MUV-LUV大戦   作:土井中32

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これで最後です、もう逆さに振っても何も出ない…!
最後の話、どうぞ存分にお楽しみください!





EX7 影の苦労

 

地球連邦の発足により国家間・組織間での軍事衝突は原則起こらなくなったが、人間がそんなに簡単に変われるはずもなく。

BETAの勢力範囲の広大さや強大な星間組織の存在が確認され、大半の人間は地球の中で争っている場合ではないことを悟って自らの野心や欲望を引っ込めたが、跳ねっ返りやどうしようもない愚物というのは割といるものである。

規模は縮小すれど様々な勢力が裏で利害をぶつけあい、後ろ暗い手段で利益を得ようとする暗闘が完全に収まることはなかった。

当然国際的な治安維持機構や連邦軍により取り締まりが行われているが、そんな連中の悪意から連邦にとっての重要人物を守るため発足されたのが地球連邦軍近衛局である。

 

地球連邦軍近衛局。

 

地球連邦にとって重要な人物の護衛を専属で行う部署であり、連邦軍で最も対人戦闘に長けた部隊である。

その任務上、彼ら彼女らは地球連邦に忠誠を誓い絶対に裏切らないと判断された者たち、いわゆるエリートで構成されている。

 

 

「…全員揃ったな」

「本日の当番のもの以外は全員集合しております」

 

近衛局極東支局、その一室。

とある人物の護衛を専属で受け持っているチーム、そのほぼ全員がそこに集まっていた。

厳しい表情を浮かべる部下たちを一瞥し、チームリーダーはこの場にチームを集めた理由を告げた。

 

「では始めるぞ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

稲郷夫妻の新婚旅行デバガメ大作戦の作戦会議を!

「「「イエーイ!!」」」

 

ドンドンパフパフ、などという音がチームによって奏でられ。

 

「真面目にやらんかぁーーーーー!!!!」

 

怒声と共にハリセンで叩かれる音が、支局中に響いた。

…繰り返すが、彼らはエリートである。

 

 

その、はずである。

 

 

------------------------------

 

 

「えー、支局長に怒られたので冗談はここまでにして、まずは経緯を」

「はい。事の発端はおよそ17時間前、夫妻の長男である稲郷イング君が、近所の商店街でやっていた福引で温泉旅館のペア宿泊券を当てたことから始まります」

 

学校の帰りに買い食いし、ついでに福引券をもらったので物は試しとやってみたところ、一発で当てたらしい。

 

「そのすぐ後にイング君からこちらに接触があり、”新婚旅行としてこれを両親にプレゼントしたいのですが、警備に問題はありますか?”と確認がありました」

「しっかりしてんなあ。まだ小学生だろ?」

「まあ、親が親だしな」

「というか、まだ新婚旅行ってなかったんだ、あの人たち」

「そりゃあなぁ。子育てが続いたってのもあるが、本人が自分の立場を弁え過ぎてたからな」

 

イングの父親である稲郷九郎は、人類の英雄である。

彼が生み出した各種兵器は人類を滅ぼさんとしたBETAから人類を守り、BETAを追い返した今でも同盟組織によって運用され、BETAという宇宙の害虫を駆除し続けている。

当然地球連邦にとっては最重要警護対象の一人であり、その警備レベルは現職の地球連邦大統領よりも上である。

その立場を本人もしっかり認識しているためか、自宅から出ることはほぼなく。

出たとしても妻の実家や帝都城への登城など、帝都から出ることもほぼない。しかも事前に出かける先をこちらに伝えてくる。

そもそも要塞と化している稲郷家に襲撃かけようなんて馬鹿は地球圏にはおらず。

移動中を狙おうにも帝都内は近衛局と情報局の庭である。かつての恭順派襲撃を受けて強化された警備・諜報網をもってすれば、悪巧みの準備を始めた瞬間にバレる。

宇宙勢力であれば分からないが、その宇宙勢力を総括する宇宙評議会から

 

『例外的に接触を認めたが、地球連邦が接触禁止対象であるDランク文明であることに変わりはない。各文明圏・組織はそのことを忘れず、節度を持って交流するように』

 

というお達しが出ているため、AFMM同盟やクライクンルがフィルターを買って出ていることもあって九郎を襲撃をかけてまで欲する勢力は確認されていない。

 

