緋弾のアリア -強襲科の狂戦士-   作:南瓜お化け

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 定期考査で死にかけていますが、現実逃避しに来ました。


第26狂 モトコンポ

 ついに届いた。一年のころから探していてついに完全な状態で見つけたものがとうとう寮に届いた。正直、現在していたのが奇跡だったので、値は張ったがしかたない。

 ふっふっふと悦に浸っていると、ぴるぴると電話が鳴った。キンジからだ。……どうしよう? 無視したら殺されちゃうよね?

「もしもし? 昨日はお楽しみでしたね☆」

「うるせえ、今から寝るところなんだよ」

 夜通しかよ。死ねばいいのに。いや、この奥手が手を出したとは思えない。んー? どっちだろう……。

「……ありがとな」

「は?」

「死ね」

 切りやがった。ええ、なんなの? 死ねは挨拶だからいいけど、ありがとうって気色わるっ!? うん、多分、体を気遣ったとかの感謝だろうけど、そこまで殊勝なやつかねあいつ。

 そんなことよりもこれだよ! これ!

「これを運ばせるためによばれたんすか」

「そーだよー」

 やっぱ、火野は力があって便利だ。そこそこ重いから、箱から出さずに持っていくには台車か担ぐしかなかったから、楽でいいや。

「なんなんですか、これ……」

「なーいしょ」

 とりあえず、車輌科までもっていかせてから教えてやろう。ふっふっふ、驚くぞー。まさかここまで完璧なものが現存しているだなんて。なにせ50万以降はもう落とすことに必死で、金に糸目つけなくなったからな。

 

 

「西条君、例のものが届いたって本当なのだ!?」

「本当なのだ!」

「約束どうり、ロハで改造してやっから改造させてくれ!」

「死ね」

 お前俺に対する対応ひどくね!? と武藤が叫んでいるけど、知るか。俺が勉強見てやったのに、50点切りやがって。小テストだったから許してやるけど、罪悪感ぐらい抱けや。

 でもたしかに、これはこのままじゃ武偵としては使い物にはならない。俺だって知識と技術は片手間に身に着けたけど、専門家に魔改造してもらったほうがいい。トンでも機能を平賀に、平賀製に標準装備の構造上の穴を武藤に埋めさせる。この二人は幻の機体に触れられる。

「なんなんですか、この段ボールに入ってるの……。HONDA……?」

 火野は本当に趣味の世界に疎いなー。キンジに言ったら武偵向きだって言ってたから、武偵はみんな知っているものだと思ってたけど、やっぱ珍しいんだな。

「ホンダ・モトコンポ。それも未開封の超貴重な奴」

「はい?」

「モトコンポ」

 HONDA・モトコンポはシティーつー車にも乗っけられる小型バイクとして発売されたもので、販売価格8万円だったのだがCMがシティーのおまけみたいなコンセプトだったので、売れなかった。そして発売終了したのだが、発売終了後に人気が出た。馬力が弱いだのの欠点を改造で補うのが主流だ。そして何よりも車に乗っけられるほど小型であり小回りが利くという武偵にお誂えたようなものなのだー。

「改造するなら、未開封じゃなくても……」

「ばっかだなー、そこはロマンだよ」

「そうなのだ。ライカちゃんはわかってないのだ」

「そうだぜ、わかってねえな」

 ロマンを理解できない火野がビミョーな顔をしているが、未開封に理屈はいらない。ロマンがあればいいのだ。

「いくらしたんすか?」

「50万は越えた」

「はあ!? 中古車買えばいいじゃないっすか!」

「ロマンつってんだろうが。この赤点量産馬鹿ライカ」

「だからなんで罵倒してくるんですか!」

 信じられない生き物を見るような目で見てくるが、そこは理屈じゃなくてロマンなんだって。ロマンを追い求めなかったら平賀さんなんかに改造頼まねえよ。俺の形見じゃないけどお気に入りのナイフの整備を頼んだら愉快なドリルにしやがって……、かっこよかったからいいけど。

 

 

