ヨルに咲くツキ、零れたホシ 作:もちもち
2月 題目『節分』
ヨルシカ:晴る:776-4897-8
「ユメ先輩、なんで節分ってあるんですかね?」
「うーん? いきなりどうしたのツキノちゃん」
夏には青々とした葉を付けた木の枝が、秋には鮮やかに色付き、そして冬の到来をもって、枯れ落ちる。
裸になった寒々しい樹木の枝を眺めて、ふとツキノは隣に立つユメになんとなしに疑問を問いかけた。
振り返ってミドリの顔をジッと見つめたアオが突発的に口から漏れた思考を脳内でこねくり回して形作っていく。
特になにも考えていなかった為だ。
「いえ……えーっと……その……。節分って、冬から春にかけて、体調の崩し易い時期に無病息災を祈るって行事じゃないですか」
「うん。厄払いだね! 今年はホシノちゃん、ツキノちゃんと一緒にとっびきりのパワースポットに行こうね! 私、良いところ知ってるんから」
にぱーっと朗らかな笑みを浮かべる先輩の姿にゆっくりと息を吐くツキノ。
ゆくゆくの楽しみは置いておいて……疑問は解決していないのだ。
「秋から冬も季節の変わり目で体調の崩し易い時期なのに……なにもないじゃないですか」
日頃の過労が祟った為か、ホシノは風邪をひいて休んでしまっていた。
いつもの三人が一人欠けた何処か味気の無い日。
だからこんなどうでもいい疑問が浮かんだのかもしれない。
どうでも良い事でした、忘れてください。
その言葉をツキノが口に出そうとして――やめた。
目の前でユメが腰に手を当てながら得意げに笑みを浮かべてたからだ。
「ふっふっふ……ツキノちゃん、難しい説明は省くけど節分は年の変わり目であることも重要なんだよ!! だけど……うん!! もうちょっとしたら年が変わるからって、これからの事を無事に過ごせますようにってお願いすることは、私は悪いことじゃないって思うよ。……うん!! せっかくだし、明日ホシノちゃんも連れて、神社にお参りしに行こっか!」
「え? ホシノは風邪で……」
「たぶん、もう治っているよ! ホシノちゃんだし!」
ぴゅーっと吹き抜ける風のように駈け出す先輩の背中を見つめて、アオはため息を吐いた。
一報くらい送っておくか。
携帯を見つめるその画面には、これからのことに胸を躍らせた少女の顔が写っている。
「暖房も付けないで……風邪ひくよ、ツキノ」
「あ……うん。ありがと、ホシノ」
深々と空から舞い落ちる雪を見つめていたツキノはそっと視線を手元の楽譜へと落とす。
良い歌詞が書けると思ったのに……。
手が止まった。
旋律が描けない。
ナニカとても素晴らしい夢を見ていた気がするのに。
「春は……まだ先なのかな」
「たぶんね……」
暦の上では既に春。だが、今年の冬はまだ長くなりそうだった。