首に赤い糸   作:とよかわしょうこ


原作:BanG Dream!
タグ:R-15 夏のバンドリ祭 長崎そよ 恋愛 オリキャラ
あなたしかいないの、だから、あなたを肯定するしかないの。

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公式供給であれを見せられては書くしかなかった。


首に赤い糸

 好きになるということは呪いを掛けること。

 でもその呪いには効きやすさに個人差があるんだ──って私は思えてならない。だって、私はこんなにも縛り付けられているのに、あなたは。

 

「せんせ、それ……」

「いいぞましろ、馴染んでるな」

「おねだり、していい?」

「今日は特にやらしくしてくれるなら」

 

 大きな窓には雨が打ち付けられ、外には紫陽花がかわいらしく咲いている。そんな景色の後ろでは歴史と伝統ある月ノ森には似つかわしくない淫語に塗れた下品な言葉と艶かしい嬌声、いやらしい水音。誰もいない、通らないという免罪符を得た男女がまるでラブホテルかの如く行為に耽っていた。

 

「……お前」

「ど、どうして……今の子は?」

 

 やがて声が一層甘くなり、叫び声のような歓喜の声に変わり、くぐもった声と何かを咥えしゃぶりつくような音がした後、生徒指導室から相手の子が出たところで私が入れ替わり、扉を閉めた。

 先生が驚いたのはほんの一瞬、すぐに元の先生に戻ってしまっていた。

 

「去年の外部生、ちょっと優しくしたらアレだからチョロい──」

「……そういうこと、言ってるんじゃないのくらい、わかってるよね?」

 

 いつから? なんで? そんな疑問ばかり浮かんでしまう。

 聖職者と言われつつもここは女の園で、彼はまだ若い欲を抱く男性で親の口添えでここに就職したのも真面目に教鞭を取りたいからではなく年上の余裕、そして経験値でいたいけで箱入りの女の子を絆して今のように欲望の捌け口にすること。そんなことはわかってる。

 

「そよ、なに怒ってんだよ、あれか、最近構ってやれなかったからか?」

「愛してるって、嘘なの?」

「あ?」

 

 不機嫌そうな声音で返され、反射的に謝りそうになってしまう。嫌われていたらどうしようとカラダが強張って動かなくなる。

 倉田ましろさん、一つ上の先輩で高校からの外部生、そして私にとっては何より「Morfonica」のボーカルというイメージが強い彼女が先生の毒牙に掛かったのはちょうど一年前、夏頃のことだったのは私も知っている。

 わかってる、先生が私のカラダだけで満足出来ないことも、私が部活や今はバンドの活動もあってその前も色々とあったから先生とこうして二人きりになるタイミングがなかったことも。わかってるけど。

 

「れ、連絡もほとんど返事せずに……私を放置して、他の子と遊んでる、なんて」

「──ごめん、なんだかんだとそよは忙しそうだったからさ」

「あ……」

 

 いつの間にか扉を背にした私は先生に追い詰められていて、まだ納得していないという気持ちと嬉しいという気持ち、それから僅かな期待が動くことを、ここから逃げることを拒んだ。頭の左側、横にそっと先生の手が置かれて反対の手は制服のスカートの中へと、脚に指を僅かに触れさせつつ登ってくる。

 

「……っ」

「俺はそよの本音を愛してるんだよ、優等生で、世話焼き上手で、同級生の中でも頼れる存在……そんな長崎そよには興味がない」

「じゃあ、どんな私なら、愛してくれるの?」

「自分が一番わかってるだろ? ()()()()

 

 まるで魔法の言葉のように私の思考にモヤがかかる。私の本音だなんてわからない。本当は先生のことも、先生がどうして私だけでは満足してくれないのか、どうしてあの子()()()を構うのか、わからない。

 教えてくれないとわからない。私の本音も、私の本当の姿ですら、先生から言われたことが本当になる。だって私は「先生のそよ」だから。

 ──先生の指が太ももの横から後ろを通って、臀部に、そしてショーツの端に到達する。

 

「先生……」

「はは、お前は本当にいい女だよ」

「あなたが、あなたが私をそうしたんじゃない、だから……」

「だから?」

 

