【カオ転三次】終末を約束された世界で心のままに生きていく 作:緋咲虚徹
「避けるな小娘っ! 貴重な霊草が損なわれるだろうがっ!」
「お前が攻撃しなければ良いだけの話だろう侵入者」
「チィッ【ジオバリオン】!」
「おっと、蓄雷草*1の近くに火薬茸*2が有ったみたいだな。発生した火災に巻き込まれて宝石蓮華が燃えそうだな?」
「ダイヤモンドの蓮華が!?」
久遠とマモンの戦場が少しずつツリーハウス側に移動し、その度に戦闘の余波で吹き飛ぶ高価な植物たちに、マモンが嘆きと怒りの声を上げる。
最も、マモンの言い分は抵抗せず全て明け渡せと言う、身勝手な強盗のソレであり、聞く価値の無い戯れ言だけれども。
後、こっちが時間稼ぎと解析を主目的にしてる関係で、迎撃が消極的なっているのを、マモンの侵攻を防ぎ切れていないとでも考えているのか、久遠へ攻撃する際、ついでの様に周囲の価値ある物を回収していくのが見える。
「まあ油断しているのであればそれで良いですが、強欲の悪魔だけに価値ある物を奪うことで強化されるスキル、辺りを持ってる可能性も考慮しておくべきですか」
「そっちの検証も追加するとして、久遠の攻撃が無効化される原因に目星付いたわよん。どうやらマモンの認識で、価値が無いと判断した事象からのダメージを受けないみたいね」
「なるほど、事象を認識出来た事でスキル名も見えましたね。【無価値無効】*3ですか、もう1つの絡繰りも連鎖で見えましたが、【収奪する強欲】*4とは実にらしいスキルですね」
戦場が少しずつ私達の方へ近付き、ソレによってマモンの領域へ侵食する準備が整っていく中、平行して行っていたマモンの解析にも進展があった。
判明したスキルは2つで、1つ目は耐性関連の【無価値無効】と言う、強欲の悪魔が欲する価値が無いと判断した
2つ目は【収奪する強欲】で、こちらは逆に強欲の悪魔が欲するだけの価値を持つ
他者のモノも欲する強欲らしい権能と言った感じだけど、権能の対象が物質側に寄ってるのは、本体では無く高位分霊だからこそのリソース不足の影響って所だろうか。
「ギミック利用の準備は整いましたし、ちょっと検証で攻撃してみますか」
「そうね~だいぶ近付いて来たし、ツリーハウスを荒らされるのも嫌だものねん」
「まずは認識されていない状態からの魔法攻撃、後は認識された状態で武器の有り無しで魔法に対する価値判断は見えるでしょう。と言う事で、軽く【ガルバリオン】」
ツリーハウスを出て、久遠が時間稼ぎしている戦場へと向かう途中、座標起点での超遠距離魔法発動でマモンに攻撃してみるが、やはりと言うか予想通りと言うか、そもそも認識していない対象からの攻撃は全て無価値判定している様で、単体範囲に凝縮された極大の竜巻でも怯む様子も無く、久遠への攻撃を続けているのが見える。
「隠れてこそこそと攻撃とは、価値ある領域を持つのに相応しくない
「他者のモノを欲して奪うだけで、価値あるモノを創り出す事が出来ない乱暴者には宝の持ち腐れですよ」
「口の利き方も知らん小娘か、モノの価値を理解出来ないお前にもわかり易く言ってやろう。私に全て明け渡せ、そうすれば飽きるまでは飼ってやっても良いぞ? 見た目は悪く無いからな」
「欲に目が眩んだその様でよくもまあマモンを名乗れてるものですね。いえ、強欲などと自身の欲望1つ制御出来ない三下なら相応しい言動でしたか」
認識される前の攻撃が無駄な事を確認した所で、久遠がカバーに入れる位置に姿を現して、【魔王 マモン】と対面する。
伝わって来るマグネタイトの感じから、高位分霊の悪魔らしくナチュラルにこちらを見下しているのはいつもの事として、言葉は高慢な魔王らしい物だけど、その裏で契約の主導権を奪い返そうとしていたり、こっちの領域を削って有利を取ろうと動いてるのがわかってるため、態度程余裕が有る訳では無いのだろう。
とりあえずマモンの
「こちらが下手に出てみれば直ぐにつけあがる。まったく人間とは度し難い下等存在だな」
「本体なら兎も角、分霊悪魔なんて人間の認識でいくらでも影響を受ける曖昧な存在でしょう。それで上等を気取られても道化にしか見えませんね」
「ふん、口と手癖の悪さは達者と言う事か、小細工しなければ戦えもしない臆病者が大きな口を叩く物だ」
