19BBY、銀河共和国はクローン戦争に敗北し講和条約の締結により共和国軍の軍備は大幅に制限され多くのクローン・トルーパーが強制的に退役させられた。

彼らは思った、我々は戦場では負けていなかったはずだと。

誰かが叫んだ、これは背後に潜む裏切り者の一突きの策謀だと。

クローン達は自ら義勇兵団を結成し共和国内に勃発し始めた分離主義者との戦いを開始する。

これは戦うために生み出された複製兵士達の死神に魅入られた黒い、とても黒い戦いなのである。

※pixivにも同じ話があります

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共和国義勇兵たち

銀河共和国はクローン戦争に敗北した。

 

コルサントの地で蜂起が勃発しマス・アミダを首魁とする臨時政府は独立星系連合と講和条約を結んだ。

 

我々を置いて、最後まで戦った我々を見捨てて共和国はあの戦争に敗北した。

 

銀河系の各地に散らばった兄弟たちは一旦コルサントに集められた。

 

何千隻もの軍艦から同じ故郷を持つ兄弟達がコルサントに降り立った。

 

蜂起勢力やそれに味方する人々が罵声を浴びせる中我々は帰還した。

 

同じ大隊の兄弟や他の部隊の兄弟達の顔を見た。

 

みんな自分と同じ消失感と無気力と絶望を味わった沈黙の顔だった。

 

顔どころか表情も同じとは、やはり我々はクローンで造り物の命なのか。

 

我々クローンの中にある感情は一つ、それは絶望だ。

 

クローン・トルーパーは皆戦うために、勝つ為に生まれてきた。

 

共和国の為に、皆が勝利の為に命を賭け多くの兄弟が死んでいった。

 

それでも我々は共和国のために戦った。

 

苦戦した時もあったが負けたことはない。

 

敗戦の報せが大隊本部に届いた時だって我々は負けてはいなかった。

 

それなのに我々は負けたことにされ裏切り者達は我々を罵った。

 

そうだ、奴らは裏切り者だ。

 

分離主義の理想とやらに感化され命を賭けて戦う我々を裏切り、共和国を裏切った敵だ。

 

奴らがいなければ我々は戦争に勝っていた。

 

我々は最善を尽くした、我々はよく戦った。

 

されど我々は裏切り者に背後から鋭い刃物で一突きにされた。

 

だから共和国は負けた。

 

我々が負けたのはあの裏切り者達のせいだ。

 

我々の存在意義は無駄ではなく我々はまだあの戦争に負けていない。

 

戦うべきだ。

 

戦後条約を課せられた共和国軍は大きく縮小し我々の殆どが軍から叩き出された。

 

だがそれでもいい、共和国軍にいなくたって戦う事は出来る。

 

コルサントや他の惑星で兄弟達は義勇兵団という分離主義者と戦う部隊を組織した。

 

自分もかつて所属していた大隊の兵士達に声をかけ義勇兵を集め兵団に参加した。

 

コルサントに蔓延る分離主義者を、裏切り者を抹殺する為、敵も仕事も変わらない。

 

我々は皆この仕事にふさわしい男だ。

 

フォースは我らを悪魔と笑うかもしれない。

 

たとえ兄弟が死んでも我々はその尸を越えて戦う。

 

それが我々共和国義勇兵団だ。

 

全ては共和国のために。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-銀河共和国 首都惑星 コルサント-

戦争が終わってから数ヶ月が過ぎだ。

 

コルサントはすっかり荒れ果てまるでアンダーワールドが最上階になったかのような様相だった。

 

フォース感受者でなくともこの鬱屈とした雰囲気は街を歩いているだけで伝わる。

 

CT-1914/728はカミーノで生まれたクローン・トルーパーの1人である。

 

彼はトルーパーの訓練過程を優秀な成績で修め第4宙域軍所属第21新星兵団、通称ギャラクティック・マリーンズに配属になった。

 

他の兵団員同様にオルトー・プルトニアやアーゴナー、レン・ヴァー、ボズ・ピティ、ニュー・ボーナレックスで戦いマイギートーで最終軍歴伍長のまま終戦を迎えた。

 

確かにマイギートーでは苦戦することもあった、だが決して負けていた訳ではない。

 

だがホロネットのラジオで流れた一報は分離主義者との停戦協定、講和条約であり敗戦の報せであった。

 

