転生する術式を持つ少女がいろんなキャラの地雷になる話   作:おにい

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十話『輪廻乃箱庭』

 五条透の前世である禪院透は二十歳まで生きなければいけないという縛りを破り十六歳という若さでこの世を去った。

 

 転生術式による『二十歳までしか生きられない』という縛りは『二十歳まで生きなければいけない』という縛りでもある。

 二つにはちゃんと意味があり、二十歳までしか生きられないのは残りの寿命を引き換えに転生する呪力を捻出するためであり、二十歳まで生きなければいけないのは二十歳になるまでに次の転生先で最初の五年間を自動操作にするための呪力と記憶の引継ぎをするための呪力を貯めるためだ。

 

 透は十六歳で死んでしまったため、転生こそできたがペナルティで最初の五年間の自動操作と禪院透の記憶を引き継ぐことができなかった。

 

 なぜ、最初の五年間を自動操作で動かさなければいけないのか。

 それは──最初の五年間は死ぬことができるためだ。

 そのため、最初の五年間は透の意識を無くし、危ない状況から自動的に逃げるようにさせている。

 

 透が転生し『転生術式』が体に定着するまでに約五年の歳月が掛かる。

 これは透自身も気づいていないが、転生術式がなければ透は普通に死ぬ。

 そして、他人から気づかれないという縛りも一部機能しなくなる。

 

 透が最初に転生した千年ほど前に日本に設定された他者から透が転生術式を持っていると気づかれないという縛りは機能しているが、透が自分の口から転生術式の情報を明かせないという縛りは転生術式に課されているため転生術式が刻まれるまで機能しなくなる。

 

 だから転生術式は前世、つまり禪院透が死ぬ際に十六年間で貯めた呪力を使い五条透の脳に一部封印をかけた。

 この世で恐らく透しか使用できない技術と透が転生術式の開示を他人にしようという発想に封印をしたのだ。

 

 そして今、転生術式が完全に体に刻まれ、縛りと記憶も同時に体へと降り注いだ。

 

 その情報量は透の脳を焼き、動きを完全に停止させた。

 透と対峙していた呪霊はその隙を逃さずに透を絶命させた。

 

 ──だが、転生術式は透の死を許容しない。

 

 透の肉体は真っ二つになり完全に死んだ。

 心臓も動かない透の体から呪力が溢れ出す。

 

「アッ!?」

 

 呪霊は驚き距離を取る。

 普段、体という盾を使うことで体の奥底に隠れていた透の魂が顔を出す。

 同時に魂に貯蔵されていた呪力も溢れ出す。

 

「…………最低です」

 

 透がそう呟くと真っ二つにされた体が一瞬で元通りになる。

 これが本来の透の反転術式だ。

 

「アアァ……」

 

 呪霊は警戒しながら透を見る。

 攻撃を仕掛けないのは、本能で気づいているからだ。

 先ほどまで自分よりも弱かった幼女が一瞬で自分より数段上の次元へ昇華したという事が──。

 

 透は起き上がり呪霊を見る。

 その瞳は、いつものダイヤの様に綺麗なものではなく、血の様に紅いルビーのような瞳だった。

 

「頭の整理がまだできません……」

 

 透は呪霊から目を離し、自分の両手を見る。

 先ほどまでも常人からしたら逸脱した呪力操作だったが、今の透は完全で完璧な呪力操作を行っている。

 

 今の透は──特級の領域にいた。

 

 その表情は今までで一番無機質で呪霊を見る目も先ほどよりずっと冷ややかだ。

 透は憤っていた。

 

 ついに手放せたかもしれないと思っていた転生術式が、自分に刻まれたのだ。

 透は今までで一番憤っていた。

 

「すみません……八つ当たりさせてください」

 

 透は呪霊を真っ直ぐに見た。

 そして、両の掌を合わせる。

 呪霊はあまりのプレッシャーに動くことができない。

 

 

 

「──領域展開」

 

 

 

 透は無機質な声で呟いた。

 

 その瞬間──透と呪霊は先ほどまでとは全く違う空間にいた。

 

 辺り一面を彼岸花が埋め尽くす川辺だ。

 

 

 

「──輪廻乃箱庭(りんねのはこにわ)

 

 

 

 それは透が全ての前世で使うことのできなかった。

 転生術式の領域展開だった。

 

 転生術式の領域は他の術式とは比較にならないほどの特異性を持っていた。

 そのため、とてつもない呪力と呪力コントロールが必要だった。

 それは千年近く研鑽を積んだ透でも不可能な才能以外でどうすることもできない領域。

 

 だが──透は才能(六眼)を手に入れた。

 

「ア、アァッ!?」

 

 呪霊は焦る。

 それは先ほど展開した領域のせいで、もうほとんど呪力が残っておらず領域に対する対策を有していなかったからだ。

 そんな呪霊を透は冷ややかな目で見る。

 

「安心してください。この領域に必中の効果はありません。必殺もありません」

 

 透はそう言いながら呪霊に近づく。

 

「アッァア!!」

 

 呪霊はなけなしの呪力で術式を使用し、近づく透を切り刻む。

 透は気にする様子もなく近づいていく。

 

 そして、透の首に術式が命中し、透の首が切断され──五条透は死んだ。

 

 呪霊はあっさりと死んだ透を見て驚いた。

 だが、透が死んだというのに領域は消えない。

 

「──この領域は転生術式を"使うための領域"です」

 

 呪霊は背後からいきなり聞こえた声に振り向いた。

 するとそこには初めて見る人間の女が立っていた。

 

 その女は先ほどの女と同様に瞳が紅い。

 

「アッ!!」

 

 呪霊はその女の首も切断し、絶命させた。

 

「──この領域内で私が死ねば、前世の私が召喚されます」

 

 呪霊はまた背後からいきなり声を掛けられ即座に振り返る。

 そこにはまた違う女が立っていた。

 

 だが、その女の瞳も真っ紅だ。

 

「そして召喚された私には死んだ私の呪力が上乗せされます。安心してください。この体に術式は刻まれてませんから」

 

 呪霊は人間の言葉を理解できない。

 だが、感づいている。

 

 自分は詰んでいる、と。

 

「ほら、どうぞ。殺してみてください。呪力が沢山ある状態で次を試してみたいんです」

 

 女は呪霊に近づき無機質な微笑みで言った。

 呪霊はもう呪力が底に近い。だが、最後の意地で女の首を撥ねて絶命させた。

 

「──ありがとうございます」

 

 やはり、また背後から声を掛けられる。

 呪霊は怯えながら振り向いた。

 

 そこには、口の周りに不思議な刺青のようなものがある瞳の紅い女が立っていた。

 

 その女は呪霊に少しずつ近づいた。

 呪霊は怯えて動けない。いや、動くだけの呪力がもうなかった。

 

 そしてそんな呪霊に近づき、女は呪霊の耳元に口を近づけた。

 

「──【死ね】」

 

 呪言。

 圧倒的な呪力から発せられたそれは術師に一切の反動もなく特級の呪霊を一撃で──殺した。

 

 

 

 ※ ※ ※

 

 

 

 領域が解除され、呪霊が完全に消滅する。

 

「最低です…………私……」

 

 透は地面に落ちる宿儺の指三本を見ながら呟き──気を失った。




一番曇らされえるのは主人公って話
どうしてもここまで書きたかった話でした。

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