オバサンに引き取られていらい、俺は殺気を操って攻撃を避ける技術を叩きこまれた。オバサンは、俺にあまり戦ってほしくはなかったように思う。きっとそれは、父さんの死因にも関わってくることだし、俺は無理に教えてもらうこともなんとなく気が引けた。感謝はしている、結果的にオバサンの思いを裏切ってしまったことに罪悪感も感じている。
だけど、馬鹿な俺にはこれぐらいしか、武偵という職業しか、父と母への償いが思いつかなかった。
「ほれほれ、お前はわかりやすいな~」
「わッ、かりやすいのは! あんただァ!!」
やはり馬鹿だった。わざと作ったスキに入り込んできやがった。殴ろうとしているけど、かわいそうなので、ナイフのグリップで殴った。
「俺は、キンジじゃねえから、本当は弟子なんか取りたかねえし、教えてやる義理もねえが、教えてやるよ」
「義理はあるでしょう!? 戦妹っていう義理が!」
そもそも俺は、戦闘に対するスタンスやスタイル、モチベーションでは、スタンダードな方だ。多分アリアもスタンダードな方だろう。対してキンジは、例外だらけの男だ。弟子に関しては、遠山家の伝統芸能以外は来る者拒まずで教えるし、スタンスやスタイルはともかくとして(それでも十分におかしいが)、モチベーションは常軌を逸している。
最悪の代名詞たる一賊に所属する俺には言われたかないだろうが、正直言って、あれと一緒にされるのだけは、侮辱としか思えない。
だけど、その恥を忍んで、言ってやる。主に火野を困らせるために。
「もうちょい、強さを隠せよ。そんな中途半端な強さをアピールしていたら、だれも手加減してくれねえぞ」
「あんたに言われたかねえよ!」
さっきから火野は、徒手空拳で挑んできているが……、ふぅん。なるほど、蘭豹が可愛がるわけだ。
「ナイフは使わねえのかよ? 使ってもいいんだぜ」
「貴方にナイフを使ったら、勝ち目がないじゃないですか」
正解。というよりも、こいつは徒手空拳のほうが強いんだろう。状況判断や、戦力を見極める力もだいぶいい。こいつは確実に、着実に伸びていくタイプだ。だからこその俺だったのかもしれない。キンジのは、こいつの強さの質にあっていないし、とんでも技術ばっかだから、真っ当な武偵を育てるのには向いていない。
だけど、先生さんよぉ。それは俺だっておんなじなんだよ。しかも、たちの悪いことに、教えられるようなもんじゃねえんだ、このナイフ術は。
「いやー、よく頑張った頑張った。俺認めちゃったよ」
「なんで息切れ一つしていないんですか……」
結局、火野は根性はあった。技術もあった。まあ、戦妹にしてもいいかな程度には認めた。この前の仕返しにボコボコにしたけど。
その後、彼女たちのカルテットは適任者の指導を受けて、危なっかしいものの見事勝利を収めたらしい。なんか、お祝い会みたいのあったらしいんだけど、呼ばれなかった。いや、別に、悲しいとかそんなんじゃないんだけど、腑に落ちないっていうか、なんていうか。いや、まあ、女子会みたいなもんだったらしいし? 呼ばれなくっても仕方ないよね。ね?
「ああ、おばさん? いやいや、お姉さんには無理があるって。いやね、あることを調べて欲しいんだ。うん、お願いできる?」
俺はオバサンに間宮の家のことを調べてもらった。武偵高内の調査でわかっていることは、公儀隠密の家柄で、暗殺技術に長けていること。
こんなことを急遽調べることになったのも、アリアに見せられた、間宮あかりの『体に染み付いた撃ちグセ』によるものだ。可能性は極めて低い。そもそもプロのプレイヤーが銃の撃ち方に癖が出るほど撃つとは思えない。
しかし、最初に感じたあの違和感。始末番かと思う雰囲気。放っておくにはいささか危険すぎる可能性だった。