衛宮君は消極的である   作:寝仔猫

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実体の掴めぬ敵

 

Side:遠坂凛

 

裏口から学校を出て日も暮れた後、私達は協定を結んでいるセイバーに今日起きた出来事の説明する為、そしてあの影が吐いた前回の聖杯戦争についての詳細を聞く為に衛宮君の家に向かっていた。

 

 「……凛」

 

 「何?アーチャー」

 

そんな最中、アーチャーから声を掛けられた。

 

 「セイバーの居るあの家は言ってしまえばヤツの根城である可能性が高い。それでも行くと言うのか?」

 

 「そんなの分かっているわ。だからこそ行くんじゃない。それにアイツの事はセイバーにも伝えておかないと危ないわ」

 

 「彼女が自らあの影に呑まれに行くとでも?」

 

 「そこまではないでしょうけど一応ね。知っておいて損はないでしょう?」

 

そういうと彼はいつになく眉間に皺を寄せ、明らかに不満であるという顔をしていた。

 

 「何よ。私の決めた方針に文句でも?」

 

 「……いや、無い」

 

 「何よ!言いたい事があるのならハッキリと言いなさいよ!そうやって、あからさまにウダウダされてるとこっちがイライラしてくるのよ!!」

 

私のサーヴァントならシャキッとしなさい!と続けて言うと、彼はほんの少し瞳を丸くした。そして小さくため息をつくと秘めていた考えを語り始めた。

 

 「君の事だから重々承知しているだろうが、聖杯戦争は戦争と名が付いている争いだ。勝者は一人だけ。協定を結んでいるとしても奴が居ない今、セイバーを助ける義理は無いと思うのだが」

 

 「あら貴方、セイバーを助ける気があったのね。私は情報を伝えるとだけしか言っていないのに」

 

 「・・・・・。」

 

 「ふふ、墓穴を掘ったわねアーチャー」

 

冷酷な奴だと思っていたけれど、思ってよりも情に厚い人なのかしらと自分の失言に顔を歪める彼を見て認識を少し改めた。

 

 「あまり人をからかうのは止めてもらえるかな」

 

 「うふふっ。ごめんなさい?貴方があまりにも綺麗に墓穴を掘るものだから楽しくって」

 

 「………地獄に落ちろ、マスター」

 

 「お断りよ♪」

 

彼をまだ召喚したばかりの頃に言われたセリフをもう一度言われて、思わず口角が上がった。そんなこんなでいつもと変わらないやりとりをしている内に衛宮君の家の前まで辿り着いた。

 

 「リンっ!」

 

 「セイバー?どうしたの?」

 

家主である衛宮君は居ないだろうからどうやってセイバーとコンタクトを取ろうかと考えていた時、玄関先からセイバーの声が聞こえてきた。心做しか声色には心配の色も見られた気がした。

 

 「先程のニュースでリン達が通う学校で意識不明者が多数出たとの情報があったので心配したのです。ですが、様子を見る限り何とも無さそうで安心しました」

 

 「そうだったのね。見て通り私は大丈夫よ。ただ、被害を事前に抑える事は出来なかったけれどもね」

 

 「それでも無事ならば良かったです」

 

召喚者に似たのか元来のものなのか、セイバーはそういうとこちらに表裏のない笑みを浮かべた。ほんと、うちのと変えて欲しいものだわ。と思いチラリと隣に居る己のサーヴァントを覗き見る。

 

 「何だね、マスター。何か私に言いたいことでも?」

 

気配に敏感な彼はこちらの視線に気がつき、眉を顰めてそう尋ねてきた。

 

 「いいえ?別に?」

 

 「…………そうか」

 

何か言いたげな表情をしていた彼だったが、深く踏み込む事は藪蛇だと判断したのかそれ以上何も言ってくる様子は無かった。

 

 「ちょっと?さっきハッキリと言いなさいって言ったのにもう黙り込むのね」

 

 「いや、それは────」

 

 「あの……リンはどうしてアーチャーと共にシロウの家を訪ねてきたのですか?」

 

セイバーの問いに話が脱線仕掛けていたとハッとする。駄目ね、衛宮君に釣られて私も少し平和ボケしかけてしまっていたようだわ。聖杯戦争中なんだから気を張ってかないと。と気持ちを切り替えて私はセイバーの問いに答えた。

 

 「あぁ、ごめんなさいね。実は、これから柳洞寺に行くからその時の協力の相談と、昼間の襲撃に遭った時に怪しい敵に遭遇したからセイバーにも情報交換をしておこうと思って訪ねたのよ」

 

 「柳洞寺にですか?」

 

 「ええ。アーチャーの情報からここ最近のニュースになっている意識不明者続出の原因が柳洞寺を根城にしたキャスターの仕業だと分かったの。それで今夜柳洞寺にてキャスターを討つ予定だから門の前に居るサーヴァントを相手していて欲しいと思っているのよ。協力をお願い出来るかしら」

