無個性『筋肉』   作:ベルゼバビデブ

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ホークスはこの事件で食事代の支払いが有耶無耶になるのではないかと期待していたりする。


トレーニング34 このビル筋トレにちょうど良いね!

 親父の赫灼熱拳ジェットバーンは空中の脳無に当たっていた。だが、回避されたのだろう、右手と右足を消し飛ばす程度のダメージしか与えられていなかった。

「ショートくんと爆豪くんはこのフロアをよろしく。俺は持ち上げられてる方を対処するよ」

 ホークスに言われて俺は頷いた。成程、羽根の一つ一つを操作して中の人たちを救出するのか…。いや、とにかく早く避難させねぇと…幾ら緑谷が筋肉馬鹿でもコレほどの質量を持ち上げ続けるのは危険だ。

「意外とすばしっこいな。…む!?」

 親父の声に外を見れば消し飛ばされたはずの手足が生え揃っていた。…再生能力って事か…!

「オ、オ前ナ、中々ヤル、ヤルナ!」

 脳無が空中で何かを構えた…!?あれは………

 

「ナ、ナイス、バル、バルク!!」

 

 ダブルバイセップスだと…!?

「ふん、脳無と言えど鍛えし肉体には逆らえないという事か、豪腹だが己の信条に従い返してやろう。…ナイスバルク!」

 親父はアブドミナルアンドサイか。

「ナイスバルク!!」

 緑谷は黙っててくれ。

「次は逃さん!赫灼熱拳ヘルスパイ…」「エンデヴァー避けて!!」

 親父が緑谷の叫びに反応し半身ずらしたところ、腹を掠めるようにレーザーが飛んできていた。

「チィ…当たったか…!それに…まさかもう一人いたとはな…!」

 最初からいたフードを被ったような脳無からヘルメットみたいなもので覆っている黒い脳無らしき奴が這い出て来ていた。

「格納…と言ったところか…。」

 親父は腹を押さえている。…そんなに傷は深くはないが、浅くも無いという事か…

「オマ、オマエ強、強イ…カラ、二対一デ、デモ…卑怯トハ、イ、言ウマイナ?」

「ソノ男ノ前ニマズハアノ子供ダ。恐ラク危険ヲ感知スル個性。ビルニ押シ潰サレソウニナッテ動ケナイ今ガ好機」

 危険を感知する個性…?まさか緑谷のことを言ってるのか!?まずい、あいつは持ち上げてるだけとは言えビルのせいで身動きが取れ無ぇ…!親父の腹をブチ抜く程の威力だ…幾ら緑谷でも食らったら不味い…!

「くっ!させん!!」

「オマ、オマエノ、相手ハ、俺、俺ダ!!」

 ホークス…ダメだ。救助活動でそれどころじゃ無ぇ、爆豪…ダメだ、アイツに防御力は無ぇ、親父…ダメだ、フードの相手で対応でき無ぇ…!!

 

 俺が…俺がなんとかするしか無い…!!

 

「死ネ」

 炎で…いや、さっきのフードの奴の再生力を見ればアイツに俺の炎が効くとは思え無ェ…なら…!!右の力で…!

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 あのレーザーが焦凍達の方に…!くそ、この脳無単純な力も強いのか…!

「ダチは…やらせねぇ!!」

 焦凍…お前何を…!?

「グアアアア!?」

 脳無の放ったレーザーを氷で作った凹レンズで跳ね返したのか。氷結の精度をそこまで上げていたとはな。

「今だ!」

 敵が怯んだ瞬間に氷結で拘束、だがそれでは奴ら相手に決め手に欠く。

「コ、コンナモノ…!」

「チッ…やっぱ氷結は砕かれるか。…悪ぃ、頼む爆豪!」

「五月蝿ェ!俺に指図すんなッ!」

 焦凍の背後から飛び出た爆豪は…そうは言っているが既に攻撃のための溜めは完了しているようだ。アレをやるつもりだろう。

 

「死ねや…HVAPショット!!」

 

「ッ…!!」

 氷結の拘束により動きが鈍ったところを爆豪の大技で確実に仕留めたか…見事な連携だ。一撃で正確に脳無の脳味噌を焼き尽くすとは…。こうなれば俺も…息子の前でこれ以上無様な姿を晒す訳にも行くまい…!