つまり、家にいる限り安全がほぼ保証されてしまっている。

 

おかげで警備は楽だが、同時にやることもほとんどなく。

なんとなく鳥かごに閉じ込めているようでいい気もしない、というのが警備チームの本音であった。

…実際の所、九郎は出掛けると高確率で良くないことが起こるというジンクスを抱えており。

元々出不精なことも相まって、外に出る必要性がないようにしているだけである。

 

「商店街の福引について、不審な点は?」

「情報局にも照会をかけましたが、後ろ暗いものは見つかりませんでした。正真正銘商店街の振興のために行われていたもので間違いありません」

「そもそもあの商店街で働く連中はバイトに至るまでうちと情報局の息がかかってますし。そうでもなければイング君も買い食いなんてしませんしね」

 

 

”めんどくさいことは百も承知だが、息子や娘たちには普通に学校に通わせてやりたい。俺たちができなかったことを、子供達にはたくさん経験させてやりたいんだ”

 

 

地球を救うためとはいえ、学校にも通わず同年代の者たちと遊ぶこともなかった九郎としては、子供達にはそういう経験をさせてやりたいと強く思っていた。

その九郎が頭を下げて伝えてきた数少ないわがままをかなえるため、学校やその周辺は近衛局によって強固な警備態勢が敷かれていた。

商店街もその一つで、有事の際にはここに逃げ込んで籠城できるよう秘密裏に要塞化されており。

当然その商店街で働く者たちも近衛局の人間や軍の退役者・予備役で占められている。

 

「不穏分子による工作の線はほぼ無し、か」

「つまり我々が気にするべきは、これからのことですね」

 

なにせ新婚旅行である。

出不精な九郎とはいえ、息子からプレゼントされたとなればそれを無駄にすることなどできないだろう。

加えてここ数年夫婦水入らずな場面などほとんどなかったのだ。

 

ほぼ間違いなく、彼は家から出る。

 

すなわち、ここ数年全くやることのなかった警備チームの者たちにとって久しぶりの仕事の時間である。

彼らは今、盛大に燃えていた。

 

「旅行プランは夫妻で決めるだろうからその間の警備計画は後回しとして、宿泊先の情報は?」

「創業200年の老舗ですね。要人も泊まることがある格式高いところですが、一般人でも泊まれるので警備体制はそれなりに準備する必要があるかと」

「宿泊先は温泉街ですから、それなりに周囲を歩き回るはず。予想される移動ルートと狙撃・襲撃予想ポイントの確認、対処方法の検討も必要ですね」

「情報局にも声かけろ。国内・国外問わず不穏分子の動きに目を光らせてもらえ。情報を掴んだ奴らは絶対に動くからな、水際作戦にならないようできるだけ先手を取りたい」

「…常駐チームだけでは手が足りないな。支局長。この件、どこまで使っていいんです?」

 

まだ具体的なところは何一つ決まっていないというのに、既に警備チームの前にはすさまじいタスクが山積みとなっている。

夫妻の旅行プランが具体性を帯びてくれば、その増加量は数倍では済まなくなるだろう。

早々に自分たちだけでは手に余ると判断したチームリーダーは、この場の最高責任者に確認を取る。

 

地球を救った英雄のために、権力者たちはどこまで出せるのか、と。

 

 

 

「全てだ」

 

 

 

その返答は、その場にいた全員の動きを止めさせた。

 

「連邦大統領府から既に特別編成予算が出ている。警備を万全にできるならば使い切って構わないし必要なら追加も出すと言われている。人員も同様だ、流石に完全に全てを投入するわけにはいかぬが、非番の人間を引き抜くぐらいは構わん」

 

あまりの大盤振る舞いに、さしものチームリーダーも言葉を返せない。

 

「人類はかの者からあまりに多くの物をもらった。だというのに我らはかの者が自由に出歩くことすら許してやれない。新婚旅行の一度や二度もさせてやれないのでは無能の極みよ。者ども、これが天王山と心得よ」

 

その言葉に、彼らは気合のこもった声で返した。

 

 

------------------------------

 

 

『エスコート11よりオールエスコーズ、キングとクイーンが宿泊先の旅館に到着、今チェックインした』

『了解エスコート11。今こちらでも確認した、引き続きプラン3に従って行動せよ』

『エスコート11了解。…やれやれ、これでやっと半分か?』

『まだ半分だ、気を緩めるには早いぞ。家に帰るまでが遠足だからな』

 

