10話まで見た上で一番好きな八幡海鈴さんで書きました。
リアルに傷口抉る描写はないですよ
真夏の外は暑い。
わざわざ言うことではないけども、まあ暑い。
「早すぎたな...」
時間にはだいぶ早かったために、目的地に併設されているカフェテリアで時間つぶしをすることにした。
ライブハウス、RiNGのカフェテリア内。
「そういえばさ」
「はい」
サポートベーシスト、八幡
たった今そこで出会って、相席している。
「海鈴がついてるバンドっていくつぐらいあるの?」
「現在は30ほど。現在活動中という括りだと10いくつかと」
「...スケジュール管理大変そうだね」
「まぁ、そうですね。でも、こうしてお茶をするくらいの時間はあります」
なんか申し訳気持ちが湧いてくるけども。
「...あんまこういうこと聞くのもあれかもしれないけどさ」
「そう思うならやめればいいのでは?」
「...じゃあやめとこ」
「...いえ、気になるので聞いてください。このままでは夜も寝れない気がするので」
そもそもこの問いを出すのがだめだったか。
「専属のバンドとか、っていうのは...?」
「...まぁ、予想はついてましたが」
「やっぱ、聞いちゃいけないことだった?」
「どちらかと言えば、話したくない部類ですね」
今すぐ逃げ出したい気分だ。
もっとほかの話にすべきだった。
「まぁ、気になるなら答えますよ?」
「じゃあ、お願いします」
「端的に言えば、自然消滅です」
「いつだか勝手に消えたんだ...」
「はい。まぁ、そこまでショックではなかったですが」
そういう彼女の手は微かに震えているので、嘘だと分かる。
「だから、サポートに専念してるんだ」
「そうですね。もしかしたら...」
俯いて、カップを握りしめる彼女の顔は分からない。
「怖い、のかもしれません」
「解散が?」
「何度も音を合わせた同士が、バラバラになるのが。だから...」
「だから?」
「...いえ、忘れてください。あなたは夜に寝れなくても困らないでしょう?」
「夜型人間なのバレてるのなんでや」
解散が怖いからサポートに入る。
もしサポート先が解散していたり、ベーシストを見つけていれば、サポート先が1個減ったと思えばいいだけなのだから。
「...それ、本当に解決策かな」
「というと?」
「サポートとはいえ、1回はライブしてるわけじゃん?もういいって言われたら、寂しいものじゃないの?」
黙ってしまった。
今のは地雷だったかもしれない。
「...確かに、そうですが。サポートとして割り切ることはできます」
「...所属バンドの解散よりはダメージがないって、そういうこと?」
「そういうことです。...そういえば、今は夏ですが、怖い話がありまして」
「唐突な話題変更。嫌な話振ったのは謝るよ」
謝意を「いいえ」と柔らかい笑顔で返されて。
「私の友人がバンドをやっているのですが、いつだかサポートに入ってくれと言われたので、行ってみたら」
「みたら?」
「...空中分解しかけでした。こんな状態でライブなどできそうもないので、また連絡してくださいと言ったのですが」
「...来ないの?」
「はい。彼女たちは、立派にやってますよ」
彼女の目線の先を追ってみると、今日のライブの出演リストがある。
「私のサポートは17時半からのバンドですが、良ければその次のバンドも見ていってください。きっといいものだと思います」
「...分かった、楽しみにしとく。海鈴のベースも、その次のバンドも」
「はい。コーヒーも御馳走様です」
「...分かったよ」