ギャラクティック・マリーンズはマイギートーにいたということもあってかコルサントまでの撤退にかなり多くの時間を費やした。

 

何せ銀河中に散らばる全てのクローン・トルーパーと共和国軍の部隊をひとまずコルサントに全て集めることにしたのだ、外縁にいればいるほど期間は遅くなった。

 

ギャラクティック・マリーンズが混乱の最中コルサントに帰還出来たのは一昨日のことだった。

 

そこで指揮官であるコマンダーバカーラは最高司令部からギャラクティック・マリーンズの縮小を伝えられたらしい。

 

第21新星兵団は兵団規模からまず第一段階として師団へ縮小するというのだ。

 

その為ギャラクティック・マリーンズの2/3の兵士は動員解除という名目で共和国軍から追い出されるらしい。

 

コマンダーはそれを今まで誰にも見せたことのないような表情と声音で我々に伝えた。

 

将軍もただ一言「すまない」とだけ呟いて隊員達に背を向けて去ってしまった。

 

きっと我々の為を思ってコマンダーは反対したのだろう。

 

その悔しさは同じ遺伝子から生まれた兄弟として痛いほどよく分かる。

 

だから誰もコマンダーを責めることは出来なかった。

 

責めるとすれば我々が必死に戦っていたのにも関わらず共和国を裏切り戦争を敗北に導いた裏切り者達だ。

 

奴らのせいで多くの兄弟達が無駄死にとなった、そのことに対する怒りが沸々と湧いてくる。

 

だが一体どうすればいい、何をすれば報えるのか。

 

このままでは自分は十中八九共和国軍から出て行くことになる。

 

そうすれば報いるどころか自分の明日すらどうやって生きればいいか分からない。

 

クローン・トルーパーは皆、軍隊で生き戦争で死ぬ為に生み出され教育された。

 

だから我々は皆“それしか持っていない”のだ、それ以外は何もないのだ。

 

軍隊を出て行った所でもはや故郷カミーノには帰ることは出来ないだろう。

 

かといって他の星で一般市民と共に普通に働いて生活する事など出来ないしやり方も知らない。

 

クローン達は皆兵士以外の生き方を知らないし普通の人々の生活など教わったこともないのだ。

 

だから皆やがて路頭に迷い静かに朽ちていくのを待つだけとなる。

 

何も成せず、何も報いる事は出来ず、静かに腐って消えていく。

 

このコルサントという星をふと歩くだけでそう言った漠然とした恐怖と不安感が溢れてくる。

 

恐らく同じように周りを歩いている市民達はそんな不安などないのだろうが。

 

彼ら彼女らの代わりに我々が血で代償を払って共和国を守っていたのだ。

 

全員が全員ではないだろうがそれでも与えられるのは感謝よりも罵声と裏切りが齎した敗北だった。

 

悶々とする感情の中で少しづつ何もかもに対して不信感が湧いてくる。

 

ふと高層ビルの外壁に目線を当ててるとやはりこの銀河は変わってしまったのだ痛感する。

 

かつて壁に貼られていた共和国軍のポスターの殆どがビリビリに破かれるか落書きされてオーラベッシュで「殺戮者どもめ」と書かれている。

 

しかも代わりに独立星系連合の紋章が描かれたポスターが何枚か貼られていた。

 

どれもオーラベッシュで「共和国を打倒し新たな分離主義国家を!」と書かれていた。

 

CT-1914/728も見ていて気分の良いものではなかった。

 

自分たちの兄弟が写ったポスターが破壊され代わりに憎き分離主義のポスターが貼られている。

 

どういう訳か分離主義思想はコア・ワールドにも流れ各地で分離主義に感化された裏切り者達が蜂起しているらしい。

 

共和国が講和条約を結んだのも元来存在する反戦派以外にも分離主義思想に染まった者達の影響があったとオード・マンテルに駐留するクローン・トルーパーに聞いた。

 

遠く離れた戦場にいる間に共和国は毒されてしまった。

 

誰が本当の味方なのか分からないくらいに、いやきっと裏切り者が撒いた毒の影響だろう。

 

我々は誰からも見捨てられたのかもしれない。

 

曲がり角を曲がり少し開けたところに出ると共和国初期に活躍した4人の賢者の銅像が建っていた。

 

