ヴィラン連合が襲って来た。よく分からん顔面ツギハギ男は炎の個性のはずだが、何故か攻撃をしたら泥のようになって消えた。どう言う事だ…?
「ブラド、ここは任せるぞ」
「あぁ。油断するなよイレイザー」
合宿所と補習組はブラドに任せ、森を進んでいると見慣れた筋肉が目の前に飛び込んで来た…緑谷か。
「相澤先生!」
こんな時でもサイドチェストか。キレがある筋肉は結構だがTPOを弁えろ。…ん?背中に乗っけてるのは…
「相澤先生、洸汰くんの保護をお願いします!」
「…それは良いが緑谷…お前その腹はどうした…!?」
パワーローダーの作ったパイルバンカーでも貫けなかった緑谷の筋肉装甲を破った奴がいたのか…!?
「あ、先生、コイツの拘束もお願いします。筋肉を増幅させる個性みたいでした。僕の腹はコイツにやられました。僕もまだまだ鍛錬が足りませんね!」
そう言って渡されたのは…凶悪殺人鬼の血狂いマスキュラーだった。そうか、血狂いマスキュラーの殺人的筋肉による攻撃ならば緑谷の腹部に風穴を開けることも可能だろう。多分。
「お前、流石に辞めておけ。いくらお前でも腹に風穴が空いてたら動けんだろう。」
「問題ありません。この程度の傷、筋肉止血をして出血は止まってますし、筋肉痛に比べれば痛くありません。」
そんな訳があるか。しかし、緑谷は俺が止める前に行ってしまった。今更追いかけても間に合わないか…やれやれ。
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
んもう!血狂いマスキュラーはどこほっつき歩いてるのよ!スピナーくんはマンダレイとピクシーボブを相手にしてるから援護は期待できないし…
「余所見とは余裕そうだな!」
おっと、危ないわ!この虎ってヒーロー、動きがキレるだけじゃ無く柔軟な身のこなしで隙がないわ!そしてナイスバルク!
「フン…!俺のキャットコンバットを避け続けるとは中々やるな…引石…!敵ながらナイスバルク!」
あらやだ!見事なサイドトライセップス!負けてられないわ!
「あなたこそナイスバルク!」
こっちも負けじとダブルバイセップスよ!
「おいマグネ!!戦闘中に何やってんだ!?」
うるさいわね!ヒーローとヴィランという立場の差こそ違えど筋肉は平等にして対等なのよ!これを放棄したら己の筋肉に顔向けできないわ!
「虎師匠!それにそこのヴィラン!…ナイスバルク!」
むむっ!?突如現れたのは血狂いマスキュラー…と見間違うほどの筋肉量の…確か緑谷って子ね!?それにしても凄まじいモストマスキュラーだわ…!
「「ナイスバルク!!」」
あらやだ。虎とアブドミナルアンドサイが被ったわ。
「チィ…貴様のような奴とポージングが被るとは…なッ!避けろ緑谷!!」
スピナーくんがマンダレイとピクシーボブの隙を…と言うか私達の筋肉に見惚れて動かなくなった隙に緑谷って子に攻撃を…!?
「それはダメよスピナーくん!」
「なっ!?邪魔をするなマグネ!!」
今の斬撃、細胞間を狙っていたわね。流石はステインの弟子だけれど、それとこれとは話が別よ!
「相手がいかにヒーローでも、いかに自分たちがヴィランと世間に呼ばれる存在になってもナイスバルクと筋肉を褒め称え合っている間は不干渉の契りがあるのよ!!」
「お前は何を言っているんだ!?」
相手が立場を超えてこちらの筋肉を褒めているのだからこちらも相応の筋肉で対応しなくちゃいけないわ!これは筋肉としての最低限の矜持の問題よ!
それにしてもあの子の腹の傷…そう、血狂いマスキュラーは負けたのね。あれほどの筋肉を誇る彼がやられたのだもの。幾ら手負いとは言え分が悪いわ。
「ここは撤退するわよスピナーくん」
「馬鹿を言うな!俺はあの男を…」
私の個性で緑谷って子に磁力を付与。磁力付与は相手の筋力が多ければ多いほどより強い磁力になるわ!そしてスピナーくんを抱えつつスピナーくんにも磁力を付与!
「ここは緑谷って子のナイスバルクに免じておさらばするわ!」
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
ガスを撒き散らしてる奴がこの先にいる…!八百万が作ってくれたガスマスクがあるけれど、前進すればするほどガスが濃くなる…!フィルターにも限度があるから…こんなことなら予備のマスクも貰っておくべきだった…!