「なんか、四季先輩と平賀先輩みたいな体格の人が乗るとおもちゃのバイクみたいですね」

「おい絞めるぞ」

 モトコンポの形を見るなりこれだ。背が大きいからってなんだその物言いは、武偵高ちっちゃいもの倶楽部を敵に回すと怖いぞ。なんでこの高校背が小さいやつ多いんだろうね。

「どんな改造がお好みなのだ?」

「とりあえず、高速は走れるようにして。あとカバー? なんか周りは防弾性のカーボンにして」

「わかったのだ! 武偵基本改造ですのだ!」

 やっぱ最初はオーソドックスにね。白バイっぽくすることもできるけど、そこは漫画のファンでの話だ。見たことないし、結構目立つからなー。

「いや、ちょっと待ってください。その改造だとほとんど全部とっかえるじゃないですか!?」

「「「ロマン!」」」

 ぷるぷると体を震わせるライカだけど、けち臭いなー。キンジと仕事してると忙しすぎて金使う暇もないから、こうやって税金対策しておかないといけないし。あ、タイヤも防弾タイヤに変えなきゃ。

「やっほー、シキシキー」

「あ、理子だー。かわいいラッタッタだね……。あぶねえ!?」

 なんなの!? 理子が白いラッタッタに乗ってきたから誉めてやったら引いてきたんだけど! あと平賀さんと武藤にスパナで殴られたんだけど!? 痛いんですけど!

「ベスパをラッタッタと呼ぶ奴は私の敵だ!」

 低ッ! 敵の基準低いぞ! なんだよ、ベスパかなんか知らないけど、ラッタッタの仲間でしょ?

「スクーターの一種なのだ……。正直引くのだー」

 すくーたーってなに? へんな形のラッタッタのことか? おばさんとか親戚みんな免許なんて持ってなかったから、正直ロマンのある車ぐらいしか知らないし……。F-1を痛車って言ったら白い目で見られたからもしかしてそれっくらい変なこと言ったのかな?

「ああ、思い出した。京都の請負人さんがそれもってた。白色で一緒だ―」

「へえ、りこりんあってみたーい」

 理子はラッタッタもといベスパから降りて、目ざとく無傷のモトコンポを撫でまわしてた。

「こんな骨董品、よく手に入ったね。りこりんびくりだぁ」

「50万したから傷つけるなよ!」

 へえ、思ったより安い。なんていいやがる。さすがに50万は高いだろ! 元値の5倍以上なんだからな。未改造社もほしいから、復刻版出してくれないかな、ホンダ。

「しきしきー、キーくん知らない? 朝から見てないんだけど」

 りこりんがおーだ。なんて言って指で鬼の角みたいなのを頭からはしている。さて、なんて言おうか。女のところって言ったら、理子のことだから明日には学園中に広まる。そして修羅場だ。

「実家に帰って敬老してる」

「えっらーい! うんうん、親戚は大切だよね」

 うん、嘘はついていない。さあ、変に感づかれる前にモトコンポの改造をちゃっちゃとすませよう。なんか食いたくなくなったらライカを走らせればいいし、今日は趣味に没頭するぜ!

「あ、じゃあ、私はこれで……」

「なに帰ろうとしてんだよ。お前にはパシリっていう重大任務があるんだから」

「でも、麒麟との約束が……」

「あ゛?」

「なんでもありません」

 なんてやつだ、先輩の命令に逆らおうとするだなんて……。そりゃ、めちゃくちゃなら逆らってもいいけどこんなの武偵高じゃ当たり前の命令なんだぞ。

「先輩は、どんな命令されてきたんすか……」

「キンジの命令に逆らったら殺されるし、現在進行形で戦姉をお母さんっていうように命令されてる」

 はんっ、て、おいライカ。鼻で笑うことじゃないだろ。冗談じゃなくて、本当に殺されるし、命令されてるんだぞ。後者は逆らってるけど反抗期扱いで全然めげてくれないし。

 

 

