A.読めばわかるさ
自己紹介をさせていただきます。
自分は、トウリ・ノエルです。
前世では日本でFPS廃人をしておりました。
今世では何故か性別が変わり女の子となっております。
両親は砲撃で亡くなったそうで、ノエルという地にある孤児院に引き取られました。
ノエル孤児院での生活は決して裕福とは言えない貧しいものでしたが、それでも充実したものでした。
前世ではFPSゲームにおいてプロとなるほどにゲームに傾倒していましたが、今の時代にそのような物があるわけがなく、そして時代観として将来的にどのような仕事でも体力が必要になりそうだという事もあり身体を鍛える事にして、読書の合間に筋トレに励んでいたのですが……
孤児院内でも小柄であった自分の背丈は、気付けば孤児院内でも明らかに大きなものへと成長を遂げていました。
念のためにもう一度言っておきますが、ノエル孤児院は決して裕福ではありません。麦や野菜を育て、街の特産である蒲公英の葉を摘み、寄付を募って何とか食べていける生活です。当然自分だけ特別栄養がある物を食べていたわけではありません。むしろ小食な方だったと言えます。
しかし歳が10を越える頃には自分よりも体の大きい子どもはいなくなり、15へと近づく頃には園長先生すらも優に追い越していました。
おかしい……一体何が原因なのか、心当たりが全くありません。しいて言えば読書の合間の筋トレだったのがいつしか筋トレの合間の読書に変わっていたくらいです。
何はともあれ成人として認められ孤児院を出て働きに出られる頃には、自分は立派な筋肉を身に着ける事ができました。
そんな時に一つの提案を受けました。
「軍隊に志願する気はないかね」
この国では一定の年齢になると徴兵検査を受ける事が義務となっています。
とはいえ女性は徴兵される事は滅多にないと聞いていたのですが……
「その凄まじいまでの肉体があればいずれ徴兵されるだろう。徴兵されるよりも志願した方が色々と優遇もされる」
確かに鍛え上げた自分の筋肉には自信を持っていますが、しかしそれはあくまで15歳の少女という点を鑑みればという話。正直な所戦争どころかケンカで使用するにもまだまだと言わざるを得ないです。
しかし平均以上に肉体が優れているという点は兵士において優秀となると考えれば徴兵される可能性が高いのも確か……それに前世でのFPSゲームの経験から自分は兵士に向いているだろうと楽観もしていました。あとは孤児院に対しても補助金が出るなど、恩返しをするにも適していました。
正直選択肢がないに等しい状況でしたが、それでも自分は軍隊へと志願する道を選ぶこととなりました。
ちなみにノエル孤児院から軍隊へ志願したのは、なんと自分ひとりでした。
自分と同年代で同じく働きにでるよう諭されていたバーニーという悪戯好きな幼馴染がいるのですが、てっきり彼も軍隊に志願するかと思いきやしなかったそうです。
何故かと問えば、幼い頃に彼が悪戯を仕掛けた際に思わぬ反撃を食らって大怪我をしてしまった事があり、それ以来ケガや血が若干のトラウマになってしまい、志願兵という提案を断ったのだとか。
一体誰がそんなことを……と思っていましたが、相手は自分でした。
確かに幼い頃に読書の邪魔をされたので軽く腕を振るってケガをさせてしまった記憶がありましたが、まさかトラウマにまでなっていたとは予想外でした。
こうして自分は見知らぬ軍隊という組織に予想外にもたったひとりで足を踏み入れる事となったのでした。嘘だと言ってよ。
なお志願した際に魔法の適正を調べた結果、回復魔法の素養がある事が判明したため、衛生兵となりました。
◆
軍隊に志願し衛生兵となった自分は、何故か回復魔法を教えられることもなくいきなり前線送りとなり、何故か歩兵部隊へと編成され、何故か敵兵へと突撃する小隊長の背中を追いかける形で銃弾飛び交う戦場を走り回ることとなりました。
その後、自分がまだ回復魔法を使えない事を知った小隊長であるガーバックに一発殴られてから、「さっさと技術を身に着けてこい小娘」と連れられた先にいた、軍服を着た優しそうなお姉さんへと預けられました。