 

 「なるほど、分かりました。協力しましょう」

 

 「ありがとう、セイバー。助かるわ」

 

 「いえ、シロウならばきっとそう言うと思いましたから」

 

やはりキャスターに連れ去られた後、行方が不明になった衛宮君の事が気掛かりなのだろう。口では何ともないかのように振る舞っているが表情には少し影が見られた。

 

 「そう……。それで情報交換の件なのだけれども、学校に潜んでいたマスターのサーヴァントではない別のサーヴァントに襲われたわ。だからそのことについての話をしようと思うのよ」

 

 「な?!では、学校にはリン達以外にも二人のマスターが居たという事ですか?!」

 

 「いいえ、そういう事ではないわ。アイツは自らをサーヴァントと名乗りはしたけれど明らかに戦法が既存のサーヴァント達には当て嵌まらなかったわ」

 

 「戦法が当て嵌まらない……。具体的にはどのような方法でしたか?」

 

最優サーヴァント故かそれとも経験豊富故にか、セイバーは一度取り乱しはしたがすぐに落ち着きを取り戻してこちらから情報を得ることに徹したようだった。ほんと、益々引き当てたかったわ。

 

 「確証は無いけれど主な武器はソイツの足元から際限無く溢れる影のようなものと黒い帯だと推測しているわ」

 

 「影のようなものと帯、ですか……」

 

 「えぇ。これがただの攻撃手段ならまぁそれ程警戒することは無いんだけれども、アーチャー曰く帯はともかくサーヴァントでさえ、あの影に触れることは避けた方が良いみたいなのよ」

 

 「それは真ですか、アーチャー」

 

 「あぁ、誓って偽りは無いと言おう。遠目からでしか観測出来てないが、アレは恐らく()()()()()()()()()()()だ。触れたら何が起きるのかは未知数だ」

 

アーチャーがそう言うとセイバーは考え込む素振りを見せた。

 

 「何か心当たりでもあった?」

 

 「いえ……そういう訳ではないのですが……。異例ではありますが、やはりそのサーヴァントは八騎目のエクストラクラスでの召喚された者と考えるのが妥当かと思いまして……」

 

 「いや、どうやら今回の聖杯戦争での召喚ではないらしいのよ」

 

 「そうなのですか?」

 

 「えぇ、そうなのよ。随分とおしゃべりな変わったサーヴァントだったから、アイツは色んな情報を吐いたわ」

 

 「では何と?」

 

 「アイツは『オレが召喚されたのは第三次聖杯戦争だ』と言っていたわ」

 

 「な?!そんな事はありえません!聖杯の消失と共にサーヴァントも消える筈です!」

 

やはりセイバーにも驚きだったらしく私と同じような驚いた反応をしていた。

 

 「やっぱりそうよね……。でも少なくともアイツが嘘をついた確証は無いから今の所はこの情報を信じるしかないのよね」

 

 「そうですか……。信じ難いですが情報が少ない以上、一先ずは受け入れましょう。それで、奴はおしゃべりとのことでしたが他に何か話していましたか?」

 

 「良い質問ね、セイバー。今日はその事についても話がしたくて貴方の元を訪ねたのよ」

 

 「どういう事ですか?」

 

 「セイバーは前回の聖杯戦争に参加したのよね?」

 

 「はい、それが何か?」

 

 「アイツは前回、何かしらがあったから今回で聖杯を手に入れる機会を得たと言っていたわ。何か心当たり無い?」

 

 「心当たりですか……」

 

そう言ってセイバーは再び考え込む素振りを見せた。暫くすると思い当たる節があったのか、顔をバッと上げて口を開いた。

 

 「心当たりといえば前回、私はマスターの令呪によって聖杯の破壊を命じられました」

 

 「「聖杯の破壊ですって?/だと?」」

 

まさかの回答にアーチャーと揃って同じ事を言ってしまった。

 

 「えぇ。聖杯まであと一歩という所で何故かマスターは私に宝具を持って聖杯を破壊しろと命令したのです」

 

 「そんな……だってあの聖杯よ?願いが叶うまであと一歩ならどうして破壊するだなんて考えが出てくるのよ」

 

 「それは私には分かりかねません。ですが前回のマスターは目的のためならば外道と言われる行為を容易く行う人物でした。恐らくは始めからそれが目的だった可能性も……」

 

 「いや、そうとは考え難い。君の知らぬ所で聖杯に関する何かしらの情報を得ての行動の可能性もある。聖杯の破壊が目的だったと断じるのは早計だろう」

 

 「ですが……!」

 

 「そうよね……だって持ち主の願いを叶える願望機だって大々的に謳っている聖杯だもの。そう安々と壊すだなんて発想には至らないわよね」

 

