MS隊、どうにかしろ(無責任)   作:赤マムシX

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お久しぶりです。
遅くなり申し訳ありません。
近況は活動報告でしますが、また投稿が不安定になりそうです。


50話 消えぬ炎

 

「こりゃまた、地球軍もオーブもとんでもないモンだねぇ」

 

 放棄されたオーブ軍の観測所から拝借した双眼鏡を外し、これは参ったといった風にバルトフェルドが呟く。

 彼の視線の先では、突如飛来した金色のモビルスーツが、巨大モビルスーツを翻弄して僚機のパーフェクトストライクと連携して追い詰めている。

 その隣では、アスランが同じように双眼鏡を構え、焦点を新型のGと交戦中のフリーダムに合わせる。

 

「キラ、お前は……」

 

 アスランの呟きに、バルトフェルドが再び双眼鏡を構えて同じく焦点をフリーダムに合わせる。

 しばらくの観察の後、バルトフェルドが出した結論はアスランと全く同じものであった。

 

「あの動き、調子が悪いように見えるな。何かあったのかね」

「……優しい奴なんです」

 

 アスランは傍らに立てかけていた自動小銃を手に取り、動作点検を始める。

 これもまた、オーブ軍が放棄(・・)していたそれを拝借したもので、バルトフェルドもアイシャも同じく携行している。

 

 バルトフェルド達と合流したアスランは結局オーブから脱出せず、戦闘地域の際を移動し続けてオーブ軍とユーラシア連邦軍との戦闘の推移を見守っていた。

 幸運にも、ユーラシア連邦軍のモビルスーツや陸戦部隊と遭遇することもなく比較的安全な旅を続けていた3人であったが、しかし一つの問題が彼等の進退を悩ませていた。

 

『残存部隊はオノゴロ地域を放棄し、カグヤまで後退せよ。じ後の行動については……』

 

 内陸部まで侵攻されたオーブは防衛線を下げ、マスドライバー周辺を絶対防衛線として最後の抵抗を試みるらしい。

 それは現在アスラン達がいる市街地付近を放棄することであり、この地域一帯がユーラシア連邦に制圧されるといった事を意味していた。

 

「ここらが地球軍に制圧される前に、逃げなきゃならんが……にしたって、どこに逃げりゃあいいんだ?」

「泳いでカーペンタリアにでも行く?」

 

 ボクはカナヅチなんだと返すバルトフェルドだったが、実際の所自分とアイシャの進退は眼前で迷っている少年に懸けていた。

 初めて会った時から只者ではないと感じており、また後に聞いた話では自分が敗北し、捕虜になった後もダコスタ以下多くの兵を纏め上げ、無事ジブラルタルへ撤退させたという。

 戦士としても指揮官としても非凡である(若者)に期待をかけてしまうのは、自分が老いてしまったからであろうか―――と考えたところで、まだ30歳だろうと自分で突っ込みを入れた。

 とはいえ、ひとまず彼の意見を聞いてみよう、と顔を向けたところで彼がオーブ軍が撤退していく方向を見つめているのに気がついた。

 その先には、オーブの最重要施設―――マスドライバーがあった。

 

「宇宙へ……」

「ほう……?」

「宇宙へ、上がります。俺は父と、一度話したい……」

 

 俯きがちになりながらも、2人に向かってハッキリと言う。

 自分のやろうとしていることが間違っているのかもしれない、と考えつつもアスランはそのように言わずにはいられなかった。

 言わなければならなかった。

 父のこの怒りが母と自分を失ったことを発端としているならば、生きている自分が止めなければならない。

 これが思い上がりであるかもしれない、そこまで期待されていた息子ではなかったのかもしれないが、肉親の情か何なのか。

 とにかく、一度会って話をしなければならないと感じたのだ。

 

「俺はマスドライバーの方へ行って、どうにか忍び込みます。お二人は……」

 

 その後はどうする? バルトフェルド達はどうする? 上手くシャトルか何かを奪ったとして、無事にプラントまで辿り着けるのか? という現実的な面が思考を掠め、アスランの言葉が詰まる。

 やれやれ、といった風にバルトフェルドとアイシャは目を合わせて笑った。

 

「乗り掛かった舟、ってのはこういう事なんだろうねぇ……」

「フフ……」

「は……?」

 

 不敵に笑うバルトフェルド。

 その視線の先には、かつて自身が囚われの身になっていた白亜の巨艦が映し出されていた。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 オーブ全軍は集結地点に指定されたカグヤ島まで後退。

 宇宙港の島であるそこは応急的な防衛施設や兵站施設を構築できるほどの地積はなかったが、しかし仮設されたドックではアークエンジェルが応急補修を受けていた。

 同じく、補給物資の積み込みやモビルスーツ―――M1アストレイの積み込みも行われており、この艦が戦線を離脱するということは誰の目にも明らかだったが、業務に従事する人々に疑念や諦念、そういったものは皆無であった。

 臨時の司令部と化したマスドライバー管制室に呼び出されたマリューらは、来る時が来たのだと皆一様に重い表情をしていた。

 

「―――離脱、ですか」

「もはや、時間の問題であろう……これまでよく戦ってくれた。礼を言う」

 

 ウズミがマリューらに頭を下げる。

 軍を離脱して義勇軍として戦ってきたアークエンジェルの一行には、離脱せよというウズミの物言いにそれは心外だと思う者もいた。

 しかしオーブ軍の現状は如何ともし難く、たとえアークエンジェルと艦載モビルスーツという戦力があったとしても再度の攻勢をかけられれば全てを飲み込まれてしまうだろう。

 そうなる前に離脱せよ―――という物言いは、クルーの生命を預かるマリューには理解できる話だった。

 

