飛行迷宮学園キヴォトス   作:石花

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3.這い寄る存在

「前衛、タンク役が必要です」

戦車は戦力確保のため、次の目的地へと向かっていた。

 

ツルギやヒナを相手取るには、真っ当な編成が必須条件だ。

現在のメンバーに不足しているタンク役で、色彩の影響を受けていない可能性があり、できれば戦力として期待できる人物。

 

アコの問いを受け、ハナコが思案する。

「と言ってもタンク役はほぼ2択ですね。どちらも影響を受けていない可能性がありますが……」

 

元からそうである者、分割思考に慣れている者、理性が尋常でなく強い者、正気でない者、そういった知識が皆無であるもの、欲求が皆無である者。あるいは、

 

「どんな前提であろうとまず壊す者――と言うと大げさですけれど。影響を受けていてもなんとかなりそうな方に心当たりがあります」

 

◇ ◇ ◇ ◇ 

 

「ようこそお越しくださいました。救護ですね」

 

救護騎士団に居たのは、堂々と起立するミネと、気絶し倒れ伏す救護騎士団のメンバーだった。

 

「あの……騎士団の皆さんはいったい……」

「救護しました。ハナエや他の皆さんには救護が必要そうでしたので」

ヒフミは倒れ伏すメンバーを心配そうに見つめ、アコはゲヘナでもかくやの凶行に目を丸くした。

 

「他校の内部事情に首を突っ込むのもアレですが……これは流石に、他にやり方があったのではないでしょうか?」

「ええ、確かに。軽度の拘束や空き教室への軟禁といった手は考えました」

「なら、どうして……」

「想像になりますが――これは嚮導者と同様に色彩が関わる案件なのでは? 影響を受け拘束すら引き千切るなどの想定外の事態を考え、気絶させるのが最善と考えたのですよ」

「なる……ほど……?」

仮にもトリニティでティーパーティーに比肩する地位を持った集団の長、確かな知性と戦略眼を備えている。それはそれとして結論が物騒でもある。

 

「それで、ええと、その……ミネ団長は、大丈夫なのでしょうか?」

「色彩の影響ですか。理性で多少は抵抗していますが、抑えきれるものではありませんね。しかし――重要なのは、原因を取り除くことなのです」

 

大盾を勢いよく床に叩きつけ、騎士団長は宣誓する。

 

「この滾りは全て、元凶の打倒にぶつければいいのです!」

◇ ◇ ◇ ◇ 

 

「中に誰も居ないのは確認しましたけど……本当に大丈夫ですか? 念のため近くに居なくていいですか?」

”大丈夫だよ。救護騎士団の部屋からでも、誰が通ったか分かるでしょ?”

「それはそうなのですが……」

 

救護騎士団で少し休憩している中、私はトイレに行きたくなってしまった。

しかし男性トイレが近くにないため、救護騎士団の部屋の先、突き当りの女子トイレを使わせてもらうことにしたのだ。

 

このトイレは廊下の突き当りにある。突き当りに非常階段はないため、ここに来るには救護騎士団の前を必ず通る。また、トイレの窓から侵入することも不可能だ。ここは上層階であるうえ、仮に窓まで来れたとしても人が通り抜けられる大きさではない。

つまり、誰にも気づかれずトイレに侵入する方法はない。絶対・確実・安全に、用を足すことができるのだ!

トイレの個室に入り、女子トイレで立ちションは気が引けるので、ズボンとパンツを下ろし便座に座る。

 

天井を見上げながら、ひと時の自由を楽しむ感覚と共に黄金の水流を解き放つ。

仕事も、日々の喧騒も、今回の騒動からも解放されたほんの数十秒、その余韻を楽しみつつ顔を下に戻すと――両ひざの間に、人の顔があった。

 

何者か? 決まっている。どうやっても侵入できないはずの場所に出現できる存在は、キヴォトス広しと言えど1名しか該当しない。

 

ああ、どうして彼女の存在を失念していたのだろう。肩につく程度の桃髪が揺れる。

天使のような笑顔を浮かべ、侵入者は語りかける。

 

「先生のここ、色々と悪いものが溜まっているみたいです……治してあげますね」

 

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