「貴女がガーバックの部隊に配属されちゃった新兵……え、新兵?」
彼女────ゲール衛生部長との自己紹介を終え、彼女から自分の上官となったガーバックの酷評を聞き、最悪な部隊へ配属されてしまったことを理解しました。
ファンタジー要素が少しある世界観とはいえリアルの戦争は地獄であることも相まって、自分の考えがいかに甘かったかと後悔しかありません。
自分にできる事は、少しでも長く生き延びるためにあがく事くらい……場合によってはそれすらも許されないという詰みな状況に軽く絶望しつつも、少しでも死なないように研鑽を積む事とします。
さすがのガーバック小隊長殿も無能ならともかく希少な回復魔法の使い手を率先して使いつぶしはしないでしょうし、少しでも衛生兵として技術を身に着けることは自分の生存確率を上げることにも繋がると言えるでしょう。
というわけで他の新米衛生兵の方たちとともにゲール衛生部長から回復魔法の手解きを受けました。
「トウリさんは魔力が少し多めね。大体治癒魔法が二回使えるくらい」
「二回、ですか。少なくないですか?」
「新米としては素晴らしい数字よ。魔力は鍛える事もできるから経験を積めば積むほど魔法の使用回数も増えていくわ」
「鍛えれば使える回数が増える……つまり魔力とは筋肉で、筋肉は魔力だった……?」
「ん……? んん?? ちょっと何言ってるかわからないわね」
成程。つまり自分はこれから魔力という今まで鍛えてこなかった部位の筋肉を鍛えていくわけです。そして使用回数10回まで鍛え上げられたなら安全な後方で筋トレをして過ごすのも夢ではないという事です……その前に死んでしまいそうな気がしますが。
◆
自分が同期であるサルサ君に回復魔法を使用した結果、小隊長殿から過剰なまでの体罰を受けました。
我が軍の魔砲攻撃を読んでいた敵からの反攻作戦によって撤退する際に、迂闊にもサルサ君が罠によって足を火傷してしまったので回復魔法を使用したのですが、これが小隊長殿の怒りを買うことになりました。
今回はガーバック小隊において犠牲者はでませんでしたが、それはたまたま、運がよかっただけの事。
例えば今回の撤退の際にガーバック小隊長が砲撃を受けてしまった場合、衛生兵である自分は治す必要がありますが、そのための魔法を自分はすでに新兵であるサルサ君に使用してしまって何もできない状態になっていました。これでは自分がこの小隊に配属された理由でもある『もしもの時のガーバックの治療』が遂行できません。
そもそもとして回数制限のある回復魔法を上官の許可なく行使した事自体、考えてみれば問題行動であるのは当然です。
確認すべき事を怠り、独断専行に走った自分に落ち度があるのは明らかでした…………それはそれとして過剰な体罰に関してはどうかと思いますが。
そして小隊長殿の体罰の前には自分の筋肉の鎧などないも同然でした。
自分の鍛え上げてきた肉体に撃ち込まれたその打撃は、肉も骨も砕くかのような威力で自分を襲い掛かりました。
今も懲罰として小隊長殿のテント前で直立不動で立たされていますが、いまだに殴られた箇所は痛みを訴えかけてきます。
……どうやら自分は自らの肉体に自惚れていたようです。まだまだ鍛え方が足りないと実感しました。
とはいえ自慢の筋肉がなければもっとひどい状況になっていたでしょう。やはり筋肉、筋肉は全てを解決する。
何だったら回復魔法をかけずに自分がサルサ君を抱えて逃げていれば…………いやそれはそれで「ウジ虫以下の荷物背負って俺に追いつけるとでも思ってんのか!」とか言われて懲罰を受けそうな気がします。
そして自分が体罰を受けてまで助けたサルサ君ですが、夕方辺りから自分よりもひどい状態で横で立たされていました。どうやら昼のブリーフィングを忘れてしまっていたとのこと。この男の抜け具合も大概ですね。
「あの、こっそり回復魔法で治してくれたりとかしないっスか……?」