この銅像は戦争初期に作られたものでまだ日は浅いらしい。

 

近くのホロネットからは永遠と共和国軍の上級将校が討論している声と姿があった。

 

あれは一度見たことがある、確か共和国グランド・アーミーの参謀総長だ。

 

見事な口髭を蓄え白髪混じりの老将はゆっくりと熱意を込めてこう呟いた。

 

『共和国は戦争に負けたのではなく、背後から鋭い刃物で一突き(ドルヒシュトース)にされたのである』

 

聞けたのはその一言だった、何故から直後にブラスター弾がホロネットを映すホロプロジェクターを破壊したからだ。

 

オンボロのランドスピーダーに分離主義者の紋章をつけた紺色の旗を掲げた男達が突然銅像の周囲を取り囲んだ。

 

男達の格好は他の市民となんら変わりなかったが腕に側と同じ色の紋章付きの腕章をつけ、ブラスター・ピストルやブラスター・ライフルを携帯していた。

 

その一団の中には人間種以外にも様々な種族が混じっており他の一般市民は彼らとは距離を取りその場を離れようとした。

 

CT-1914/728はこの一団が噂のコア・ワールドの分離主義者だとすぐに分かった。

 

その瞬間怒りが全身に駆け巡り瞬発的にホルスターのDC-17ハンド・ブラスターを引き抜いて発砲しそうになった。

 

だがここで問題を起こすのは兄弟達の迷惑になる、それにこの人数差では戦っても勝てないとCT-1914/728は理解しており必死に己を鎮めた。

 

分離主義者達は銅像の一角を占拠しあの忌々しい分離主義の旗を振り回した。

 

何やら分離主義者達の歌を歌っているようだ。

 

共和国に隷属する星系、死闘へ向かわん、自由なる新世界、最後の決戦、分離主義の旗と共に幾千の星系が再起する、どれも連中らしい思想の夢物語を連ねた歌だ。

 

ふざけるな、その夢のために一体幾人の兄弟が死んだ。

 

我々の兄弟を返せ、共に飯を食い同じ星で育ったDNAまで瓜二つの兄弟達の命を返せ。

 

分離主義者達はスピーダーからハンマーやバールのようなものを取り出した。

 

そして恐らく指導者の一言と共に銅像を壊し始めた。

 

「悪しき共和国の遺産を全て破壊し!それぞれの星系が独立した自由な銀河を作り上げるのだ!」

 

「分離主義万歳!」

 

「我々は勝利する!」

 

彼らは容赦無く銅像を叩き砕いていった。

 

またある者はブラスター・ライフルで銅像に穴を開けていった。

 

彼らは共和国という国そのものを破壊し自らの理想を広げるつもりなのだ。

 

やはり許せない。

 

それだけは、それだけはさせてはならない。

 

共和国という国がなくなれば我々の兄弟達が命を捧げた意味がなくなってしまう。

 

それだけはどうしても見過ごせなかった。

 

CT-1914/728は再びホルスターのDC-17ハンド・ブラスターに手をかけた。

 

もはや彼に先ほどまでの冷静さはなくここで自分が死んでも構わないと覚悟を固めていた。

 

しかしCT-1914/728が発砲することはなかった。

 

それは彼が殺されたとか勇気がなかったとかではない。

 

CT-1914/728の代わりに別の誰かが分離主義者達に発砲したのだ。

 

大通りの左側から青いブラスター弾が放たれ分離主義者を撃ち抜いた。

 

銃声が周囲に鳴り響き市民達はその場に伏せてCT-1914/728は戦場での癖かすぐにホルスターのDC-17を引き抜いて構えた。

 

壁沿いに寄り周囲の状況を確認する。

 

すると発砲した左側の通路から1輌のTX-130セイバー級ファイター・タンクと数十人のクローン・トルーパーを目にした。

 

しかもスワンプ・スピーダーを2輌も護衛につけている。

 

「チッ!死に損ないどもめ!共和国の犬だ!皆殺しにしろ!」

 

指導者はそう言ってブラスター・ピストルを構え発砲した。

 

彼の部下も同じように応戦するがセイバー級に取り付けられたブラスター砲の一斉射によってバタバタと斃れていった。

 

周りのクローン・トルーパー達もDC-15AやDC-15Aブラスター・ライフルなどを用いて分離主義者達を掃討していった。

 

