チッ…この俺が人助けなんざらしくねぇ事しちまったな。…これも緑谷の影響か?…あいつのことを考え常に体を鍛えていたせいで思考までアイツに寄ったってか?…馬鹿馬鹿しい。
…!俺の筋肉探索に反応あり…これは…
「…なんだこりゃ?弾丸…にしては派手な色だな」
飛んできたものを掴んでみりゃピンクと紫の弾丸っぽい何かだ。
「流石は血狂い。この程度の弾丸では止めるか」
あ?…どこからしゃべってやがる…。ダメだな、ビルのせいで反響してよくわからねぇ。
「なぁ、血狂い。お前…ダツゴクの癖に何故オールフォーワンを裏切った?」
どうやら奴はオールフォーワンの手下らしい。
「はっ!簡単な事だ。俺にゃ俺の目的があるのよ!」
緑谷出久…あの男を超える為、俺はひたすらタルタロスの中で身体を鍛えた。寝る時も無意識にスクワットするくらいにはそれはもう鍛えた。そして心の中で奴との再戦をイメージトレーニングし続け、様々なシチュエーションに対応できる筋肉も鍛えたのだ。
かつての俺は筋肉の使い方を誤った。自分よりも弱いやつを鍛えた筋肉で殴ったところでなんだと言うのだ。なんの意味もない。筋肉とはより強い負荷をかける事でより強くなる。
故に今の俺は…俺よりも強いやつを超える為に筋肉を鍛える、それだけだ。そして俺の個性『筋肉増強』は素の筋肉量が増えれば増えるほど個性のキャパシティと強度が上がる。今の俺に抜かりはねぇはずだ。こんな雑魚にやられるようでは緑谷出久に挑む資格すら無い。
そして俺の目は確かに捉えたぜ…一つしかない分、酷使されより鍛えられた俺の目がな!!遠くのビルの上にライフル構えた奴がいやがる!俺は俺の筋肉を鍛えた…それ故に!筋肉に密接する俺の個性も鍛えられた!今や外皮に溢れる筋繊維からさらに筋繊維を張る事でこんな芸当も出来るようになった!鞭のように長くしなる筋繊維の縄!露出した筋肉の鞭
名付けて『肉露鞭"クロムチ"』だ!!
ビルにひっかけ、俺の腕力と筋繊維の伸縮性の相乗効果は馬鹿にならねぇぜッ!!
「ッ!?こんなに早いとは…!」
「さぁ…!汗見せろや!!」
狙撃手は女か、だが露出してる腕の筋肉は中々のもんだ。ウォーミングアップにゃわるかねぇ!!
「パンイチで女性に汗見せろだなんて変態かよ…!」
ッ!コイツ、体から銃が生えてきやがった…!俺の目のお陰でギリギリ躱せたが戦い慣れてるな…!
「この距離の不意打ちを躱すのか!?」(私の個性ライフルだけでは無理そうだな…!)
あ?なんだこの女…戦い慣れてる割に素人か?筋肉読心術対策がなされてねぇ。
「個性がライフルだけじゃないってんなら出し惜しみなく使えよ!今の俺は殺しをする気はもうねぇが…勢い余ってぶっ殺しちまうかもしれねぇからよぉ!!」
「なっ…!?」(馬鹿な…!?何故コイツ私の個性を把握している…!?)
「気を付けろレディ・ナガン!!あの筋肉量の相手だ!!筋肉読心術で心を読んでくるぞ!!」
あ?なんだ、もう一人いるな…両腕のない華奢な男だ。放っておくか
「筋肉読心術って何!?」(筋肉読心術って何!?)
「相手の顔筋肉の動きや汗の分泌、荒れる呼吸や心拍音を感じ取って相手の心を読む技術のことだ覚えときな女ァ!!」
殺さねえ程度に手加減してっと!
「オラァ!!」
「ぐっ!?」(そんなことある!?…いや、現に心が読まれてるし、何よりあの治崎も言ってるんだ…ここはそういうものがあるのだと仮定するしかない…!筋肉や呼吸、心拍で読むっていうなら己を律すれば…!)
…ほう!やるじゃねぇか、ほんの数秒でアンチ筋肉読心術を体得するとは!この女、気に入ったぜ…!
「まだ遊べるよなぁ!?レディ…なんたら!!」
この女、俺の攻撃を避けたと思ったらビルから身を投げ出しただと!?っと…!下をのぞき込んだらお構いなしに撃ってきやがったあぶねえ。それにあの女、空中に留まってやがったな、別の個性ってやつか!
