今回は主人公君の内心描写(地の文)多めです。
昨日は急に桜や藤ねぇが家に泊まることが決定し、一時はどうなることかと心配していたのだが、朝食を作っているときの様子を見るに良好な関係は作れたようで昨日のようなギスギスした感じは見られなかった。
最も、お泊りを提案してきた張本人である藤ねぇはというと、葛木先生からの急用がどうのこうのと言って、結局は昨日のうちに帰っていってしまっていたので居なかったのだが。なので朝食はいつもの分量の用意で済ませることが出来た。
「んで、葛木先生からの急用って何だったんだ?」
朝食の用意で居なかった俺は事情を詳しく知らなかったので知っていそうな桜にそう尋ねた。俺に聞かれた桜は藤ねぇの真似をしながらどんな事を言われたのかを教えてくれた。
「さぁ?『今夜中に葛木先生に頼まれた用事を済ませておかないとマズイのだ〜!後は桜ちゃん、セイバーちゃん、二人仲良くね!』って……先生、何も詳しいことは言わずに帰ってしまいましたから……」
どうやら桜も詳しいことは何も分からないらしい。
「ったく……皆で泊まろうって言い出した本人が帰っちゃうなんてな」
もしかしたら一番ギスギスしていたセイバーと桜の二人が話し合える機会を設ける為にそうしたのかもしれないが、言い出した本人が居ないというのはちょっとどうかと思う。
「でもその分、セイバーさんとは色々と語り合うことが出来ましたから」
「そうなのか?」
確認の為にセイバーに聞くと彼女は行儀良く一度箸を置き、こちら側に視線をしっかりと向けて
「はい。サクラとは分かりあえました」
と言って桜と共に笑い合っていた。
「へぇ~?」
昨日とは一変した様子に俺はとても安心した。そして、三人でなんてこと無い事を話しながら楽しい朝食を過ごした。
そしてそのまま学校に登校しようとしたのだが、そのことをセイバーに拒否されてしまった。
「だから大丈夫だって。昼間の学校なら大勢の人の目もある。それに昨日、学校は安全だって太鼓判を押したじゃないか」
「シロウ、それは昨日の話です。今日は安全だとは限りません」
そう言って学校に行くことを止めさせようとするセイバーの意見に俺は内心では賛成していた。昨日安全だったからって今日も安全だとは限らないというのは本当だからだ。もし知識と同じであれば今日セイバーを連れずに登校でもすれば、遠坂の怒りに触れて放課後には戦闘になってしまうし、ライダーの襲撃もある。
そういった点を踏まえると行かないというのが正解なのだが、行かなければそれはそれで遠坂との協定を組めなくなるし、マスターが校内にもう一人居るという情報も得られなくなる。本当はセイバーの言うように学校を休みたいのだが、同盟と敵情報を得られなくなるというのはかなり痛いと思うのでここは何とかセイバーに折れてもらうしかない。
「そんなこと言い出したら何処にも行けないだろ?セイバーだって魔力を温存しなくちゃいけないんだ。少しは休んでいてくれ。何かあったら令呪で呼び出すから」
「・・・・・。はぁ……、分かりました。マスターがそういうのなら」
セイバーとしては俺の登校を認めたくはなかったようだが、折れる様子を見せない俺に諦めたようで、深い溜め息の後に登校の許可を出してくれた。
「シロウ。もしもの時は必ず令呪を使って呼び出してくださいね」
「あぁ。そうするよ」
出会った時からセイバーに妥協ばかりさせて本当に申し訳なくなってくる。妥協させてしまっている分、彼女の食事をもっと豪華なものにでもしようかな。釣り合うかは分からないけども。
そんなことを考えながら俺は学校へ向かった。
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因みに原作通りであれば教室へ向う時に何でも無いかのように馬鹿正直に遠坂へ挨拶する場面があるのだが、あえてここは原作無視をさせてもらった。理由としてはどこまでの原作無視が
