「────」
微睡む意識の中、誰かに呼ばれた気がした。でも本当に気の所為かもしれない。だって、ハッキリと聞こえないんだし。なら、きっとそうだ。だからこのまま眠っていよう。
そう思い心地よい感覚に身を委ねていると、今度はハッキリと声が聞こえた。
「おーい、そろそろ起きてくんない?」
この声は……
「アンリ、マユ……?」
「はいはーい、アンリちゃんですよ〜?おはよう、兄弟」
「え、あ、おはよう……?」
やはりアンリマユで合っていたらしい。でもどうしてアンリマユが側に?それにここは一体何処なんだ?俺は今まで何を?それに兄弟って、どういう事だ?そういった疑問を目の前に居る彼に尋ねる為に口を開こうとした時、指一本でそれを静止させられた。
「意識がハッキリとしてきて疑問が色々湧くだろうけど、まずは腹ごしらえでもどうだ?腹減ってるだろ?」
「………………うん」
彼に言われた瞬間、くうくうとお腹が空いてきた。何でもいい、何かを食べたい。そんな欲求で頭の中がいっぱいになりそうになる。
「ハハハッ!そうだよな、まだ足りないよな。んじゃ、ゲームを続けるついでに腹ごしらえも済ましますか!」
何処で?と声を出す前に周りの景色が一変する。真っ暗な空間から何処かの西洋の屋敷みたいな場所に移動していた。
「ささっ!食事といこう。アンタの為に沢山用意したんだぜ?」
そう言ってアンリマユは俺の手を引いてテーブルへと案内する。何が起きているのか分からない俺は流されるがままにテーブルに案内され、イスにつく。
俺がイスにつくと同時にまるで魔法のように料理が目の前に現れる。そのラインナップは豊富で普段食べる和食を中心としながらもオムライスやクリームシチューなどの洋食なども揃っていた。正直な所食べ切れるかどうか不安だったのだが、思ってた以上に自分は空腹だったようで次々と料理を食べることが出来た。不思議と満腹感は永遠と来ない気がした。
「精が出るな、雑種」
もうちょっとでテーブルいっぱいに出ていたものは食べ終わるかという時に、アンリマユの声じゃない他の声が聞こえてきた。声の聞こえた方向へ目線を向けるとそこには今までの黒塗りの影とは明らかに違うキラキラとしたオーラを纏う人?が居た。誰だ?俺はその人物を知っている筈なのに、名前が出て来なかった。
「いや、こう言うべきか?
目の前の人物が放った言葉の意味が分からなかった。聖杯の泥人形?何の事だ?と、首を傾げていると
「おいおい王様〜。何しに来たんだよ?もう少しの所なんだぜ?」
「口を閉じろ下臈。我が話しているのは貴様の前に居る泥だ」
「ひっで〜、別にオレが話してたって良くない?オレはおしゃべりが取り柄な────」
アンリの言葉が途中で途切れる。目の前の人物の後ろで波打つ光の中から放たれた剣がアンリの首を刎ねたからだ。
「口を閉じろと言ったであろう」
「アンリ……?」
首を刎ねられた彼の身体は地面に倒れ込み、その後水風船のように弾けて消えた。目の前が真っ赤に染まる。
「お前!!!」
「ほう?泥の分際でそこまでの感情を持っていたか。つくづくアイツを思い出す。……光栄に思えよ、泥。貴様は我の手で直々に葬ってやる。良い声で哭いてみせろ」
彼がそう言うとその後ろにいくつかの光の波紋のようなものが展開された。その中から先程アンリの首を刎ねたものと似たような剣が次々と顔を出している。
「っ……」
恐怖で後退る。瞬間、後退った足が剣によって貫かれた。数瞬遅れて痛みを認識する。
「っ!??あぁ……?!ぅあぁ゙ぁぁ゙ァ?!!?」
痛い痛い痛い痛い痛いいたいいたいいたいいたい!!!!!
凄まじい痛みに声を出す事で紛らわそうとするが、次々と放たれる剣によって痛みが追加され紛らわすことが出来ない。
「カヒュ……!!ッ……ぅ゙うぅ……なん、で……?」
どうして俺がこんな目に遭わないといけないの?
