ぼんやりとする意識の中、『ゲームをしよう』と誰かに誘われた。
そんな事している暇なんて無い筈なのに何故か俺の口は、
「いいよ」
だなんて無責任な言葉を発していた。そして流されるまま俺はこの声が提供するゲームをすることになった。
声は言った。『邪魔するモノを退けながら■■■と■■■を
だけど、邪魔するモノとは何だろうか?ゲームである以上障害物は確かにあってもいいとは思うのだが、あまり多く出てこられると二人を救えなくて
─────邪魔するモノは全部食べてしまえよ
あぁ、そうか。その手があった。だって俺は■■■■■でもあるのだから。そんな簡単な事だったんだ。邪魔モノは全部食べてしまえ。そしたら先にも進めるし俺の
「ふふ……アハハッ!このゲーム、俺の
ゲームとはいえこんな力を持っているんだ。きっと■■■と■■■の二人を救う事だって簡単だ。なぁ、そうだろ?■■?
─────あぁ、そうだな。兄弟
その声を聞くと俺の足元に一本の階段のような道が現れた。どうやら目的地までの道案内は自動的にしてくれるらしい。なんて親切設計なゲームなんだろう。
…………あれ?そう言えば何でここには俺一人しか居ないとなんとなく分かる筈なのに誰かに呼び掛けたり声を聞けたりしてるんだ?んー、でもまぁ、良いか!今は気にしなくても。その内判るだろうしな。
「〜♪〜〜♪」
今すぐにでもスキップしそうな足取りで一本道を渡り歩く。時に上機嫌で鼻歌まで歌いながら。自分でも何でここまで上機嫌なのかは分らない。多分、親切設計なゲームをプレイすることが出来ているからだろう。だって今までは決められた役割をただ淡々と実行するしかなくてつまらないと思っていたからだろう。でもそれは衛宮士郎として生まれてきた俺の役割だったからどうしようもない事だとも言えるかな。
冬木に残り続けて、魔術を半端ながらも学んで、桜と出逢って、聖杯戦争に巻き込まれて、セイバーを召喚して、遠坂とも繋がって、それから…………
そこまで考えた所で目の前に一つの真っ黒な人影が現れた。
「この間女狐が招いた小僧ではないか。一人で何用か?」
「・・・・?」
聞き取れない。そもそも何か言っているのか?それすらも分らない。けれど真っ黒に塗り潰された顔がこちらを向いているのだけは分かった。
「答える気は無い……と」
物干し竿のように長い何かがこちらへ向けられる。
「…………邪魔」
何者かは一切分らない。
アサシンだっけ?
でも俺の前に立って敵対意思を示しているのなら俺の敵だ。だから
影へ腕を伸ばしてキュッと握る。たったこれだけの作業で黒い人影はあっさり水のように弾けた。やっぱり最初の敵だからか呆気ないな。あぁでも、ちょっとだけ渇きが満たされた気がする。
「……足りないなぁ」
でももっと欲しい。いや駄目だ。早く■■■と■■■を救わないと。でもどうやって?俺に出来ることは食べる事と強化の魔術くらいだってのに?あれ、でもあの人影を取り込む時は違う力を使ってた気もする?何だっけ、影?泥?まぁ関係無いか。使えるものは何でも使うから。だからソレが何なのかなんて知らなくても良い。
それにしても優遇されまくってるゲームだよな。道は一本道だし、人影らしきモノの顔も声も分らないから罪悪感なんて抱かない。俺が邪魔と認識して食べてしまえば糧にも潤いにもなるし。そんな事を思ってたら、先程よりも広い場所にまたさっきのような人影が現れていた。
「あら、セイバーのマスターじゃない。坊や一人でここに来るだなんて死ににでも来たのかしら?」
「・・・・。」
今度は何だか先程よりも輪郭がハッキリとしない。ローブか何かを着ている?それとも人じゃない何か?さっきからずっと分らない事だらけだけどまた食べてしまえば問題ないか。すぐ殺せるし。
「…………逃げられた」