「エンデヴァーさん!デクくん!ビル内の避難は終わらせましたよ!」

 ホークスか、流石だな。この短時間でビル内の避難を完了させるとは。…これならば破壊されたビルを処理しつつ脳無を無力化する策が実行できる!

「何、何カ、タク、企ンデ、イルナ!!」

 勘の鋭い奴だ。それにエッジショットのように手を細く伸ばして槍のように攻撃して来るとはな。中々のスピードと切れ味…俺の腹筋を貫通したのは誤算だが、この際好都合だ!

「抜、抜ケ、無イ!?」

 刺さった腕は腹筋で固定する。これで貴様は逃げられない!そしてこのまま一気に距離を詰める!

「捕らえたぞ!」

 このままビルに突っ込み壁に押し付ける!!

「デク!思い切り上へ放り投げろ!!」

「分かりました!…フンッ!!!」

 良い高さだ。標高が高くなったお陰で体が冷えたし、周りに何も無い。コレで遠慮なく力を振るえる。

「ナ、何、何ヲ、何ヲスル、ツモ、ツモリ、ダ!?」

「ふん、知れたことよ。貴様をビルごと消し炭にする!!」

 

 かつての俺は愚かな男だった。…いや、愚かなのは今もか。…あの頃の俺は力に執着し、オールマイトの背中を追った。やがてこのヘルフレイムという個性だけではオールマイトに勝てない事を悟った。

 そして次に考えたのが自分のヘルフレイムの弱点を克服した…オールマイトを超える最強の子供を作り、育てることだった。今考えれば愚かな事だ。

 俺の個性、ヘルフレイムは他の炎系個性と比較しても広い範囲と高い火力、そして形状変化による高い対応力がある。だが、それだけではオールマイトには届かなかった。焦凍の半冷半燃というハイブリッド個性を創り上げた後、そんなことをせずとも自分自身に足りないものを足せば良いと遅かれながら気付いたのだ。では、何を足すか?簡単だ。

 

 即ち、筋肉だ。

 

 あの頃の俺の目は曇っていた。故にオールマイトを見ていながらオールマイトが見えていなかったのだ。何故俺がオールマイトに勝てなかったのか?その答えは簡単だ。

 

 即ち、筋肉だ。

 

 オールマイトより筋肉量が劣るのだからヘルフレイムを鍛えたところでその差を埋めることが困難なのは当たり前だったのだ。それから俺は鍛えた。前から鍛えていたがそれまでは個性主体だったためどうしても疎かになっていた。だが、今は逆だ。筋肉を主体に補助として個性を使う。

 人間の身体は冷え固まった時よりある程度温まりほぐれている方が高いパフォーマンスを発揮する。故に熱の籠るヘルフレイムは自身の肉体のパフォーマンスを上げるのに向いている個性と言える。

 更に筋肉を鍛えた事で俺の爆熱的筋肉による発熱と個性のヘルフレイムが混ざり合い更に高い温度の炎を放つことを可能にした。また、耐熱的筋肉や放熱的筋肉の増加により前よりも赫灼熱拳の多用による熱の篭りに対しても耐性がついた。昔はホバリングしか出来なかったものが火力に脚力を加える事で飛行を可能にしたように、筋肉があるだけで出来ることは増える。

 つまり、結果として筋肉を鍛えた事で俺の個性はより伸びたのだ。もっと早く気づき、オールマイトに匹敵する筋肉をつけていれば態々子供達に俺の執念を背負わさずに済んだかもしれない。…いや、子供達にどう思われているかはともかく、今の俺は俺なりに子供達を愛しているつもりだが。

 

 兎に角、俺の罪は消えない。だが、だからこそ、ヒーローとして人々を助け守り続けなければならない。幾らデクでもあのビルを砕くことは出来てもその破片を全て回収することは出来ない。爆豪の爆破でも処理は追いつかず、焦凍の氷では落下の衝撃で砕け被害が増す。ホークスの羽では対応できる大きさに限りがある。故に俺がやらなければならない。…昔は嫌いだった母校の言葉を思い出すな。更に…向こうへ!

