今回で毎日投稿途切れます。(ストック無くなった)
まだ夜もふけぬ中、教会からの帰り道にて俺達はバーサーカーと思われるサーヴァントと、そのマスターと思われる少女と対峙した。
「こんばんわ、お兄ちゃん。こうして会うのは
そう言って少女は、遠坂がクラス名を当てた時と同じ笑みを浮かべた。先の言葉の“二度目”と言われたことに、以前何処かで会ったことあったのだろうかと疑問に思うが、それはすぐに思い当たった。
───『早く呼び出さないと死んじゃうよ?お兄ちゃん?』
あの時すれ違いざまにそういった少女が目の前の娘だったのだ。あの時は聖杯戦争自体に関わる気は毛頭なく、過去の夢を見たことによって過剰に意識した自分の幻覚かと思っていたが、どうやら違ったようだ。
俺が過去に意識を向けている間に少女はバーサーカーの前に行き、ヨーロッパの伝統的挨拶であるカーテシーを行う。
「初めまして、凛。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン。アインツベルンって言えば分かるでしょう?」
「アインツベルン……」
アインツベルンという名前に遠坂の顔が険しくなる。
「驚いた……単純な能力だけなら、セイバー以上じゃない……」
その後、何らかの方法でサーヴァントのステータスを読み取ったのか遠坂が能力に対する純粋な評価を口にした。
「セイバー以上……」
バーサーカーの狂化が為せる技なのか、それとも元となる英霊が規格外過ぎるのか、最優とされるセイバーを超えると言われアインツベルンの凄さを実感する。
そんなバーサーカーの出す威圧感に圧倒されていると、遠坂が霊体化しているアーチャーと念話を交わしていた。
「─────」
「力押しで何とかなる性能をしてるってことね。アーチャー、ここは貴方本来の戦いに徹するべきよ」
「─────」
イリヤは俺達がイリヤ達の動きを見るために警戒しているようすを感じ取ってか、こちらにニコリと笑顔を向けた。油断を誘う為かそれとも俺達を格下相手と思っているからか、さっきから随分笑顔が多い気がする。まぁ、笑顔と言っても何処か作り物じみたモノに見えるので、少々不気味だと感じてしまうのだが。
「こっちは三人よ。凌ぐだけなら何とかなるわ」
「───」
こちらをチラリと見た遠坂がアーチャーにそう告げる。その後、姿は見えないが何者かがこの場を離れる音が聞こえた。恐らく遠坂の指示を受けたアーチャーが狙撃の為に距離を取ったのだろう。
「衛宮君、逃げるか戦うかは貴方の自由よ。けど……出来るなら、何とか逃げなさい」
逃げる、だって?そんな事、このバーサーカー相手に出来るのか?セイバー以上の能力を持ってるってのに?第一、俺が逃げたとて、遠坂やセイバーはどうするってんだよ。彼ならばここで戦うという選択を取れたのか?セイバーのマスターとしてここに残って戦うか?
何て思考が頭の中をグルグルと駆け巡るが、小心者の俺にはどれも言葉には出来なかった。俺が返答出来ずに少しの間黙っているとそれを相談終了の合図と見なしたのかイリヤが、
「相談は済んだ?なら、始めちゃって良い?」
と聞いてきた。俺は、やっぱり決めることが出来なくて黙ることしか出来なかった。遠坂もイリヤに何も語ることは無いと言わんばかりに黙ったままで居る。
「……じゃあ、殺しちゃうね。やっちゃえ、バーサーカー」
何も言わない俺達にイリヤは何の反応も見せずにただ淡々とバーサーカーに指示を出した。
「■■■■■■■■■!!!!」
するとバーサーカーは耳を劈くかのような咆哮をあげ、自らの身体能力のみで天高く跳び上がった。その事実だけでも驚きなのだが、何よりも彼が動くだけで周囲に風が巻き起こることからもその恐ろしさの片鱗が分かるというのも、戦わずしてヤバイと思わせる代物だった。
「シロウ!下がって!」
「っ!」
セイバーがそう言った瞬間、遠く離れた場所から赤い矢が複数本飛んで来て、バーサーカーに直撃する。大量の矢の中に爆破物でも紛れ込ませていたのか空中で爆発も起こり、それによってバーサーカーはこちらから離れた距離に着地されられていた。
また、アーチャーの攻撃はコレだけに留まらずその後も休み無く矢の雨が降り注いだ。狂化により理性が失われているサーヴァントにはこれを凌ぎ切るのは流石に難しいかに思われた。しかし……
「嘘?!効いてないの!?」