「あれ?拳藤さん。こんなところでどうしたの?」
「…緑谷!?」
いつの間に!?って言うかモストマスキュラーするのやめてくれる?やめて、サイドチェストしつつこっちに来ないで。というか…
「アンタ…ガスマスクも無しに平気なの?」
今もなお目の前でダブルバイセップスやアブドミナブルアンドサイとポージング変更に余念のない緑谷だけど顔には何もつけてない。筋肉以外は。
「ははは!嫌だな拳藤さん!この程度のガス問題ないよ!」
そうか…!緑谷のこの筋肉量…つまり絶大的筋肉が身につくまでの激しいトレーニングによって緑谷の肺活量は異常発達、このガスの中でも無呼吸で問題なく動けるってことなのか…!
「そうだ、緑谷!このガスは渦を巻くように放たれてる。」
「なるほど!つまりその渦の中心にガスを放ってる奴がいるってことだね!」
早い…!話が…!
「それじゃあ僕が行ってくるよ!」
…暫くするとガスが晴れた。いや早いな…。
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
切られたのが複製腕で良かった。これならば大した怪我ではない。だが、そのせいで常闇が…「常闇くんがどうかしたのかい?」あぁ、実はな、俺がヴィランに複製腕を切られた事でダークシャドウが暴走を…って
「緑谷か!?」
「そうだよ障子くん。怪我は平気?」
平気なつもりだったが腹に風穴が空いているお前のサイドチェストを見たら平気じゃないような気がしてきたぞ。
「いや、それよりも大きな声はヤバい!」
「グァァアアア!!」
「あれは…ダークシャドウ!?」
木々を軽く薙ぎ倒すダークシャドウの攻撃を弾いている辺り…うん、なんかもう大丈夫な気がしてきたな。
「今助けるからね!常闇くん!」
「逃…げ、ろ!」
いや、逃げるべきはお前だ常闇。相手は緑谷だぞ。
「これだけ暴走してるならそこまで手を抜かなくても平気そうだね!」
「舐めル…ナァ…!!」
再び暴走したダークシャドウが緑谷に襲いかかるが、おそらくは無事だろう。何故なら…
「それは筋肉さ!!ダークシャドウには筋肉がないからね!」
ダークシャドウの攻撃を再び弾き返した緑谷は思い切り跳躍するとダークシャドウの脳天にチョップをぶち込んでいた。痛そうだな。多分生身の人間が食らったら体が左右にぶった斬られてるだろう。
「筋肉量で勝る僕の方が強いのは…当たり前さ!!」
「ウゥ…暴力反対…」
流石は緑谷だ。暴走したダークシャドウを暴力でねじ伏せるとは。コイツが仮にもヒーロー志望で良かった。いや、本当に。
「済まない、緑谷。迷惑をかけた」
常闇がふらふらと立ち上がったので俺が背負う事にした。恐らくダークシャドウへの脳天チョップの衝撃が多少常闇まで伝播したのだろう。脳震盪と全身の臓器が振動させられ、今の常闇は喋るのもやっとのはずだ。
「そう言えば緑谷…って居ない…!?」
「緑谷ならば平気だろう。済まないが俺達は施設へと戻るべきだ」
確かに、こんな状態の常闇を連れて森の中を彷徨うのは危険だ。俺ならば複製腕で警戒しながら進めば余程の事がない限りヴィランと遭遇することはないだろう。早く常闇を休める場所へ運ばねば。
〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜
あら、あそこに居るのはトガちゃんかしら?
「マグ姉!無事だったんですねェ!」
「トガちゃんも無事そうで良かったわ!でも、血狂いマスキュラーがやられたわ。それにガスが消えてるところを見るとマスタードくんもやられてそうね。」
…あら?トガちゃんなんだか嬉しそうね?
「何かいいことあったの?トガちゃん」
「お友達が二人も出来たのです!」
「そう!それは素敵なことね!」
作戦中に何やってるのかしら…?まぁ、トガちゃんは本来なら彼らみたいに青春を謳歌すべきだし、それくらいは目を瞑ってあげましょう。
「トガ、それで血は採れたのか?」
あら、荼毘くんも居たのね。
「はい、一人だけですが」
「おいおい、予定じゃもっと大人数を…いや、まぁいい。預かってた脳無が爆豪ってガキに消された。森の中なら延焼を恐れて攻撃出来ないと踏んでたが…まさかピンポイント爆破なんて芸当が出来るようになってたなんてな。…それにムーンフィッシュもやられたらしい」
「あら。血狂いマスキュラーもマスタードくんもやられてるから…。もう撤退した方が良いんじゃない?」
「そうだな!今すぐ撤退しよう!いや、粘るべきだ!」
相変わらず矛盾したこと言って面白いわね、トゥワイスくんは。
「おじさんも撤退に賛成だ。現戦力じゃパワーが足りなすぎる。荼毘の炎は俺達を巻き込みかねないしな。」
コンプレスくんのいう通り、やられてないのはアタシ、荼毘くん、スピナーくん、トガちゃん、コンプレスくん、トゥワイスくんのみだものね。
「そうですか、ここに居る6人を全員倒せば一件落着ってことですね!」
…!?