「できたー!」

「できたのだ!」

「世界一のモトコンポだぜ、これ!」

 出来上がった改造モトコンポは見た目こそ大きな変化はないものの、その実、中身は全く別物であった。カーボン素材の軽量防弾カバーで包まれ、速力は高速道路を難なく走れるほど、タイヤも防弾性であり、座席のクッション性も上がっている。サスペンションは内部に組み込まれているがオフロードでも問題なく走れるほどの性能、それでいてモトコンポ本来の強みである収納性は全く失われていない。なんだこのバケモノ車。

 それでいて平賀製にありがちな変な不調は武藤によって調整されている。なんだこのバケモノ車。

「これ、そのまま売れるぜ?」

「会社起こしちゃう?」

 さあ、試乗だ! なに、公道がどうとか裏でいくらでも平賀さんが融通を聞かせれる。

 乗り心地はまずまずだったが、加速性は悪かった。そりゃそうだ、結構無茶な改造してるし、外面が四角じゃ空気抵抗で速度を出し過ぎると危なくなる。それでも事件では十分すぎる性能を発揮してくれるだろうな。

「あの……先輩、出来上がったのでしたら自分はこれで……」

「おう、焼きそばパン買ってこい」

「……はい」

 

 

 

「お姉さまはどうしてあんな先輩を戦兄に指名したのですの?」

「どうしてって、そりゃあすごい先輩だからだよ」

 ライカは焼きそばパンを購買で買い終わり、車輌科の倉庫に向かう途中で、麒麟に聞かれた。確かに、四季先輩は横暴で、長いものに巻かれて、戦妹を人とも思わないひどい先輩だが、不思議とやめてやるとは思わなかった。

「先輩はナイフ術だけじゃないんだぜ? 戦術とか勉強、いろんなもんがスゲーんだよ。教え得方もナイフ以外はうまいし、最近CQCもやるようになってさ。ありゃ反則だよ」

「いえ、そういうわけではなくて、どうして遠山先輩や一石先輩のように徒手空拳が優れた先輩がいるでしょうに……」

「ありゃ私のと別もんだ」

 そもそも二人とも後輩にかまっているほど時間があるわけでもないだろうし。

「じゃあさ、麒麟だって私なんかよりもずっと色っぽい人たちがいる中で、私を戦姉に指名したんだろ?」

「う、そ、それはそれですわ!」

 そーいうこった。と快活に笑って、この話は終わり、と締めくくるライカに不満げながらも追及はしない麒麟。

 

「おう、ライカ、島の妹、ラーメン食いに行くぞ」

「え、マジっすか!?」

「女子はそんなの食べませんの! いたたたたっ!?」

 ねえ、こいつなに先輩に逆らってんの? 諜報科でも代用の効く金食い虫のCVRのくせに。

「先輩、最近覚えた関節技の練習に麒麟を使うのやめてください!」

「奴隷の一年、鬼の二年、閻魔の三年、家畜のインターンだ。家畜のくせに口答えしてんじゃねえよ」

「初めて聞きましたよ! そんなの! 家畜ってなんですか!?」

 そりゃそうだ、たったいま俺が作ったんだから。まあ、実際インターンはぬるいらしい。らしいというのは、俺自身一般中学からきているので、インターンの経験が一切ないのだ。まあ、だから最初は大変だった。なにしろガチガチの上下関係とうっすらと漂う派閥関係があったもんだから、きな臭くてキナ臭くて。

 派閥かあ、懐かしいなあ。中学の時は与謝野晶子派か種田山頭火派で盛り上がってたなあ。こっちの派閥は下らなかったけど、中学校の派閥は面白かったなあ。この学校でこの話題したら種田山頭火って誰って言われて、びっくりしたなあ。

「先輩はモトコンポでいかれるんですか?」

「え? 武藤の車だけど?」

「……」

 すっげー複雑そうな顔で俺のことをみてるんですけど、このノッポ。明日申請だすのだから、今日乗ったら警察に捕まっちゃうっつーの。

 




 さすがに50万はしないと思います。未使用どころか未開封なんてまだあるとはとても思えませんが。
 大学の物理は不思議な呪文でしかありません。
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