バーサーカーと対峙したあの日、俺は恐怖に負けて戦闘を放棄しようとしていた筈なのに気が付いたら森の中に立っていた。勿論それ以前の記憶は俺には無い。それは世界の修正力によるものなのかそれとも
遠坂との協定の話は今日の夜にでもセイバーと共に話に行けばいい。とにかく今日は早めに帰ろう。ライダーは……俺が囮になればいけるか?いや、その場合遠坂の手助けが望めないから令呪を使わざるを得なくなってDead Endになってしまうのか。それは駄目だな。
となるとやはり放課後に遠坂と対峙するしか無いのか……?と考えていた時、授業終わりのチャイムが鳴り響いた。取り敢えず昼食を食べに生徒会室に向うか。遠坂と対峙するかどうかはまた午後の授業を受けながら程々に考えるとしよう。
そうして生徒会室に向かい扉を開けたのだが、まだ早かったようで誰も居なかった。流石に一人で食べるのは何かあれだし、一成を待つか。と思っているとちょうど一成が扉を開けて入って来た。
「よっ、一成」
「あぁ……衛宮か」
いつもならそれなりにハキハキとした返事を返してくれる一成なのだが、今日はどこか疲れている様子を見せていた。
「一成?大丈夫か?」
「悪い、衛宮。少し寝かせてくれ。出来れば十分前くらいには起こしてくれるとありがたい」
「あ、あぁ……」
一成がこんなに疲れた様子を見せるなんて珍しいな。あ、もしやこれはキャスターの仕業のヤツか。本当は俺は彼とは違って無関係な人間にどうこう思うことは多分ないんだろうけど……何かこうも身内に被害を出されると流石に何とかしたくなるな。
いや、駄目だ。まだその時じゃない。キャスターの元へと導かれるまでは馬鹿正直な坊やを演じてないと油断を誘えないし、何より門番であるアサシンを退けてキャスターの元へと一人で行くというのは難しいだろう。そして、魔術師としての腕が天と地以上に掛け離れている俺ではキャスターの相手は難しいだろう。
さて、キャスターの件は後々解決するとしてまずは放課後に遠坂と対峙するかどうかとライダーはどうするかについて考えよう。今朝は遠坂との接触は避けてみたのだが、アイツは霊体化出来るアーチャーを連れている。接触はしてないとしてもアーチャーの奴に目撃されてる可能性は高い。だとしたら確実に遠坂に連絡は行っているだろうから彼女に目撃でもされればきっと問答無用でガンドでこちらを攻撃するかもしれないな。
そう考えると原作のように対話することは難しいだろうな。だとすると俺が今現時点で取れるのは逃げの一択のみ……か。未だ完全に扱えてはいないけれど、
次に、ライダーは……と考えた時、一成の言っていた昼休みが終わる十分前となっていたことに気が付いた。
「一成、もうすぐ昼休みが終わるぞ?食べないのか?」
「…………後で食べる。今はとにかく眠くてな……」
「何だ徹夜でもしたのか?」
「いや、ただ……最近寝付きが良くない……」
一成がそう言うと扉がコンコンと叩かれる音が聞こえてきた。
「おい、一成。誰か来たようだぞ」
「知らん!生徒会は店仕舞いだと言ってやれ……!」
眠気からか相当気分がよくなかったのか一成が不機嫌そうにそう言ってきた。その次の瞬間扉が開けられ、その先に葛木先生が居たので流石に起こさなければと声を掛けた。
「おい、葛木先生だぞ」
「っ?!!」
今さっきまでの気怠さは何処へやら、一成は葛木先生という言葉に反応して飛び起きたのだった。部屋を覗き込んだ葛木先生は一度、こちらへと目線を向けた。
「?」
何かしただろうかと思ったが、目線を向けられたのは一瞬と言えるくらい短い時間でその後は目線は一成の方へ向いていた。
「柳洞、話がある」
「・・・?はい」
葛木先生は一成に話があるとだけ言うと、俺に話を聞かせないためか廊下の方へ向かっていた。一成は心当たりがない為少し不思議そうにしていたが、取り敢えずは葛木先生の元へと歩いて行っていた。
「───────」
「え?それじゃあ、─────」
「─────」
「─た──────で」