「っ!?いいえ、違うわね。何者?貴方」
そう思って先程と同じ作業をするが、今度は避けられてしまった。まぁそうか。そんな簡単に行くなら流石にゲームとして成立しないもんな。少しは抵抗してもらわなきゃ、愉しくない。
じゃあ、今度はどうしようか。何か使い魔的なものでも出せないかな?魔術師はそういったモノも使うってどっかで聞いた気がする。何が良いかな。鳥?猫?犬?虫?烏?それとも狼?あ、そうだ。さっき取り込んだ人影を出そう。
「なっ!?アサシン?!」
呆気ない最後だったけど、それは多分俺が強かったってだけだろう。反応を見る限り何か
「小次郎。アイツを殺せ」
「了解した、
影から喚び出して理解する。あぁ、彼はアサシンのクラスなのか。なるほど。なら今目の前に居るのはこの間のキャスターか。じゃあここは柳洞寺かな?結構情報が分かったな。口では名前を呼んだ筈なのにアサシンの名前は全然分らないけど、クラスが分かっただけ万々歳かな。
そこらの座れそうな辺りに適当に座って二人の様子を伺う。時折、キャスターが召喚した使い魔らしきものがこちらを攻撃しようとしていたが、
様子を見る限り、キャスターの放つ攻撃をアサシンは軽く往なしていた。暫くしてキャスターの元へ一気に近付いたアサシンが宝具を放った。アサシンの宝具をもろに受けてしまったキャスターは重力に従い、地面に落ちてきた。
「ぁ………ぐ……」
以前と違い回復する様子も見られないことから、アサシンとの戦闘でかなりの魔力を消費したらしい。
「もう終わり?つまらないなぁ……」
こういうの、何て言うんだっけ。あ、アレだ。
「飼い犬に手を噛まれたな、キャスター?」
「何、ですって……!!」
「アハハッ!じゃあな、キャスター」
僅かにモザイクらしきモヤが晴れた顔が怒りに歪んでいるのがよく分かった。煽ったのだからこの反応は妥当だよな。なんていう軽い感想を抱きながら俺はアサシンの時と同じくキャスターを取り込んだ。
やっぱりアサシンの時と同じで何処か渇きが少し満たされたような気がする。でもやっぱりまだ足りない。もっともっと欲しい。この感覚、何だっけ。何処かでこんな症状を見たような気がする。いや、聞いた?ま、どうでも良いか。
それと、渇きが満たされたからだろうか。さっきまで不透明だったものが少しだけハッキリとしてきた。まず渇きについてはあと五人、少なくとも三人分くらいは取り込めたらそれなりに良さそうだ。あと分かったのは俺の
あぁ、愉しい。次は一体誰を取り込もうか?セイバー?ランサー?アーチャー?ライダー?バーサーカー?どれも選び難いなぁ。あぁ、でもアーチャーは難しいか。だって彼は遠坂のサーヴァントだもんな。一筋縄ではいかないだろう。だったらセイバー?いや違うな。だって彼女は元々
………?何でセイバーも取り込もうとしてるんだ?だって、セイバーは大切な…………大切な?何、だったっけ……?分らない。分らないのなら、どうでもいい?いや、良くない。良くない筈なのにどうして……
「セイバーって誰だっけ……?」
彼女の事をハッキリと言えないんだろうか?
「あ、ぁあ!ああああ……!」
何で何で何で何で何でなんでなんでなんで!どうして!どうしてなんだよ!大切だって分かるのに、女の子だってことは分かるのに……!彼女の顔が、声が、何も分らないんだ!
「セイバーっ、セイバー……!セイバーァ!!」
三度彼女の
『ハァーイ、そこまで。無駄な思考をしている時間は無ぇぜ?』
突然、何処からか声が聞こえた。
「だれ……?」
『俺が誰かはアンタにとっては重要じゃないだろ?ほらほら、あっちを見てみなよ』
「・・・・?」
その声は俺の質問には答えず、ただあっちを見ろとだけ指示してきた。視線の先には人間のような何かが居た。アレは、人間……?何で?
