理子「ええい! ヴラドはいい!!(ドンッ」
アリア「お曽祖父様をだせ! お曽祖父様を!!(ドンッ」
レキ「ご先祖様が痴女!?(バタリ」
白雪「医者ーーーーッ!?」
ジャンヌ「つらいわー、大当たり過ぎてつらいわー」
キンジ「エクスカリバーってビーム撃てたのか」
「チイぃ!」
埒があかない。という諺なのか慣用句なのかは知らないが、埒があかないという言葉が日本にはある。そして、今の状況はまさに、それだった。
ジャンヌ・ダルク30世の攻撃が、斬撃が、一切として通らなかったのだ。超能力も使えないことはないが、精神的な混乱が大きく、暴発の危険性を孕んでしまうため、どうしても奥の手になってしまう。そしてその奥の手を使う状況にすら、相手は持って行かせなかった。
強い。おそらく万全の状態の自分よりも、圧倒的とまでは行かないが、相当に強い。逃げ道もいくつか確保してはあるが、恐らく塞がれている。恐らくというよりも確実に、だ。張ってあったはずの糸が、先程から一切見当たらないことを考えると、高位の糸使いだと推測できる。ならば、逃げ道には、エゲツナイ罠が仕掛けられている可能性がかなり高い。いや、自分だったらまずそうする。となると、正面突破しか、逃げ道がないことになる。
「……」
しかし無口な男だ。と、苛立ちながら、息を整えるために、間を開いてから思う。先程から、一切喋らない。その鉄仮面と合わさって、薄暗い地下にはぴったりだった。
「はぁはぁ……」
そして、自分よりも数段階上の実力を持っている目の前の鉄仮面と、未だに戦えているのは、この男の拳が、それほど重くないからだと、冷静に状況を整理する。十数発ほど、殴られたが、致命的なほどの強さはない。プロボクサーというよりも、それこそ拳法家の拳だった。
それに対して一撃、そう、まさしく一撃さえ入れられれば、『
一撃があまりにも遠い。
「貴様の名前はなんというのだ」
「……」
「『無口な心は怠け者』という言葉が、この国にあるらしいではないか。少しは喋ったらどうだ?」
「……」
本当に喋らない男だ。と再認識した。一撃、そう一撃なのだ。一撃さえ入れば、目の前の鉄仮面を撃破できる。相手の拳は軽い、あと数発を喰らう覚悟さえすれば、一撃は入れれる。
「埒があかないな」
と、最後の会話と言っていいのかは分からないが、最後の会話から、しばらく立って、沈黙を貫いてきた鉄仮面の男が言った。
「こんなスリリングな削り合いかわし合いに、なんの意味がある? なあ、『魔剣《デュランダル》』」
「……なんだ、話し合う気になったか?」
ふと、鉄仮面の男の後ろで気絶している星枷白雪のことを考えると、なるほど、死ぬな。時間的に、私にかまっていたら、確実に死ぬな。
「まあ、そういうわけだ。こっちも急いでいるんだ」
「わたしが、はいそうですか、といって投降するとおもうか?」
「いいや。だから、打っていいぞ」
なに? と顔に出たかもしれないが、今はそんなことはどうでもいい。どうでもいい気分だ。鉄仮面の男が言いたいことは、なとなく察しがついたが、しかし、それは……。
「『
勝負を焦ったという見方もできる。実際に、焦る理由が鉄仮面の男の後ろに転がっている。もしかしたら、四季とかいう狂戦士が目覚めるのを恐れたのかもしれない。しかし、それでも解せない。なぜ、これだけ戦っている中で、鉄仮面の男の応援が来ないこともそうだが、なぜこのタイミングなのかが、解せない。
「なに、オマエみたいな、騎士道やら武士道を貫こうとする奴は、実力で圧倒するよりも、心を折ったほうが早いんだよ」
心を読んだかのように、疑問に答えるようにしゃべる鉄仮面の男。舐めるな、と思った。軽く見るなとも思った。『聖剣《デュランダル》』はそこまで軽くない。
「いいだろう、貴様の申し出、受けて立とう」
そして打ち破る。
