最近異端者の集団で、ある男女の関係について盛り上がっていた。
片方は、彼らのリーダーである青年。そして片方は彼を支える聖騎士。
彼らは、集団をまとめ、盛り上げ、仲間から慕われていた。

そんな彼らを祝福というからかいの地獄に叩き落とそうと努力する異端者たち。

そしてそんな彼らの真実を見つけ出そうとする女性が見たある夜の出来事

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深夜の目撃者

最近、異端者たちの間では、ある男女の交際のお話で盛り上がることが多い。片方は、彼らのまとめ役、若い青年ながら個性あふれる面々をまとめ上げ、戦乱を煽る真の敵と戦う金髪の青年である。

もう片方も、彼らの仲間である女性騎士である。彼女は彼を支えるために、剣による力だけでなく、彼の目の届かぬ集団の不和を解決する副団長のような存在である。

 

そんな風に、集団を導き、ともに行動することの多い二人の間に男女の噂がたつのは当然であった。

 

しかし、彼らは表にそんなそぶりを全く見せない。いつものように皆をまとめ、厳しい戦いのでも前線を2人で切り開き、いつものように笑い、いつものように寝る。

 

2人きりの時間を全く作っていないのである。つまり付き合っているようには見えないのだ。しかし、異端者たちの勘は、彼らの親密さを直感で感じ取っていた。

 

異端者たちの目的は、ただ一つ、彼らを祝福という名の暴力で包み、迎え入れることである。ある人物は、彼らがともに料理をするところを観察し、からかいのネタがないかを探し、ある人物は戦場で傷を負った彼らがともに守りあう姿を見て、男女関係のにおいをかぎつけようとしていた。

 

しかし、さまざまな血の滲むような努力をしたにもかかわらず、彼らのしっぽをつかむことはできなかった。

 

 だが、とうとう彼らのしっぽを捕まえる瞬間がやってきた。

 

 

 

 

異端者たちは、大人数で町に入れない。そのため森の中など目立たないところにキャンプを設営し、日々の疲れを取っている。そんな真夜中のキャンプ、ある女性専用テントから抜け出す一つの影があった。アグリアス・オークス、件の噂の片方である女性騎士、長い金髪、そして凛々しい顔の美人である。聖剣技を駆使し、皆を支えるお姉様のような存在だ。

その彼女がいつもの鎧ではなく動きやすいローブに身を包み、こっそりとテントから抜け出していった。周りに気付かれないようにいつもとは違い、そろりそろりと忍び足でテントを抜け出していった。

 

 

「アグリアス隊長・・・・あれは、絶対おめかししているわね。とうとうこの瞬間を見つけたわ。あの隊長が乙女の顔をしている瞬間を見るチャンス、からかうネタにもなるし」

 

そんな彼女を見ていたものがいた。彼女とともにオヴェリア王女を守る任務についていた、アリシア・レイビー、齢20の乙女である。

 

通称、アグリアス様親衛隊の隊長を務める彼女にとっては、これは千載一遇の大チャンス、忍者として身を鍛えている彼女はアグリアスを追跡することは簡単であった。

 

 

 

アグリアスは、そんな追跡者がついてきていることに気付かないまま、歩いて行く。時々、殺気を感じるのか、アリシアのほうに一瞬視線をよこすこともあるが、気にせずに歩いて行く。軽快に彼女は、歩を進め、キャンプ地の端にある水辺にたどりついたのであった。

 

その水辺には、アリシアが予想した通りの人物がアグリアスを待っていた。ラムザ・べオルブ、北天の盟主であるべオルブを継ぐものでありながら、異端者のリーダーとして彼らをまとめ上げる好青年である。さまざまな心を折られるような経験をしているにもかかわらず、折れずにいる彼を尊敬している人々は多い。だからこそ、彼には支えがいるはずだと考えてもいるのだが。

 

「ああ、アグリアスさん、お疲れのところ申し訳ないです。いつものようにとこんな遅くに呼び出して」

 

「いや、いいの。ラムザは、私にとって大事なのだから」

 

 

そんなことを語り合う二人、アリシアはとうとう目的の瞬間をとらえたと感動していた。しかし、超人的な彼らから身を隠すためにアリシアは、遠くの茂みから声を聴くことしかできない状況、ちょっとだけ不満げでもある。

 

「やっぱり、隊長たちは付き合ってる、これは大スクープよ!!!、けどなんでこんな遅くに会うんだろ、まさか…」

 

彼女のまさかとは、男女が夜逢引したら起きるアレのことなのは、わかるだろう。しかしあの2人にとってはとても遠くの世界の出来事である、と普通の人は考える。アリシアもふつうの人と同じく、すぐにその考えを修正したのだった。

 

だが、そんな風に彼女が考えを変えてすぐのことであった。

 

「ラムザ。私の体のことは気にしなくていい、思いっきり来て」

 