「何故、だと?フハハハハハ!面白い事を言うな泥よ。貴様は人を、サーヴァントを、自らの欲を満たす為だけに喰ろうたではないか!それが悪でなくて何と言うか!それとも何か?自分は悪くないとでも戯言を吐くか?」
「そ……っ゙、れは……」
言い返す事が出来ない。意識が混濁していたとは言え、俺はサーヴァントや食料と言われた人間を食べた自覚が残念ながらあるのだ。今与えられた痛みで意識がハッキリとしてしまったから。そう考えたら、もしかしたらさっきのアンリが用意したという食事も実は人間だったという可能性もある。
「フン……だが貴様が好き勝手やるのもこれまでよ。コトミネは貴様が此度の聖杯戦争で新たに生まれ変わるとほざいて
剣を放った人物が上から目線でそう言うが内容は殆ど聞き取れず、視界は霞むのみだった。理解出来たのは死ねという殺意の言葉と新たに放たれた剣が、俺の心臓を貫いた事だけだった。
「ッ!!?ガハッ……!」
「喚く力すらも残っておらぬとはな。ハッ、つまらぬ。所詮は泥か。もう少し楽しめると思ったのだがな」
霞む視界に彼が立ち去ろうとする様子が見える。
今度こそ俺は死ぬのか?
だって、喉が渇くんだ。空腹感が無くならないんだ。食べても食べてもくうくうとお腹が鳴るんだ。渇きが、飢えが、俺から正常な判断を奪うから。だから食べてしまっただけなのに。
痛いのだって嫌いだ。以前にこんな痛みを経験したことなんて無かったから。平々凡々に過ごした筈だ。二次元の主人公に転生だなんて奇想天外なことは経験しているが、何も悪い事なんてしてない。
俺は無実だ。俺は悪くない。俺は何もしていない。悪いのは───
────俺を悪だと決めつけたお前だ
そうだよ。俺は何も悪くない。だって喉の渇きや空腹感だって生理現象じゃないか。正常な判断が出来てなかったとしても俺はそれを解消するために行動しただけ。だからそれが解消されない限り行動し続ける。誰にも止めさせない。
「っ?!な、に……?」
ガシャン、と何かが割れる音がした。それは薄暗い路地裏を照らしていた街灯の柱だったかもしれないし、俺の中で何かを押し留めていた
痛みは感じなくなっていた。傷が癒えたのだろうか?まぁ、気にしなくても良いか。今はそれよりも目の前の
表情がすっかり激昂に染まり、先程の光の波を展開させようとしていた腕を喰らう。彼の魔力に満ちた腕は果実のように甘く、美味しく感じた。
「貴様……!それだけ喰ろうてまだ喰い足りぬと、我を喰らうと言うか!その愚行、万死に値するぞ!泥!!」
「……?何言ってんだ?アンタ知ってるんだろ?俺がサーヴァントを喰らっているの。さっき食べて分かったけど、アンタもサーヴァントなんだな。だったらアンタも俺の食料だろ?」
「泥風情が……!!」
「あー……ん」
際限無く泥を展開して獲物を捕らえた後、一口でソレを喰らう。今までの食料達とは違い、魔力に満ちた身体はどんな食べ物よりも甘美で中毒性のある味だった。グジュリ、グジュリ、最早聞き慣れてしまった音を立てて己の中へ魔力を取り込む。今まで取り込んできた物の中で最上級の満足感を得られた気がした。
「お〜お〜、遂に金ピカ取り込んじまったか〜。どうだ?美味かったか?」
俺の影から先程首を刎ねられた筈のアンリが何も無かったかのように上機嫌な声を発しながら五体満足で現れた。
「アンリ……」
「おう、どうした?」
「もうかなり記憶が鮮明になってきたんだ」
あの人影、もといギルガメッシュを取り込んだ時にゲームの実績が一斉に解除されたかのようにあの時の記憶が鮮明になってきたのだ。
「おんおん、それで?」
「腹ごしらえもとりあえずは済んだし、ゲームの続きを再開しようかなって思ってさ」
俺がそういうとアンリは一瞬キョトンとしたが、次の瞬間には口が弧を描いていた。そして、俺の言葉が余程面白かったのか腹を抱えて笑い出した。
「アッハハハハ!良いねぇ、ようやっと本格的に始めるってか?」
「うん。ごめんな、随分待たせた」
「平気平気!オレが何十年
「そっか。じゃ、もう少し待っててくれ。イリヤ……のは無理でも桜に埋め込まれた聖杯の欠片を取り込まないといけないからさ」
桜を
「良いね良いねぇ!戦えないだなんてほざいた時はどうしてやろうかと思ったが、そこまでやる気になってくれるたぁ嬉しいねぇ!」
「それはお前が中途半端に
「いやいやいや、それはお前が自分で
「あれ?そうだっけ?」
俺、衛宮士郎になる前にそんな会話した覚えないんだけど?
「何だ?忘れちまったのか?確かにお前は
「……………そうか」
何か納得はいかないけれど、これだけ言われたらそういう事なのだろう。本当に身に覚えが全く無いんだけどもな?