「私はナガンだ!!」
空中を走ってやがる。空中でとどまれるタイプの個性か、遠距離攻撃の個性と相性が良いなァそりゃ。だが、いくら空中を移動してこちらへ撃ってこようがそんな見え見えの狙撃に当たるか…って何!?弾丸が曲がりやがった!!
「よし…!」
いてて…まさか当てられるとはな。だが思った通り威力は大したことねぇ。俺の装甲的筋肉の前にゃ無意味よ。
「…なんでライフルで撃たれたのにピンピンしてんのさあんた…」
「あ?んなもん決まってんだろ。その答えは…筋肉さ!!」
「気を付けろレディ・ナガン!奴の圧倒的な筋肉の装甲の前にはお前のただの銃撃なんぞ輪ゴムの鉄砲で撃たれるのと変わらん!!貫通力に特化させるんだ!!」
ピーピーと五月蝿えな華奢男…だが、今回は許してやるぜ。勝負は対等じゃなきゃ面白く無ぇからな!ハンデぐらいくれてやるぜ!!
「なんで筋肉鍛えたくらいで銃に耐えられるんだおかしいだろ!!」
「お前こそ何言ってんだ!鍛えれば鍛えるほど強くなる筋肉とあらかじめ設計されている以上、一定の火力しか出せない銃器、より強いのは筋肉の方に決まってるだろうが!!」
おっと、また弾道が変わる銃撃か?二度は喰らわねェぜ!!
「空から攻撃してりゃいつかは倒せるってかァ!?そうはいかねぇぜボディ・ナガン!!」
肉露鞭と脚力の合わせ技で一気に飛び出すッ!!テメェが鉄砲女なら俺はさながら人間大砲よ!!
「私は…レディだ!!」
ほう!銃撃の反動で空中で身をよじって俺の攻撃を躱したのか、やっぱり戦いはこうじゃ無くっちゃァな!!筋肉知識に乏しいのが残念だが間違いなく強ぇ女だ!!
逃げつつ俺へと反撃の銃撃を放って来やがるが俺には効か…ッ!?弾丸が爆発しやがったッ…!?腹に風穴が空いちまった。驚いたな…大した威力だ…!
まぁ傷は筋肉で塞いでさらに強く締め付ける筋肉止血をすりゃ明日には治るから良いとして
「なんで腹に風穴開けられても平然としてるわけ…!?」
?俺達みたいな筋肉系のヴィランやヒーローは腹に風穴開けられたくらいでくたばるわけが無い事など常識だろう。
「その程度で驚くなレディ・ナガン!奴ほどの筋肉なら体の欠損など筋肉止血でカバーして一晩寝れば筋肉の超再生により元に戻る!!」
「筋肉の超再生の意味をはき違えすぎてないか!?」
俺の超えるべき目標こと緑谷出久も俺の殴打で腹に風穴を空けられつつ平然と戦ってたからな。俺にできないはずがない。
それにしても空中移動に弾丸の軌道変更、更には爆発攻撃まで持ってるとは驚きだぜ。だが、それくらいやってくれた方がこっちも戦いがいがあるってもんだ。悪く無いぜ女。次はどんな攻撃を見せてくれるんだ…!?
「クソッタレ!」
「おっと!もう攻撃は受けてやらねーぜ!油断してたとはいえ俺の屈強な装甲的筋肉を貫いて爆散する弾丸を受けてやるほど俺は紳士じゃ無いからなァ!!」
「お前の何処に紳士要素があるってんだ!パンイチの紳士がいてたまるか!!」
確かに。仮にパンイチの紳士がいたとしてもそりゃ変態という名の紳士だろうな。まぁいい。会話で気をそらそうったってそうはいかねぇ、筋肉探索で曲がった弾丸の軌道なんざお見通しだ。
「ッ!?背後からの銃撃を躱した…!?」
「驚くこたァねぇだろ!筋肉探索の前じゃ弾丸の動きなんざお見通しよ!」
「さっきから何でもかんでも筋肉で対応できすぎだろ!?」
そりゃ筋肉だからな。筋肉に不可能がないことくらい常識だろ。
「ちなみに筋肉探索とは己の筋肉で周囲の空気の振動を感じ取り周囲を知覚する筋肉タイプの一般的な技だ!覚えておけレディ・ナガン!!」
「さっきからうるさいよ治崎!!!」
さてと、次はこっちの番!さっきから距離を空けて攻撃してくるのは自分の強みを俺に押し付けんとする意味じゃ良い動きだ。だが!肉露鞭で瓦礫を拾い上げりゃ立派な遠距離武器の出来上がりよ!!
