キリの良さとストックの関係で今回は短め。
遠坂曰く結界自体の発動を防ぐことは出来ないらしいが、ひとまずは学校中に仕掛けられた呪刻を潰し回れたようなので、教室にて帰宅準備をしていた。鞄を持って廊下に出ようとした時、丁度廊下に居た遠坂に声を掛けられた。
「それじゃ、衛宮君。私は用事があるから先に帰るわ。明日に備えて、色々買わなくちゃいけないし。衛宮君も早めに帰りなさい」
「何だ?心配してくれるのか、遠坂」
あまりにも分かりやすく心配してくれるので、俺は思わずそう口にしてしまっていた。すると遠坂は顔を赤らめて、
「な……!ち、違うわよ!協力関係になったから、勝手に脱落されちゃあ、こっちが困るじゃない!今のはそれだけのちょっとした確認事項よ!……ふんっ!」
またまたテンプレのようなセリフを吐くとそのまま帰って行ってしまった。遠坂も帰ったし、俺も昨日の反省を活かして早めに帰るかとグラウンド方面を見ながら一人で廊下を歩いている時、前の方から声を掛けられた。
「呪刻潰しなんて地味な真似をしてこんな時間にお帰りかい?衛宮」
声を掛けてきたのは案の定、間桐だった。
「……何故呪刻のことを知っている」
「お前が虱潰しに潰して行った呪刻はさ、僕が仕掛けた保険なんだぜ?」
間桐はこちらを嘲笑うようにニヤニヤとしながら学校中に仕掛けられた呪刻は自分がやったのだと白状してきた。
「間桐、お前……」
「そう構えないでよ、衛宮。僕もさ、魔力が無いのにマスターをやらされているんだ」
「じゃあ、あの結界は何だ」
「だから、ただの保険だって」
そう言いながら間桐は俺の横を通り過ぎる。俺はその場から動かないまま、昨日の女子生徒の件を聞く。
「昨日、女生徒を襲ったのはお前か」
「アレは、仕方無かったんだ。僕のサーヴァントが勝手に、だよ。おいおい信じてくれよ?僕は誰とも戦いたくはないんだ」
そう言いながらも結界を貼り、サーヴァントが居るということを俺に教えるということは少なくとも戦いたくはない、という主張に反すると思うのだが、それはどうなのだろうか。
「…………分かった」
そう思うのだが、荒事は避けるに限るのでここは表面上だけでも信じておこう。了承の言葉を口にしてこの場を去ろうとすると、間桐に呼び止められた。
「待てよ、衛宮。僕に協力しないか?元々間桐の家は魔術師の家系なんだ」
振り向いた先に居た間桐はこちらに手を出しながら、自分の家系が魔術師の家系であることを明かしてきた。
「間桐が?」
「まぁ、正式な魔術師の家系じゃない衛宮が知らなくても無理はないさ。疑うなら遠坂にでも聞いてみたら?」
「間桐。お前のことを桜は知っているのか?」
「魔術師の家系は長男にしか秘儀を伝えない。あんなトロい女に間桐の秘儀が使えるもんか」
そう言いながら間桐は心底嫌そうに顔を歪めて視線を一瞬こちらから反らした。
「どうだ?組まないか?」
が、すぐに平常時の顔に戻してこちらに協力の意思は無いかと聞いてきた。
「アンタが何もしないのなら協力する必要は無いだろ?」
俺は元々遠坂と組んでいるし、原作を知っている俺としては間桐のやり口は気に食わないので協力するつもりは端から無かった。これ以上話すのは無駄だとこの場を立ち去ろうとした。
「へぇ?協力は出来ないっての?もしかして、勝とうだなんて思ってるの?……そうか。なら、これから殺し合いをする奴の所に妹は置いていけないなぁ」
すると普段はしない兄貴面をして、桜を出しにしてきた。今朝は他人に興味がないだの言って来てはいたが、俺が桜のことについては人並みかそれ以上の関心があると読んでのことだろう。
「何だと?」
実際、その読みはアタリだ。俺は確かに桜を身内だと思っている。だからこそ反応してしまった。
「だってそうだろう?協力しないってことは必然的に俺達は敵同士だということ。そんな奴の下に身内が居たら人質に取られるかもしれないじゃないか」
「……………分かった。桜には俺から言っておく」
間桐の言うことに賛同するのは癪に障るが、間桐の言い分には一理はあるし、下手に刺激するべきではないと考えて俺は桜を家に帰すことを約束した。
「お?後輩思いの先輩で助かるよ。ここで話したことは僕達の秘密だぜ?こっちは衛宮を“友人”と見込んで秘密を打ち明けたんだからな」
友人……ね。本心からはどうかは知らないが、お前はまだ俺を友人だと思っていてくれたのだな。ありがとう。そしてごめんな、間桐。こんな紛い物な
「あぁ、黙っているよ」
そんな事は口が裂けても言えず、俺はただ黙っておくことだけしか口に出来なかった。
『素直になれよ、■■。思えない、じゃなくて思ってはいけないと勝手に思い込んでるだけだろ?』
そしてそのまま俺は何事もなく家に帰り、セイバーとの実戦形式での稽古に打ち込んでいた。
「隙あり!」
「うわっ!」
セイバーとの稽古で俺は何度も彼女から一本取ることを目指して挑むのだが、未だに一本も取ることが出来ずに強烈な一撃を食らって道場の壁まで吹き飛ばされていた。
「ぃ゙ってて……、もう一度頼む」
三回に一回は吹き飛ばされるという高頻度なのでかなり身体に来るのだがやられっぱなしというのは嫌だし、何より早く多くの経験を積みたいと思っているので諦めるという選択は取りたくなかった。本当は戦いたくはないけれどその選択を取れる程俺は強くはない。
