「っ、ここは……?」
気が付いたら森の中に俺は一人で立っていた。
「どういう事だ…?俺は確か───ぁぐっ…!?」
気がつく以前の事を思い出そうとすると、まるでそれをさせないかのように頭に酷い頭痛が走った。何故?と疑問に思うが、
先に進んでいる間、今後のことについて考える。まず、この世界の大まかな流れとしてはUBW、及び遠坂ルートの知識を活用していけば何とかなるだろう。主な根拠としては俺がセイバーを庇う行動が取れなかったということでバーサーカーが撤退しておらず、森の中での戦闘に発展していることだ。しかし、これはあくまでも予想だ。もしかしたら異色の混線ルートという可能性もある。
とは言っても朧気ではあるがとりあえず全ルートの大まかな内容は把握出来ていると思うのでルート云々を気にするのはここでやめる。残る問題は衛宮士郎の成れの果てと言われるアーチャーに今後どう接していくか、そして神父が言った意味の真意をどうにかして確かめることが優先度が高いだろう。
そう考えて森の中を一人突き進んでいると、敵から逃げていた遠坂とぶつかりそうになった。
「「うわっ!?」」
「と、遠坂?」
「衛宮君……?」
俺が遠坂を呼ぶと彼女は一瞬キョトンとした顔をしたが、すぐに険しい顔つきになって、
「遠坂?じゃ、ないわ……よ!」
こちらに攻撃してくると腕を後ろに固定させて近場の木へ身体を抑えつけてきた。
「戦う手段が無いんだから、居るだけ邪魔って分からない?!何もせずにやられちゃったら無駄死にってもんじゃない!」
「えっと……それは、遠坂には関係あるのか?(あれ…?)」
そう口をついて出た言葉の冷たさに自分でも驚いた。あれ?何で俺はそう思ったんだ?遠坂は付き合いこそ短いけどあんなに親切にしてくれた人だってのに。少なくともそんな冷たく言い放つ筋合いなんて俺には無いはずなのに。
「はぁ?!関係あるに決まってるでしょ!!今日いっぱい見逃してあげるって言ったのに、アンタに家に帰ってもらわないと困るの!わ、た、し、が!!」
そう思っていた俺と同じく驚いた顔をしていた遠坂だがすぐに元の顔に戻って少々頬を引きつらせて感情的に理由を言い放った。
「お、おう……」
「とにかく、まだ無事なんだから今のうちに逃げなさい」
と言って遠坂は拘束していた俺の腕を離した。
「あのイリヤスフィールっていうガキ、本当に私達を殺す気なんだから」
そう言って俺に今すぐ帰ることを強要してくるが、おいそれとそれを許容するわけにはいかなかない。何故ならセイバーが命を賭けて戦っているんだ。俺だって
だから俺は遠坂にハッキリと断りの言葉を言う。
「それは出来ない。セイバーがああして戦っているんだ。俺が離れるわけにはいかないだろ」
「それは一人前のセリフよ。何の援護の出来ない貴方が行っても、無駄死にするだけよ」
戦う意思を見せる俺に遠坂は冷たく言い放つ。その言葉に少しムッと来た俺は
「そんな事ないだろ。身体がある限り出来ることはあるはずだ」
と、根拠もなくそう言い返す。それに遠坂が更に言い返そうとしたがそれを途中で遮って、
「それに、自分に出来ない事を俺にやらせる気か?」
「っ……」
と言って遠坂に反論の余地を与えなかった。俺の言った言葉に遠坂は一瞬、ハッとした様子を見せた。そして視線を少し横にズラした。
暫く沈黙していると、左手方向から大きな音が聞こえてきた。恐らくはセイバーとバーサーカーとの戦闘で生じた音なのだろう。音のする方向へ二人で駆け出す。
音のした方向へ遠坂とひたすら走ると少し開けた場所に出た。そこは数え切れない程の墓標が列なる広い墓地のような場所であった。そこにてセイバーとバーサーカーは互いに向き合い、睨み合っていた。
「流石はセイバー。バーサーカーの剣を受けたのはワザとだったのね」
「それは、バーサーカーをここに誘い込む為か?」
その場所と現在の状況を見て、遠坂がそう言った。その言葉の意味を組んで俺がそう尋ねると
「そう。遮蔽物の無い場所でアレを相手にするのは自殺行為よ」
