフトをぶっ壊すものだと思ってください。」

 

「なるほど、ファミコンを例にしたらわかりやすいもんだ。それを警察や特務庁に応用するとは具体的に何を想定しているんだ?」

 

「まず警察は無人機の無力化やサイバー攻撃への防御、特務庁は“サボる"のが主な目的です。既に桜乃総理、水無瀬さん、京町さんから承認を得ていますので後は風見さんに承認して頂ければ幸いです。」

 

「わかった、官僚達には酷だがまた仕事が増えるな。」

 

「いっそのこと財務省を解体してやってもいいぞ?そしたら仕事がなくなるから忙しくなることもないだろう。」

 

「黙れ、税務調査するぞ。」

 

「お二人共いい加減喧嘩するのはやめてください。」

 

9月28日 米国では共和党対墨強硬派のダグラス・シューターが大統領に就任した。オースティン・ブラスターは国防長官に就任したため日米軍との関係は保たれる。

 

「大統領就任おめでとうございます。シューター大統領。」

 

「ありがとう、マキ大将。君達アメリカ軍、そして日本国防軍が戦果を出してくれたおかげで国民の支持を得ることができた。民主党はどうもメキシコとの戦争をよく思っていない様でね、メキシコとの関係が悪化するのを避けたいのだろうが麻薬カルテルを放置するわけにはいかないからな。」

 

「仰る通りです。」

 

「ところで現在の戦果はどうなっている?」

 

「現在は上陸作戦を二つとも成功させており、ビヤエルモサへと合流する段階へと入っています。」

 

「なるほど、何か問題は発生しているか?」

 

「実はその上陸地点であるカンクンとサリナクルスで現地民とカルテルの構成員による反乱の火種が燻っていていまして、攻勢力を維持するために州兵約2万ほどを各々送って頂きたいのです。」

 

「わかった、全州知事に伝えておこう。しかしこの段階で2万も動員するとなるとメキシコシティを制圧する段階ではかなりの州兵を送り込むことになりそうだな。」

 

「はい、恐らく大統領のお考え通りになるかと思われます。あまりにも本土の州兵が少なすぎると、いざ警察だけで抑えられない暴動やテロが起きた際に対処できなくなる可能性があります。そのため第三フェーズのメキシコシティの制圧には少ない兵力で攻勢に出ることになるため、大規模空爆やミサイル攻撃、ロケット砲を多用することになるでしょう。」

 

「そうなれば私は非人道的な指導者として支持率が絶望的になるのは避けられんな。」

 

「ここで麻薬カルテルを撲滅仕切らなければこれからもアメリカは苦しみ続けることになります。アメリカの将来を守るためにもどうかお許しください。」

 

「…やむを得ん、全ての責任は私が負う。だから君達にはなんとしても勝利に掴み取ってもらうぞ。」

 

真の政治家はリスクを背負うことを恐れない。

              -シャルル・ド・ゴール




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投稿ペースは落ちていますが、必ず月に一回は投稿しますので気長にお待ち下さい。

※この物語はフィクションです
また、著者は特定の個人、集団、国家に対する差別的意図は一切ありません
この物語に出てくる数字は大抵適当です

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