「ッ!」
ほう、さっきの爆発弾の爆風を上手く使って攻撃を躱すとはな。回避行動に無駄もねぇし洗練されてやがる。だが…
「どうした女ァ!!息が切れちまったかァ!?」
「くそ…!」(コイツのタフネス…尋常じゃない…!)
息が切れて付け焼き刃のアンチ筋肉読心術が機能しなくなって来てるな。
「これで…!」(『爆髪』の量を更に上げた…!これなら!)
なるほど。爆発する弾丸の正体はアイツに与えられたと思われる個性に由来するらしい。あいつの近接においてもライフルを巧みに操る動きは与えられた個性にしちゃ洗練されすぎてる。故にライフルは元からあった個性、他の二つは与えられた個性ってことだ。あいつもダツゴクならライフル以外の練度は大したこと無いはずだ。
「爆発範囲と威力を増したのか?だが無駄な事だ!!」
当たらなきゃ関係が無いからなッ!それにしても背後で感じる大爆発…ありゃ当たったら俺でも結構ヤバいかもな
「…ふふっ」(どうせこの声聞こえてるんだろう?)
「…あ?」
なんだ?急に笑いやがってこの女…
「…」(息を切らしたくらいでこのレディ・ナガンが己を律せなくなるとでも思ったか?舐めるなよマスキュラー)
…ッ!?背後からの銃撃だと…!?さっきの爆発で筋肉探索が機能してなかったってのか!?…幸い爆発する弾丸じゃなかったからよかったが…!
「まさかアンチ筋肉読心術を自在にオンオフして俺の油断を誘うとは…!」
「…チッ…!やはりただの弾丸では効果が薄いか…!」
さっきの弾丸に爆発する髪の毛を使用してないのはさっきの大爆発を通り抜ける時に誘爆するのを防ぐためってところか。だが読めない軌道の弾丸に爆発する弾丸…悪く無い手札だ。まぁ…
「肉露鞭ッ!!」
「ッ!?地面を突き破って肉の鞭が…!?」
何も俺の肉露鞭は腕から出すだけの物じゃねぇ、足の裏からだって発射可能なのさ。地面を掘り進み奴を拘束した。これで奴がライフルや爆発を駆使して避けようとも逃げられねえ!
「まぁ死なない程度の腹パンで許してやるぜェ!!」
「女に腹パンはやめ…ぐッ…!?」
あ?なんだ?急に苦しみだしやがった。
「…!?な、なんだ…これ、は…!!」(髪の毛が…いや、身体が熱い…!?まさか…!騙したな…!?オール、フォー…!!)
というわけでなんと!謎の筋肉男『モストマスキュラー』の正体は血狂いマスキュラーでした!いやー、意外でしたねー。おそらくコメントではその正体の意外さに「ナ、ナンダッテー」とコメントしていることでしょう。え?なんでわかるかって?これが、筋肉読心術です。
モストマスキュラー…筋トレしまくってたら「鍛えた筋肉で相手をボコボコにすること」より「強いやつと戦うこと」の方が大事になり、(本質はあんまり変わらないけど)結果として改心した感じになっている。(殺してしまったら強くなった相手と再戦できないかからであるが)相手を殺す気は無いので血ではなく汗を見せろと襲ってくる。
でも女性に対しパンイチの男が汗見せろと襲いかかるのは完全に事案である。
肉露鞭(クロムチ)…モストマスキュラーことマスキュラーが新たに会得した筋繊維から筋繊維を生やし伸ばし連結し、鞭を生成する技。マスキュラーの強靭な筋繊維を素材としているため、非常に強靭かつ伸縮性に富む。何処ぞの5代目と技名が被っているが気にしてはいけない。肉(にく)を二文字目である「く」と読むのは当て字業界では基本技術である。
タルタロスから出たばっかりでここ最近の筋肉事情に疎かったレディ・ナガンさんは困惑しています。かわいいね。
爆髪(ばくはつ)…レディ・ナガンがオールフォーワンに与えられた個性。髪の毛が任意のタイミングで爆発する。普通の人間だと中々活用するのが難しいが髪の毛を練り上げて弾丸にするレディ・ナガンの個性と相性がよいので爆発する弾丸を作製可能になった。また、爆発の火力は普通の人間相手に使ったらやっぱりもれなく死ぬ。
そして…筆が進まなくなったと言う個人的事情により11月まで休載します!