煙が晴れた場所に立っていたバーサーカーには傷を負っている様子がまるで見られなかった。その事実に遠坂は驚きの声を挙げる。俺はというと、知ってはいたが実際に目にすると規格外過ぎるとしか言えない性能を見せつけられ唖然とバーサーカーを見ていることしか出来なかった。
「っ!衛宮君!」
その一瞬の油断をつかれ、バーサーカーに一気に距離を詰められる。差し迫る死に、世界が全てスローモーションで動いているかのように感じられた。
「っ、!(殺られる…!)」
バーサーカーが奮う大剣がすぐそこまで迫ってきている。死を覚悟したその瞬間、セイバーがギリギリの所でこれを受け止めた。二振りの剣の正面衝突によって生じた暴風で俺の身体は後ろに吹き飛ばされた。
「っ、ハッ!!!」
両者譲らない拮抗の末にセイバーがバーサーカーの剣を弾いた。そしてそれだけには留まらず渾身の一撃で剣を横に奮い、バーサーカーを吹き飛ばす。その様子に流石のイリヤも少しは動揺するかと思われたが、彼女は何も反応を示さない。むしろ、まだ何処か余裕があるようにも見られた。
「■■■■!!!!」
吹き飛ばされたバーサーカーが唸り声をあげると同時に、セイバーは走り出す。そして不可視の剣というアドバンテージを用いて様々な距離、方向から剣を奮っていく。
「フッ…!」
それだけではなく時には彼の持つ大剣を大きく弾き飛ばすことで隙を作り、防御の薄くなった胴体に一撃を加えるべく小回りを活かした動きをしていた。
「ハアァァ!!」
人並みならぬ力で奮われる二振りの剣によって立てられる金属同士がぶつかり合う音と時折舞う火花は二人の戦闘の苛烈さを物語っている。そして何より驚きだったのは、
「嘘……あの肉達磨、見えない剣が見えているの?!」
セイバーの持つ剣の太刀筋を見切っていることであった。セイバーの持つ剣は
「っ、強い……ならば…!」
激しい打ち合いの末、一度距離を取ったセイバーは剣を構えると再びバーサーカーの元へと駆けていく。そして二、三度剣を交えると態とバーサーカーの大剣を地面に叩きつけさせ、その上に飛び乗ることで大剣の使用を封じさせた。
「取った!」
その様子を見て遠坂は喜びの声を挙げる。セイバーは剣の使用を封じたまま、その首を落とすべく剣を奮う。攻撃手段の封じられたバーサーカーに防御の手は無いかに思われた。
しかし、驚くことにバーサーカーは自らの大剣から手を放し、上半身を後ろに反らすことで横からくるセイバーの剣を避けたのだ。狂化を受けてもなおその判断が出来ることにも驚きだが、その後一回転してからの武芸の心得でもあるのかと思わせるような生身での攻撃の数々にも驚かされた。
「ヤバすぎる……あれの何処がバーサーカーだって言うのよ!」
反則だと言いたくなるようなバーサーカーの戦闘技術に遠坂が抗議の声を挙げた。
「さぞ高名な英霊なのだろう。狂気に呑まれようと失われぬ太刀筋……。感服する他無い」
「アーチャー!援護を!」
セイバーのバーサーカーに対する評価を聞いた遠坂はアーチャーに援護を命ずる。数秒後、右方向からアーチャーによって放たれた矢の光が見えた。その矢は真っ直ぐと狂うこと無くバーサーカーに向うと、その身体に触れた瞬間に爆発を齎した。一点集中、広範囲の爆発に流石のバーサーカーも無傷で居るのは難しいかと思われた。
しかし、そんな健闘も虚しくバーサーカーは無傷の状態で炎の中、こちらを見つめていた。
「ッ……」
その後バーサーカーは全力疾走し、その勢いのまま剣を奮った。セイバーはこれにすぐさま対応するが、助走の力も相まった攻撃に耐え切れず、身体を宙に舞い上げられてしまう。それを追いかけるかのように持ち前の身体能力でそれ以上に飛躍したバーサーカーはセイバーを地面に叩きつける。更には急速落下してきた後すぐにセイバーに向けて大剣を奮ってきた。
再びセイバーはこれを真正面から受け止めるが、地面に叩きつけられたダメージからか、バーサーカーに押し負けている。
「クッ……」
「トドメね。潰しなさい、バーサーカー」
その様子を見たイリヤがバーサーカーにトドメを指示する。
「させるか……!」
「遠坂!」
その言葉を聞いた遠坂が二人の元へ駆け出す。そして胸元から三つの宝石を取り出すとバーサーカーに向けてそれらを投げる。それらの宝石はバーサーカーの頭上付近で粉々に砕け散ると、バーサーカーの周りで紫色のドーム状の結界となった。
「アーチャー!!」
遠坂がそう叫ぶと、次の瞬間最初に見たのと同じものと見られる赤い矢が複数本、バーサーカーが居ると思われる場所に突き刺さる。そして役目を終えた結界が砕け散った瞬間、大規模な爆発が起こった。
