ヨルに咲くツキ、零れたホシ   作:もちもち

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 ヨルシカ:カトレア:N00505802

 どうせなら、ノノミも傷つけたかった


カトレア

「なんで居るの?」

「酷いよツキノちゃん! 妹のノノミちゃんにそんな風に言わなくても!」

 

 その光景に思わず漏れてしまった言葉をユメ先輩が拾いあげた。

 生徒会に来たのはわたしが最後だったようだ。

 ホシノは来客用の茶を出して我関せずといった様子で楽譜を読み込んでる。

 ……改めて椅子に座った妹へと視線を移す。

 わたしの目が非難の色とでも映ったのだろうか、居心地悪そうに愛想笑いを浮かべる様子にため息が漏れた。

 

「はぁ……ノノミ、あんたこんなところに油売ってる暇なんてないでしょ?」

「お姉ちゃんの演奏が聞きたくなったんだって! こんなかわいい妹ちゃんが居るのに、どうして教えてくれなかったの、ツキノちゃん」

 

 教える理由もないから。

 そう素直に言えれば良かった。

 実家の干渉を振り切ってアビドスに入学した不良娘である私とノノミは違う。

 しっかりと家の期待に応えて、用意されたレールの上を歩いている少女がアビドスに寄り付く方が問題があるだろう。

 

「ノノミちゃんが通っているネフティス中ってもうノノミちゃんしか居ないんだって! ノノミちゃんが卒業したらネフティス中は閉校。こんなにもアビドスと似た環境なのに一人きりだなんて寂しいよ! だから、ノノミちゃん、寂しくなったらいつでも此処に来ていいんだからねっ!」

「……ぬぅ」

 

 嬉しそうな二人に”何を勝手な事を”と、咎めるのは憚れた。

 ネフティスの干渉を受けているノノミが此処に入り浸るのはあまり良いことではないかもしれないというのに……。

 

「話は終わった? ツキノ、ユメ先輩一回合わせましょう」

「やる気満々だねホシノちゃん!」

「はぁ……仕方ないなぁ」

 

 とにもかくにも今日はわたしたちのバンドの合奏をやる日である。

 オーディエンスが生まれようとそこは何も関係ない。

 

「わたしたちが作った音楽がキヴォトスでトップチャートを取ってー、それで、それでね――」

「はいはい、前を向いてないと転びますよユメ先輩」

 

 ピアノを置いてある教室に先行して歩く二人と距離を空けてわたし達姉妹は歩く。

 久しぶりだ。手の届く距離に妹がいる。

 一年前までは当たり前のことだったのに。すいぶんと懐かしく思えた。

 

「どう? 元気にやってる?」

「うん。お姉ちゃんも元気そうで良かった」

 

 ふんわりと笑うその笑顔を見て、わたしはなんとなく間違ったことをしたんじゃないかって思ってしまった。

 親の期待も何もかもを振り払って距離を置いたことが住む世界を切り離すことがあの時は正解だと思ってたのに……。

 

 ノノミは一人のネフティス中で笑えたのだろうか。

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