「コイツ知ってるぞ!…誰だ!?」
み、緑谷って子…いつの間にッ!しかし…改めて見ても…
「ナイスバルク!」
あぁダメだわ!見事な筋肉に勝手にダブルバイセップスのポージングがでちゃう!
「そういうあなたもナイスバルク!」
うーん見事なサイドチェスト、惚れ惚れするわ!
「わぁ!ムキムキさんです!それにお腹の怪我!良いねェ!格好良いねェ!でも、もっと傷だらけの方が格好良いと思うよ!!」
まぁ!トガちゃんったらダメじゃない!ナイスバルクの挨拶中は不可侵だっていうのに!
「ッ!細胞間を狙った斬撃!?」
咄嗟に防御したんだろうけれど、腕にトガちゃんのナイフが突き刺さってるわ。
「あれ、抜けないです…かーえーしーてー!」
「暴れないで!えっと…トガヒミコさん!力加減ミスったら腹に風穴開けちゃうかもしれないじゃないか!」
腕に突き刺さったナイフを抜こうとトガちゃんが頑張って暴れてるけど効果は薄そうね。
「仕方ない。トガごと燃やすか」
「ステインの意思を継ぎ俺が見届ける、やれ荼毘」
まぁ!荼毘くんもスピナーくんも何言ってるの!
「まぁここはおじさんに任せておきなさい」
コンプレスくんが緑谷って子に接近したわ!確かに彼の個性なら…
「APショットッ!!」
!?一体どこから…上!?
「見つけたぞクソヴィラン共…!全員纏めて血祭りにしてやる」
あれは確かターゲットの爆豪って子ね!血祭りって…おおよそヒーローの言って良いセリフでは無いけれど…
「APショット・オートカノン!!」
さっきの攻撃の連射バージョン…!仕方ないわね、道具に頼るのは癪だけど特製のこの強力磁石を…頭上で高速回転させて弾くわ!!
「荼毘くん、スピナーくんも私の影に!」
「言われなくても入ってるよ」
「その道具、本来の使い方と違うだろ。」
トゥワイスくんはなんか凄い動きで辛うじて避けてるから良いとして問題はトガちゃんだけど
「ちょ、ちょっとかっちゃん!?僕にも当たってるよ!?」
「当ててんだよ!くそ、ヴィラン女がちょこまかと!!」
うん、恐らくこの世で最も安全と思われる緑谷って子を盾に攻撃を防いでるわね。あら抱きついたわ。
「ちょ、ちょっとトガヒミコさん!?む、む…きょ、胸筋!そう、胸筋が当たってるよ!?」
「当ててるのです!」
あの反応…緑谷って子は女子慣れしてないみたいね。
…あれ?そう言えばコンプレスくんは…?
コンプレスくん、まさか最初の一撃で死んで………ない!?いや、死体が無い、というか倒れていたはずのところに居ない。一体どこに…
「おじさんは手品師でね」
!?緑谷って子の背後に急に…!?
「はい、圧縮」
凄いわコンプレス!あの緑谷って子を個性でビー玉のように圧縮したわ!
「デク!?テメェ、デクに何しやがったッ!!」
不味いわ!爆豪って子がいつも以上にキレ散らかしてる…!
「でかしたぞコンプレス。さっさと帰ろう」
瞬間、荼毘くんが広範囲に炎を撒き散らして爆豪って子との間に壁を使ってくれたわ!さらにタイミングよく黒霧くんのワープゲートが開通、さっさと逃げ込むに限るわね!
本作品ではスピナーくんは自称ではなくマジのステインの弟子になってるので細胞間を狙った斬撃が可能です。
マグ姉と虎さんは筋肉属性に目覚めました。因みに我ズブートキャンプを経験した緑谷はそのスパルタ振りに泣くほど感動し、虎を師匠と仰いでいます。
トガは独学で細胞間への斬撃を習得済み。ちなみに筋肉好き属性も付与されています。