衛宮君は消極的である   作:寝仔猫

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一話5000〜6000字程度の文章量になるように書いているんだけど、今回のは良い感じで区切れる所が分からなくてちょっと変な所で区切ってしまった……
あと、綺礼に対する認知ってコレであってるのかね?(書いてて分からなくなった)

(2)は早ければ次の日中に出るとは思います。


開幕の刻、謎の少女(1)

 

原作の流れから遠坂達が来ているだろうと推測は立てていたが、まさかこんなにも堂々とこちらを訪ね、呑気に挨拶されるとは思わなかったので驚きの声が漏れてしまった。

 

 「知り合いですか?マスター」

 

 「まぁ、知り合いっちゃあ、知り合いなんだが……」

 

知り合い、とセイバーに言い切るには接点が少な過ぎてどうにも曖昧な返答になってしまう。

 

 「あら酷いわ衛宮君。同じ学校に通う生徒なのに……」

 

そんな様子の俺を見て遠坂は少々悲しげな雰囲気を出してセイバーを見ながらそう言った。

 

 「ちょ、遠坂!変な誤解を招くような言い方するなよ!そもそもクラスが違うし、殆ど話した事無かっただろう?」

 

遠坂の醸し出す雰囲気に呑まれてセイバーがこちらを疑い深い目で見てくる為、必死に弁明させてもらった。まだ明確な仲間割れイベントが来てないのにここで疑心を積もらせる訳にはいかないからだ。

 

 「ふふ、ごめんなさい衛宮君。ちょっとからかい過ぎたわね」

 

 「そう思うなら最初から止めてくれ……」

 

噂に聞く遠坂との違いに頭を抱えていると、遠坂の側に控えていたアーチャーが彼女にある提案をした。

 

 「マスター。このままここで話すのも良いが、他のサーヴァント達に見つかる可能性もある。何処か室内で話を進めてみてはどうかね?」

 

 「確かにアーチャーの言う通りね。衛宮君、申し訳ないのだけど家に上がらせてもらっても良いかしら?」

 

 「え?あ、うん。別に良いぞ。寒い所で長居して遠坂が風邪でもひいたら大変だもんな」

 

俺がそう言うと、何故か遠坂の顔が赤くなった。そして隣に居るアーチャーも何故か目を見開いて驚いていた。

 

え?何でだ?俺、別に変なことは言ってないだろ。ただ風邪の心配をしただけじゃないか。今の季節は冬だし、遠坂の服を見るにそんなに厚着はしていないように見えたからそう声を掛けたんだが……

 

 「シロウ!危険です!いくら知り合いだからといって、自らの領地にそんなにあっさりと招き入れるのはよろしくないです!」

 

そんな事を考えているとセイバーから反対の声が挙がった。

 

 「でもだからといってこのままここで話すのはアーチャーの言う通りになる可能性があるんだろ?だったら俺の家でゆっくり話した方が良いと思うんだが……」

 

 「ですが…!」

 

 「じゃあ、こういうのはどう?私達は衛宮君の家に上がらせてもらっている間は決して彼に手を出さないと誓うわ。それでどう?」

 

 「・・・・・。」

 

賛成の色を示さないセイバーに遠坂が提案する。ただの口約束ではあるが、彼女に対する信頼度が関わる内容でもあり、俺の命の保証も含めていたので少し迷っているようだった。

 

 「分かりました。但し、少しでも約束を破りシロウに手を出す行為を行った場合は容赦しません」

 

 「えぇ、それで構わないわ」

 

暫くしてセイバーは納得したらしく、肯定の言葉を口にした。相変わらず警戒を解いた様子は見られなかったが。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

その後遠坂達を自宅へ招き居間へ移動した後、彼女へ暖かいお茶を出す。そして彼女の座る場所の反対側に座り、向かい合う形にて話す準備は整った。セイバーは遠坂への警戒心から俺の斜め右後ろに座る形で待機している。

 

 「それじゃあ、話し合いを始めるわ。初めに質問させてもらうわね。衛宮君、貴方は今自分がどんな状況に置かれているか分かってる?」

 

