ヨルに咲くツキ、零れたホシ 作:もちもち
1月。題目『成人式』
ヨルシカ:夜行:734-0307-5
振袖を着たヒトがわたしの横を横切った。
胸を空くような冷たい風が頬を撫でる。
……振り返ることなく、わたしはそのまま歩みを進めた。
「ごめん、遅くなった」
「いいよーそこまで待ってないから」
待ち合わせの場所には既にホシノが居た。
携帯で時間を潰しているみたい。
「……なんかあったの? 浮かない顔をして」
取り繕ったわたしの外面の内を見透かすようにホシノが覗き込んでくる。
……敵わないなぁ。なんで分かるかなぁ。
重く吐き出しそうな息を呑みこむ。
「ちょっと前にさ、ずぅっと昔の知り合いに会ったの」
十年以上も前の互いが無垢……だった時の知り合い達。
友人……と呼ぶには今更な距離感。
友達の友達。お互いに名前を知っていて、ヒトとなりもそれなりに分かるくらい。
「あの人達の輪の中に入ることは……もう無理だなってそう思った」
昔は互いに顔を突き合わせて、話して机を並べて授業を受けた。
だけど……もうわたしが彼らの作る空気に入れないことを暫くして悟ってしまった。
なんだろうなぁ……淡い色彩のキャンパスに紺色が混ざり込むようなそんな感じだ。
馴染まない。
流行りを取り入れ、ワイワイ楽しむ彼らにわたしは一ミリも共感することが出来なかったのだ。
「寂しくなったの。世界に取り残されたような、ほんの少しの虚しさがあって……途中で帰った」
昔のわたしは……もう此処には居ないんだって。
「そら……そうだよ。ヒトは変わるものだよ」
「それは分ってる。けど受け入れれるかどうかまた別だよ、ホシノ。今日、成人の日でしょ?」
「うん、振袖着た人とか居たね」
「わたしが成人を迎える時に……」
わたしはどうなっているのだろう。
これから数年が経って、今のわたしを置いてきぼりにした未来のわたし。
あなたの見る景色は、纏う空気は、持っている色は今のわたしと同じなのだろうか。
そうやって何度も何度も色を重ねていって、昔のわたしを忘れていって、ふとした時に昔のわたしに触れた際にはソレを惜しむようになってしまうのだろうか。
俯いたわたしの手をアカが握る。
そのまま手を引かれてわたしは足を踏み出した。
「ずっと一緒にいるよ。そう約束したじゃん」
「……そうだね」
心情に合わせた歌を諳んじる。
それを聞いたアオも声を合わせて歌う。
はらはら はらはら はらり晴るる原 君が詠む歌や 一輪草
きっと大人になったわたしは、今みたいに置いて行ったわたしを悔やむのだと思う。
そうなった際には。それを共有出来る様なヒトが傍に居ることを祈ろう。
ありがとうね、ホシノ。