二人との距離が離れていた為か詳しい内容までは聞き取れなかったが、一成が動揺する声だけは聞こえてきた。もう少しハッキリと聞き取れないだろうか、と考えていると話を終えたらしい一成が戻って来た。
「何の話だったんだ?」
「あぁ……」
話の内容が気になって一成に尋ねると、一度席に戻った彼は酷く悩ましそうな顔をしていた。
「おい、一成?」
もう一度声を掛けると彼は一度考える素振りを見せた後に、真剣な眼差しでこちらを見て口を開いた。
「そうだな……衛宮も部外者というわけでもないし、知っていても良いだろう。昨日夜遅くに、弓道部の練習に出た娘が家に帰って来ないと職員室に連絡があってな。弓道部員に電話で聞いた所、行方不明になった生徒と最後に話していたのは慎二だと分かったのだ」
「間桐と……?間桐は昨日の練習には居なかったぞ?」
「忘れ物をした一年生が道場に戻った時、慎二と行方不明となった生徒が口喧嘩をしている所を見かけたそうだ。慎二本人に確認してみようにも、今日は無断欠席で連絡も取れないらしい」
一成の話し方は俺のことを部外者ではないとは言いながらもどこかハッキリとしない言い方であった。そういった話し方はあまり好まない質なので一成に明確に言うように促す。
「一成。肝心の話をぼかすな。行方不明になってるのは誰何だ」
「・・・・。」
再び一成は悩ましそうな顔をしたが、俺が納得出来るまで引かないと察したのか観念したかのように話を進めた。
「美綴綾子、弓道部の主将だ」
「っ!?」
俺としたことがすっかり忘れてしまっていた。今日は遠坂とライダーの問題もあるが、知り合いが行方不明となってしまう事件のことを聞く日でもあったことを。
俺は間桐や美綴についての情報を集める為、色んな人へ聞き込みを行うことにした。間桐についてだが、まずは一番詳しそうな桜に休み時間の間に聞いてみることにした。
しかしながら桜もアイツの姿をここ最近見ていないとのことで詳しい情報は得られなかった。検討違いのことを聞いてしまったことを謝罪すると彼女は自分が悪いと気を病んでしまったのでそんなことはないとフォローを入れ、別れを告げた。
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『本日、放課後の部活動は全ての部において中止になりました。図書室も閉鎖となります。特別な用事がない生徒は速やかに下校してください。繰り返します、本日────』
午後の授業も終わり、部活動の時間帯となった。しかし、ここ連日の事件や行方不明の件で下校時間が早まった為に速やかに下校することを促す放送が流されていた。モタモタしていると話を聞きそびれてしまう為、俺はすぐに美綴のことを知っていそうな人を呼び止めに行った。
「あの……綾子ちゃんなら風邪でお休みしてますよ?」
「あ、そうなのか。どうもな。明日、美綴が来たらこの事は黙っていてくれ」
「はぁ……」
俺の言葉に少し不審そうな反応をされたが、まぁ聞きたいことは聞けたので良しとしておこう。次行くとするなら、弓道場か。ほぼ確実に扉は開いてはいないだろうが一応確認だけはしておきたい。もしかしたら順番がズレて遠坂と対峙する前にライダーの存在を確認出来るかもしれないしな。
そう考えて弓道場辺りまで来たが、やはり扉は開かなかった。ここまで行動すると流石に人気が無くなってきたので俺は早足で鞄を取りに向かった。
「衛宮君?」
「っ!(
痛恨のミスで教室ではなく生徒会室に今日は鞄を置いてしまったのでそれを取りに階段を登っている時、殆ど同じ状況で遠坂と鉢合わせしてしまったのだった。いくらか時間帯をズラしたとはいえ遠坂との対峙は避けられなかったので俺はすぐさま
「ちょっと!待ちなさい!!」
早々に戦線離脱した俺を追う為遠坂もすぐさま廊下を駆けた。やはり遠坂にも話し合うという意思は今の所無いのか逃げる俺に向かってガンドが何度も撃ち込まれた。
「クッソ……!遠坂!!殺す気か!」
その軌道は明らかにこちらの命を削ることを目的としているのが分かるモノだった。それに対し殺す気かと問い掛けると、