新婚旅行当日。

宿泊先につくまでの護衛を務めていたチームから報告を受けつつ、全体指揮官となった専属チームリーダーは全員の気を引き締めさせる。

 

『情報局からの報告でいくつか不審な動きを見せた連中もいるからな。総員些細な異変も見逃すな』

『来ますかね、連中。こっちが準備万端で待ち構えてることは分かってるはずですが』

『ここが虎穴と知っていても手を出さずにはおれんさ。なんせいるのは虎児ではなくプラチナの卵を生むガチョウだからな』

『あんな分かりやすい見せしめみてもまだやる気があるとか、根性あるなあ…』

『ありゃただの自滅だろ、こっちもある程度準備してはいたが』

 

マブラヴ世界において、宗教というのは基本的に敵か邪魔者である。

恭順派は言うに及ばず、それ以外の者たちもBETAを宗教的にどう解釈するのかに結論を出せず、全く人類の役に立たなかった。

結果として各宗教はその権威を著しく落とし。

BETA大戦の最前線が地球から遠く離れた今でもなお、民衆の宗教への不信感は未だ根強く残っている。

 

そんな状況において、とある連中がやらかした。

 

「我々は九郎・稲郷を我らの神が遣わした使徒と認め、聖人の位を与える」

 

あるエセ宗教の教祖たちが行ったこの宣言に、宗教界には激震が走った。

 

「なんて馬鹿なことをしやがったんだあの○ソ野郎ども!?」

 

…と。

その宣言から間もなく、九郎が記者会見を行った。

九郎のことを少しでも知っている宗教家たちが真っ青な顔でテレビに食いつく中、彼はマスコミに自分の主張を語った。

 

「他者の迷惑にならない限り、何を信じ誰に祈りを捧げるのかは個人の自由だ。ただ、俺個人の思想を述べさせていただけるなら。

神というのはろくでもないものだと、俺は思っている」

 

神を全く信じていない者を使徒と認めた。

それはそのエセ宗教に止めを刺すに、十分な威力だった。

当然その影響はそのエセ宗教だけにとどまらず、ほかの宗教にも伝播。

信徒たちの大幅な宗教離れを引き起こした。

 

『あの後自棄になった件の宗教家どもがテロリスト化して博士を襲撃しようとしたんだよな。その前に鎮圧されたけど』

『元々怪しげな連中でマークされてたし、地道な活動で信頼を取り戻そうとしてた真っ当な宗教家にとっても大迷惑では済まない影響が出たからな。向こうからも積極的な情報提供があって鎮圧はすごいスムーズだったらしいぞ』

『それでも博士を狙う連中は後を絶たんがな。博士が家から出んのでそういう連中も手をこまねいていたが、今回は連中にとっても千載一遇の好機だ、無理してでも動く可能性は高い。

予定ではこの温泉街で2泊するから、向こうにとっても万全な準備で襲撃をかけやすい状況でもある。

ここからが正念場だ、総員気を引き締めろ。

 

 

 

 

 

 

今温泉街にいる人間の半分が味方だとしても、だ。

 

 

 

 

 

 

これで博士に何かあったら俺たち全員無能以下の何かだ、気を抜くんじゃないぞ!』

『『『了解!!』』』

 

今回の新婚旅行護衛に当たって、連邦大統領府は小国の国家予算に匹敵する費用を出した。

専属チームリーダーはそれを残さず使い切り、他の支局からも人員を引き抜いたのだ。

今温泉街にいる客、従業員、出入りする業者の人間に至るまで近衛局の人間が入り込み、目を光らせていた。

 

『キングとクイーンに動きあり。外を散策するようです』

『狙撃対応班は事前にチェックしたポイントを警戒。他の者も周囲に気を配れ。僅かでも不審な動きをしたものはそれとなく遠ざけろ、二人に気づかれないなら何をしても構わん』

