弱虫うさぎは病室の中   作:妄言a〜

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貴方に捧げる拙いステップ

 

「んっぅぅぅ〜〜〜明日はついにだねぇ〜!!」

 

あれから随分長い時間が経ったと思う、劇的に何かが変わって決定的に人生を左右されるようなことも無く、平穏無事でいつも通りの何かがかけている状態にも慣れて、それを日常と思うことが少しだけれど出来るようになったと思う。

 

「うるっさいわねぇ、アンタは本当に楽しうでいいわね」

 

「先輩はいっつも楽しそうじゃなくて良くないねぇ」

 

ここは自宅ではなく事務所、そこに敷布団を敷いて3人で川の字になって寝ている、興奮のあまりどうしても頭が冴えて今か今かと待ち遠しい気分のまま思わず声を上げてしまったら、隣でうっとおしそうな声が聞こえてきた

私の1年年上の先輩、有馬かなちゃん、b小町として本格的に動くために加入してもらった小さくて可愛くて小生意気などこかの誰かにほんの少し似ているようで似ていない先輩だ

 

「どうしてあんたはそんなに楽しそうなのよ?明日がどうなるかなんて誰にも予想できない、私たちみたいなコネ組はブーイングの嵐かもしれない、そもそも客が居無さすぎて閑古鳥が泣いてるかもしれないのよ?どーしてポジティブでいられるのか」

 

「ん〜」

 

先輩はやっぱり色々考えてる、正直私にはそんなこと考える余裕が無いから?だろうか、私にとって憧れでその舞台に同じ名前でそこに立つ、それがどれだけ焦がれて待ち望んでいた瞬間だったかいくら言葉を尽くしても説明できるものでもないと思うし

 

「憧れだから…私は昔ずぅーと部屋から出れない生活してて未来に希望も何も無くて、このまま静かにドキドキもワクワクもしないまま死んでくんだろうなーって思ってた、だけど」

 

そこで一度言葉を区切る、あの時のことをあの冷たくて清潔なだけの白に囲まれただけのことを思い出す時少しだけ心がチクッとしてしまう、だからあんまり思い出したくも話したくもない、

でも、

 

「ドルオタになってから毎日楽しくて、好きって気持ちが溢れて、推しがいる生活って良いよォ?アイドルをすきになったことないなんて先輩損してる」

 

「別に損でいいわよ」

 

またそういうこと言ってぇ〜先輩は本当にひねくれてて素直じゃないなぁ

 

「でね?その時ある人に出会って」

 

「ある人?」

 

「その時私に言ってくれたの、もし私がアイドルになったら推してくれるって」

 

「あら、甘酸っぱい」

 

「だから、絶対見せなきゃ行けないからなんかそういう暗い考えとか全っぜん浮かんでこなくて」

 

「恋する乙女はなんとやらってやつ?炎上沙汰だけはやめなさいよね?」

 

「もぉ〜アイドルやってる時にはないよ、多分…」

 

「今多分って言ったの聴き逃してないからな、この」

 

軽く笑って誤魔化して謝る、多分アイドルをやってる時、せんせは何がなんでも手を出してこないし、これだからモラリストは、そんなところも素敵でかっこいいけど、

でも

 

「でもね?もう1人問題児がいるの」

 

「何?まさかの三角関係?」

 

「そんなんじゃないってばぁ」

 

そんなんじゃ決してない、布団を深く被りながらボソボソと喋り始める、篭ってるから聞こえてないかもしれないし、少しづつ瞼が閉じてきたから喋れてるかどうかも分からないけど

 

「ある時突然私の部屋に現れて無遠慮でデリカシーなくて、人の気持ちも知らないでズカズカ人の心に入り込んで、頑張ればどうにかなるとか、頑張って戦えとかもうずっとめちゃくちゃ」

 

「急にどうしたの?話聞くだけなら随分最低だけど」

 

「そう!最低なんだよ先輩!小生意気な態度で突っかかってきたと思ったらなんでもない事を私がする度にすごいすごいって褒めてきて、頑張り屋で真面目でちょっとひねくれてて、私の中に勝手に入ってきたくせに勝手にどっか行っちゃったの」

 

そう、嘘だ…消化して日常に慣れて行ったけれど、たまにふと、いや結構考えてしまう、今何してるのかな?とか、また勉強ばっかりやって無茶してないかな?とか、くだらなくて退屈な日常の話をしたかったり、どうしても心の中でカサブタにならないで今もたまに傷口からドロっとした何かが溢れちゃう

 

「だから…だからね、私がアイドルになって皆の前で可愛く踊って笑って、見つけてもらって、絶対文句言うんだ…遅いって、早く…私を…みつけ…て……………」

 

