緋弾のアリア -強襲科の狂戦士-   作:南瓜お化け

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 次話のためのつなぎのようなものです。


第30狂 依頼

「パトラだろ。つーかメール来た」

「殺す!」

 返り討ちにあった。この間僅か2秒。強すぎるだろこいつ。なんなの? いったい何者なの?

 

 武偵校に戻るとすぐに絵札を探した。教室にいるか食堂にいるかの二択なのですぐに食堂で見つかった。友達に囲まれて……。潤応力あり過ぎない?

 絵札によるとパトラも依頼があってついでに誘拐したらしい。止めろよ、と思うが絵札のところにも『手を出すな』という依頼が来ていたらしい。代金は金の延べ棒。何もしないだけで金をもらえるのだったらそりゃ動かない。しかも絵札にとって俺らは遊び相手であっても仲間ではない。

「パトラはつえーぞ。この前遊び半分でバトッた公安0課の連中よりかは面白かったぜ」

「なに公安と戦ってんだ」

「ん? 1式とかが出張ってくるかなーと思って」

 世にも恐ろしい公安の皆様方も、殺し名序列第一位『匂宮雑技団』、その中でも『伝説の殺し屋』として悪名を轟かしている『匂宮出夢』の後継機(ネクストモデル)『匂宮絵札』にとっては、遊び相手をおびき寄せるエサ程度なのか。いや、いきなり表れて、一方的にボコったのだろう。じゃなきゃ一方的にあの公安がやられるとは考えたくない。

「まあ、今は関係ない。パトラについちゃ、ジャンヌとかアドルファよりも私に聞いたのは正解だ」

 NARUTOって知ってる? と言われて、ラーメンのほうなのか漫画のほうなのかときいたら、漫画のほうだった。なんとも所帯じみた殺し屋である。でも人類最強のブログが駄々甘の漫画レビューだったし、強い人って漫画好きなのかな?

「我愛羅だ。パトラは我愛羅のパチモンだ」

 説明はそれで終わって、絵札は友達の輪の中に戻っていった。先輩特権で連れ戻すこともできるが、それでさらに情報を吐くとも思えない。下手をすれば敵が一人増えるだけだ。

 

 

「というわけでパトラについて教えてよ」

 というわけで、ジャンヌ、理子、アドルファを呼んでみた。こいつらも最弱(らしい)とはいえイ・ウーとかいう誘拐組織の構成員なんだから知ってるだろ。

「なぜ私たちよりもトランプが先なんだ……」

「トランプよりも信頼度が低いって……。キー君、しきしき、そりゃないよ……」

「エジプト人だ」

 ジャンヌと理子は実力だけではなく信頼も絵札以下と勝手に思い込んでナーバスになった。アドルファはそんなこと気にせず、一切使えない情報を自信満々に意外とある胸を張っていった。

「パトラはいったいどんな奴なんだ? 少しだが会話したが……」

 キンジがアドルファから目線をそらして、でもジャンヌと理子を真正面から見るのは恥ずかしいからか、変な方向を向いて話した。このむっつりスケベめ。いくら体質だからってここまで徹底的に女性を意識しないよう意識したら、逆効果だろ。

 そしてキンジの問いに、ジャンヌと理子は苦い顔をする。そんなにやばいやつなのか、それとも絵札と同じように先手を打たれたか……。数秒の、しかし一刻を争うこのときにおいては長すぎる時間をかけて、ジャンヌが口を開いた。

「パトラは――」

 ジャンヌは最初、パトラについて当たり障りのないことを話した。クレオパトラの子孫であることや、イ・ウーでも厄介者扱いされていたことなどだ。もともと単独でNo.2であったことから相当な実力の持ち主であることが分かったのはありがたかったけど。

「だがそこにトランプが加入し、トランプがパトラには勝ててもヴラドには勝てない図式が成り立った」

 これでNo.2が3人になった。それからは毎日この三人のうち二人は喧嘩をし、誰かが止めることになった。だれか一人でも抜けてしまえば止める人間がおらず、教授自ら止めなければならなくなるため、退学にすることができなかった。

「しばらくはこの状態が続いた。そしてあの『策士』が現れた後も変わらなかったんだ」

 ただし、とジャンヌはつづけた。どうやらパトラは喧嘩については消極的で、同格、ないし格上の存在によって誇大妄想の気は鳴りを潜めたらしい。目的は変わらず『世界征服』だがな、とため息をついてジャンヌは話し終えた。

「世界征服って……」

「それができるところなんだよ。いや、最悪……最高でNo.3の三人とNo.2の策士で世界征服だけなら可能だ」

 たった四人で世界征服……、しかし匂宮絵札の強さを知っている身からすれば、『表の世界』だけならそれも可能かもしれないとさえ思えてしまう。

 もっともそれはあの最強を考慮に入れなかったら、の話だが。あの最強が関わったら不可能が可能に、加納が不可能になりかねない。下手をすると物理的に物理法億をへし折りかねない。そんなでたらめな存在を考慮に入れてたら何もできなくなってしまう。

 

 

 

「やあ、綺麗な髪の策士さん。最期にチェスでもどうだい?」

「そのためだけに呼んだのですか?」

 そういいつつ教授の前に座る策士。ここはイ・ウーの教授の個室だ。ただし、それはもう少しで終わる。イ・ウーとともに終わる。

「君の策は嫌いだったが、君とのチェスは楽しかったよ」

「a-7のポーンをa-6へ」

 言葉を無視されたのに少し顔色を悪くし、盤面を想像し次の一手を打つ。

「すこしは愛想やよいしょを」

「……ワタシモタノシカッタデスヨ」

 ものすごく棒読みで期待していた返事が聞けて、ますます機嫌を悪くする教授。チェスで『条理予知』を使うほど子供じみてはいないが、もしも使ったところで互角がせいぜいだろう。

「君はこの後どうするつもりなんだい?」

 『条理予知』ですでに分かってはいたが、これは本人の口からききたかった。この人間離れしただけのただの女性が、この超人組織が崩壊したあとどうするのかを聞くべきだと、推理した。

「無粋な人ですね」

「無粋に踏み込むのが探偵だからね。いや、もちろん礼節は持ち合わせているがね」

 コツコツとチェスはよどみなく進んでいく中で、いいえ、違います。と首を振る策士。

「そんなことを聞くのに、推理なんてすることが無粋と言ったのです。普通に聞けばいいだけなのに」

 なるほど。覚えておこう、といってチェスの駒を進める教授に、実行してください、と言って教科書に書かれたように万全の手を打ってくる策士。そう、今の一手への対策ではなく、二手、三手、つまるところ未来への一手として駒を打ってくる。これそのものはチェスに限らずボードゲームでは普通の事なのだが、その精度が異常だ。

 

「教師でもやろうかと思っています」

 盤面を見たまま何気ない日常会話のように、ともすれば聞き流してしまいそうなほど自然に質問に答える隻腕の策士の笑みに、少し驚く名探偵。

「そうか……」

 それはよかった。チェスは続く。続くごとに敗戦の色は濃くなっていくが、それでも負けと認めるのは嫌なので続ける。




 出てくるかもしれないという理由だけで殺し屋に襲われる公安の皆さんですが、そもそも気体操作なんていう対生命に対してチート能力を持った奴に勝てっていうのが無茶苦茶だと思うんですよ。
 絵札の行った戦い方ですが、姿を現す前に大規模爆破→酸素濃度を下げる→ボコる、です。勝てるわけねえ!
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