ジャンヌ・ダルク30世は勢い良く鉄仮面の男――遠山キンジ――に突っ込んだ。
ジャンヌ・ダルク30世は『聖剣《デュランダル》』を振りかぶった。
ジャンヌ・ダルク30世は『聖剣《デュランダル》』を振り下ろした。
速度も、威力も、申し分なかった。満足の行く人達を、鉄仮面に叩き込んだ。
叩き込んだはずだったのだ。
「……あ、あ」
言葉が出てこない。声が震える。人体を一刀両断する勢いで、振り下ろしたにも関わらず、一刀両断どころか、鉄仮面に僅かな切れ込みを入れたに過ぎなかった。
「別に俺の策じゃねえんだが、なるほど、
鉄仮面の男は、なにかをポツリと呟いた。何を言っているのかは、わからない、聞き取れない。
「では、続きまして。――
「……」
遠山キンジを沈黙していた。『魔剣』は、死亡の定義にもよるが、死んでいた。俗にいう、心臓死というやつだ。脳死まではしていないので、早急に心肺蘇生しなければ、本当に9条破りになってしまう。そのために、心を落ち着かせていた。いつもなら、簡単なはずの作業だが、昔、というほど昔でもない、一年ほど前に彼の師匠が語った、二度と行いたくない勝ち方をしてしまい、心が落ち着かない。
別に、殴りあっていれば、そのうち普通に勝っていただろう。ただ、なんとなく、状況が師匠の語っていた内容に似ていたから、決して言葉数の多い師匠ではなかった、それどころか数えるほどしか喋らなかった師匠が、珍しく多弁になっていた状況と、似ていたから、試してみたくなった。それだけだった。
しかし、思いの外気分の悪くなる勝ち方だった。絶対的な相性のもとで、絶対的な地の利を活かし、そして奸計でもっての勝利。
なるほど、多弁にもなるわけだ。
キンジのやったことは、ただ力任せにぶん殴るだけの『俺的必殺・問答無用拳』と言われる一撃必殺技だ。ひどい名前だが、これも師匠の数少ない言葉だった。だから、変えるつもりはない。
ギュムギュムと、いつもなら、蹴り飛ばして蘇生だしているところだが、今は念を押して、丁寧に心臓マッサージを、足で踏みつけて行っている。
「――こんなものか」
心臓が、またなり始めた。呼吸の音もする。正直、失敗する公算もあったのだが、なかなかに強運の持ち主らしい。
そして、必要最低限に、『魔剣』を拘束し、後ろを振り返る遠山キンジ。
「アリア。いるんなら、出てきて、白雪とお前の親友を上に運んだらどうだ」
「いつから、気づいてたの?」
最初から、となんとなしに答える遠山キンジに、苦笑いをするしかないアリア。詮索するつもりはなかったが、交渉に入っていたので、身を隠したら、これだ。
「あんたねえ、別に怪物とか妖怪じみてるのは別にいいんだけど」
「生き返るんだから、いいだろうが」
反論は許さない、そんな口調でアリアを見ずに告げるキンジ。たしかに、9条破りではあるものの、確実に生き返るのならば、警察に送り届けるときに生きているのならば、9条は実質的には破ったことにはならない。
「まあいいわ。でも、そんなのに頼りきってると、いつか、ぼろが出るわよ」
「……」
だんまりか、と肩を浮かせるアリア。そのあと四季を担ぎ、若干雑に白雪を抱えて、地上に向かうアリア。
往々にして、武偵は、捕まえた人が受け渡す習わしがある。これは法整備が進みきっていなかった頃に、横取りを防ぐためのものが残っているだけなのだが、一種の礼儀作法のような形で残っている。
そして、残ったキンジは、未だ気を失っている『
「俺は拳士だ」
雀の竹取り山のオマージュです。早い話がパクりです。
ちなみにキンジは師匠に勝てません。どうしても手加減してしまうのもありますが、普通に全力でも負けます。あと、師匠だけは、変装していても見抜けます。
もうすぐ受験なんで更新したら、現実逃避だと思ってください。そして感想で勉強しろと言ってください(妖怪感想くれ