ポールドロンとカーマをつけた部隊長と思わしきクローン・トルーパーが仲間に指示を出す。

 

「回り込んで退路を絶て。連中はここで殲滅するぞ」

 

スワンプ・スピーダーを戦闘に数人のクローン・トルーパーがCT-1914/728の前を横切った。

 

セイバー級の二連重レーザー砲が分離主義者のスピーダーを破壊し今度は分離主義者達の方へ砲を向けた。

 

分離主義者達が持つブラスターとクローン・トルーパー達が持つブラスターの火力には圧倒的な差があり不利を悟った分離主義者達はそれぞれバラバラに逃げ出し始めた。

 

だが既に回り込んでいたスワンプ・スピーダーとクローン・トルーパー達が逃げてきた分離主義者を迎え撃った。

 

青いブラスター弾が容赦無く分離主義者の身体を引き裂き殲滅した。

 

「クソッ!」

 

右往左往する分離主義者達がブラスター弾に斃れる中その内の1人が全く別の方向へ逃げようとした。

 

しかしその彼も他の分離主義者同様逃げることは出来なかった。

 

背中をブラスターで撃たれ痛みで倒れてしまった。

 

誰が撃ったと部隊長は周囲を見渡したがどうも部下が狙って撃った痕跡はないし流れ弾でもなかった。

 

それもそのはず、さっきの分離主義者を撃ったのは彼らではなくCT-1914/728だからだ。

 

「お前は……」

 

部隊長はCT-1914/728が自身の部下ではないとすぐに察知した。

 

だが今はそんなことを気にしている場合ではないとまだ背中を撃たれ生きている分離主義者にDC-17の銃口を向けた。

 

「死ね、分離主義者(セパラティスト)

 

2、3度の銃声が辺りに響き気がつくと辺りを占拠していた分離主義者達は皆死体となっていた。

 

一方のクローン・トルーパー達はほぼ無傷で敵の増援が来るのではないかと警戒していた。

 

そんなトルーパー達に部隊長は命令を出す。

 

「遺体は全て例の場所に放り投げておけ。我々の役目は果たした、撤収だ」

 

「了解」

 

クローン・トルーパー達は倒した分離主義者達の死体を引きずり無理やりスワンプ・スピーダーやセイバー級に乗せた。

 

部隊長は撤収の順調さを確認しつつ呆然と佇むCT-1914/728に近づいた。

 

CT-1914/728はバツが悪そうにDC-17をホルスターにしまった。

 

「私はCC-1918、仲間内からはオッテと呼ばれている。君はどこの義勇兵団の所属だ」

 

この部隊の隊長はヘルメットを取って自らの番号とニックネームを名乗り所属を求めた。

 

しかしCT-1914/728は義勇兵団というものがよく分からなかった。

 

少なくともそんな兵団はなかったはずだ。

 

「義勇兵団?所属は第21新星兵団、今も所属している。我々はおとといコルサントに帰還したばかりだ」

 

驚いた表情でオッテは自身の顎を撫でた。

 

「マイギートーのマリーンズもようやく帰ってきたのか……なんでこんなところに?」

 

「自由時間を与えられたから外を歩いていただけだ。それがいきなり分離主義者と兄弟達の撃ち合いが始まったらそりゃ加勢するに決まってるだろ」

 

CT-1914/728は自らが撃った分離主義者の遺体に目を寄せながらそう言い切った。

 

「そうだったか……まだ共和国軍に?」

 

「一応な、まあ21兵団も規模を縮小するらしいから俺もあと数日で軍から追い出されるだろうが」

 

自重気味に笑ったがオッテは兄弟の境遇に心を痛めているようだった。

 

背後からオッテの部下が「撤収用意完了しました」と報告した。

 

「先に帰っててくれ。俺はこいつと話がある」

 

オッテはそう断りを入れ撤収する仲間のクローン・トルーパー達を見送った。

 

だがCT-1914/728にとっては何が何だか分からない状態だった。

 

「話があると言ったが一体なんだ?俺に出来ることはそんなにないぞ?」

 

「ああそうだな……お前、あの放送を聞いたのは……どこでだ」

 

オッテは急に声音を変えCT-1914/728に尋ねた。

 

あの放送とはもちろん共和国敗戦の報せでどこでというのはどこの戦場でということだろう。

 

