ヨルに咲くツキ、零れたホシ 作:もちもち
公式からの供給。
アニメも素晴らしく、心躍ったので初投稿です()
「先生、ありがとう。あと、急な連絡してごめんなさい」
アビドス対策委員会を襲うヘルメット団の件がひと段落した昼過ぎ、あなたは生徒の一人であるシロコからの連絡を受けた。
会わせたい人がいる。
拙いモモトークのメッセージ。その内容を深く詮索することもなく、生徒の話を聞くためにあなたは二つ返事で返したのだった。
アビドスから遠く離れたD.U地区の一角。茜差す光を浴びてシロコがあなたの存在に気が付いて、公園のベンチから腰をあげる。
「コレ? 先輩から貰った大事なモノ」
あなたがシロコを見つけた際、シロコはハーモニカを吹いていた。
まだ深く知らない生徒の側面。
道すがらその話を掘り下げるとシロコは嬉しそうに表情を和らげて手に持ったハーモニカに視線を落とす。
「対策委員会には、ほんとうは全員で6人。……先輩はちょっと心が弱ってて。ヘルメット団の襲撃から遠ざける為に病院にいるの」
此処。
歩いて数分、シロコが指差す看板には精神病院の文字があった。
玄関を通り過ぎ、面会の受付をする。
十六夜ツキノ。
それがアビドス6人目のメンバーの名前らしい。
十六夜。その苗字を持つ生徒にあなたは心当たりがあった。
「ん、そうだよ。ツキノ先輩はノノミのお姉さん」
あなたの言葉にシロコは頷く。
病院内を慣れた様子で案内するシロコは此処によく訪れているみたいだ。
「この時間だと病室じゃなくて、ピアノを弾いてる筈」
廊下を歩きながら離れに向う生徒の後ろをあなたは付いて行く。
あなたはその途中、シロコが教えてくれなければ知る事の出来なかったアビドス対策委員会の意味を尋ねてみた。
身内であるノノミも同期であるホシノもツキノの事を何一つ語る素振りも見せて居なかったのだ。
「先生、わたしも深くは分ってないの。ホシノ先輩もノノミもツキノ先輩をアビドスに戻そうと考えてないみたいで……仲間外れは寂しいことだから。先生が居れば一時退院の手続きも出来る」
一年生であるアヤネとセリカでさえ存在は知っていても顔合わせはしていないと、シロコは語る。
そこでかすかに聞こえてきたピアノの音。
その音に耳を傾けたシロコが首を捻った。
「先輩の曲じゃない……誰?」
僅かに歩調を早めながらシロコは歩く。
徐々に大きくなっていく音に耳を貸したあなたは漸く得心をいった。
この音楽は礼拝堂でよく耳にする讃美歌だ。
「ツキノ先輩!」
「おや……シロコ、久しぶりだね。元気にしてた?」
部屋の入り口を音を立てながら開け放ったシロコに続いてあなたは入室する。
防音設備がなされた簡素な部屋。
中央に置かれたグランドピアノの傍らに立つ女子生徒が優し気な眼を後輩へと向けている。
シロコが気にしていた演奏者であるもう一人は、猫耳型のベールを被った生徒もピアノの椅子から立ち上がって佇まいを正していた。
「うん? 知らない顔だね」
妹とよく似た面立ちながら纏う雰囲気は全く異なるモノ。
その差異に驚きつつも、あなたは冷静に自己紹介を行った。
自分は連邦生徒会直属連邦捜査部のS.C.H.A.L.Eの先生である、と。
「ふーん……先生、ね。わたしはアビドス生徒会書記兼事務局 十六夜ツキノ。で、こっちが――」
「トリニティ総合学園、シスターフッド一年伊落マリーです」
初めまして、そして以後よろしく。せんせ。
猜疑心に満ちた視線を隠すことなく向けるツキノに、あなたはまた癖のある生徒だと内心息を零すのであった。