「そう言えば結局、この世界は何ルートなんだ?やっぱりUBWか?」
「いや?確かに基本的にはUBWだが、混線だぜ?SNにも行けるし、なんならHFだって行く。むしろアンタの目的を達成するならここからはHFルートを参考にするのをオススメするぜ?なんてたってアンタは……」
「
「そういう事♪どうだ?絶望したか?自分が悪側の人間であったことに」
ニタニタと効果音が付きそうな程に歪んだ笑みを浮かべるアンリ。その言葉にはこちらが絶望するのを望んでいるのを隠しきれない声色が乗っていたが、俺は別に絶望なんかしてなかった。
「いいや、全然?」
「へぇ……?」
アンリの笑みが一瞬崩れた。しかしそれもすぐに戻り、俺の返答を待っているようだった。
「そもそも俺が衛宮士郎な時点で物語通りに行くだなんて難しいと思ったんだよな。まぁ、俺がオマエでもあるだなんて事実には流石に驚いたけどな」
「ははっ。やっぱりアンタを選んで正解だったな」
「うん?正解……?」
「あぁ、気にしなくて良いぜ。こっちの話。んで?桜を助けるんだろ?いつ動くんだ?」
アンリの言葉に少し疑問を覚えたが、上手いことはぐらかされてしまった。詳しく聞きたかったが、同時に聞いてはならないような気がしてそのまま流されることにした。
「あー、俺いつまで寝ていた?」
「んー?大体一日くらいか?」
「間桐は学校に結界を張ってたか?」
「結界?あー、アレか。おう、張ってたぜ。まぁアンタがライダーを喰ったから解けたけどな」
「じゃあ、時系列的には桜は一応今日、退院は出来るのか……」
なら一度家に戻ろうかな。急に居なくなったことで藤ねぇ達には心配掛けているだろうし。もっと言えば、セイバーが居るだろうし。
「何だ?家に戻るってか?」
「そのつもりなんだが……何かあったのか?」
「いや?特には無ぇぜ?ただちっとばかし手伝わせてくれてねぇかな〜って思ってな?」
「手伝い?」
ニヤニヤするアンリに絶対に碌なことしないだろ、と思った。しかし、予想に反して彼はこんな事を言ったのだ。
「そ!記憶をある程度思い出したからってまだ泥や影の制御は上手く出来ねぇだろ?だからオレが手伝いしてやろうってワケ!どうだ?良くね?」
「あー……まぁ、確かに?」
「だろ?」
「具体的にはどういった場面で手伝ってくれるんだ?」
「主に戦闘面でかね〜?泥と影動かしながら更には強化と投影も使うだなんて大変だろ?だからその時は俺が前者二つを行使するのをサポートしてやるってわけ」
「投影?俺、使えないぞ?」
「いんや?使えるぜ。事実、投影を使ってキャスターの使い魔を倒してただろ?」
「え??」
アンリの話に俺は首を傾げる。使ってた覚えも自覚も無かったらだ。俺って、投影魔術使えてたか?いや、使えない筈だ。だって、物語が始まってからは
「およ?忘れちまったのか?ならここでアーチャーの剣を投影してみろよ」
「…………分かった」
半信半疑ではあるが、アンリに言われた通りにアイツの剣を投影してみると簡単に投影することが出来た。
「出来た……」
「ほらな?出来るだろ?」
「うん……」
認めてしまうのは何だが癪に障る気がしたが、出来てしまった以上は納得するしかなかった。
そっか……俺、投影魔術もう使えてたんだ……。衛宮士郎になったから、この聖杯戦争中には使えるようになるだろうと思っていた。なんなら
「じゃ、そういう事で向かおうぜ?」
「あ、うん。そうだな」
物思いに耽っていると、アンリに声を掛けられて意識を戻す。そして彼の言う通り、自宅へ向かうことにした。
この時、彼に背を向けて藤ねぇたちにどう言い訳するかを考えていた俺は気が付けなかった。
「ほんと……哀れな奴だよなぁ?」
彼がこちらを見て格好の餌を見つけたと言わんばかりに、歪んだ笑みを浮かべていたことを。
「オレがちょっと
俺が元々持っていた記憶に実は偽りの物が紛れていたということを。
Q:更新せずに今まで何してたの?
A:発売日にサムレム買ってずっと遊んでました。すみません!
サムレムずっとやってて全然ストック作ってないからまた結構時間開きます。ごめんなさい……(_ _;)
やっべぇ、今更気づいたけどその場で思い付いたのそのまま書いてるからサーヴァントを喰らう時系列ミスってるわ……。更には転生者って設定も揺らぎそうでヤバいッスわ…………
つくづくシリーズ物を作るのに向いてないネ!でもやりたい所はまだ先だから頑張るヨ☆(開き直り)