「そちらが手癖悪く好き勝手に強奪して破壊した植物の分で、そちらの領域内で生まれた植物と生えている場所の所有権を得ましたからね。ルール有りのゲームでも無いなら、初撃で決めるぐらいに準備するのは戦いの基本でしょう? そちらも気付かれない様に隠蔽した契約を強制する小細工してる訳ですし――っと、
「身の程を弁えろ小娘! もういい、貴様を殺して総取りすれば済む話だ!」
「あまり強い言葉は使うべきでは無いですね。今の貴方、凄く弱そうですよ?」
「それに、私を無視して主を攻撃出来るなど、随分と思い上がったものだな!」
「目眩まし程度に成りそうですが、最後の確認もしておきますか【メギドラオン】」
そうして最後の確認も終わって、本格的な【魔王 マモン】戦が始まる訳だけど、先に私が言った通り、前準備で7割8割は勝負を決めるのが常道と言う事で、ここに居る高位分霊である【魔王 マモン】の力の源、大規模な領域への侵食を一気に進め、弱体化を開始する。
威風堂々たる鹿王の頭部に当たるこの場所からよく見えるマモンの領域が、秒毎に植物に覆われ、急速に衰えていくマモンが戸惑いの声を上げる。
「なっ?! わ、私の領域が!!?」
「私の領域に侵入してから、手当たり次第に高価な植物ばかり収奪してましたもの、根を張るのはとても簡単でしたね。さて、欲望の沼に沈んだなら、次は森の養分になる時間ですよ?」
「ほざけ! 私の
「攻撃を無効化する絡繰りの目処も付けずに姿を現す訳が無いでしょう」
戸惑いを怒りが凌駕したのか、怒り心頭と言った表情で魔法を放とうとするマモンに、【縮地】で間合いを詰め、袖口から取りだしたマモン対策に使えそうと目星を付けた武器を取り出し、マモンがソレを確りと認識出来る様に振りかぶって叩き付け、それにより発生した爆発的な氷結属性の衝撃で怯んだ間に、【縮地】で離脱まで済ませる。
「グァッ!? キ、貴様ァッ!
「至極真面目にやっていますよ? その証拠に、使った魔剣ダイコンブレードの価値では吸収出来ないだけのダメージも通りましたしね」
〝魔剣ダイコンブレード〟
それは私が今の様に植物を魔改造したり、トリコの食材再現だったりする事になる切っ掛けの再現植物。
武器として使った場合、多少の打撃力と【ブフ】程度の氷結属性ダメージを与える事が可能と言う、低レベルなら割と使えるけど普通に食材として食べた方が良い、って程度の代物だったりするんだけど、今回は武器の自壊を条件に威力を増大させる【ファイナルストライク】と、インパクトの瞬間に込められるだけ氷結属性の霊力を込めて概念を積み重ねた事で、瞬間的に【ブフバリオン】クラスの威力に跳ね上がってたりする。
「ふむ、ドンパッチソードは初音ミク関係でネギが多用されるのもあって、概念の載りが良いですね」
「ガァッ! ナゼダッ! 何故そんな巫山戯た物で私に傷がつく?!」
それに【無価値無効】も【収奪する強欲】も、強欲の魔王としての根幹に近いスキルなだけに、一点特化してる訳では無い私の概念破壊や貫通だと、一回通すだけでも色々準備が必要になるし、その一発程度で倒せる訳も無く、そうなると必然的にスキルの隙を突く事になる訳で。
「【無価値無効】は、貴方が少しでも価値を認めてしまえば無視可能。【収奪する強欲】は、使用する武器の価値以上のダメージを攻撃毎に与え続ければ良いだけ。簡単な話でしょう?」
「その程度の価値で私に傷を付けるだと?!」
「価値を創り出すのが生産者と言う
「何も理解出来ないまま朽ちていけ、魔王!」
「じゃあ私は、遠距離から色々投げてるわねん♪」
私に続いて久遠が近くの樹を引っこ抜き、丸太にしてマモンを殴り飛ばした所に、湯乃葉が投げつけたランプキンが爆発し、単体範囲に凝縮された火柱を作り出す。
ちなみに湯乃葉が投げたランプキンは、以前にハロウィンのネタとして創った南瓜の品種で、農業部などのカタログに載せている情報はこんな感じ。
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・ランプキン
火栗や火多栗などの火炎属性要素を複数組み込み、ジャック・オー・ランタンの概念を強化して創り出した幻想植物の南瓜。
適切に下拵えされたランプキンは甘く蕩ける様な果肉をしており、採れたてでもカボチャプリンみたいに食べる事が可能で、一口食べれば心に火が灯った様に活力が湧き出す。