今度こそバーサーカーに確実なダメージを与えられたと思った。しかしその予想はいとも簡単に覆された。
「そんな……」
「不死身なのか……?」
煙が晴れた先には先程までと何ら変わり無いバーサーカーが立っていたのだ。
「退屈な横槍は無視しなさい。どうせアーチャーと凛の攻撃じゃ、貴方の宝具を超えられないのだから」
唖然とする俺達を余所に、イリヤはバーサーカーにそう言い放つ。そして再び金属同士がぶつかり合う音が鳴り響く。
今度の戦闘は先程と異なり、セイバーは防戦一方であった。しかし、セイバーの動きをよく見るとただ防御するだけではなく防御しながら何処かへ誘い込むかのように移動しているようだ。
「追いなさい、バーサーカー」
その意図を知ってか知らずかイリヤは冷静にセイバーの後を追えと指示を出す。指示を受けたバーサーカーは攻撃を繰り出しながらも確実にセイバーを追いかけ、追い詰めていこうとする。激しい攻防の末、二人の姿は森の中へ消えた。
それを見た遠坂はこちらを向くと、
「良い?アンタは逃げるのよ!」
と言って二人が消えた方角へ走って行った。辺りを一度見回すと先程まで居た筈のイリヤも姿を晦ましていた。
この場に誰も居ないのだと自覚した瞬間身体から力が抜け、その場に膝から崩れ落ちる。バーサーカーの放つ威圧感に圧倒されたのか、先程から身体の震えが止まらない。
怖い
「何もっ、出来なかった……。あんな怪物相手に何が出来るってんだよ…」
魔術はろくに使えない。戦いに身を置いた事なんて一度もない。戦いにおいて自分が扱えるのは物質を強化すること。そんな、一般人と殆ど変わり無い俺が、出来ることなんて無いのは当たり前のことだったんだ。
でも、思ってしまった。自分には誰も知りえない未来視にも近い原作知識がある。それを上手いこと使えば戦えると。俺にはそれが出来るはずだと。そう、思ってしまった。俺は主人公じゃないんだと再三思っていながら。
無理だ
「違う」
そんなことを考えてしまって、悔しさで身体が震えてるんじゃない。本当は心の中でずっと、非日常味の溢れる戦闘を眺めるだけでも恐ろしくて堪らないと考える恐怖心から震えてるんだ。
初めから俺には無茶だったんだ
こんなザマなのにいずれは衛宮士郎の成れの果てと言われるアーチャーと対峙する?それに加えて英雄王とも戦う可能性もある?ふざけたことを言うなよ。出来るわけないだろ、ただの小心者の一般人に。いくらこの身は衛宮士郎だと言っても中身が違うんだ。だから見ていただけでこのザマなんだよ。
そんな、
「セイバー……」
行かなくては。
行きたくない。
行ってアーチャーの攻撃にセイバーが巻き込まれそうになるのを回避しないと。
そう思うのに身体が言うことを聞かない。顔を上げることは出来ても立ち上がることを、一歩を踏み出すことを、身体が、いや、俺の心が拒絶するのだ。
関わりたくない
「ごめんっ……、ごめんなさい、セイバーっ…。俺っ、頑張るって言ったのにっ…、おれ……俺はっ、戦えな────」
「に ガ さ ね ェ ヨ ?」
「ひッ…!」
戦意の喪失を口にしようとした瞬間、耳元で心臓を鷲掴みしてくるかのような声が聞こえた。先まで感じていた恐怖とは別の恐怖が身体中を駆け巡る。
「ぁ…………」
そんな普通とは掛け離れた出来事の数々に俺の心はキャパオーバーを引き起こし、意識を手離してしまった。
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気絶してしまった衛宮士郎の身体はそのまま地面に転倒するかに思われた。しかしその前に
「悪ぃな、アンタには
そう言って彼はケラケラと嗤いながらフィンガースナップを行う。すると街灯に照らされた彼の影がユラリと動き、水面のように波打つ。そんな通常ではあり得ない影の中に彼の身体は吸い込まれるように落ちていった。
やっぱり戦闘シーン難しい……。
でもまぁ、書きたいシーンの一つは書けたからちょっと満足ッス。ただし本命はかなり先でめちゃくちゃ後悔してる((
おまけとして不穏な影君(アンリマユ)の登場シーンをベタ塗りですけど描いてみました。良かったら見てください↓
【挿絵表示】
【訂正報告】9/4:自分に出来ることは物質を強化することのみ→戦いにおいて自分が扱えるのは物質を強化すること
【変更理由】後の展開にてある術式も使用可能であると変更した為