『あー、腕組んじゃってまぁ。仲睦まじいなあ』

『二人とも随分やわらかい表情するようになりましたよね。自分がチームに入ったころなんか、美沙さんは終始無表情で博士はしかめっ面で眉間にしわが寄ってましたよ?』

『近衛局が発足する前じゃねェか。そりゃ博士の場合大人のやらかしの尻ぬぐいであれこれ苦労する羽目になってたんだから顔も渋くなるだろ』

『昔言ってたもんなぁ。大人たちが○ソばっかりじゃなければ、そこそこ稼いでそこそこいい暮らしで一生を終えるつもりだったって』

『大人が事あるごとに欲かいて余計なことやらかしまくらなければ、もうちょっとマシな戦いになってたはずだもんなぁ』

『その節は、うちの○ソ共が誠に申し訳なく…』

『中国支局の人か?下っ端にどうこうできた話じゃねぇだろ、気にすんな』

『美沙さんはそもそも喜怒哀楽を教えてくれる人がいなかったせいですもんね。少しずつ笑ったりするようになっていきましたけど』

 

『雑談はほどほどにしとけ、あまり話し込むと雷が落ちるぞ?』

 

『おっとヤバい、周囲の監視に戻りまーす』

『同じく』

『右に同じ』

『まったく…ん?エスコート9はどこだ?』

『土産物屋の前に立ってる甲冑に化けてます』

『A型軍装持ち出し申請出してたのはそのためか!?何に使う気かと思ってたら…!』

『いいんですかねあれ?集まった観光客からめっちゃ写真撮られてますけど』

『中に人間が入ってるなんて誰も思わんだろ、あのままずっと微動だにせずにいられれば、だが。…いざとなったら飛び出して盾代わりになれるからな、そのままにしとけ』

 

護衛の局員たちは存在を悟らせることなく、二人の監視を続ける。

 

『あ、温泉卵買い食いしてる。珍しい』

『用意した相手が不明な物は絶対口に入れようとしなかったもんな博士は。外食もほとんどしなかったし』

『我々の警備を信用している、というアピールか?ますます気を抜けなくなったな』

『…あー、いいなああれ。食べさせあいっこなんて』

『どうしよう、なにも食ってないのに口の中が甘くなってきた』

『この仕事やってると基本出会いなんてないからなぁ。結婚できてもなかなか家に帰れないし』

『独身者には目の毒ですよアレ』

『…』

『待て、やめろ、なんで懐に手ェ突っ込んでんだお前何出そうとしてんだ嘘だろ馬鹿やめろちょっとだれか手ェ貸してェ!?

『エスコートリーダー、身内から襲撃未遂が』

『嫉妬とひがみで護衛対象に武器向けそうになるとか…』

『…これが終わったら見合い話用意してやる。だから今は仕事に集中しろ』

 

いくつか小さなアクシデントを起こしつつも、二人の旅行はまったりと過ぎていく。

 

『キングとクイーンが部屋に戻りました。現在夕食中』

『あー美味そう。一体いくらするんだろうあれ』

『ここの料理長は帝都城の総料理長まで務めた人だからな。食材も相当に吟味したと聞くし、一食で俺たちの月給に届くんじゃないか?』

『それを見ながらカップ麺すする俺たちのわびしさよ…』

『こっそりやってる毒見役はともかく、俺たちまで同じもの食って倒れるわけにはいかないからな。

…それでもせめて弁当ぐらいどうにかならなかったんですか』

『その弁当の手配だけでどれだけ手間がかかると思ってんだ?この件が終わったら支局長の奢りで全員高級焼肉だ。今は我慢しろ』

『しかし、美沙さんの顔が心なしか赤いような…』

『やっぱさっきのあれじゃない?微妙に腰揺らしてるし』

『さっきのナンパか』

『すげえよな、五歳児がナンパだぜ?”ねぇねぇおねぇさん、オラと裸のお付き合いしな~い?”って。どんだけませてんだ』

『夫妻がベンチで休んでたら、いつの間にか美沙さんに絡んでたんですよねあの子』

『こっちの警戒網潜り抜けるとかまさか襲撃者の一味!?って緊張した直ぐ後のあのセリフよ』

『思わずずっこけちまったぞ俺。いや防衛線潜り抜けられたから全然笑い話じゃないんだけど』

『そしたら博士のアレよ』

 

隣に座る美沙の腰を抱き寄せ、九郎はその子供に言ったのだ。

 

「悪いな坊主、美沙は俺の女だ。お前もいい男だが、俺はお前の100倍いい男だ、だからお前じゃ美沙は落とせねぇ。悔しかったら俺の1000倍いい男になって見せな」

 