 彼は、先生は絶対に自分から生徒を抱くことはしない。彼はいつだってそう、釣り糸を垂らすだけ。餌を撒くのは、誑し込むその時まで。釣られてしまった女の子が自分との情事を、秘事を忘れられないと理解している。

 先生の指はショーツの端をゆっくりと下って、クロッチに触れるかどうかの瀬戸際で止まった。言わせたい、合意が欲しい、それ以上に──自分からいやらしく、淫らなおねだりをする女の子を見下ろすのがどうしようもなく好きだから。

 

「ください……私を、愛して」

「……愛してるよ、そよ」

「私も、愛してる……」

 

 私はわかっているようで、わかっていない。先生の「愛してる」が私だけに向けられていないことをわかってる。

 でも私は、あなたがいないと、あなたに求められないと息が出来ないくらいに、その愛してるって言葉で首を締められているのに、私の愛してるはあなたの首に細く巻き付くことも出来ないの? 

 他の子なんて見ないで、私だけを、私だけに首輪を巻いてよ。そんな独占欲は、彼には届かない。

 

「はぁ……はぁ……」

「さて、今日はもう帰るか……雨も強くなってきたしな」

「……ま、待って」

 

 愛されて、満たされて、頭を撫でられる心地よさに酔っていたのも一瞬で椅子から立ち上がり、スラックスのジッパーを上げた先生に私も慌てて腰を上げる。床に座ってしまったからクセでつい埃を手で払い、目の前のスラックスになんとか指を絡めた。

 置いていかれる、そんな恐怖からの行動に対してあくまで先生は冷ややかだった。

 

「そよ……まだ何かあるのか?」

「あ、違う……違うの」

「俺だって絶倫じゃないんだよ。ましろの相手と、そよの相手も両方したからこれ以上は付き合いきれない──わかるでしょ?」

 

 わからない。だったら最初から私にしてくれたよかったのに。そうしたらあなたがため息混じりに、めんどくさそうに相手をしなくて済むじゃない。

 けどそんなことを言ったら今度こそ、私のことなんて必要ないと言われてしまうかもしれないから。わかった振りをしなくちゃいけない。

 

「ごめんなさい……悪いところがあるなら謝るから、なんでもするから」

「──そよ」

「え……あ、私……っ!」

 

 なのに、言葉は全然違うことを口にしていた。

 わかっていない、私はなんにもわからない。目に見えてるものだけが今の私にとっての全てで、先生がくれる言葉だけが光であり私の鼓膜を震わせるものだから。

 

「傘は持ってきてるか?」

「……持って、きてる」

「そうか」

「……ごめんなさい」

 

 持ってきていなかったら送ってもらえたのかな、もう少しだけ一緒にいられたのかな。こういう時、望まれた「長崎そよ」を組み立ててしまうクセが恨めしくなる。普通の傘に、折りたたみまでちゃんと用意してしまう真面目でしっかりした自分がこういう時は疎ましくて仕方ない。

 これで終わりなのだとドアに手を掛けた先生を見上げていると、その表情がふっと柔らかくなって気づけば私を抱きしめていた。

 

「忘れないようにな、先に駐車場で待ってる」

「──っ、先生……!」

 

 その瞬間に私は許されたのだと、まだ愛してもらえるのだと安堵し涙を溢れさせた。

 真っ暗だった景色は先生でいっぱいで、やっと呼吸の仕方を教えてもらったのかと思うほどに、雨が降り続く鈍色の空のハズなのに晴れ間が広がったかのように光り輝いていた。

 

「……でも、ど、どうして……だって、さっき先生」

「簡単だよ」

「──え?」

「俺はそよを愛してる。愛した女に縋りつかれて無下にできるような悪い男じゃないよ」

 

 学校の職員駐車場には見慣れた先生の車があって、少し落ち着いて冷静になったことでまた不安がカラダを蛆のように這い上ってくる。だけど、けれどその不安は先生の優しい声に解きほぐされていった。