話し合いをスムーズに行う為、また俺の持つ知識との擦り合わせの為にここは分からないと言っておこう。

 

 「いや、いまいち良くわからないんだ」

 

 「そう……。率直に言うと貴方はマスターに選ばれたの。身体の何処かに“聖痕”が刻まれてない?」

 

 「聖痕?」

 

 「令呪の事です、シロウ」

 

初耳の単語に戸惑う様子を見せると、セイバーが横から教えてくれた。そして、こちらにほんの少し笑顔を向けてくれた。

 

 「あ、あぁコレか」

 

美人の笑みに耐性の無い俺は、その笑顔の可愛さに何だか顔が赤くなるのを感じたが、左手の令呪を見ることでそれを誤魔化した。

 

 「そう。それがマスターとしての証よ。そしてそれはサーヴァントを律する呪文でもあるから、それがある限りはサーヴァントを従えていられるの」

 

 「ある限りはってどういう事だ?」

 

 「令呪はサーヴァントに対する絶対命令権なの。どのマスターも一律三画は令呪を持っているから三回までは使えるわ。でも、さっき言ったようにマスターとしての証でもあるから実質には使えるのは二回までね。令呪が無くなってしまえば、貴方は他のマスターに殺されてしまうでしょうから」

 

 「殺される?」

 

多少の差異はあれども大まかな説明は原作通りであった。しかし、そうであるが故に何てこともないかのように告げられる殺されるという言葉に内心、過剰に反応してしまう。前々からそういう世界だとキチンと自覚しているつもりだったが、どうしても死に関わることは克服出来ないでいた。

 

 「そうよ。マスターが他のマスターを倒すのが聖杯戦争の希望だもの。そうして他の六人を倒したマスターには、望みを叶える“聖杯”が与えられるの」

 

 「ちょっと待ってくれ、聖杯って何だよ」

 

 「要するに、貴方はある儀式に巻き込まれたの。聖杯戦争という七人のマスターが争い合う、魔術師同士の殺し合いにね」

 

 「いきなり何言ってんだよ、遠坂」

 

 「私は事実を口にするだけよ。それに、貴方だって本当は理解しているんじゃない?一度ならず二度までもサーヴァントに殺されかけたんだから」

 

その言葉を聞いて脳裏にはあの男が思い浮かんだ。言うまでもなくランサーの事だ。アイツのせいで(お陰で)俺は、関わりたくもない聖杯戦争に参加せざるを得なくなったのだから。

 

 「納得した?私もマスターに選ばれた一人。そのサーヴァントは聖杯戦争を生き残る為に聖杯が与えた使い魔とでも考えなさい」

 

 「使い魔には見えないんだけど……」

 

 「そりゃそうよ。彼らは使い魔の分類ではあるけれど人間以上の存在、過去の(・・・)英雄なんだから」

 

 「過去の英雄?セイバーが?」

 

 「そうよ。過去だろうが現代だろうが伝説上の英雄を引っ張ってきて、実体化させたものがサーヴァント。それを呼び出すのがマスターの役割ってわけ。この実体化は聖杯による現象ね」

 

話を聞けは聞くほど俺が元いた世界では経験し得ない現象の数々と知っている知識との一致に、あぁ本当に俺は物語の主人公になってしまったのだなと思った。

 

 「サーヴァントは基本霊体としてマスターの側に居るんだけど、必要とあらば実体化させて戦わせられるってわけ」

 

 「霊体と実体を使い分けられるってことか……。そう言えばあの赤い奴は?」

 

 「アーチャーよ。今は外を見張らせているわ。ここまでは理解出来た?」

 

 「言葉の上では……」

 

言葉の上だけでなくとも十分に理解出来た。俺は物語の主人公という立場から逃れる事なんて出来なくて、このまま戦うしかない、って事をな。

 

 「そう。詳しい事はこの聖杯戦争を監督している奴に聞きなさい。私が教えてあげられるのは貴方がもう、戦うしかないっていう事とサーヴァントと強力な関係を作りなさいって事だけよ」