成熟していくに連れてランプの様に明るく輝きを増し、仄かな温かさを放つ様になるが、熱を放つ程に熟した状態で強い衝撃を受けると、爆発して内部の熱量を一気に放出する特殊調理食材でもある。
爆発時の熱量と範囲は、果肉の旨味と成長度合いに応じて増大し、最低でもレベル50クラスが放つ【アギダイン】並の熱量と概念強度を持ち、完熟すると【マハラギバリオン】に匹敵する事もある。
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まあランプキンはレベル50クラスの霊草だけに、そこそこの価値を持っているから回復もしてるだろうけど、【マハラギバリオン】の威力と範囲熱量を単体範囲に圧縮した一撃だし、回復量が気にならないぐらいのダメージも入ってるでしょう。
「領域の侵食はそろそろ9割、後はここに居るマモンを倒さないと進まないでしょうし、観測が外れない程度にたたみかけますよ」
「了解した。ふむ、次も丸太は芸が無いか?」
「それなら瑞樹が以前に創ったオオモロコシ*5はどう? 武器に加工してない物だから、価値はそこまで高く無いわよ」
「砲モロコシや大砲モロコシを造ろうとして再現してたな。未加工だと砲撃は出来ないが、爆弾代わりに投げるなら十分か。ではこれに火炎属性を限界まで込めて【ファイナルストライク】を載せ――【なげる】!」
「楽に死ねると思うな! 小娘ドモグォッ?!」
「無駄行動で隙だらけですね?
火柱を吹き飛ばしたマモンが怒り心頭の様子で喚き始めた所に、今度は久遠の投げたオオモロコシが顔面に突き刺さり、言葉を遮る様に追加の爆発で吹き飛ばす。
其処へ透かさず追撃にパイルポテトを【釘パンチ】で殴り飛ばし、パイルポテトが自壊するギリギリまで込めた衝撃が、マモンの体内にまで食い込んだ状態から迸る。
そうして一撃一撃を、マモンが確りと認識出来る速度で、尚且つ反撃の暇を与えない様な連携で叩き込むこと数分、攻略方法が組み上がった悪魔に苦戦する訳も無く、順当にフォルマとドロップを残して消えていくマモンの姿がそこにあった。
「普段の装備が使えないのは面倒でしたが、領域侵食して力を削った分だけ何とかなりましたね」
「完全状態だと、ランプキンぐらいの価値でも全回復しかねない感じだったな。他にも厄介なスキルもあっただろうが、その辺まとめて封じれたからだな」
「こっちが投げ込んでも余裕ぶっこいてくれたおかげよねん。些細な変化が致命になりかねないんだし、私達も気を付けないとね」
「ですね。残った領域に仕掛けられてた罠は解除しましたし、再度精査して問題が確認出来なければ、完全に鹿王へ取り込んで次へ行きましょうか」
マモンを倒して領域のリソースを取り込んだ事で、遂に鹿王が原作再現な全長60,000メートル、体高10,000メートルに到達したのは良いとして、慢心した魔王の足下を掬った直後というわけで、少し行動再開を遅らせて足場固めをする事にしたんだけど……。
「うーん、確認して良かったって所ですけど、気付けてなかったのはちょっと油断してましたかねぇ……」
「鹿王に誘い込んで討滅した高位分霊の欠片が残ってた、なんて気付かなかったわよね。いつもの瑞樹の領域、
「見回りするか?」
「いえ、領域内の精査術式を走らせますよ。コレばかりは領域内を把握出来ない方が問題ですし」
いやはや、どれだけ気を付けていても見落とす事は有る物で、初心に返る事の重要性を感じますね、本当に。
ともあれ問題へ発展する前に発見出来たのは運が良かったと言う事で、再発防止の対策をしつつ他にも見落としが無いかの再確認と、想定出来る手段への対処を追加して活動再開。
防衛陣地に居る木分身経由で状況確認しつつ、確認されている他の大規模領域の攻略、道中にある邪魔になりそうだったり、これから大きくなりそうな領域を潰して回る。
まあそんな感じで高レベル帯域を練り歩いていたからか、ショタおじが戻ってきた頃にはレベルが大凡170後半まで上がっていたけど、霊格が上がって困る物でも無いし、良いボーナスタイムだったと言う事で。
地球毎魔界に軟着陸したと言う事ですし、当面は各支部周辺や大崩壊した東京の調査などをして、ある程度落ち着けば漸く、ガイア連合山梨支部の目的も一段落ですね。
ゲーム内では砲撃威力の高いガンランスの素材になる事から、火炎属性のマグネタイトや霊力に反応して、ギガ系統の爆発属性を内部に発生させる性質を持つ。