緋弾のアリア -強襲科の狂戦士-   作:南瓜お化け

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 あけましておめでとうございます。本年もどうかよろしくお願いします。
 今年はどんな年になるんでしょうね。


第18狂 惨状! 怪盗トランプ

「たっだいまぁー!」

「おっかえりー!」

 理子がアメリカから帰ってきた。その日の朝のSTはちょっとしたお祭り騒ぎとなった。

 しかし、アリアとキンジは苦虫を噛み潰したような顔をして居るんだけど、ただいまって言われたんだから、おかえりぐらいいおうよ。たしかに、ランドセルはどうかと思うけど。

「キーくんもアリアもこっちおいでよ~!」

「へいへーい、野郎どもー、仏頂面の二人を連れてきな~」

 俺はノリの良い人間を自称してるからね。ノリの悪い人間も巻き込んじゃうよ。そしてもうすでに教卓の周りは人でごった返していた。教室内でここだけ人口密度が高くなっている。というか、みんな教卓の周りに集まっているから、他が0だ。

「あとで話がある」

 理子が怖い声で、今にもかき消されるほど小さく言った。

 

 

「助けてほしい」

「私からもどうか頼む」

「ところでお前誰だ?」

 食堂に呼び出された俺は、少しびっくりしていた。声の主は、上から、理子、ジャンヌ、アドルファ。え、何この集団。と思っていたら、説明がジャンヌから来た。要約すると、イ・ウーていう秘密組織があって、この三人はそこに所屬していて、理子がその組織のイジメっ子のトランプとか言う爆発怪盗と親の形見をかけて戦うらしい。ふむ、よくわからんぞ。

「ようするに、無法者同士が潰し合うだけじゃないの」

「……」

「なあ、ところでお前、ほんとに誰だ?」

 さっきから場の雰囲気壊すなぁ、アドルファ。まるで楽器みたいだよ。あいつは狙ってやってるけどこいつは素でやってるし。

「ああ、アドルファは理子とあったことがなかったな」

「理子? ああ、名前だけは聞いたことがある。確か、トランプが雑魚オブ・ザ理子とフルネームで言ってたな」

「峰! 理子! Lupin! 四世! が! 私の! フルネームだ!」

「変な名前」

 理子が泣きだした。大丈夫、変なのはアドルファだから。失礼にも程があるだろ、アドルファ。

「もうちょっと言いようがあるんじゃないの?」

「私は強いやつには敬意をはらうが、雑魚には侮蔑しか与えない」

 なんつー価値観の持ち主だよ、この金メダリスト。いままで、武人みたいな性格だと思っていたけど、ただ単に頓珍漢なだけなのね。

「だいたい、漢字とフランス語がまじった名前なんて変だろ」

「たしかにそうだけど、お前の価値観よりかはまともだ」

 あーもう、本題から外れちゃったよ。この場にいるのは、俺とアリアとキンジとなぜか間宮あかり。なんでも、あかりには知る権利があるとかで、アリアが連れてきた。

「トランプだったわよね」

「うん……、ぐすっ、ごめん、ちょっと立ち直れないかも……」

 よっぽど名前が気に入ってたんだな、理子。アリアは手を顎に添えて考え込んでいる。なにか知ってるのかな?

 

「怪盗トランプ。本名不明の神出鬼没の呪いの物品専門の怪盗ね」

「ああ、そうだ」

 ジャンヌが理子に変わって、答えた。へー、なんでかアリアはイ・ウーっていう組織に詳しいみたいだ。入りたかったのかな?

「盗む対象が美術館でも持て余すような呪いの品物だけだから、盗まれた方も歓迎する指名手配犯ね」

「せーかーい。ぴんぽんぴんぽーん、花まるあげちゃう」

 と、唐突に、巫山戯た口調の声が聞こえてきた。その声の主は、アドルファの隣で、焼きおにぎりをもって、ニヤニヤしており、きれいな長い黒髪の眩しいサングラスをカチューシャがわりにつけた女だった。

「ぎゃははは、大正解ついでに本名教えちゃう。イ・ウーじゃ教授に言うの禁止にされてたから、久しぶりに名乗るぜ」

 どこまでも軽い口調で話しているけど、やべえ、もしかしたらキンジよりも強いかも知んない。理子は明らかに敵視しているし、ジャンヌは驚いている。アドルファは、まあ、予想どうり、久しぶりですだなんて悠長なことを言っている。

 

「本名は~、匂宮(・・)……っと」

 飛びかかった。反射的に俺は飛びかかった。そして地に足をつけること無く、匂宮(・・)と名乗った女によって投げ飛ばされた。自分でも理解できていることが不思議なほどに、一瞬の出来事だったが、理解できるほどに女の手際は見事だった。まさか、俺一人じゃなく、間宮あかりごと投げ飛ばすだなんて。しかも、極自然に、息をするかのようにだ。

「最後まで言わせろや、澄百合の忘れ形見と始末番の末席ちゃん」

 と、後転が失敗したみたいな形になっているあかりと、なんとか立って着地した俺に言った。ちなみに、お昼時でそれなりに人がいるとはいえ、騒ぎにはならなかった。これぐらい、武偵高では日常茶飯事である。

「じゃあ、改めまして。匂宮絵札ちゃんでーす!」

「で、その匂宮がなんのようだ」

 ここにきて、初めてキンジが口を開いた。頼むぞ、頼むから喧嘩にはならないでくれ。いまのではっきりとわかった。この匂宮絵札は強い。それもキンジどころか蘭豹よりも、強い。多分、殺そうと思えば、俺達二人をあの一瞬で殺せただろう。

 それに、匂宮絵札は有名な名前だ。本名を知っていたら、飛びかかるだなんて、馬鹿げたことはしなかった。いや、噂道理だった(・・・・・・)からこそ(・・・・)、飛びかかってしまったんだが……。

「いや、そこの殺人鬼の忘れ形見と名探偵の直感ちゃんとは戦う訳にはいかないから、交渉に来た」

「巫山戯るな! トランプ、オマエ……!」

「理子、大丈夫よ。で、絵札さん、私が交渉に乗ると思う?」

 アリア、頼むから喧嘩だけはやめてくれ。軽い口調で騙されてしまうかもしれないけど、こいつは本当にやばい。ここの校長に暗殺されかかっても、笑顔で返り討ちできるぐらいにはやばい感じなんだから……!