弱いままでは巻き込まれるし、不必要な戦いを避けるという選択すらも取れないと漸く気付いたのだ。だからこそ経験を積む。そういった彼とは違うであろう考えの下、セイバーとの稽古に明け暮れた。
その後小一時間程稽古をした後夕食を済ませ、俺は土蔵にて小さい頃からの日課となっている強化の魔術の鍛錬を行っていた。
「
暫くはこの痛みとお友達か……。って、駄目だ。集中しないと。雑念があったら余計に同調も投影も成功出来ない。まぁ、投影は未だに一度も成功した試しが無いけどな。
そんな事を考えながら俺は先程の続きをしようとした。
「シロウ?」
その時、入り口辺りからセイバーが様子を伺いに来ていたようで声を掛けられた。
「セイバー?何かあったのか?」
セイバーの行動に何かあったのかと思ったが、そう言えば原作で自分の強化の魔術について語るシーンがあったなと思い出した。確かここに来た理由は……
「いえ、魔術の気配を感じ取ったので。鍛錬ですか?」
そうそう、こういった理由だったな。……あ、語るシーンが来たということはキャスターの居る柳洞寺に招かれるのも今夜だったか?いや、明日……?マズいな、まだ序盤だってのに何だか内容を忘れてしまっていたりするのが多い気がする。思い出せるだけマシなんだろうが、それだと対応が遅れてしまうな……。
「あー、一応毎日やってるんだ」
今度流れの復習の為にノートにでも書き留めてみるか?と思いつつセイバーの質問に答えた。
「入ってもよろしいでしょうか」
「え?あ、あぁ……良いぞ」
セイバーの急な申し出には少し驚いたが、流れのままに行くことにした。
「シロウの得意な魔術は強化だと聞きました」
「まぁ、得意……というか、それしか出来ない感じなんだよな」
出来ないというのは少し語弊があるかもだが、戦闘で使える技術が今は強化の魔術しかない、というのは確かなので嘘は吐いていないと思う。
「強化の魔術の鍛錬というのはどのような感じでやるのですか?」
少々意識がズレてしまったが、セイバーの質問に意識を戻して質問に答えた。
「強化っていうのは単純に物の強さを強めるだけじゃなく、物の効果を高めることも含めるんだ。例えば、今持っている石ならばより固く、あの電球ならより明るくするとかだな。物の構成材質をイメージしてその中に俺自身の魔力を通して強化するってことなんだ」
「なるほど」
「……っ!」
身振り手振りを用いてセイバーに自身の強化の魔術について説明する。理解してもらっているかを確認する為にセイバーの方を見ると思っていたよりも至近距離で彼女と目があった。思わずドキッとして彼女から少し距離を取ってしまった。
「論より、だな……えっと、一つやってみる」
流石にちょっと申し訳ないと思ったので苦し紛れだが俺は実践してみることにした。なるべく隣りに居るセイバーを意識してしまわないようにしながら。
「
手に持つ物体の回路一つひとつに意識を集中していく。
───そう言えば人に見られながら鍛錬をやるのは久しぶりだな。上手くいくだろうか。あ、違う、集中しろ集中。
「基本骨子……変更、構成っ、材質……補きょ───ッ!!」
そして基本骨子や構成材質共に解明を済まし、自らの魔力を用いて強化を施そうとした時に思考が乱れから魔力を流し込む速度を間違えてしまい持っていた石が真っ二つに割れてしまった。
「っ、また失敗だ。実は成功率はかなり低いんだ。まだまだ未熟だな……」
「いえ、先程のシロウは集中をやや欠いているように感じました」
「あ、いや……、こ、こういう刃物だったら結構成功することは多いんだけど……」
図星を突かれ、ドキリとした。やっぱりそうだよな、セイバー程の達人であれば素人の集中度合いも分かるものだよな。とは思うのだが、失敗ばかり見せてしまうのも何だか嫌な気がして俺はつい他の物でなら出来ると言ってしまった。
「やはり私が居ては邪魔ですね。あまり根を詰めないようにしてください」
「あ、あぁ。おやすみ、セイバー」
そう言って彼女は立ち上がると屋敷の方へと戻って行ってしまった。どうやら強化の鍛錬が上手くいかなかったことでセイバーに気を遣わせてしまったようだ。何とも情けない……。次にもし披露出来る機会があればちゃんとした出来のものを見せよう。
そう考えながら今夜の鍛錬はいつも以上に精を出して取り組むことにした。取り敢えずの目標は強化の魔術の成功率を上げること、そして投影の魔術を早い段階で習得することを目標としようか。知識として知ってるっていうアドバンテージがあるのに全く
────この時の俺は鍛錬に夢中ですっかり忘れてしまっていたんだ。セイバーに強化の魔術を披露したその日の夜中にキャスターによる襲撃があること。そして、
流石に次回(無理なら次次回)辺りからは原作通りではない展開を入れていきたい。
今更ながらコメントの指摘からあらすじの『死にたくない・かかわりたくないという思いの下』という書き込みを消させていただきました。急にこのような勝手なことをしてしまい、また見切り列車故に矛盾を発生させたまま読者の皆様に困惑を与えてしまい、申し訳ございませんでした。(『死にたくない』という思いは原形としては残していくつもりはあります)
お恥ずかしい話、作者の書きたい所を書く為にあまり深く考えずに書いているのでこのような矛盾が多く発生しています。もしそういった明らかに見逃せない点を見つけられましたら感想等で教えてください。全力で出来る限り修正いたします。(修正報告は後書きもしくは活動報告などにてします)