「もっきゅもっきゅ」
「四季、一体どうやったらそんな咀嚼音が出てくるんだ」
「オマエ、実は人類じゃないんじゃねえか?」
「うるせえ、ガサツバカ」
「オマエ、俺に対する扱いひどくないか?」
お昼、食堂で俺とキンジと
「つーか、何があったら高天原先生にお弁当だなんて作ってくるんだよ」
「うっせーバカ。こっちはもっとジャンクでファーストなもん食いたいんだ」
なんか、高天原先生があの日からお弁当作ってきた。野菜とか健康食品のオンパレードの。あと、なんか目がやばい。何かと膝の上に乗るよう促してくるし。なんなんだろうか、あの先生は。てか、これマスコミにバレたら結構問題なんじゃね? えこ贔屓は日常茶飯事、というか、人に付け入る才能として評価の対象ですらある学校だけど、お弁当はマズイだろ。
「まあ、これから大変になるんだけどさ」
「……」
キンジは結局戦うのかな。まあ、戦わないだろ。だから、代役を立てておいた。あいつなら、なんとか勝負には持ち込める。勝負にならなくとも、アドルファの足を引っ張らず、理子とも連携が取れるアイツを代役に立てた。あとは、俺のすべきことをするだけだ。
「ぎゃははは、結局一人しか集まんなかったのかよ。友達すくねーな、理子」
人口浮遊島のとある廃ビルで、トランプは理子を挑発する。アドルファもいるが、挑発が効くような性格ではないので、しない。
「イ・ウーの友達はお前の名前を聞いただけで、電話を切ったよ。トランプ、嫌われすぎじゃーん」
理子も負けじと挑発で応酬するが、殴られた。トランプは間髪入れず、挑発に乗る形で腹を躊躇なく殴った。着ていた防弾チョッキがメキメキと変な音を立てて一発で壊れたが、一発なら耐えられた。
「で、アドルファと理子、あと一人はおにーさん、つーか遠山侍の希望くんかい?」
すこし、残念そうな声で来ていたキンジに話しかけるトランプ。理子が集めたのは一人と言っていたが、この場にいる人数はそれなりに居た。まず遠山キンジだが、戦いたくないといったから数に入れたくなかった。あとは間宮あかりを始めとしたいつもの一年生たちだが、そもそも戦力として数えていないのでノーカン。辛うじて、この前すれ違わなかった高千穂麗はなんとか戦えそうではあるが、もってコンマ2秒ぐらいか。だから、しかたなく、いやいや、本当はタイマンで戦いたい、遠山キンジを理子のお仲間として数えたのだが……。
「いいえ、違うわ」
「ああ、そうかオマエか。夾竹桃ぉ」
この場のトランプを除いた全員が驚いている。そんなことお構いなしに、遅刻気味に夾竹桃は歩み寄る。一年生は後退り、理子は混乱した頭を整理しようとする。キンジは夾竹桃の左手を見て危険だと察した。
「なるほどな。ホームズの曾孫、なかなかいい友達もったじゃねえか」
「やめなよ、アリア」
時を同じくして、武偵高の強襲科棟。いつもどうりに、死ねと死ねの罵声が飛び交う中で、完全武装したアリアといつもの服装の四季が張り詰めた空気の中、向かい合っていた。
「どいて、四季。私はトランプを逮捕しなきゃならない」
「お母さんを助けたいんだろ?」
あの後、四季はキンジからすべてを聞いた。理子のこと、イ・ウーのこと、神崎かなえのことを。イ・ウーについてはもう一年生どもに漏らしたら殺すといってある程度は教えた。正直、裏の世界の危険度に比べれば、せいぜい財力の世界ぐらいでしかない。あるいは、ER3システムか。殺し名、呪い名のすべての名前を知るよりも重い程度だ。へんに調べられて、変な勘違いをされても困る。だから、教えた。
「どいて……!」
「いったら駄目だ」
今回は逮捕できるかもしれない。でも、逮捕できたからどうなんだ? 脱獄の可能性だって十分すぎるほどある。いや、それ以上にパトラ、ヴラドとかいう連中も逮捕できる確証はない。だから、止めなきゃいけない。
「私は、犯罪者を全員捕まえて、ママを助ける!」
「助けたいんだったら、あいつの条件飲めよ!」
わかっている。わかっているんだ。アリアが何を言いたいのかぐらい、わかっているんだ。間違っているのはこっちだってことぐらい、わかっているんだ。アリアは正しい。犯罪者の条件を飲むのはあくまでも司法取引の時だけ。あくまでもこちらが主導権を握らなければいけない。わかっているんだ。
「私は、折れるわけにはいかない!」
「助けたいんだったら折れろよ!」
助けたい、だけどここで条件を飲んでしまったら、誇らしく救う事ができない。だから、おかしいってわかっていながら、助けに行く。わかってるんだよ、それっくらい。だから、止める。なんとしてでも。間違えたままでも、親友を助けるために。なんとしてでも止める!
「そこを退きなさい! 四季!!」
「やめろつってんだよ! アリア!!」
第0試合『
場所、東京武偵高校強襲科棟二階廊下
理子を含めて3人集まったので、さっさと決闘を始めたトランプ。今回はあくまでも、怪盗トランプとして、この場にいる。殺しはなしと、己に枷を敷いた状態といえば、なかなかかっこいいじゃないか。と思うトランプではあるが、同時に違うと否定する。人は本来、人を殺してはいけないのだと。人は人を殺さなくて当たり前なのだと。殺し屋らしからぬと、自嘲するがそれで殺し屋をやめるのかといえばそうでもない。だからどうしたと斬り伏せる。矛盾だろうがなんだろうが知った事か。
そして、廃ビルの一階中央廊下階段付近で立ち止まる。理由は明快、階段の数段上から突きの構えをしたアドルファが一人で居たからだ。
「んでんで、まずはオマエ一人か。アドルファ!」
「連携なんてまっぴらゴメンだ。トランプ!」
第一試合『
場所、人口浮遊島のとある廃ビル一階中央廊下