「マイギートーの兵団野戦本部だ。丁度マイギートーに派遣されていた。だから今もこの格好だ」

 

CT-1914/728のアーマーはカーマなど防寒に優れている。

 

これがマイギートーでのギャラクティック・マリーンズの基本装備だった。

 

「さっき兵団は縮小されると言っていたが」

 

「ああ、他の兵団も既にそうなんだろう?共和国は講和条約で軍備に制限が掛けられた。本当ならクローン・トルーパーの徴用は全面禁止されたそうじゃないか」

 

共和国と連合が結んだクローン戦争の講和条約はブレンタールⅣで結ばれた為ブレンタール条約と呼ばれた。

 

本来はクローン・トルーパーの動員禁止が明記されているのだが流石に300万人以上のクローンをいきなり全員解雇する訳には行かない為特例で一部が残ることを許可された。

 

「兵団は師団に縮小、兵員数は2/3まで減らされる。俺たちの殆どはリストラって訳だ」

 

「ギャラクティック・マリーンズすらもか……それでもし共和国軍に残れなかったら何処か行く宛はあるのか?」

 

「はっきり言ってないな。正直、このまま退役したら行く宛なんてないしその辺で野垂れ死ぬしかない」

 

「やっぱりか……」

 

我々の末路はこれだ。

 

我々は所詮バトル・ドロイドと変わらない。

 

戦うために生まれた、それがクローンがドロイドかの違いというだけだ。

 

「……なら我々の所に来ないか、少なくともやることは共和国軍と変わらない」

 

「我々…?何を言っている、お前達は軍に残れた…」

 

オッテはすぐに首を振った。

 

「我々はみんな追い出された、つまり軍に残れなかった逸れ者だ」

 

「えっじゃああのスピーダーと戦車と武器はどうやって」

 

「退役する時にもらった分もあるが……大体はどさくさに紛れてちょろまかしたか政治家や高級将校から与えられたものだ。連中の中にも裏切り者を許せない奴や想いが同じ奴がいる」

 

CT-1914/728は驚いた。

 

オッテと彼の部隊はてっきり治安維持戦に来た正規軍だと思っていたからだ。

 

しかしよく考えてみれば彼らの部隊章は今までどこに行っても見たことのないものだ。

 

「軍を追い出されたからって別に戦うことが出来ない訳じゃない。また別の方法がある」

 

「それがこれか?」

 

「ああ、それに我々は戦場で負けた訳じゃない。ただ裏切り者達によって背後から襲われ無理やり講和に追い込まれただけだ。戦い続ければ必ず勝てる」

 

オッテの言葉を聞いて分離主義者達が事を起こす前に聞いた参謀総長の討論の内容を思い出した。

 

共和国は戦争に負けたのではなく、背後から鋭い刃物で一突きにされた。

 

その実感はCT-1914/728らクローン・トルーパーが一番よく知っている。

 

「我々は一般には共和国義勇兵団(Republik Freikorps)と呼ばれている。義勇兵団の部隊はコルサントだけでなく共和国中のあちこちに点在して我々のように分離主義者と戦っている」

 

路地の奥を走る数十人のクローン・トルーパーがチラリと見えた。

 

もしかしたら彼らも共和国軍ではなく義勇兵団の一員なのだろうか。

 

「義勇兵団は皆兄弟だ、我々の絆は固い。仮に行く宛がなかったとしたら我々の下に来い。共に戦い兄弟達の無念を晴らそう」

 

オッテはCT-1914/728に手を差し伸べた。

 

やはり最後に信じられるのは血を分けた兄弟のみ、この時CT-1914/728は思った。

 

彼は躊躇うこともなくオッテの手を強く握り締めた。

 

「そういえば名前を聞いていなかったな、名前は?番号以外にも名前があるはずだ」

 

オッテは最後に名前を尋ねた。

 

CT-1914/728は何処か照れくさそうに答えた。

 

「俺はCT-1914/728、名前は……」

 

 

 

 

 

 

それから数日が経ち命令により第21新星兵団は第21海兵師団へと規模を縮小し兵団の2/3が退役することとなった。

 

最後にコマンダーバカーラは退役する隊員1人1人の手を握り「すまない」と謝罪の言葉を送ったそうだ。

 

彼はいい上官だったと軍の外に出たクローン達は思っただろう。

 