 

そう言って遠坂は出されているお茶を飲む。そしておかわりを注ぎ込もうとしたが中身が無くなっていた為、沸かしてあるお湯を取りに行きながら次の事を口にした。

 

 「さて。衛宮君から話を聞いた限りじゃあ、貴方は不完全な状態みたいね。セイバー?」

 

 「ええ、貴方の言う通り私は完全な状態ではありません。シロウは私のマスターではありますが、パスは“薄っすらと”しか繋がっていませんので魔力の回復も他のサーヴァント達に比べると遅いでしょう」

 

 「え?」

 

 「驚いたわ……」

 

ここに来てまさかの原作との相違点が出てくると思わなくて、小さく困惑の声が漏れてしまった。幸い、遠坂はセイバーの発言に注視していた為に俺の声は聞こえなかったようだ。そういうことで改めて疑問の声を挙げる。

 

 「おい、遠坂。一体何の話をして……」

 

 「サーヴァントはね、マスターからの魔力供給を通して存在しているの。だけど、半人前の衛宮君からは魔力の供給が蜘蛛の糸程度しか受けられないから、この先困るってこと。あ、衛宮君も飲む?」

 

 「いや……大丈夫だ」

 

説明を受けていると丁度お茶が出来たらしく、突然ではあるけれど遠坂からお茶について尋ねられた。しかし俺としては今、原作との相違点を整理するので精一杯であった為、断らせてもらった。

 

 「でも、貴方が素直に話してくれるとは思わなかったわ」

 

 「見抜かれている以上、こちらの手札を隠していても意味は無いでしょう。それならば貴方に正直に話してシロウの現状を理解してもらった方が良いと判断しました」

 

 「風格も十分、っと……」

 

セイバーの方を見て遠坂はそう呟くと、お茶を一口飲む。その後、勢いよく机に叩きつけると急に大声をあげた。

 

 「あぁ~!もうっ!益々惜しい!私がセイバーのマスターだったら、聖杯戦争は勝ったも同然だったのにぃ!」

 

そう言って頭を抱えながら机に伏せた。

 

 「それ、俺はセイバーのマスターとして相応しくないってことかよ」

 

あまりにも露骨に悔しがる動作をされるので何だか癪に障り、不満の声を挙げる。そう言うと遠坂は勢いよくバッと顔を上げると、

 

 「当然でしょ!ヘッポコ」

 

何とも子供っぽい言い方で貶されてしまった。

 

 「はぁ?」

 

魔術師の家系で育ったが故に多少下に見ているとしても流石にヘッポコと真正面から言うのは酷くないか?そう思って遠坂を睨むと、彼女は急に立ち上がってこう言った。

 

 「さて。そろそろ行きましょうか」

 

 「行くって何処へ?」

 

 「聖杯戦争を良く知っている奴に会いに行くのよ。衛宮君、聖杯戦争の理由について知りたいんでしょ?」

 

 「こんな時間にか?」

 

なんと彼女は深夜二時にでもなろう時間に聖杯戦争をよく知る人物に会いに行くと言い出したのだ。

 

 「なに?行かないの?ま、衛宮君がそういうのなら良いのだけど……。セイバーはどう?」

 

 「ちょ、セイバーは関係ないだろ。あんまり無理強いするなよ」

 

 「お、マスターとしての自覚はあるんだ?私がセイバーと話すのはイヤ?」

 

遠坂はセイバーのことになると庇うような動きを取った俺を見て、口に手を当ててクスクスとからかうように笑った。さながら思春期の男子の反応を見てニヤニヤするみたいな感じだ。

 

 「そ、そんなことはあるかよ」

 

付き合いは短いとはいえセイバーに対する好意はあるのでハッキリとは明言出来ず、苦し紛れに俺はほんのり赤い顔を隠しながら遠坂に背を向けた。

 

 「アイツ(遠坂)の性格……何処か問題があるんじゃないか?」

 

