結構主人公で悩んだんですよ。最初は皐月様だったんですが扱いきれず諦め、次に子荻ちゃんはキンジを扱いこなして無双する光景しか思い浮かばないからボツ。
そしてこのザマである。
遠山キンジは武偵である。とはこの間説明したが、しかし、彼の凄まじさは語り尽くせないほどある。例えば、
昔はこんな芸当はできなかったらしいが、俺みたいな問題児と一緒に行動するうちに身につけたらしい。だから、昔はHSSのキンジ>狂化した俺>ノーマルキンジだったのが、いまやHSSのキンジ>ノーマルキンジ>狂化した俺になってしまっている。
それでいて、自己評価が低く、自分にないものを持っているものを高く評価するからややこしくなってくる。
だいたい、兄が水難事故で死んだのに、多分生きてるとか言い出すあたり、頭のネジが吹っ飛んでいる。もし生きていたら鼻でスパゲッティ食ってやる。
そして、このキンジと強襲科で双璧をなすのが、神崎・H・アリア。去年の三学期、つまりは俺が休学していた頃に転校してきたイギリス武偵局の虎の子。
そんな二人が、今日決闘するとあって、学校は浮ついていた。
「そーいや、キンジと神崎って、あったことないんだっけ?」
と、朝ごはんを学食で済ませながらぼやいた。横には車輌科の武藤剛気、前には強襲科の不知火亮、そして遠山キンジだ。
「そういえばそうだったね。昨日が初めてじゃないかな、遠山くん」
「ん? そうなのか、俺はてっきりSランク同士仲良くドンパチしているのかと思ってたぜ」
あー、反応で性格がわかるなー。不知火は人当たりのいい笑顔を向けながら聞くけど、武藤は飯食いながら喋ってるよ、キタネエ。
キンジは俺のような問題児が、任務に出る際には必ず同行しなければならないので、学校にいることそのものが少ないのだ。そして、アリアも人気者で、彼女個人への依頼が後を絶たない。それによって、奇跡的なまでに、この二人は会ったことがないのだ。
「……そうだな、初めましてが『決闘しなさい!』なのには驚いたが……」
はあ、と億劫そうにため息をつくキンジだが、じゃあ、断るって言えよ。とは、口が裂けても言えない。いったらこっちが殺されかねない。
「でもよー、一年坊主たちには見せないほうがいいんじゃねえの? 俺たちゃお前らの化け物っぷりを知ってるからいいけど、一年坊主が見たらやる気なくすぜ?」
「うん、先生方も遠山くんと神崎さんの決闘を、一年生に見せるべきかどうかで会議してるよ」
「かぁー! Sランク武偵様はスゲェーよな!」
がっくりと項垂れるキンジ。それもそうだろう、なんかこいつあの超人曲芸を身につけるたびに、やっちまったって顔するし、人間離れするのがそんなに嫌なんだろう。理子あたりは若者の人間離れ(笑)とか言っていたし。
「くふふふ、しきしきー、決闘みなくていーのー?」
「……だって、途中からキンジがやる気なくなって、防戦一方になるの見えきってんじゃん」
と、春休みなのにやっている購買で、授業で使う銃弾を補充しに行ったら、峰理子にあった。
こいつとは、どこか親近感が湧いてくる。限りなく同じ座標に近い平行線とでも言うべき、親近感だろうか?
