獅子の隣に並ぶまで 作:ZZ
14歳
カロスに来てから一年近くが経過した。あともう少しで14歳になる。
合間合間で他地方の地方大会に参加しに行ったりはしていたので、カロスにだけずっといたわけではないのだけれど、この一年で多く拠点にしていたのはなんだかんだでこの終の洞窟付近だろう。人が来ない上にまぁまぁ気候も安定してるし、近くに水場もあるし、トレーニングに適した場所もそれなりにあるので滞在にはうってつけだったのだ。シンオウにいた時のようにどこかに借家を借りてもよかったんだけれど、なんだかんだ動き回ってたから借家をとるほどでもなかったというか……。後カロスのTV局に招待されてビードル系列を専門に研究しているアベイユ博士と討論する機会があったのもあってか(スピアーの観察をするときに参考にさせてもらった論文をかいた博士だったので、TVに出るのとアベイユ博士とお話出来る機会とをめちゃくちゃ天秤にかけて悩みまくって承諾した。オーキド博士がヘルプでいこうかと言ってくれたくらいだったけど、さすがに私のためだけにカントーからカロスまでポケモン学の権威を動かすのもどうかと思ってお断りした)、……いやまぁ他にもいろいろあったんだけど、カロスで顔が売れてしまったのもあって面倒を避けるために定住をやめたというのもある。
ちなみに一年近くたってもラルトスの予知は変わっておらず、下手をすると私達は一生アローラに行かない方がいいかもしれないレベルである。もしかしたら明日行けるかも、来週ならいけるかも、とずるずる引き伸ばして一年たってしまったのが痛い。さすがにアローラでゲームシナリオが発生したらなんか動くだろうと思っているけれど、こっちは今行きたいのになぁ、という感じだ。そこまで待たずにアローラに行きたいんだけども。まさかマッシブーンを自力で倒せるようにならないと予知が覆せないとか言わないよね?
一応手は打っていて、アローラに行くとこういうポケモンと遭遇するかもしれないという予知が出ているけれど、ずかんや文献を調べても全く該当ポケモンが出てこない、何か知らないか、とオーキド博士に連絡は送ってある。なんでオーキド博士に聞いたかって、まぁオーキド博士がポケモン学の権威だというのももちろんだが、アローラ地方はあんまり他の地方との交流がないせいか、他地方でアローラ地方の情報を集めようとするとほとんど出てこないからである。
いやほんと、びっくりするほど情報がない。当然だがウルトラビーストの情報なんて欠片も見つけることは出来なかった。
私が4年間旅をして、それでも一番アローラ地方の情報があったのはオーキド研究所だったのである。オーキド博士にはアローラにいとこのナリヤ博士がいるからその縁だろうとは思う。とはいえ、オーキド博士も、博士から話を持ち込まれたナリヤ博士も情報集めには難儀しているようだった。……そりゃぁ、ウルトラビーストだし、リージョンフォーム研究してるナリヤ・オーキド博士よりは、シナリオ通りにいくのなら、本来だったらエーテル財団とか(存在は確認している)の方が詳しいだろうし。なんとかしてくれるかなぁ……。難しいかな。やらないよりかはましだと思うんだけど。
悩んでもしょうがないものはしょうがないので、私は一旦アローラを諦めて、次の地方に向かうことにした。目指すはガラル、ワイルドエリアである。
ワイルドエリアはバトルトレーナーには垂涎ものの場所である。なんせ、ゲーム程ではないけれど、3日くらいのスパンで天候も気温も大幅に変わる。バトルの天候や環境変化に慣らすにはもってこいだし、エリアの広さにしては多種多様なポケモンが生息していることもあって、修行をするにはとてもいい場所なのだ。本当はアローラで仲間を見つけてから、最後に行って皆で修行をするつもりだったのだけれど、あんまり予知が変わらないのでこればっかりは仕方がない。
カロスから飛行機でガラルに飛び、意気揚々とワイルドエリアの出入り口に立つ。ちょっとわくわくしている自覚があるんだけれど、周囲から見てもそうなのだろうか、係員さんとかに微笑ましい目で見られてしまったような気がする。ワイルドエリアの出入り口はいくつかあるのだけれど、私はナックルシティからの入場を選んだ。出入り口には申し訳程度の案内所があって、そこで名前と出身地方、籍に紐づけられている番号、大体の滞在予定時間を記録する必要がある。最後に、ここで死んでも管理しているガラル地方は責任をとりません、それでも入りますか?という誓約書にもサインをして、それで入る準備は終了だ。