「人々は避難した。支援の手も、あろう。後の責めは我々が負う」

 

 ウズミが沈鬱な表情で言う。

 国の指導者である以上、自国が滅ぶというのは最悪の結末だ。マリューには計り知れないほどの苦渋だろう。

 

「だが、たとえ国を……オーブを失っても、失ってはならぬものもあろう」

 

 沈鬱な表情のウズミの瞳には、それでも未だに燃え尽きぬ炎が残っていた。

 傍らに立つカガリは心配そうに父親を見つめていたが、父の心中のことは理解していた。

 自分もここに残り、父と共に責めを負おう―――そういった悲痛な覚悟も、あった。

 

「地球連合もプラントも、もはや身の内に巣食った悪意が残った僅かな理性すら食い尽くしてしまうだろう。そうなれば、悪意がお互いを際限なく貪り続けよう……」

 

 マリュー達は、ウズミの言っていることが理解できた。

 失ってはならぬもの……それは、憎しみに流されることのない理性。一度孕んだ憎しみを連鎖させずに止める理性。

 そして、オーブという国家の理念。

 

「過酷な道だが……行ってくれるな。マリュー・ラミアス」

 

 自らの遺志を継ぐ者の一人として、ここで斃れるよりも更に険しい道を進むよう示す。

 託されたものの重みをひしひしと感じながら、彼女は思わず傍らに立つ男を見遣る。

 ムウは彼女の視線を真正面から受け止め、小さく頷いた。それだけで十分だった。

 やがて彼女は、ウズミに対して敬礼で応じる。同じくムウも、それに倣った。

 

「―――あとのことは、頼む」

 

 サクヤの視線がぴくりと動く。

 ウズミは彼に視線を合わせ、目で何かを訴えかけた。

 

「…………」

 

 サクヤはそれに、目礼で返した。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

「キラ、ちょっといいか」

「サクヤさん」

 

 慌ただしく時間が過ぎていく中、アークエンジェルの両舷には大気圏離脱用の補助ブースターの取り付け作業が進められていた。

 仮設ドック内ではモルゲンレーテの作業員達の怒鳴り声と重機の音で満たされ、会話するのもやっとの状態だった。

 そんな中でようやくキラを見つけ出したサクヤは、がらんとしているモビルスーツの整備区画までキラを連れ出した。

 

「前に話した件なんだが」

「あ、はい」

 

 持っていたチョーカーと手錠のキーを思い出したように取り出し、それを渡そうとするキラ。

 しかし、サクヤはそれを受け取るのを固辞した。

 

「ラミアス艦長にも、フラガ少佐にも許可は取った……それは君が持っていてくれ」

 

 かなり渋られたけどな、と苦笑する。

 ディー・トリエルは既にアークエンジェルに乗り込んでおり、監視付きではあるがある程度の行動の自由は保障されていた。もちろん、入念な身体検査の上ではあったが。

 どういった意図で、彼女を自分に託したのかが分からず、キラはただただ困惑した。

 ただ、どういう訳か……どこか懐かしい感じがした彼女のことは、放っておけない気がした。

 どこかで会ったのかもしれないな、と感じたところで、先日交戦した機体のことを思い出す。

 自身と同じ顔、同じ声、そして『キラ・ヒビキ』という名。

 その事がキラの心の中で澱となって、心を澱ませていた。

 

「キラ」

 

 そんな彼の心を見透かしたか、それとも読んだのか―――サクヤはキラの頭をくしゃと撫でてやった。

 

「アークエンジェルが宇宙に上がったら、俺は元の所属に戻る」

「……はい」

「ただ、俺は君たちの敵になったワケじゃない。それだけは忘れないでくれ」

 

 理性を食い尽くした化け物にはならない、と自分に言い聞かせるように。

 手を離し、サクヤはキラに背を向けて歩き出した。

 

「トリエルのこと、頼む」

 

 仮設ドックと同じく臨時で備え付けられたモビルスーツの整備区画は既に機体が出払っており、今は整備中のアカツキとクサナギへ運び込まれるのを待つストライクルージュだけがそこに残されていた。

 ルージュの背には当初の通りI.W.S.Pが取り付けられていたが、アカツキの背には見た事のないストライカーパックが取り付けられている。

 コクピットに乗り込んだサクヤは慣れた手つきで機体を起動させ、各部のチェックを始める。

 間に合わせかどうかは分からないがストライクと共通の内部配置であるコクピットは慣れ親しんだものであるし、機体構造自体も似通っているこの機体は非常に扱いやすく、そしてどこかストライクルージュよりも親近感を覚えていた。

 

「各部チェック、オールグリーン……試作『オオトリ』、異常なし」

 

 『オオトリ』と呼ばれた試作ストライカーパックのウイングが動作確認をするように少し動き、その後当初の格納位置へ戻る。

 

 交戦記録から、キラのことは分かっていた。誰と戦ったのか。

 その時に、どのような事を言われたのかも予想はついた。

 しかしそれは俺の口から言うべきことではなく、いずれ本人が知ることになるだろう。

 ならばその時に―――折れないように、圧し潰されないようにしてやらなければならない。

 

「……破廉恥な男、なのかもな」

 

 その呟きに答える者は、誰もいなかった。





話、全然できなかったな……

―――流星を探す少女

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