「当たり前……よ!サーヴァントを連れてないマスターなんて!殺してくれと言っているようなもんじゃない!」
何とも理不尽な回答が返ってきた。
「セイバーは霊体化出来ないんだって!ッ……!!」
「なら学校を休みなさい!私が居ることは初めから分かっているでしょう!」
「だから逃げたってのに!」
ぐうの音も出ない正論だ。確かにセイバーが霊体化出来ない以上、学校を休むというのがこの戦いにおける定石だろう。でもだからといってライダーの情報を逃したくはなかったんだよ!とは言えず、だから逃げたとしか言えなかった。我ながら情けない負け犬の遠吠えである。
「そこ!動くな!!」
「馬鹿言うな!んなの当たったら本気で死ぬ!!」
「だったら止まりなさい!そうやって逃げ回られたら変な場所に当たるでしょ!」
実際、避けそびれて肩にガンドが当たった時にとんでもない激痛が走ったので、こんなのが頭や人体の急所にでも当たれば洒落にならないと本気で思った。
「だから殺意増々で追い掛けられて止まるやつは居な──ゔわっ……!」
やはり俺には逃げ戦は性に合わないらしく、魔術の効果がそろそろ切れそうな時に足元不注意でガンドを足元にくらってしまい、地面に転んでしまった。
このままだと彼女のガンドの格好の的になってしまうので、すぐに立ち上がって近場の教室に奇しくも原作と同じく逃げ込んだ。そして扉をあちら側からは開かないように机で塞いだり鍵を掛けたりして遠坂の侵入を防ぐ。
しかし、このまま引き籠もる訳にはいかない為、すぐに窓の方向へ走り出す。その際には付け焼き刃の
しかし、窓まであと少しという所で遠坂の結界魔術が先に発動したことによってそれは叶わなかった。
「チッ……!結界か……。
尽く上手く行かないことに思わず舌打ちが盛れるが、このままではまた格好の的になるので、近場の机を倒して強化の魔術を施して攻撃に備える。強化の魔術が発動し終えるとほぼ変わらぬ時刻に、教室全体を無差別に飛び交うガンドの雨が壁越しに撃ち込まれた。
「っ、ぅぐ……!」
無差別ではあるとはいえ一発一発の威力が下がっているというわけではなく、肩にくらったものとほぼ変わらない威力のものが撃ち込まれているのが机越しでもよく伝わってきた。あと二、三発撃ち込まれればこの強化も意味を成さなくなるだろうという所で攻撃が止んだ。辺りは見違える程無惨なガラクタの山が綺麗に出来上がっている。
「魔力切れ、か?いや、ちが───!」
攻撃が止み魔力切れかと思い油断した刹那、窓を突き破って青い宝石が宙を舞うのが見えた。視界いっぱいを青白い閃光が埋め尽くす最中、俺は近くに落ちていた机の足の破片を拾い、強化の魔術を施しながら教室の扉を突き破って廊下へ脱出した。
「うぐっ……!」
「あら、ようやく観念した?」
「ははは……引き摺り出させといてよく言う……」
遠坂があまりにも白々しくそう言うものだから、思わず乾いた笑みが漏れた。心なしか笑顔も引き攣ったような気もする。
「それもそうね。衛宮君、逃げたところで貴方に勝ち目が無いことは分かったでしょう?それを踏まえて言うわ。これは命令よ。そのヘンテコな武器を手離して、私に令呪を渡しなさい」
遠坂がガンドをすぐに撃てる構えをしながら俺にそう言う。
「断る。それはセイバーを裏切る行為だ」
間違いなく優位性はあちらにあるのだが、おいそれと分かりましたと言うわけにはいかない。こちらにだって意地はあるし、何よりセイバーを裏切りたくはないからだ。
「腕の神経が剥がされたとしても良いってのね?」
「脅しでも俺は引かないからな」
「そう……。三秒あげるわ。自分の命だもの自分で選びなさい」
「・・・・。」
発射寸前のガンドを向けられる中、俺が取ろうとした行動は遠坂に正面突破で挑むこと。幸い、
「三秒経ったわ。衛宮君、答えを聞かせて」
遠坂の問いに俺は行動で答える。自らに強化の魔術を掛け、武器を遠坂の方へ構えた。遠坂の指先からガンドが放たれようとした瞬間、何処からか女の子悲鳴らしき声が聞こえてきた。