「昨日鍋パーティーしたんだ~」
「そうっすか」
食堂で、昼飯を食べながら聞くと、火野から気のない返事が帰ってきた。結局、キンジは了承しなかったし、瑠河はキンジにデレッデレになってうざかったし、鍋は美味しかったし、総じて言えば、いい日だった。
「そういえば、お前夏休み何か用事ある?」
「いえ、ないですけど……」
「あっそ」
なんなんだ、この人は。みたいな目で見られているが、キニシナーイ、キニシナーイ。
アリアも呼ばれていなかったし、やっぱりキンジはすげーや。
「四神一鏡って言ってさ。そこの赤神家のお嬢様に、キンジが気に入られてるんだよ」
「またですか」
あいつの華麗な、そして死ねばいいとわりかし本気で思う女性遍歴のうちの一人ではないんだけどな。どうもそのお嬢様は、天才が好きらしい。だから、天才を島に集め、サロンを開いている、と聞いている。キンジが言っていたが、少し前まで、本家とは絶縁されていたらしいが、跡取り候補が、バカスカと死んでいき、お鉢が回ってきたそうだ。
それ以外にも、あのうすら昼行灯の師匠がその島にいるとかで、年に数回島に通っている。
そんなこんなを、ぶちぶちと死ねばいいと思いながら、飯を食っていると、ぴんぽんぱんぽーんと、呼び出しの放送チャイムがなった。
『西条四季。今すぐ来い』
「どこにだよ!」
いや、職員室でしょうけどね。はい。でも最近は、特に任務もしていないし……。殺し名とか呪い名関係かな?
「星枷のぉ、護衛誰がぁいいと思う?」
「知りませんよ」
綴先生のところに行くなり、変なことを聞かれた。一応知り合いっちゃ知り合いだけど、俺はアイツのことが大っ嫌いなのに。そりゃ、キンジに作ってくる過剰量の弁当は美味しいし(八割方俺が食べる)、杏仁豆腐は美味しいし(十割俺が食べる)、あいつの持ってる日本刀は本当はいいものだし(この前奪ったら泣きながら土下座されたので返した)、だけど、絶対にアイツのことは許さない。
「いやねぇ、『
「へーそうっすか」
気のない返事をしたら、でこピンされた。涙ぐんでやる。
「あの……なんで私までここにいるんですか?」
「だって怖いじゃん。一人でここに来るの」
と、なんとなく連れてきた火野に聞かれたので、答えてやったら、綴先生にほっぺた引っ張られた。痛い。
「でさぁ。星枷によぉ、誰が護衛にいいか聞いたんだけどよぉ」
「キンジを指名したんですね」
そぉゆーこと。と答えられた。そら、そうだ。あのヤンデレを拗らせたはた迷惑な武装巫女が、考えそうなことだ。
「でも無理っすよ。その件に答えるぐらいなら、先約の瑠河を優先するでしょうし」
「そぉだよなぁ。学校としても、瑠河の護衛にSランクやらAランクの同学年をつけたほうが、話題になるし、宣伝にもなる」
あーなるほど。多分、瑠河のやつは、何となくこのことを察知していたな。で、先手を打ったと。女ってこえーな。
学校も学校で、星枷よりも、世間の目を気にして瑠河を優先したと。
「あれ? でも俺はCランクですけど?」
「お前は特例だ、つってんだろーがぁ。護衛のやつにメダリストがいるっつーのも大きいしよぉ」
メダリスト確定かよ。いやー、期待が大きくて押しつぶされそう。
しっかし、火野は本当に喋らねえな。萎縮しちゃうとか、そんなキャラじゃねえだろ。と思ったので、そいつの座ってる椅子を蹴り倒した。
「おーおー、パワハラかぁ?」
「愛の無いシゴキです」
あっはっはっは。と二人して笑った。そしてデコピンされた。涙ぐんでやる。
「じゃあ、あの三年生の依存夫婦にでも任せたらどうですか?