『あの時の美沙さんの顔、茹でダコもびっくりなぐらい真っ赤でしたねぇ』

『殺し文句が過ぎる…男なら一度ぐらいは言ってみてぇ…相手いないけど』

『やめてくれ、その言葉は俺に効く』

『まあそのあとすぐあの子の両親がやってきてふくれっ面の子にげんこつ落としたのには笑いましたけど』

『あの様子だと常習犯っぽいからなぁ。すげぇガキもいたもんだ』

 

『…で、殺し文句が効きすぎて発情してると?』

『あの様子だと食事が終わったらすぐにおっ始まるんじゃ』

『流石に食休みと内風呂くらいは入るだろ…入るよね?』

『どうかなぁ。前に理性ぶっ壊れた時は3日3晩ぶっ通しだったし』

『そりゃあんな美人な嫁さんがエロサンタ衣装着て迫ったら男は壊れるだろ』

『あとで利秋さんに怒られてましたもんね。”仲良うするのはいいが、もうちょい節度を持て”って』

『心配ない。ロイヤルスイートだから防音は完璧だ、宿の人間も心得てる』

『そういう意味じゃねえよ。一晩中アレ聞かされながら見張りしなきゃならねえんだぞ俺たち』

『ヤルとき凄い激しいんですよねェあの二人…一晩中手が動きそうになるのを必死で止めながら警備とかもう拷問ですよ』

『美沙さんが逆バニー着た時はもう獣の咆哮その物だったもんな』

『問題ない。今回は心強い助っ人がいる』

 

『どうも、助っ人1号のかぐやです』

『助っ人2号のつばきです!!』

 

『なるほど、AIなら性欲がないからうってつけですね』

『良かった…あれは毎回つらいんや…』

 

『フヘヘヘヘヘヘマスターと美沙様の情事の生音声じっくりしっぽりネットリ録音しておかなくては…!』

『外出先でとかまずありえないシチュエーション…一言一句漏らさず最高音質で記録しなくては…!』

『…リーダー、まずこいつらを拘束するべきでは?』

『背に腹は、変えられん…!』

 

そうして夜は更けていく…。

 

『…ヴェアヴォルフ1よりエスコートリーダー、温泉街に近づく不審な集団を発見』

『こちらエスコートリーダー、詳細を報告せよ』

『ワーカードッグが10機ほど、山の中を移動して接近中。対人火器を装備しているのを確認した。誰か聞いてる?』

『予定もないし報告も受けていない。ヴェアヴォルフ1、対処を許可する。静かにやれるなら何をしても構わん』

『ヴェアヴォルフ1了解、とりあえず一番偉そうなのはできるだけ生かして捕まえるわ。他に関しては保証しないけど』

『優先すべきは新婚旅行の完遂だ。それ以外はすべて些事だ、任せる。

各員警戒レベルを上げろ、奴さんどものお出ましだ』

 

その夜、温泉街のいたるところで空気の抜けるような音や刃物が水気のあるものに刺さる音がしたが、それが一般人の目や耳に触れることはなかった。

また山向こうで土砂崩れがあり一部の道が通行止めになったが、ほとんど使われていない旧道だったため気にする者はいなかった。

 

…なお、九郎と美沙は次の日の夕食まで部屋に篭りきりだった模様。

何してたかって?言わぬが花である。

 

 

------------------------------

 

 

パンパンと、柏手を打つ。

一礼しながら願い事を、いや俺の場合は少し違うか。

とにかく神様へのあいさつを済ませる。

同じタイミングで顔を上げた美沙と二人で本殿から離れる。

 

「少し意外でした」

「神社に参拝に来たことがか?」

 

神社の境内を歩きながら、美沙が話しかけてきた。

新婚旅行の帰り道、たまたま近くに神社があったのでちょうどいいと参拝することにしたのだ。

近衛局の連中には突然の予定変更で申し訳なかったが、こんな時でもないと神社に行こうなんて思わないからな。

 

「九郎は神を否定しない、いえむしろいると思ってはいますが、かなり嫌っていましたから」

 

ああ、その件か。

マッド連中とかにも言われたけどな。科学者なのに神様なんてオカルト信じてるのかって。

理由言ったらすごい顔してたけど。

 

俺という存在そのもの(転生者)がオカルトだからな。そりゃ神様や幽霊ぐらいいてもおかしくないだろ」

「それは何というか、身もふたもないというか…」

 