「………いいわね、あんたは、誰かに見て貰えて」

 

 

ライブ当日、正直ドキドキワクワクが止められなくて落ち着いて車の中で座ってることすら難しい

 

「キンチョーしてきた〜!上手くやれるかなぁ〜!!」

 

「大丈夫!睡眠はしっかりとったでしょ!徹夜のダメージは3日ぐらい続くってどこかの大学の研究で出てるみたいなことを、誰かが言ってた…って先輩が言ってた!」

 

「又聞きの…又聞きだね」

 

今話してるのはMEMちょ、私たちの中では最年長でb小町の名前を広げてくれたインフルエンサー?youtuber?とにかくとっても凄いことは確定してる我らがお姉さん!

 

「ょぉーし頑張るぞぉ〜!!」

 

そこからは色々大変だった、ちゃんとした楽屋なんて用意されてなかったらしく、大量の人達と一緒にそこそこの広さの部屋に押し込まれたり、私だって熱意では負けてないって思っても会場の熱気が凄くて当てられて緊張してしまったり、私も緊張してしまって、でも小さくて可愛い先輩はもっと緊張してたり

だけど

 

ついに

 

 

ついに

 

私たちの番が回ってきた!

 

ステージに立って、曲が始まった瞬間の熱量、突風みたいに熱が私たち3人に向かって一斉に吹き荒れて、ライトアップされているのに圧倒的な数のサイリウムで目が暗みそうになった、曲が始まるから集中しなきゃと考えたけどどうしてもキラキラした観客席にいる皆を見ずにはいられない、いつの間にか曲は始まっていて、私たちは踊って、歌い始めた…

ぁ、先輩はまたすぐそうやって暗い顔して、せっかく可愛いんだからもっとにこって、ほら、こうやって…ね?

 

「みんなぁ〜ありがとぉ〜!!」

 

気付いたら1曲目は終わっていた、位置変わる時注意しなきゃとか、歌詞間違えないようにとか、そういうの全部なくなってて、あっという間に1曲目が終わった、観客のみんなに受けいれてもらうとか、ブーイングとか、失敗しちゃうとか、そういうのは全部頭から飛んで真っ白だ、ただ憧れたステージに立てて、今こうして皆の熱意の先に私が立って3人で受け止めて、画面の向こうでいつも考えてたことが現実になった瞬間はあまりにもすごくて、それのせいで考えるより先に口が動いちゃう

 

「次は!!皆知ってるあの名曲!サインはb!!!」

 

そうやってまた私たちは位置について、曲が鳴った瞬間何回も何回も、ディスクが擦り切れて無くなってしまうぐらい、網膜に焼き付くぐらい見て、聞いて、熱狂した画面の向こうのアイを追いかけるように!

短すぎる、もっともっと!続けばいい!ママはこの景色を見てたんだ、ライブの曲なんて一瞬であっという間に終わってしまう、終わりたくないと考えながらどこかで終わりなんて考える暇がないと身体が全力で動いて、口角が痛いぐらいの笑顔を浮かべて精一杯アピールするあたしはここにいる!

 

さりなは、ルビーはここに!!

 

ここで精一杯歌って踊ってまるで騒ぐみたいに、でも徹底的にアイドルとしての可愛さを意識して、

こんな私を見つけられないなんて、そんな損お姉ちゃんとして見過ごせないよ!

 

秋!!

 

ここに来たなら踊らにゃ!損!損!損!

 

 

その瞬間白いサイリウムが自己主張するように掲げられた、10年以上共にすごした、最愛のお兄ちゃん、そしてせんせ…

 

プッゥ!!何してるのお兄ちゃん!!というか最愛の妹の担当カラーじゃなくて先輩のってどういうことぉ?MEMちょのも持ってるし!もしかして箱推しってこと?全く優柔不断なせんせらしいよ、まぁ?周りの目も気にせず全力オタ芸してくれてるのに免じて今回は、

 

許してあげる……

 

 

 

ぁッ…

 

観衆の中で埋もれて、見つかるはずのない赤いサイリウムが掲げられる、そしてせんせから離れた場所でまるでサイリウムの光で炙られている昆布星人のようになりながらも必死で両手赤一色のサイリウムをこれでもかと振り回して拙いオタ芸をする誰か、

 

 

 

嘘……

 

 

 

 

まっったく、しょうがないなぁ、ぷッっ!!私とせんせがあれだけ教えたのに相変わらずヘッタクソだなぁ!というか赤一色って!私の事好きすぎ!私の事推してくれるのは良いけど、あんまりオタ芸下手くそだと

 

貴方のアイドル!サインはb!!

 

 

ちゅ☆♡

 

 

ファンサしてあげないよ?

 

 

 

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