情報は共有されるので、出るのは別にナックルシティでなくとも構わない。ただし、『そらをとぶ』で出る場合は必ずどこかの出入り口によって、出ましたよ、という報告はしなければならないが。でないと最悪の場合死亡通知書が私の実家にいってしまう。その点アーマーガアタクシーでワイルドエリアから出た場合であれば、自分の情報を申告すればタクシー会社側でその辺やってくれるので、大分楽になるようである。『そらをとぶ』の免許をもっていないといったら、アーマーガアタクシーを呼ぶためのアプリをホロキャスターに入れるのおすすめされたくらいだし、本当に文化として根付いているのだろう。ポケモンに乗って飛ぶのは『そらをとぶ』免許を取るまではお預けにしようと思っているから、丁重に断ったけれど。
こういった、危険な区域への立ち入りに関する措置は世界各地で見られる光景である。例えば高レベルなポケモンの縄張りが複数重なってるとか、そこで暮らすポケモンのルールが人間にやさしくない方向に設定されているとか、そこでしか生息していないポケモンが余りにも多いとか、そういう地域はこうやって立ち入りの際に記録をつけたり、誓約書を書くことになる。面白いのはこれで最上級の措置である、ということだ。人間立ち入り禁止、とか、立ち入りの際にプロ以上の実力者でなくては駄目、とか、そういった制限は一切ない。珍しいポケモンの密猟を防ぐためとかで自警団を組織しているとかいう例もあるし、人殺しを楽しみとして覚えてしまったポケモンが人里近くに出没するようになったから、少しの間その地域を立ち入り禁止にするとか、トキワのもりのように内部の生態系が荒れているから一時的に立ち入り禁止にするとか、そのレベルの話ならあるけれど、行政が管理するそういった地域への立ち入りは、基本的にはあくまで自己責任という扱いなのだ。
世界のどこかで何かしら起きるたびに、立ち入り禁止の地域を増やしていては元も子もないからだ、とか、ポケモンは生き物だし、その気になればあちこち移動もできるから、地域を立ち入り禁止にしたって意味がない、とか、その辺はいろいろと言われているけれど、私はたぶん、それだけじゃないと思っている。何故なら、世界ポケモン共存機構が掲げる一つの理念に「人間とポケモンとの交流は妨げられるべからず」というのがあるからだ。人間側も、ポケモン側も、どこに住んでいようが、どう生きていようが、お互いの世界に足を踏み入れる権利がある。……勿論、それが人殺しのポケモンばかりの地域に生まれたポケモンだったとしても、ポケモン殺しが当たり前の街で生まれた人間だったとしても。極端な例えだけれど、要はそういう事だ。
その辺の管理のためにお金をとってる場所なんかはサファリゾーンと呼ばれることもあるし、記念のボールを販売するくらいのたくましさがあるけれど、その点ガラルはお金とってない分ちょっとだけお得感がある。
一歩ワイルドエリアに足を踏み入れると、空は燦々とした晴れ模様だった。日差しが随分と強い。……一応今は当たりの天候か。この天候のうちにキャンプ地を見つけたいところだ。なんせ、ワイルドエリアの天候は本当にシャレにならない。3日で砂嵐からあられに天候が変わる地域なんてここくらいのものだろう。ガラルには他にもいくつかそういう地域があると聞くけれど、それにしたってとんでもない地域である。ワイルドエリア以外の場所も急に変わる天候の影響を受けそうなものだけど、実際のところは天候異常が発生する地域というのがあって、それを避けて人間の住むところが建設されていったとかで、稀に砂が舞い込んでくるとか、夏なのに寒い日があるとか、やけに霧が深くなるとか、その程度らしい。……そういえば、ホウエンの天気研究所が真剣にガラルに支部の建設を検討しているとかいう話をどっかで見たけれど、あれどうなったんだろうな。
晴れていても油断はしてはいけなくて、急に大雨が降ってくるとか、急にあられがふってくるとかもざらにある場所だから、ここに来るまでには色々と調べて準備をしてきた。ここでガラルで迎えたい仲間も迎えてしまおうと思っているので、まずは一か月、このワイルドエリアで過ごして、仲間探しをしながら修行をしてみようと思う。