連中は俺が転生者だということを知らないが、転生してようがしてなかろうが3歳で戦術機設計するガキなんてオカルト以外の何物でもないからな。

 

「それに忘れてないか?お前も本来そのオカルト側の存在なんだぜ?」

「…そうでした。本来なら超能力者も宇宙人もオカルトの類でしたね」

 

薄く笑う美沙と腕を組みながら歩く。

 

「まあ今回の参拝は、いわば感謝と釘刺しだな」

「感謝と、釘刺し?」

 

はてな顔の美沙に、俺は願った内容を話した。

 

「決戦の時、見守るだけにしてくれたことへの感謝と。もう手ェ貸すんじゃねぇぞ、ていう釘刺し、いや宣戦布告か?」

 

BETAとの戦いは新たな局面を迎えつつある。

星の海の向こうから来た友人たちと協力することで、もはやかつてのような絶望的な戦いではなくなった。

人類は、自分の足で立てる。明日に希望を持って歩んで行ける。

 

奇跡という名の神の助力は、もう必要ない。

だから見守るだけにしてくれ。いや本当マジで。魔神とか皇帝とか来ないように何とか抑えといてくださいお願いします!!

 

「…という感じで」

「それは懇願というのでは?」

 

だってあれらが来たらようやく何とかなりそうな未来が無茶苦茶になるのが確定しちゃうし、対抗可能な存在なんてそれこそそういう連中ぐらいだし。

どうか互いに潰しあってこっちを気にかける暇がないことを願う限りである。

あれらが来さえしなければ、俺もお役御免なはずなのだから。

 

「…なあ、子供たちは大丈夫かな?」

「ええ、大丈夫です。私たちの頃のように、絶望しか見えない時代ではなくなりました。あの子たちは未来に希望を持って生きていけます」

「…そうか」

 

なら、俺が絶望に抗った意味はあった。

前世に目覚めたあの時、最初から諦めずに戦う道を選んだ意味が。

自分には無理だと思っていた。この世界では尚更だと。

それでも歯を食いしばって、前に進み続けた甲斐はあった。

今なら、俺は子供たちに胸を張って言えるだろう。

 

 

諦めなければ、未来は変えられるのだと。

 

 

そんなことを思っていたらピピピピピ、と電子音が鳴った。俺の懐から。

引っ張り出してみれば、鳴っていたのは俺の携帯電話。

 

「着信?研究所の奴から?」

 

何かあったのだろうか、と訝しみつつ出てみれば。

 

「ボスぅ!!助けてくださいぃぃぃぃぃィッ!!?」

 

マッドの叫び声が耳をぶち抜いた。

思わず耳を抑えながら怒鳴り返す。

 

「うるせぇ!一体何事だ!?」

「帆場の奴がBETAの量子通信暗号プロトコルの解析に成功したんですが、所長と組んで何かよくわからない音楽流したせいで宇宙中のBETAが意味不明な行動取り始めたってAFMM同盟から報告が!!え、なに、よくわからないじゃなくて亀○ップだって?どうでもいいんだよそんなことォ!?

ボス、助けて下さ」

 

ピッと。

通話を切り、俺は携帯の電源を落とした。

突然通話を切った俺に困惑している美沙に、これ以上ないほどの笑顔を向けて話しかける。

 

「美沙、もう少しあちこち見て回ってゆっくり帰ろうぜ?」

「いいのですか?その…」

「いいのいいの」

 

若干後ろめたそうな美沙を笑顔で背中から押しながら、俺は歩みを進める。

ここまで散々頑張ったのだ。これ以上、誰かの尻拭いは勘弁である。

もう俺の手がなくても何とか出来るはずなのだ。せいぜい頑張ってもらおう。

 

未来は、こんなに明るいのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、私の方にも着信来ました」

「切れ」

 

 






亀○ップを聞かせられたBETA
「????????????」
いきなり踊り始めたBETAを見たAFMM同盟の前線部隊
「????????????」
報告を受けたAFMM同盟上層部
「????????????」
同じく報告を受けた地球連邦
「????????????」

徹夜とストレスでハジケた香月「メケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケメケ」
同じく帆場「BABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABELBABEL」


前書きの通り正真正銘これで最後です。
それでは皆さん良いお年を!


2百万回いったらちょっと考えてもいいかな(ボソッ


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