「ねえねえ、りこりん、しきしきのご両親の話聞きたいなー。一年生の二学期の頃話してくれるって約束したよねー」
……覚えていやがったか。さすがは情報屋、情報を得る情報には抜かりない。正直、反故してもいいんだが、武偵は信用がモノを言う。ここで話しても俺の弱点には成り得ない。だって、両親しんでるし、親戚のみんなだって、俺の十倍じゃ足りないほどつよいんだし。
「分かったよ。だけど、他のやつに話すときには、俺にも言えよ?」
「あいやいさー」
まあ、俺の過去を語るにあたって、一番重要なのは、俺は両親の記憶が一切ないってことだ。生まれてすぐに母親の上司ともゆうべき人の賢明な判断で、孤児院に入れられて、オバサンに引き取られるまでの十年間を孤児院で過ごした。孤児院での生活はよく覚えていない。喧嘩もすれば、一緒に本を読んだ奴もいた。みんな顔は覚えていないけど。
まあ、だから親戚についても軽く言っておくよ。まず、オバサンはニット帽を一年中かぶっていて、義手をつけていて、ハサミ振り回しながら、BLについて暑く語ってくる人。おい、引くな、もっとやばい二人が待ち構えてるんだから。で、オジサンはチェーンソー振り回して手とか足とか収集する自称元死神。で、イトコのネーチャンは、鉄扇を片手に俺に抱きついてくる変態。え? 最初の人が一番やばいって?
まあ、この人達と関わるのが一番多かったかな。みんな俺に生き残るすべを教えてくれたんだよ。戦うすべは、まーったくだったけど。
で、この人達は父さんの親戚なの。血はつながってないけど親戚なんだって。昔は人バンバン殺す家柄だったらしいけど、赤い人に禁止されていらい、殺せるようにするために、赤色襲撃作戦を打ち立ててはボロクソに負けて帰ってくるんだよ。
ああ、そうそう、その赤い人が俺のことをオバサンに教えたらしくって、教えたと言っても、父さんの子供がいるかも程度で、それでもオバサンは必死になって俺を探しだしてくれたんだ。
で、オバサンが、たまにはオジサンもだけど、やっぱりオバサンがよく俺に父さんのことを話してくれたよ。気まぐれで、襲撃作戦にも参加しなくって、それでも家族のピンチにはひょっこり顔出して助けてくれる。そんな人だったらしい。
それから俺は、自分の母親について気になりだした。だから、俺は一年生の三学期まるまる使って、自分のルーツを探ることにしたんだ。
まず、母さん、ひいては父さんをよく知る人物が必要になった。で、頼ったのがさっき言った赤い人。
赤い人はシニカルに笑って、もっといい人がいるっていって、最近生きることを始めたような人にあったんだ。その人は自分のことを請負人といっていたよ。赤い人もだけど。
その人も母さんについては、ほとんど知らなかったけど、いろんな紙媒体を渡してくれたよ。そのほとんどが、---いや、全部が全部、戦闘に関するものだった。そして驚いたよ、母さんの享年が16歳、つまりは高校1年生だってことに。請負人さん曰く、首を切られて死んだらしい。
母さんの人物像? 散々だったよ。多分っていうか、絶対に君のことを忘れていたって断言されたもん。つーか、父さんに至っては、俺の存在すら知らなかったらしい。なんやかんやで父さんは責任感が強かったらしいから、もし俺のことを知っていたら絶対に自分の手で育てていたってみんな言ってたよ。
でも母さんは違った。戦うことしか---いや、戦うことすら知らなくて、他人だけじゃなくて自分すらも、とりあえずズタズタにすればいい人っていうのが一番なのかな? だから奇跡だって言っていたよ。母さんなら産んだ直後に、それどころか腹が膨らんだ時点でズタズタにしてもおかしくなかったらしいから。
---腹が膨れない妊娠って知ってるか? ああ、知ってる。なら良かった。母さんはそれだったかもしれないって、請負人さんは言っていたよ。だから、俺は生まれてこれて、母さんの上司の計らいで孤児院に避難させてもらえた。
実際運が良かったんだろうな。実際に、たった一度の行為で生まれてきただけでも運はいいのに、……え? 親を恨んでいないかって? そんなわけねーじゃん、もし出会えたら涙を流して産んでくれてありがとう、っていうし、尊敬さえしているよ。