セイバーが何かを言いたげにしていたが、アーチャーの言う通り始めからそれが目的であったとは思えなかったので彼女の言葉に重ねる形で賛成の意見を述べさせてもらった。

 

 「では何故……」

 

 「分からないけれどアイツが関わっていると考えるのが妥当でしょうね」

 

 「一体何者なのでしょうか……。影や帯といった武器を扱う英霊なんて聞いたことがありません……」

 

 「私もよ。暗殺に関する逸話に関係した英霊かとも考えたけどそれにしては目立つ行動が多いし……」

 

 「正規の英霊ではないのでは?所感でしかないがヤツは善を成して崇められた英霊というよりもそれに敵対する反英霊といった方が当て嵌まるように思えたが」

 

アーチャーの口にした考えにハッとした。あの正体不明の敵は明らかにイレギュラーとも言える存在であるのだからその線もありだろうと思ったからだ。

 

 「反英霊……確かにそうね。全貌は全く分からないけれどその線で考えてみるのが良さそうね」

 

 「聖杯が反英霊を喚ぶとは……。今回の聖杯戦争はかなりの異例のようですね」

 

 「確かにそうね。普通なら六十年周期の筈なのに今回はたった十年程度で始まっているし。今までの常識が当てにならない可能性も考慮に入れて行動していかないといけないわね」

 

 「では暫くは様子見を?」

 

「いいえ。これはただの勘だけれど、恐らく様子見なんてしていたら取り返しの付かない事態になると思うわ。だから事を早く終わらせる為に何としてでも今晩、キャスターを倒すわ」

 

 「分かりました。では、すぐにでも柳洞寺へ向かいましょう」

 

ある程度情報を交換し終えた事とセイバーからの提案を踏まえて、私達は柳洞寺へ向かう事にした。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

他の参加者達を警戒しながら向かった柳洞寺の近辺で何か異常を察知したのか、サーヴァントの二人がほぼ同時に立ち止まる。

 

 「二人共どうしたの?」

 

 「……リン。妙な事に昨夜は寺の周辺に張り巡らせられていた結界が解けています」

 

 「え?!本当なの?アーチャー」

 

 「あぁ、セイバーの言う通りだ。昨夜の時点では正面からしか侵入出来ないようにしていた結界が跡形も無くなっている。何かが起きている。警戒を怠るなよ、マスター」

 

 「ええ、分かっているわ」

 

昨夜はここを訪れていないからどんな結界が施されていたのかは知らないけれど、サーヴァント二人が揃って異常を察知するくらいだ。相当なものだったのだろうと考え私は更に警戒を強めた。

 

結界が解けているという懸念点はあったが、昨夜のセイバー達と同じように正面からキャスターの元へと向かう事にした。セイバー曰く、門の前にはキャスターが召喚したというアサシンが門番の如く居るらしいので彼を相手にするにはこうするのが好都合だと判断したとのことらしい。しかし……

 

 「どういう事?門の前に来てもセイバーの言ってたアサシンらしき人影は見当たらないわよ?」

 

 「妙だな……。あの魔女からはアサシンはこの場に縛られての召喚だと聞いたのだが……」

 

 「昨夜は感知出来ていたキャスターの魔力反応もありませんね」

 

柳洞寺周辺に張り巡らせられている筈の結界然り聞いていた情報と異なる事も然り、一晩にして様子が一変した敵の本拠地の様子に全員が疑問を隠せないでいた。

 

 「何者かがキャスター達を私達より先に倒したっていうの?」

 

 「分からない。だが、現状としてはそう考えるしかないだろう」

 

 「ではどの陣営でしょうか」

 

 「考えられるとしたらバーサーカーかしら。アレならばサーヴァント二人を相手にする事も容易でしょうし。……でも、それにしては被害が少ないのよね」

 

 「ならばライダーの仕業でしょうか?」

 

 「どうかしら。アイツに呑まれた慎二のサーヴァントがライダーと仮定するならばそんな事を実行するような度胸のある奴とは思えないんだけど……」

 

 「ならばランサーか?」

 

 「消去法ならそうなるわよね……」

 

かといって本当にランサーの仕業かと考えるとどうもそれも違う気がして、明確な結論は出せないでいた。

 

 『おいおい、まだあるだろ?このオレっていう可能性がな』

 

 「「「!?」」」

 

そんな時、アイツの声が聞こえてきた。気配も無くいきなり聞こえてきた声に全員がその方向へ目線を向ける。そこには昼間出逢ったサーヴァントが居た。

 





お気に入り二百人ありがとうございます!!こんな穴だらけの小説でも読んでくださる方が沢山居てとてもありがたいです。そんな最中、思いっきり続きを書くのをサボってたのは本当に申し訳ない……(_ _;)
次回はなるべく早いうちには出せるように努力します。

あと、サブタイのセンスと文才を誰かください()
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