「わかりました、アグリアスさん、ではいきます!!」

 

と2人の声が聞こえてきたのである。その後聞こえてくるのは激しい息遣い。全身をくまなく動かしているようなときの息遣いである。アリシアは草むらの影に身をひそめながら、まさかの事態に顔を赤らめる。

 

「アアッ、もっと、もっと激しく。激しく突いて。私を攻めて!!」

 

「アグリアス、すごい、すごいですよ、これ、今までとは全然違う」

 

だんだん彼らの口調も変わり、さらに息遣いは激しくなる。それをアリシアは体中を真っ赤にしながらこれを聞いていた。しかしこれも限界に達している。こんな男女の逢引なんて聞いているだけで疲れるものだ。

 

「もう十分話は聞いたし、色バカ2人は明日の朝食の時にみんなで笑うネタにしましょう」

 

そう独り言をつぶやき彼女は去って行った。

 

 

そして次の日の朝、アリシアは親友のラヴィアンにその目撃したことを話していた。

 

「ラムザさんとアグリアス隊長が本当に?あの固い2人が夜にそんなことをしていたなんて…、大ニュースね」

 

「やっぱりそう思うわよね、これこそ皆の士気を高める朗報よね、じゃあ、今から噂をばらまいてくるわ」

 

ラヴィアンは非常に驚いてくれたようだ。やっぱりあの2人があんなことをしているなんて誰も思わない。これはいいネタになる。そう考えて、彼女は噂を隊内にばらまくのであった。

 

 

 

 

 

 

アグリアス・オークスはなぜか今日の朝から、周囲の視線がからかいモードになっていることに気が付いた。ある竜の女性は、

 

「昨晩は、お楽しみでしたね」

 

など笑いながら言ってくる。非常に不可解。昨晩はただラムザと打ち合わせをしただけなのだが。

 

ラムザのほうを見ていると、彼も男衆にからかわれている。ある銃を持った青年にはシュークリーム爆弾をぶつけられ、ある占い師のような青年からは、暗い予言を聞かされ、他男衆からは嫉妬の視線で睨まれている。

 

なんだかおかしい。そう彼女は考えた。こういう時はたいていアリシアかラヴィアンに原因がある。彼女を問い詰めたらわかるんじゃないだろうか。そう思い、アグリアスは、昼食前の皆がそろった逃げられない状況でアリシアを問い詰めることとした。

 

「あの、アリシア。あなた、私に関する変な噂を知らない?」

 

「変な噂ですか?事実に基づく噂なら知っていますよ」

 

 

アリシアはにこにこしながらアグリアスの質問に答える。アリシアにとても皆がそろっているこの場面はからかう最大のチャンスである。笑顔になるのも当然だ。

 

「事実?どんな事実なの?」

 

「あらあら、隊長はしらばっくれちゃうんですか、昨晩ラムザさんと隊長は楽しいお時間を過ごされていたではありませんか」

 

「何を言ってるの、わけがわからないわ」

 

「隊長、何ごまかしてるんですか、私は聞いたんですよ。隊長が、『アアッ、もっと激しく突いて』なんてあえいでいたの」

 

このアリシアの言葉と同時に口笛や笑い声が続く。なんだか異様な勘違いをされて笑われているようだ。このおバカ娘には制裁するついでに昨日の事実を明らかにしよう。そうアグリアスは考えた。

 

「ラムザ、何だか勘違いされているわ。昨日のあれ持ってきてくれないかしら」

 

「今持ってますよ、これですよね」

 

その言葉と同時に彼がアグリアスに渡したのは一振りの剣であった。ラムザがある遺跡から発掘してきた剣、「エクスカリバー」である。

 

「これをラムザが昨日の夜、私に練習ついでに振っていただけよ、いつもの剣技の訓練しかしてないわ」

 

「えっ・・・うそですよね、じゃあなんで隊長あんな喘いでいたのです?」

 

情勢が非常にやばくなったことを理解したアリシア、どうにか言い逃れようと必死である。しかし、すこし怒っているアグリアスの前には無意味であった。

 

 

「この剣の特徴を知っているかしら、剣の持ち主を強化してくれるのよ、ラムザほどの名人が持ったら私なんかすぐに息が切れるわ、アリシアちょっと試してみる?」

 

「いや、いいです・・・そうそう、用事があったのを忘れて・・・」

 

「問答無用、天の願いを胸に刻んで、心頭滅却、聖光爆裂破!!!」

 

 

 

 

このようにアリシアは、アグリアス様の剣のさびとなり、このちょっとした騒ぎは終焉を迎えた。しかし、本当に彼らが、夜、剣の試運転だけのために動いたのか。それは誰もわからないのであった。

 

 

 

 

「危なかったですね、アグリアスさん」

 

「ああ、あの連中にばれたらどうなるかと思ってたわ。さて、今晩は・・・」

 



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