ああ、そうそう、父さん! 父さんは俺が思っている以上にいい死に方をしたよ。老衰、二十代で老衰したらしい。思わず俺は笑ったね。いや、これホントなんだって。
まあ、いろいろ話は飛んだけど、三学期をまるまる使って得られたのはこれぐらい。父さんも母さんも写真がほとんどなくって、でも少ししかない写真を見た時は、泣いたなー。写真に向かってさ、ありがとうございます、ありがとうございますって言ったよ。無意識のうちにね。
いろいろ収穫もあったよ。母さんと父さんについてしれたこともだけど、このナイフもその一つだったよ。一つっつーか無数になんだけど。この重くて派手な二本のナイフが母さんの形見。それ以外はオバサンが俺を引き取った時からありとあらゆるコネを使って集めた、父さんの使っていたナイフ。
不思議と全部手にしっくりと来るんだよ。制服を、自分でチクチクぬってナイフを収納できるようにしていたら、あの二人もこんなことしていたのかなーって、思う時があるんだよ。
「これが俺が知り得た全部。写真見る? 俺は母さんに何だけど、爪の形とかは父さんだったりするんだよ。口元もだけど」
理子は唖然とした顔で、俺を見ている。まさか、ここまでベラベラしゃべるとは思わなかったんだろう。
「えーっと、ひとつ聞いていい?」
「ん? なんだよ、改まって」
「なんでそんなことを喋れるの?」
質問の意味がわからない。しゃべれと言われたから喋っただけなのに。
「普通は、そんな事だれにも喋りたくないはずだ」
「あいにく、普通の生活なんてしたことないんで」
「お前は……、狂っている」
「知ってる」
だいぶ、言葉を選んでくれたようだけど、選びきれずに、そのまんま伝える理子。どことなく男口調になっているのは、なぜなんだろうか。
「両親を、恨んでないといったな」
「ああ、尊敬すらしている」
理子は、何かを言おうとして、でも思いとどまって、それでも言おうとして、結局口を開いた。
「お前は、誰にも望まれないで、生を受けた」
「ああ、知ってる」
「普通は、私にしたって、私の知る限りは、両親が早死したり、いろいろ事情はあるにせよ……。生まれた時点では、誰かに望まれて生まれてくるものだ」
「そうかもな」
「だが、お前は……、お前だって両親に愛されたかったんじゃないのか」
「ああ、愛されたかった」
「望まれて、生まれてきたかったはずだ」
「ああ、望まれたかった」
「ならなぜ! 親を恨まない! 親を憎まない! お前には誰よりもその資格があるはずだ!」
「……そんなこと言われても」
理子が何に怒っているのかわからない。涙こそ流さないものの、怒りで今にも泣きそうになっている。同情でもしてくれているのだろうか。
「……ごめん。感情的になった」
淡々とした理子の声。いつものふざけた口調はそこになかった。
「約束する。この話は私の胸の中に収めておくよ」
「いや、そこまでしなくても……」
正直、今度キンジにでも親の自慢話でもしようと思っていたのに。これじゃあ、喋れる雰囲気じゃないじゃないか。
「お前にはわからないだろうが、これはそこまで、いや、これでも足りない話なんだよ」
「は? 人とちょっと生まれた理由が違うだけだろ」
「そのちょっとが、大きな問題なんだよ」
よくわからんが、まあ、そうなんだろう。
「ほんじゃ、まあ、りこりんザギンでシースー食べてくるねー!」
「とかいって、かっぱ巻きだけとかやめろよー」
いつもの理子にもどって、どこかへと駆けていく。
まあ、この話は、理子の忠告に従って、誰かに話すのはやめておこう。なんか、キンジに話したら殴られそうだし。
紅梅楽器
性別 女
学年 二年
学科 救護科
二つ名 ナシ
武偵ランク B
黒髪で髪型をよく変える。身長体重共に平均的であり、健康優良児。
利権を守るのが好きで、性格が偏った人間に好かれ、常人に嫌われる。
はい、もう両親の名前は語るまでもありませんね。一応鉄扇振り回す変態は、京都あたりで出します。
もうね、キンちゃん様は常にキンちゃん様でいいと思うんだ。
あと愚痴なんですが、緋弾のアリアAAの時系列がわかりにくいですよね。
序盤の時系列でも あかりとアリアの戦姉妹契約→キンジとアリアの出会い(及び4月の始業式)ということなんですよね。武偵高だからと納得していますが。