 先生は悪い男で、その言葉は嘘つきだって心のどこかではわかっている。わかっているのに、その言葉が私の中で唯一信じるものになってしまう。

 

「どうする? そよが泊まっていくって言うなら、少しはわがままを聞いてやれると思うけど」

「……ん」

 

 脚とスカート、その丁度境目をなぞられる。たった、たったそれだけでさっきの、指導室での余韻が私の下腹部に戻ってくるようだった。

 先生は自分からは手を出さない、けれどこうしてある種の同意を求められる。それが沢山積み重ねられていた、或いは調教されてきたと表現してもいいものだとしても。その疼きに私が耐えられないと知っての行動だとしても。

 

「……お願いします」

「じゃあ、少し寄り道をしていこうか。その間にそよはちゃんと()()()をすること、いいね?」

「うん」

 

 わざわざ先生の顔をする。優しい、まるで餌を撒くかのような声音にそれが危険な罠であっても抗えない。

 ──本当はわかってる。先生に、彼に愛してると言ってもその首に巻き付くのはせいぜい、子どもでもすぐに引きちぎれてしまいそうなくらい細い、赤い糸。本当に、本当に愛しているのに、先生の機嫌一つで千切れてしまうほどに脆い縛り。

 

「大丈夫だった?」

「大丈夫だよ」

「着替え一式は買ってあげよう、愛するそよのためにね」

「……嬉しい」

 

 それなのに、彼の口から放たれる軽率で、軽薄な、嘘の可能性すらある「愛してる」の言葉だけで私は身動きが取れなくなる。首輪とリードを取り付けられたように、腕も脚も、縛られ何一つ自分では自由にならないかのように。

 私と先生の「愛してる」は平等じゃない。私が一方的に搾取され、全てを捧げさせられ、そして捨てられるだけ。

 

「おいで」

 

 わかってる、わかってるよ。

 わかっていたい、わかってるフリでいいから捨てられたくない。

 わかりたくない、わかんないよ。

 どうして、私がどれだけ愛しても、あなたは平気で他の女の子を抱くの?

 どうして平気で既読無視するの? 

 どうして女の子を抱いているところを私が知っても、平気な顔で愛してるだなんて囁くの? 

 ──どうして私を家に上げたの? 

 

「俺にとってそよが一番だよ」

 

 嘘つき、一番なんていない。顔が良ければ、カラダが良ければ、お金があれば、それだけで良いくせに。

 知ってるよ、去年祥子(さきこ)ちゃんにも、他の「Morfonica」の子にも手を出そうとしていたことも。

 失敗したから、ちょうどいいところに私がいて、今日みたいに雨が降る、紫陽花のキレイな日に私に手を差し伸べたこと。

 ──嬉しい、大好き。

 

「自分で脱いで」

 

 あなたは自分の手を汚すことなんてしない。私が求めているということを免罪符にして、肉欲を満たすために使うだけ。

 その関係が切れれば、私のことなんて見向きもしないクセに。

 リスクが嫌なら、生徒で女遊びなんてやめてしまえばいい。

 ──早く、して。

 

「キレイだよ」

 

 そんな言葉なんて聞き飽きた。どうせ次に嘯く言葉も決まってる。愛してるなんて言葉で、いつまでも私を縛り付けておけると思わないで、私だってそんなに安く売ってるつもりなんてない。

 あなたなんて、先生なんて。

 

「愛してるよ」

「私も──愛してる」

 

 好きになることは呪いを掛けることだと思っていた。

 でも、好きになったものは全部、私の手から零れ落ちていく。祥子ちゃんや(ともり)ちゃんと始めた「CRYCHIC」がそうだ。

 私の好きは誰かを呪うことなんて出来やしなかった。

 だから私はもう、堕ちていくしかない。偽りだったとしても、その場しのぎだったとしても。

 私を必要としてくれるのはもう、先生しかいないから。

 

 

 

 

 

 




実はまんが、小説のレーティングとしてえっちしてても直接描写がなければセーフです。漫画に至っては局部隠せばセーフ。つまりどんなに際どかろうかこれはR15の枠を出ないわけですね。
さぁこれでみなさんもエロ同人作家!

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