 

「プルス…ウルトラッ!!…全て消し飛べ…プロミネンス・バーン!!!!」

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 …あれほどの質量を焼き尽くすプロミネンス・バーンを使えば幾ら身体を鍛えたと言っても流石に堪えるな。ホバリングすら維持できず思わず近くのビルの上に降り立ってしまった。

「…おいおい、脳無の回収に来て見りゃなんだこれは…!?」

 …む、誰かいるな

「一つはナンバーワンヒーローに傷こそ合わせたが消し炭、もう一つはガキ共に良いようにしてやられてるじゃねぇか。」

 …顔にツギハギのある男…確かヴィラン連合の一員だったか。不味いな、今の俺ではロクに動けん…!

「大技使って疲労困憊だからってナンバーワンヒーローを相手に…こんな俺が勝てる訳無いよなァ!!」

 コイツ…俺の状態を見抜いて…!それにあの個性、俺と同じ炎系か…!?俺ほど形状変化が得意な訳ではなさそうだが、青い炎と言うことは火力は高い…熱が篭り既に限界に近い今の身体に食らえば致命傷になりかねん…!

「大丈夫ですかエンデヴァー!!」

「!デクか」

 あのビルからここまですっ飛んできたのか。そういえば確か…こんな感じだったか?

『聞こえているか?…正直助かったぞデク。今の俺では強がって仁王立ちするくらいしか出来ん』

 オールマイトに聞いたが同程度の筋力量同士ならば共振的筋肉の共鳴現象で他の人間には聞こえずに会話ができるはずだ。

『轟くんから左のデメリットは聞いてたので…アレほどの大技ならもしかしてと思いましたが』

 焦凍も流石にデメリットは把握していたか。まぁ当然か。

「筋肉の相手までは流石にしてらんねぇ…仕方ねぇが撤退するか」

 …何やら黒いヘドロのような液体に包まれ消えたが…ワープの類か、厄介な事だな。

「すみませんエンデヴァー、さっきの転送で消えた…確か荼毘ってヴィランなんですがアンチ筋肉読心術を使ってたみたいでどこに行ったかわかりませんでした。多分マグネってナイスバルクなヴィランから教わったんじゃ無いかと」

「そう気負うな。…この満身創痍の身体では俺も奴の心は読めなかった」

「そうでしたか、連合の尻尾が掴めればと思ったんですが…」

 俺も奴の行き先は読めなかった。だが、俺の筋肉読心術は緑谷の行う完全なる筋肉のみで行う筋肉読心術ではなく、長年のヒーローとして、そして一人の大人としての勘や経験、そして鍛えた肉体と思考を総合して行うものだ。…だからだろう。最近の俺は夏雄と殴り合いの喧嘩をし、焦凍にヒーローとしてのノウハウを叩き込んでいた。

 

 俺なりに…息子達に向き合ってきたんだ。




この世界線の夏雄くんはエンデヴァーの仲は原作よりかはマシ気味になっており、殴り合いの喧嘩をする程度の間柄です。詳しくは多分地獄の轟家回にやるんじゃないですかね()

フードくんが格納していたのは同じくハイエンドのロボットちゃん(本来はミルコが戦うハイエンドのうちの一人)です。レーザーの威力が底上げされています。また、エアウォークを付与されているので空中でも活動可能です

全て消し飛ぶプロミネンス・バーン
→焼けて静まるどころか文字通り範囲内のエンデヴァー以外が全て消し飛ぶレベルの高熱を放つ。炎はオレンジから青へ青から白へと変わり全てが消し飛ぶ。元々は隕石飛来に備えた技。少なくとも対人に使うものでは無い
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