「思うね―、思っちゃうね―!」

「それこそ、ふざけ……ッ!」

 絵札は、アリアにある一枚の紙を見せた。ドイツ語と日本語で羊皮紙にかかれており、ハンコと血判が名前らしきところにあった。

「『匂宮絵札、ブラド、パトラの三名は、神崎かなえ氏の無罪証明のため法廷へ出頭することをここに約束する。なお、この紙が破られた場合はその限りではない』。一人で最高裁までに三人共捕まえる自信があるんならどーぞ、ご自由に」

「卑怯よ……! こんなの……! こんなの……」

 かなえって誰とはいえないけど、アリアの親戚が無実の罪で捕まっていて、色々とあれらしいことは予想できた。ふむ、紛うことなき卑怯。

「澄百合の忘れ形見は、テメエの母親についてメチャクチャ知ってるやつを紹介してやる」

「こいつめっちゃ親切!」

「あっさりと買収されてんじゃねえよ」

「えー、あんま親しくない理子より、お母さんのほうが大事だし」

 理子が泣きだしたが、知った事か。わーい、お母さんのことを知ってる人って誰だろ。澄百合学園の誰かかな? キンジは頭を抱えてるけど、そんなことはどうでもいい。

「おにーさんとは戦わない理由はないんだけど、邪魔者のいないタイマンでバトりたいタイプだ」

「……」

「ぎゃははは。物分かりがいいことで」

 じゃあなー、といって食堂から出て行く匂宮絵札。そしてタイミングよく(・・・・・・・)火野たちが来た。本当に良かった、ヘタしたらこいつらが、殴りかかって返り討ちにあっていた可能性が高過ぎる。

「ねえ、ヴラドとパトラって誰さ」

「……イ・ウーのトランプと同格の者達だ。3人揃ってNo.3だったからトリプルスリーなんて影で言われていた」

 ジャンヌが律儀の答えてくれたけど、あのクラスが3人。それもNo.3って、どんなバケモノ集団だよ。しかもかなえって人の罪は、この3人の組織の罪であると……。

「アリア―。あんまいいたかないけどさあ、今の制度で最高裁までにあのクラスを3人。それも上に最低二人いる集団を相手取るなんて無茶だよ」

「そんなこと――」

「匂宮絵札は匂宮兄妹の後継機ですよ」

 ああ、間宮が言っちゃったよ。この場の誰もが固まってるよ。理解してない一年生を覗いてだけど。そう、それほどまでに匂宮兄妹は伝説的な伝説の殺し屋なんだよな。オバサンが父さんがよく話してたって言ってたから、そんな感じはしないけど、その実績と強さ、情報収集能力は伝説と言ってもまだ足りない。あの匂宮雑技団のエースってだけでもバケモノなのに、それ以外にも多くの伝説が残っている。そしてそのほとんどが、過少に言い伝えられている。

「はっきり言って、勝ち目なんてない。あれで慢心も油断も隙もないんだから。傲慢な態度もちゃらけた言動も、全部こっちの油断を誘うためのものでしょうね」

 怖い目で話す間宮に一年共は若干引いている。まあ、仕方ないか。これでも暴力の世界じゃあ、俺も間宮も恵まれている方なんだろうけど。

「そーだよ、アリア。今回の話だって、捕まっても司法取引の材料があるんだぞ、っていうモーションだ。くたびれ儲けのなんとやら、今回はひいて、あの書類を信じるしかないって」

「私が言うのも何だが、トランプは嘘はつくが約束は守るぞ」

「おい、アドルファ!」

「事実だろう」

 本当に空気も和もわかんないやつだなー、アドルファは。というか、こいつ理子のことが嫌いなのかな。さっきから、変な名前だの何だのと。

「それに助っ人は二人だったな。私が出てやる。あっちの手の内はあんまり知らないけど、こっちの手の内も知られていないだろうし」

「君の手の内テレビ放送されてたじゃん」

「とっておきがある」

 ふん、と誇らしげに胸を張るアドルファ。うわー、コイツ絶対匂宮と戦いたいだけだよ。きっと近くに理子いたら、盾にするよ。

「なに、牙突か三段突きでもするわけ?」

「え、なんでわかったの?」

 うわーい、こいつ漫画脳だったこと忘れてた―。なんちゅー無責任。

 しっかし、なんだ、この空間。アリアは暗い顔で悩み続けてるし、キンジはいつもどうり怖い顔してるし、一年生共は間宮の周りに群がってるし、ジャンヌは頭を抱えて悩んでるし、俺とアドルフぁはバカ見て得な会話続けてるし、理子は暗い顔してる。うーん、カオス。




 匂宮雑技団の一員がとうとう出てきました。とんでもねえイジメっ子です。ヒルダに会えば海に沈めるぐらいには問題児です。なんで、退学にならないのかについては、のちのち語ると思います。

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