「自分がここで立たされている理由がそれです。もう一度折檻されろと?」
「デスヨネ……というか小隊長から体罰受けたにしてはトウリさん結構余裕そうじゃないっス? 何か秘訣でもあったりするっスか……?」
「筋肉です。筋トレすればサルサ君も多少マシになるかと」
「ええ……?」
それ以外勝たん。
◆
本日の敵陣への攻撃に成功し、31mの領地の拡大に成功したガーバック小隊は、その夜休暇を与えられました。
そうした休暇は部隊で宴会をして盛大に盛り上がるのが通例となっているということで、小隊長殿がどこからかかっぱらってきた戦場では希少な酒類や菓子類とともに最前線での宴会が始まりました。
そして新兵である自分たちには小隊長殿から何か面白いことをしろという無茶ぶりをされていました。信じたくありませんが正式な上官命令です。つまらん奴に飲ます酒はないとの事。
サルサ君が裸踊りをしようとして小隊長殿から罵声を受けています。新人が宴会で上司からパワハラを受けるのはどこの世界でも同じようです。ですが……
「では手前味噌ながら一席よろしいでしょうか」
「お、小娘。なんかあんのかぁ?」
自分はこの場を切り抜ける術を持ち合わせています。
両腕を力こぶができるように上にあげるポーズ────フロントダブルバイセップスを取ってから、唇を動かさずに声を出し、その声に合わせて筋肉を動かします。
『おい左上腕二頭筋、聞こえてるのかい! おい右上腕二頭筋、聞こえてるのかい!』
「お、腹話術か。しかも声色もそれぞれ変えて使い分けてる」
「でもなんで筋肉を喋らせてるの?」
「筋肉が声に合わせてピクピクしてやがる! なかなかやるじゃねえか!」
孤児院でシスターに教わった腹話術と自分の筋肉の合わせ技、孤児院の子どもたちにも人気の芸です。
『おい、左上腕二頭筋、歌えるのかい! 右上腕二頭筋、歌ってやろうじゃないかい!』
「お、そのまま歌えるのか」
「筋肉が歌うとか意味わかんないな」
『「光を放つー(はなつー)わが祖国(そこくー)」』
「え!? 声が二重に聞こえる!?」
「き、筋肉が合唱してる……!?」
「いやなんだよ筋肉が合唱って」
「ガハハハ! すげぇなコイツ! どこから突っ込めばいいのかわかんねぇ!!」
自分の筋肉大合唱は大好評でした。これでも孤児院では『筋肉話術のトウリ』と讃えられていたのです。軍に入らなければこれで飯を食っていくつもりでもありました。
なのでサルサ君に「こ、この裏切者!?」と恨みのこもった目で見られる筋合いはありません。別に裏切っていませんので。
幸い自分の芸は小隊長殿のお眼鏡に適ったようで、酒の代わりにチョコレートをいただきました。
結局サルサ君は小隊長殿を満足させられずに失敗するごとに課せられていく筋トレによって潰れる事となりました。
◆
雨が降る中、敵軍が攻めてきたため迎撃に出たガーバック小隊は、敵軍のエースである『
小隊のそれぞれに役割がある中で自分に割り振られたのは『小隊長殿が負傷した際の救助』であり、それまでは塹壕で身を隠しながら小隊長殿を目で追う以外に何かをする必要はありません。本来衛生兵が歩兵に混じって進軍する事自体おかしいのです。
ですがそんなおかしな状況に身を置く自分は何もすることがないのがなんとも歯痒く感じました。
ただそんな感傷も小隊長殿と
鉄条網を手槍で一息に破壊する雷槍鬼、それに音もなく接近し軍刀で腹を一閃した小隊長殿、その小隊長殿の追撃に対し周囲の雨すら蒸発するほどの高圧電流を発した雷槍鬼、こちらの視界すら真っ白に染まる程の電撃を至近距離にも関わらず回避する小隊長殿……二人の応酬に目を奪われました。
果たしてあの命のやり取りに対して、自分の筋肉はどこまで役に立つのだろうか。
そんな事を考えてしまっている時でした、視界の端にチラリと何かが見えたのは。
自分はFPSゲームからの経験で、真正面だけでなく視界の端にも目をやる癖がありました。
小隊長たちのいる位置からさらに離れた位置にいたのは擲榴兵────その手に持つ専用の道具からこちらに向けて