と、肯定の言葉を口にする。そしてセイバーがそう行動した理由と現在の状況を遠坂は分かりやすく解説してくれた。
「だからこそセイバーはこの場所を選んだ。バーサーカーから衛宮君を遠ざける為にね。勿論、こんな戦いになったらアーチャーからの援護は期待出来ない。けど、向こうはアーチャーの矢でさえ無効化する怪物だもの。援護なんて初めから無意味なのよ」
「アーチャーの弓……」
俺の脳裏に遠坂のサーヴァントであるあの赤いアーチャーの姿が過った。確かに彼はアーチャーのクラスを冠するが故に狙撃の腕は他のサーヴァントを圧倒的に上回る。故にこのバーサーカー戦ではアーチャー本来の戦いに徹しているように弓での援護を行っている。それを指示した遠坂の咄嗟の判断は素晴らしいものであろう。
だが、原作を知っている俺は彼に出来るのがそれだけではない事を知っている。彼の本領は英霊になる前に培った投影魔術と固有結界を扱えるということ。この場では投影魔術を扱ったとは明かされないものの、バーサーカーにAランク級の宝具に相当する攻撃をすることが描写されていた。
それらの事を考えていた時、セイバーとバーサーカーの戦いに動きが見られた。なのでそこで思考を一旦止め、セイバーの避難をどうするかと考えながら二人の戦いを注視する。
「語り合う思いもなく、名乗りを挙げる自由もない。我らが交えるのは互いを仕留める剣撃のみ。ならばこそ、全霊の一撃で答えよう。行くぞ……ここが、貴様の死地だ!バーサーカー!!」
そう言ったセイバーは剣を構え、バーサーカーの元へ駆けていく。それに反応したバーサーカーは叫び声をあげると剣を地面に振り下ろした。振り下ろされた剣によって、セイバーの居る方面に向かって地面が隆起していった。
しかしそれにセイバーは真正面から突っ込んでいき、バーサーカーの懐に辿り着いた。そのまま剣を突き刺そうとするが、瞬時に反応したバーサーカーによって剣を片手で直接握られることで防がれてしまう。そしてセイバーの剣を握ったバーサーカーはこの隙にと自身の持つ大剣をセイバーに向けて振り降ろす。
セイバーは攻撃手段も防御手段も失い、万事休すかと思われたが……
「はあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
セイバーが声を挙げると同時に、淡い光を放ちながら不可視の剣が段々と視認出来るようになっていったのだ。そしてその刀身が全て視認出来るようになった時、剣先から一筋の光が放たれた。その光はそれまで致命的なダメージを受けなかったバーサーカーの左上半身を大幅に吹き飛ばした。
「終わった……?」
流石のバーサーカーもこれ程の致命傷を急激に受ければショック死でもするだろうと、初見の者であれば勘違いするだろう。更にはバーサーカーの瞳から狂気の光が失われ、ガクリと頭が下がり動かなくなったこともこの誤判断を助長するモノでもあった。
しかし、俺はこれがブラフでこの後にはまだアーチャーの攻撃が飛んでくることを知っている。このままではセイバーはアーチャーの攻撃に巻き込まれることになってしまうだろう。それは駄目だと俺はセイバーの事を呼びながら彼女の元へと駆けていく。
「セイバー!」
「衛宮君?!ちょっと、危な………え、アーチャー?」
急に切羽詰まった様子で走り出す俺を心配して遠坂が俺のことを呼び止めようとしたが、アーチャーからの念話が入って来たことで驚きに足を止めていた。
遠坂がアーチャーからの念話を受け取ったのと同時刻、活動を停止していた筈のバーサーカーに動きが見られた。吹き飛ばされた筈の左半身が復活して元の形にまで戻ろうとしていたのだ。
「自己再生…?いや、あれはもう時間の巻き戻しに近い蘇生の呪い……死した瞬間に発動する宝具か!シロウ!来ては駄目だ!!」
セイバーが冷静にバーサーカーの宝具を考察し、俺に近づかないように注意した。しかし、そうは言われても止まってはいられない。いつアーチャーの攻撃が飛んで来てもおかしくないのだから。