ブツブツと小声でそう呟く。原作を見たことある俺の脳裏には俺の後ろでニヤニヤとする遠坂の姿が浮かび、ちょっとイラッとした。

 

 「そもそも!セイバーは、その、昔の英雄なんだろ?なら、突然現代じゃ、右も左も分からないだろうし……」

 

 「シロウ、それは違う」

 

そんな雑念を振り払い苦し紛れに振り返りながら遠坂にそう言うと、セイバーから否定の声が挙げられた。そしてこう付け足される。

 

 「サーヴァントはあらゆる時代に適応します。ですから、この時代のことも良く知っている」

 

 「え、知っているって……本当に?」

 

 「勿論。この時代に呼び出されたのも一度ではありませんから」

 

 「嘘?!どんな確率よそれ?!」

 

セイバーは第四次の聖杯戦争に参加した記憶がある為にこういった発言をしたのだろう。その発言に遠坂は驚きを示す。数多に存在する英霊の中からピンポイントに、更には連続に同じ英霊を召喚するというのは、普通にやろうとすれば至難の業である。これは、彼女を召喚するための触媒が『全て遠き理想郷(アヴァロン)』であったこと、冬木大火災を期に衛宮切嗣によってそれが(衛宮士郎)の体内に埋め込まれているということによって成し得た奇跡なのだろう。

 

 「それで、何処に向かうのですか?」

 

俺達の困惑を余所にセイバーは遠坂にそう問い掛ける。

 

 「新都にある教会よ」

 

 「教会、か……」

 

 「どうかした?衛宮君」

 

 「いや……何でもない」

 

個人的には教会に行くのは出来れば遠慮したいところであった。あそこにいる神父が苦手というのもあるのだが、もっと言えば()()にあるあの空間が苦手と感じているのだ。理由としてはあそこに何があって、どうなっているのかを知っているというのが大元を占めているのだが、あそこを思い浮かべると()()()()()と警鐘を鳴らされている気がしてならないというものだ。訪れたことなど一度も無い筈なのにそう思うなど、おかしな話ではあるが。

 

しかし物語の流れや自分の立場を考えるとそうは言ってられないので仕方なく準備することにした。

 

遠坂に居間で待ってもらっている間に、血が染み込み切り傷でボロボロの制服を脱ぎ捨て、新しく長袖を取り出す。そして、防寒の為上着を着ようとした時、あのペンダントの存在を思い出した。持っていてもあれなので、机の引き出しに仕舞っておく。そして上着のファスナーを上げ、準備は万端だ。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

遠坂の道案内の元、教会に辿り着いた。セイバーは敷地内に入ろうとはせず、外で待つことにしたようだ。

 

 「セイバー、どうして一緒に来ないんだろう……」

 

原作を知っていても抱いた純粋な疑問だった。教会の扉の前までなら来ても平気だろうに、彼女は頑なに敷地内に入ろうとはしなかったのだ。

 

 「さっき、この時代に召喚されたことがあるって言っていたし、もしかするとここのエセ神父と何かあったのかも」

 

俺の問いに遠坂はそう答えた。教会の扉までは少し距離があるので、そこまで歩きながら世間話として神父に関して尋ねておく。

 

 「遠坂、その神父さんってどんな人なんだ?」

 

 「元々父さんの弟子でね、父さんが亡くなってからの私の後見人なの。ついでに言うと、兄弟子にして第二の師ってとこかしら」

 

 「それって、神父さんが魔術師ってことか?」

 

 「そう。正真正銘のエセ神父よ」

 

丁度遠坂がそう言った所で扉の前まで辿り着いた。遠坂が扉を開けたその先には一人の男性の姿があった。男性は扉が開かれた気配を察知すると持っていた本を祭壇に置くと振り向きざまにこう言い放った。

 

 「再三の呼び出しにも応じぬと思えば……変わった客を連れてきたな。彼が七人目というわけかい?凛」

 

その男性の名は“言峰綺礼”。Fate作品でそれなりの知名度がある第四次聖杯戦争の()()()()()()()でもあり、この聖杯戦争を裏で手を引く悪役的存在だ。

 

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