そこからは、咄嗟の行動でした。
擲榴兵が放った何か────おそらく榴弾に対して、自分は今まで無意識に握りしめていた拳を解き、力が込められていた腕から脱力させ、全身の筋肉に適切なタイミングで動かすことで力を一点に目掛けて伝播させていき、脱力した腕を鞭をしならせるように大きく振るいました。
当然私の振るった腕は、こちらへと向かってくる榴弾に対して当たるはずもありません。
しかし全身の筋肉をフルに活用して振るわれたその鞭打は、目には見えないものの確かにそこにあるもの────すなわち空気へと激突し、それを確かに弾き飛ばしました。
そして弾き飛ばされた空気は突風となり、放物線を描いてこちらに落ちてきていた榴弾を巻き込んで、その軌道が大きく変化させました。
突風に煽られ────あるいは吹き飛ばされた榴弾は、その持ち主の元まで帰っていき、見事な爆発とともに感動の対面を果たしたのでした。
「え? 今の【
「違います。今のは魔力ではなく筋肉によるものです。しいて言えば【
「嘘でしょ今の魔法じゃないの!?」
「俺、トウリさん守る必要ないんじゃないっスか……?」
こうして自分たちは九死に一生を得たのでした。
◆
今日はゲールさんの指揮下にて応急診療所における診察です。
比較的軽傷だという患者の診察を頼まれたのですが……患者の列はまさしく長蛇であり、その数は軽く100人を超えていそうでした。
あとで代わりの人員を寄越すと言っていましたが……ゲールさん本人もすでに徹夜続きらしいので希望は薄いでしょう。
そんな中で看護兵さんに案内され、診察を開始しました。
「ようやく来たと思ったらこんな筋肉達磨……いやお前本当に衛生兵かよ!?」
「自分の筋肉などまだまだです」
「足が動かないんだ! 回復魔法を使ってくれ!」
「筋肉が足りていませんね。固定しておけば治ります」
「腕がぁ……どうなるんだよぉ!?」
「これは切除するしかないですね。筋肉が足りていれば……」
「あ……あ、あ……」
「大丈夫です。筋肉は残っています。とりあえず軟膏を出しておきますね」
「コイツを見てくれ、俺の尻が、爆発して────」
「これは、筋肉が────」
……
…………
………………
「次が最後の患者です」
永遠と続くと思っていた患者の列がなくなったようで、ほっと一息つきます。
最後の患者として入ってきたのは新しく部隊に配属されたロドリー君でした。確かグレー先輩に手榴弾をねだった後に小隊長に直談判してくると言っていましたが、本当に直談判したんですね。そしてボコられたんですね。今日一番の重傷です。
「おい、筋肉女。なんか出ていく連中みんな筋肉がどうのとか口走って筋トレを始めてたんだが、どういうことだ?」
「筋肉は全てを解決しますので」
「…………まあいい、さっさと診ろ」
「どれどれ……筋肉が足りてないですね。筋トレしてください」
「やっぱヤブだろこの無能」
筋肉不足は事実です。それはともかく回復魔法はかけてあげました。
◆
「お前ら、お待ちかねの攻勢の日だ」
偵察の結果、敵側の防備がかなり薄くなっている事が判明し、この機会に一気に領地を取り戻そうというのが上層部の考えだそうです。
「調子に乗って攻めすぎた馬鹿どもに天誅を与えてやるぞ」
魔砲部隊による攻撃が終わり次第、自分たちは突撃を開始します。それまでの間に自分はここにきてからの事を思い返します。
自分はこの戦場に来て、野戦病院などで多くの軍人の鍛えられた筋肉を見てきました。
鍛えられ方に差はあれど、それぞれに特徴のようなものが見受けられました。
特にガーバック小隊長殿の筋肉は自分の抱いていた固定概念を打ち壊すものでした。この
それらを目の当たりにした自分は、今まで筋肉の可能性、それを勝手に狭めていたのではないか? そう思い至ったのです。
つまり、解釈一つで筋肉の可能性も解放されるということ。
たとえば以前自分は、魔力とは筋肉であり筋肉は魔力である、と評しました。