「私はぁ、お前以上の怖いもの知らずをぉ、知らねえがなぁ」
HAHAHAHA、らんらんすっげー睨んでるわ。
「それによぉ、その二人はぁ……。ん? なんだったか。そぉそぉ、えーっと、あれだあれ、そう。新婚旅行にぃ出かけたぁ」
「ああ、そういや、旦那のほうは、4月が誕生日でしたね。なるほど、18歳になったから、結婚したと」
初めて見たよ。18歳と17歳の夫婦。向こう見ずすぎだろ。大丈夫なのか、人生設計。と思っていたが、二人共、絵鏡家に就職が決まってんだった。それも本家直属の親衛隊に。と、なるということは1つか。
「ねえー! らんらーん! 結婚支援サイトに登録してぇー! 合コンにも出まくってんのにー! 教え子に! それも恋愛結婚でぇー! 先越されて! 今どんな……びえーん! 殴られたぁ! 思いッきし殴られたぁ! 首の骨圧縮されてせぇ縮んだぁ!」
「じゃかしぃ! 縮むほどの身長もないやろ!」
うわーん! びえーん! あーん! えーん!
四季先輩が泣き喚いた。別に可愛いとかは思っていない! 小学生が駄々こねるみたいとか、……ああ、ええ、はい! 可愛いです! 抱きしめたいです! なにか悪いかこんちくしょー。でもそれ以上に、教務科ってところが怖い。とくにマジギレしている蘭豹とかが怖い。
などと、私――火野ライカが、困惑しながら、見ているうちに、綴先生に抱きつき(!)、そのまま泣き疲れて寝てしまった(!?)。
「あ、あの……」
なんていうのが正解なのだろうか。いや、そもそも正解だなんてあるのだろうか、この異常な光景に。武偵高三大危険地帯の一つで、教師を挑発して、当たり前のように殴られて、泣き喚いて、寝る先輩を前に、どう対処しろっつーんだよ!
「おい、火野ぉ」
「ひゃい!?」
怖い! もしかして殺される!?
「紅梅、紅梅楽器を呼んできなぁ。今のこいつに……、ええーと、そうそう。たいしょ、対処できるのはァ、今現在は楽器しかいないからなぁ」
「四季さん! いいえ! もう四季ちゃんです! ああもうかわいいかわいい! あの地獄コンビが学校にいたせいで、こうやって頬ずりもできなくてごめんさい! いつ見てもハァハァ……! じゃあ、先生、タップリと堪能……じゃなかったああもうええっと! 撫で回してきます! 愛でてきます! 知ってますか!? 萌えって、室町時代らへんからあったんですよ! ですから、萌えというのは、現代文化ではなく伝統文化なのです!」
「わ、私が、ぜぇ、走るのでぇ、ぜぇ、まげる、ゲホッ、なんで……」
用件を言ったら、嵐のように走って行って、疾風のように去っていった。なんだったんだ、あの人は……。
「紅梅楽器。四季の友人にしてはぁ、つーかぁ、学校全体で見ても全ッ然弱い、救護科の生徒だぁ」
と、先程までは、珍しく吸っていなかったタバコを吸い始める綴先生。
「あの……じゃあ、自分はこれで」
「ちょぉっとまてぇ、火野ぉ」
帰してください! もうこんな地獄から逃げ出したいんです!
「お前、四季の戦妹をこのまま続けるつもりか?」
真面目な口調で、真剣にこちらを見られて聞かれた。なんというか、こちらのみを案じているかのような口調で……。
「正直、四季は武偵高でも持て余すような人材だ。優秀だが歯止めが効かない」
「はぁ。えっと、どういうことですか?」
さっきの会話と言い、挑発と言い、もしかしたら、四季先輩は見た目以上に精神年齢が幼いのかもしれない。いや、そういえば、殺人鬼に育てられたとか言っていたから、善悪の区別がついていないのかも……。倫理観にかける教務科じゃあ、教えることもむずそうだし。
「つーか、善悪の区別云々じゃなくて……。まあ、いい。率直に言わせてもらうけどさぁ」
――お前じゃ、四季の戦妹には弱過ぎ過ぎる。
怒涛の四神一鏡。ところで最強シリーズ発売されましたね。緋色の英雄には寸鉄殺人が出てくる予定だったらしいですが、最強シリーズには出てくるのでしょうか。
では、またの機会に