『アレはアンタの食料だよ』
「っ!?食、料……?」
まさかアレを食べろと?冗談じゃない、だってアレはきっと無関係な人間で……
『冗談じゃない?それはこっちのセリフだわ~。だってアンタは散々……
「ッ……!??!」
ヒュッと、喉が鳴る。そう、だった。サーヴァントとは言え、彼らはれっきとした人間なのだ。それを俺は、
俺の中で何かがプツリと切れる音がした。それが何なのか自覚する間もなく俺は、
「あー……ん」
『うんうん。やっぱりそういうケモノ臭い行動が一番お前にピッタリだよ、
食事に夢中になっていた俺にはそういうアンリマユの声は全く聞こえなかった。
ーーーーーーーー
『満足したか?』
「…………ううん、まだ足りない」
それからもポツポツと現れた食料を食べていったが、まだ満足したとは言い難かった。むしろ余計に渇きを意識してしまった気もする。
『そっかそっか。なら、次のゲームの場所に行こうな〜?』
俺の返事に声の主は何処か愉快さを含む声でそう言うと、パチンッと指を鳴らした。するとさっきまで血で真っ赤に染まっていた空間がパッと切り替わった。
ここは……学校、だろうか?何だか不穏な雰囲気というか周りが夜みたいに暗いせいでよく分らないのだけど。まぁ初見で学校だと思ったから学校なんだと考えることにしようか。
「ハハハッ!やっぱりサーヴァントってのはこうでなくっちゃ〜!アハハハ!」
何だろう、知っている声が聞こえる……?いや、知らない?分らない。付き合いは長かった気がするんだ。でもやっぱり思い出せない。それならまぁ、良いか。それよりも喉が渇いてお腹も空いたんだ。声の聞こえた方向からいい匂いもするし、まずはそちらへ向かおう。
「なっ!何なんだよ、お前!」
「下がってください。これは人が触れて良いモノではない」
匂いに誘われて向かった場所には二つの人影が居た。一つはこちらを指差して何かを叫んでいる様子で、もう一つは何かを言ったようだがただ立ってこちらを見ているようだった。
叫んでいる奴は耳障りなので先に喰らってしまおうかと思ったが、何故だかそれは駄目だと思った。何でかは分らないけどそれよりも隣りに居る奴の方が美味しそうだ。
そう思って伸ばした“手”に何かが突き刺さる。
「…………ぁ?」
痛みは無かった。血も流れなかった。けれど何だか───
─────気に食わないなぁ……
「お、おい!何とかしろよライダー!」
俺の感情に反応するかのように影はユラユラと動き、そしてそこから泥が溢れ出す。その様子を見て目の前の人影は距離を取る動きを取ろうとしたが、ドーム型に影を展開することで逃亡を阻む。
「何者ですか、貴方……」
「・・・・。」
人影は何かを喋っているようだったが、相変わらず聞き取れない。まぁ、どうせ大した事は話していないだろうさ。そう考えながら捕食する為に影を伸ばす。狭い空間にも関わらず、ソイツは素早い動きで影を避けていく。
「あぁ!もう……!」
一向に捕まらない
早く早く早く早くはやくはやく!喉が渇いて仕方無いんだ。目の前からするいい匂いにお腹だって空いてきた。我慢なんて出来ない!
俺の意識に呼応して泥が際限のない滝のように足元から溢れ出て人影を呑み込んだ。グジュリグジュリ……、少し前にソレを喰らった時と同じような音を立てて咀嚼する。
─────あァ……美味シイ。もっと、モットほしイ!
次の食料はどこだと辺りを見回そうとした時、視界の端を何かが掠めた。飛んできた方向へ目線を向けるとそこには腕をこちらに伸ばし攻撃の体勢を取っている
「とお……さ、か?」
自分が発した筈の言葉が理解出来なかった。俺は今、アレを何と言った?遠坂?遠坂って、一体誰なんだ?俺は一体、何を忘れている?
「ぁ、ぅ゙あぁぁ゙……!」
「きゃあ!??」
頭が、割れるように痛い……!
自分が何を忘れているのかを考えるだけで頭痛が酷くなる。まるで思い出すなと警告されているようだ。でも思い出さないと。だって、今目の前にいる人影は俺にとって
『ちょっとちょっと。思い出すのはまだ早いって』
背後から伸びて来た腕に視界を防がれた。
『後でしっかり思い出させてやるから今少し眠ってなよ。マスター?』
そして優しく声を掛けられると先程までの割れるような頭の痛みも癒えることのない渇きも全てが吹き飛び、急な眠気が襲って来た。
『今日はここらで一旦、セーブしとこうぜ。続きはまた明日、ってな?』
そう楽しそうに笑う声を聞いて、俺は眠りについた。
思考回路及び言動がコロコロ変わってく黒聖杯状態衛宮君(偽)が書いてみたかったのよ……。そんで、壊れそうになったら別方面へ誘導するアンリマユ君良くない?え、別に良くない?あ、そうっすか……
別に転生者じゃなくても良かったっぽい気もするけど何か元の衛宮士郎じゃ無理っぽい気もしてこうなっちゃった((
次回はまだ書いてないけど遠坂凛視点の予定です。