それはあくまで例えのつもりでしたが、よくよく考えればこれもあながち的外れではないのではと思うようになりました。
実際、鍛え上げられた筋肉は魔法と区別がつかないという言葉もあるくらいです。誰が言った言葉なのかは覚えていませんが、大事なことはそこではありません。
要は、できるかできないかであり、自分の筋肉はできると主張している。それが全てです。
「────突撃を開始する!」
宣言と同時に駆け出した小隊長殿の後を追うように自分も走り出し、その筋肉の可能性を解放しました。
【
【
【
【
これらを小隊長殿の突撃を追いかけながら用いた事によって、多少は小隊の被害を抑えられたでしょう。
現在自分たちは敵塹壕の一層目、二層目を突破・制圧して、他部隊が前進してくるのを待っている状況ですが、被害としては初っ端頭を撃ち抜かれた歩兵の方と右肩を撃たれてリタイアしたアレンさんだけで、損傷としては軽微な方と言えるでしょう。
「小隊長、後ろの部隊が全然追いついてきてねぇ。潮時じゃないですか」
「馬鹿言え。こっからが本番だろうが」
「む、無茶です! 味方の前進を援護をしつつここで突撃を終えるべきです!」
「却下だ。敵が手薄になっている今食い破らんでいつ食い破る」
自分としても正直ヴェルディ伍長の意見に同意なのですが、小隊長殿にその気は一切ないようです。
「トウリもまだまだ余裕がありそうだ。ふん、芋虫が蟻んこくらいにはなったか」
「光栄です、小隊長殿」
「いやトウリさんの活躍はそんな言葉で済ませていいレベルじゃないと思うんですけどねぇ」
「トウリさん、私に当たりそうだった銃弾を摘んでたんですけど……」
「守る側が守られている……これは一体……?」
「ぜぇー……ぜぇー……」
とはいえこれは小隊長殿が矢面に立って進んでいてくれているからできる事。自分の筋肉は未熟な事に違いはありません。
小隊長殿に着いていけるようになったのも体力が付いたというよりは最適な走り方、つまり筋肉の使い方を覚えたからであり、やはり筋肉のおかげです。
何が言いたいかと言えば、そう、つまり文字通り、筋肉は全てを解決するのです。
「両隣の味方、前進開始しました」
「お、やっぱ今日はいけそうだな。今日こそ連邦の防衛線を食い破ってやるぞ!」
ここからはさらに激しい抵抗を受ける事が予想できます。それこそ今までの比ではない程でしょう。
ここから先の戦場で、自分に何ができるのか、どこまでやれるのか、正直わかりません。ですが、自分はここで筋肉を無様に地に晒すつもりはありません。
自分はこの筋肉によってこの戦場を生筋肉残って筋肉ましょう筋肉。
◇
「…………はっ!?」
眠りから目を覚ました時、私は清潔な
当然だ。それは
それと同時に寝ぼけていた頭も覚醒していき、私自身の今の状況も思い出す。
ここは国境沿いにある田舎町のホテルであり、私はそこの近くにある戦場跡を目的として旅行に来ていたのだった。
「夢、か……」
何か変な夢を見た気がする。この前役所に届けた手記の内容に似ていた気がするが、何か致命的に違っていた気もする。特に最後の方はわけがわからなかった。
あるいは日々行っているかつての戦場での発掘作業が手記の内容と夢の中で混ざり合ったのかもしれない。
しかしもはや夢の記憶は霧散して消え去ってしまい、それを確かめる手段も取り戻す手段も存在しない。
「……戻らないのはあの手記も同じなのだが……」
あれからも戦場跡を掘り返してはいるが、あの手記以上に興味を惹かれる発掘物は見つかっていない。
遺族の手に戻るのが一番なのだが、それでも心のどこかで遺族が見つからない事を祈ってしまっている。
「……いかんな」
自分が思っている以上にあの手記に心奪われているようだ。それほどまでにあの手記は私の求めていた戦場のリアルを記していた。心が高揚したのは確かだ。
「……またあれと同じくらいの物が見つかればいいのだが」
解消する事のない未練を無理やり押し込めて、まずは今日の発掘作業のためにも朝食を食べに行こうと決めた、私はホテルの一室を後にした。
A.TM(トランスマッスル)