「っ!アイツ……!」
そう思っていると嫌な予感がした。予感がした方向に一度目を向けるが、それどころではないとセイバーの元へと急ぐ。その後すぐにセイバーの手を取りバーサーカーから離れた。
「シロウ……?」
俺の行動の意図が読めずに疑問を口にするセイバーだったが、それを無視して彼女の手を引いてすぐにその場から離れさせた。何とか攻撃の範囲外と思われる場所まで引いて、バーサーカーが雄叫びをあげようとした瞬間、青い太陽の如き炎を纏った矢が飛んできた。
その矢はバーサーカーに当たると半径五メートル程を巻き込む大爆発を引き起こした。攻撃を受けた地形は見る影もなく、大地は荒れ果て炎が燃え盛っていた。直撃を受けた筈のバーサーカーはというとセイバーの攻撃を受けた時と同じく
「Aランク相当の宝具を受けても無傷なんて……」
遠坂が驚きを隠せぬ声でそう呟いた。俺とセイバーはというとほんの少し爆発の煽りを受けて地面に伏せざるを得ない状況となっていた。そんな俺達の側にアーチャーが攻撃に用いたであろう武器の欠片が転がってきた。
「っ!」
それはセイバーの持つ剣の柄のような姿形をしたものであった。そんな柄は青白い粒子となりながら何処かへ消えていった。
「シロウ、これは……?」
「アーチャーの矢だろうさ。それ以外は分からないけどな。クソっ……」
セイバーの疑問に対して俺はアーチャーの矢であろうということだけ答えた。そしてアーチャーがあのままセイバーもこの攻撃に巻き込もうとしていたという事実に怒りを顕にしていると何処からかイリヤの声が聞こえてきた。
「ふーん?見直したわ、凛。やるじゃない、貴方のアーチャー。良いわ、戻りなさいバーサーカー。つまらないことは初めに済まそうと思ってたけど……少し予定が変わったわ」
声のした方角へ目線を向けると燃え盛る炎の対角線上に彼女は居た。そして戻れと言われたバーサーカーはこちらに背を向けて彼女の元へと歩き出した。その様子を見て遠坂が
「何よ、逃げる気?」
「ええ、気が変わったの。セイバーはいらないけど、貴方のアーチャーには興味が湧いたわ。だから、もうしばらく生かしておいてあげる」
と言って相手を挑発するがイリヤはアッサリと肯定してさらにはこちらを生かしておくと宣言したのだ。
「それじゃ、バイバイ。また遊ぼうね、お兄ちゃん」
そう言って彼女はバーサーカーと共に何処かへと姿を消した。
「……マスター、窮地を救っていただけたのは嬉しいのですが、そろそろ離してもらえませんか」
燃え盛る炎の向こう側へと消えたイリヤを何とか追えないだろうかと考えていた時、セイバーから手を離してもらえないかと声を掛けられた。
「あっ!わ、悪ぃ……!」
その事を忘れて物思いにふけっていた俺はセイバーの手を握っていたのを忘れていたので、つい焦って彼女に謝る。
「えっと、その、これは……」
何の説明もなく彼女の手を握ってしまったことにどう説明をしようかと口を開こうとした時、ドクリと全身が脈打つかのような感覚を感じた。
「・・・?っ!??ゴフッ……!」
何だろうかと疑問に思ったその瞬間、急な吐き気を催した。その衝動に咄嗟に口を抑えたが効果はなく、俺はその勢いのまま地面に血を吐き出した。
「シロウ?!大丈夫ですか!!シロウ!」
「っ…、ゲホッ!………ぁ、…」
立つ力が抜けて倒れ込みそうになった俺の身体を支えたセイバーが切羽詰まった様子で俺の名前を呼ぶ。そんな様子のセイバーに大丈夫だと声を掛けたかったが、口の中いっぱいに広がった血と更に込み上げてくる血も合わさって声に出すことは叶わなかった。
吐き出す血に軽い呼吸困難に陥った俺は心配するセイバーや遠坂の声をぼんやりと聞きながら再び意識を失ったのだった。
中々時間が取れなくて投稿が遅くなってしまって申し訳ない……。ストックも全然出来てないんで、もう少し時間を下さい……(;^ω^)
次回はオリジナル要素多めの過去話を投稿する予定です。