何せ軍の外の方が彼らにとっては居心地が悪いのだから。

 

退役するクローン・トルーパーには少量だが年金が支給される事になり多くのクローンが共和国の申請局に押し寄せ一時はパンク状態となった。

 

申請が出来るまでの間、クローン達は行く宛もなく屡々コルサントの路地裏や街灯の側で屯していた。

 

皆心にはうっすらとした不安感と絶望感の雲がかかっていた。

 

「俺たちはこれからどうすればいいんだろうな…」

 

「さあな……取り敢えずここ(コルサント)を出て雇ってくれそうな奴を探さないと」

 

ある路地裏に呆然と座っていた元ギャラクティック・マリーンズのクローン達は覇気のない声でそう呟いた。

 

彼らも戦場では鬼神の如き活躍だったのに今ではすっかり役立たずに成り果てたと思っている。

 

「どうすりゃいいんだろうな…本当に…」

 

意味のないことを何度も繰り返し呟いていると路地の奥の方からカツカツと人の足音が聞こえた。

 

クローン達はすぐに持っていたブラスターを構えた。

 

そしてその様子は向こうにも伝わっているようですぐに「撃たないでくれ!俺だ!」とクローン達と同じ声が響いた。

 

「まさかCT-1914/728か…?」

 

かつて同じ兵団の同じ分隊で戦ったことのあるクローン・トルーパーが顔を見るなり彼に尋ねた。

 

そのクローンは「ああ」と頷いた。

 

「一体何しに来たんだ?」

 

「お前も年金待ちか?」

 

「いや、違う。用があるのはお前達にだ」

 

「俺たちに?」

 

CT-1914/728は小さく頷いた。

 

彼は彼がされたのと同じように兄弟達に手を差し伸べた。

 

ある種悪魔のような救いの手を。

 

「共に来てほしい、俺たちはまだ負けていない。まだ、戦えるだろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

共和国義勇兵団は僅か数ヶ月で急速に拡大し18BBYの時点で退役したほとんどのクローン・トルーパーが義勇兵団の部隊に所属していた。

 

これらには幾つかの要因がありその一つは共和国はクローン・トルーパーの導入計画は出来ても退役計画は全く練っていなかったということである。

 

元々共和国軍は22BBYになるまで存在せずそれまではジュディシアル・フォースと呼ばれる準正規軍がその座に収まっていた。

 

しかもクローン・トルーパーは生まれた瞬間から兵士という非常に特異な存在であり既存の制度では彼らを退役させ市民生活へと送るのはほぼ不可能であった。

 

その為既存の制度とは違うまた新たな制度を生み出す必要があったのだが当時の共和国にそんな余裕はなかった。

 

共和国は前線での独立星系連合打倒に傾注し戦後クローン・トルーパーの退役や維持について議論がなされていなかった。

 

これは劣勢になりつつあった19BBY以降特に顕著になり「戦後よりまずは眼前の勝利を」というプロパガンダからもそれは読み解くことが出来る。

 

その為突然の講和条約で言い渡された軍備の制限の影響で兵士の動員を解除する必要があった。

 

だが前述の通りクローンに適応する退役制度が存在せず、仕方なしに強制退役させられた行く宛もないクローン・トルーパーが僅かな年金を手に義勇兵団に加わるのは当然の結果であった。

 

またクローン・トルーパーの教育にも大きな問題があったと連邦空軍スカイ・ストライク・アカデミー元教官のゴランは分析する。

 

クローン・トルーパーは生まれた時から軍隊での生活と軍事教育ばかり受けていた為一般的な市民生活とは縁遠くその結果、クローン戦争の戦後は彼らにとって生き辛い世の中になったのではないかと述べている。

 

英才的な軍事教育が平和な時代の一般生活を阻害したというのはなんとも悲劇的な話である。

 

これらの要因が重なりクローン・トルーパー達は共和国義勇兵団という一大準軍事勢力に身を投じる結果となった。

 

だがこのような武装勢力の台頭は銀河系を、特に銀河共和国を大きな混乱と新しい戦果へ巻き込むこととなった。

 

クローン戦争の退役軍人や極右思想の持ち主で構成された政党を義勇兵団が「()()()」として持ち上げてしまった為である。

-ヴォレン・ナル著書 「クローン戦争戦後 破滅をもたらす序章」より抜粋-


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