無個性『筋肉』   作:ベルゼバビデブ

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トレーニング∞ 「無個性『筋肉』」

 チィ…!クソ肉ダルマとナイスバルクを交わしてから奴の動きが変わった…!どうなってやがる…!

「そろそろ純粋な筋力勝負にお前は邪魔だな、爆豪勝己。」

 ッ!

「かっちゃん!!」

 クソ…!今何された…!攻撃が見えなかったぞ…!

「これで邪魔は居なくなったな。続きを始めるぞ…緑谷出久!」

 クソ…!モストマスキュラーなんかしやがって…!大胸筋が歩いてんのかと思ったぜ…!

「くっ…!負けていられない!!」

 そうだ、お前のはち切れそうな大腿筋を見せつけてやれクソ肉ダルマ…!

 

「「ナイスバルク!!」」

 

 そこからのクソ肉ダルマと死柄木の闘いは苛烈だったぜ。互いにビンタを交互にし合い、勝負がつかないとなるや今度は互いの腹にパンチをブチ込み合う。両手を噛み合っての押し合いに腕相撲、相撲、指相撲、尻相撲、手押し相撲…。

 

 …相撲が多いな?

 

「ハァ…!ハァ…!まさが互角とはな…!」

「互角…?個性を抑えておきながらよくも…!」

 この前と違って勝ち負けの基準がある勝負なのはまだ良いがクソ肉ダルマの言う通り奴は自ら個性を封じて勝負している。つまり、舐められている…!

「そう怒るなよ緑谷出久。さっきまで先生に身体を使われてたからな。身体が鈍ってるし俺の意識と実際の身体の動きを擦り合わせたかったんだ。まぁ、ウォーミングアップってとこだな。」

 …つまりここからが本番って事かよ…!

「俺の元の個性、知ってんだろ?『崩壊』さ。こいつを上手く使うとな、筋繊維をいい感じに崩壊させられてかなり鍛えられるんだよ」

「ッ…!かっちゃん!」

「分かってる!」

 ならこっちは俺の爆破でクソ肉ダルマの筋肉を爆散させて鍛えてやる…!!

「…へぇ、やるな。だが、俺にはもっと沢山の個性があるんだ。『増殖』『肥大化』『膂力増強』『瞬発力』…そして、『圧縮』!!」

「まずいよかっちゃん…!今の奴は僕並みの筋肉をより鍛え更に圧縮した事で超圧縮鍛錬筋肉になっている…!」

 まず超圧縮鍛錬筋肉について説明しろよ。知らねえよそんな単語。圧縮と鍛錬と筋肉、それぞれは分かるがなんで合わせた瞬間全くわからない単語を作り出すんだお前は。

「かっちゃん!かっちゃんも包み込むような爆破を僕の筋肉にして僕の筋肉を爆破圧縮鍛錬筋肉にして欲しいんだ!!」

 知らねえ単語をもう一つ産み出すんじゃねぇよ。混乱してきたわ。

「早く!!」

 うるせえよ。

「あぁなんか…こんな感じかァッ!?」

 爆破のチャージや圧縮をするイメージでこう、爆破を!

「ふん…土壇場のぶっつけ本番で爆破圧縮鍛錬筋肉を成功させるとはな」

 なんでお前は今初めて生まれた単語を理解してんだよ。

「そらよォ!!」

「ぐッ…!そんな…!爆破圧縮鍛錬をした僕の筋肉でも抑えきれないなんて…!」

「すでにお前の筋肉はコンプレスに圧縮された後!その後鍛えてある程度圧縮の余地はあったとはいえ、一度圧縮されているお前の筋肉は圧縮への耐性が出来ている!その差が出たのさ!!」

「くそォ…!」

 また…また俺は見ているだけか?

 

 いや、違う…もう俺はあのクソ肉ダルマをも助けて勝てる、そんなヒーローになってんだ…!本当はクソ肉ダルマが世界の害になったときの最終安全装置として使う予定だったが…使うなら今しか無ェッ!!

 ミルコは言ってたもんなァ!片腕くらい擦り傷ってよォ!!

 

「擦り傷が怖くてヒーローができるかァァア ア ア !!」

 

 期末試験が終わってから…この籠手の中には付けてる時に爆破やチャージをしてねー間ずっと汗を圧縮し凝縮し詰め込み続けてた…!故に俺の『核弾頭』を遥かに超える破壊力を生み出せる!俺の腕は跡形も無く吹き飛んじまうが…構うもんかよ!

 

  これが!『 爆 殺 王(ツァーリボンバ) 』だ ァ ッ!!

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 スゲェ破壊力だな。俺が数多の個性を使いこなしてなきゃこの肉体を持ってしても塵になってたレベルだぜ。

「筋肉量こそ劣るが今の気迫、称賛するぜ爆豪勝己…だが、そんな攻撃俺には効かないな…!」

 …今の爆発の熱…いや、爆豪勝己の気迫に意識を持っていかれて失念していた…!俺は今、緑谷出久と戦っていたんだ!アイツは今どこに…!?…この筋肉の波動は…既に俺の背後にッ…!!

「知らなかったのか死柄木…!かっちゃんの籠手は…2つ有るんだッ!!『爆殺王』ッ!!」

 ッ!いや、まだだ、まだ防げる一撃目を防いだんだ…多少の防御が損傷していても防げるはず…!『バリア』+『空気を押し出す』+『耐久』+『剛筋』+『頑丈』+『増殖』+『肥大化』…!!

「そんな防御ッ!」「俺達が読んでねぇとでも思ったかァ…!?」

 ッ…!!ダメ押しとして、爆豪勝己の爆風を上乗せした…緑谷出久の追撃のパンチだと…!?ダメだ反応が…!防御も突破されている…!

 

 ふ、防げ無い…!!

 

「くそ…!お前に匹敵する筋肉に、負けぬほどの鍛錬!筋肉への理解!更に有効な個性を集めた!俺にできることは全部やったはず…!それなのに…何故俺はお前に負ける…!!俺は全部持っていたはずなのに…緑谷出久…!俺は…何が足りない…!!」

「それは…!…」

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 それは筋肉さ!

 

 …と、言いたいところだけど、それは筋肉じゃないんだ。いくら僕がオールマイトに憧れて筋肉を鍛えたと言っても、一人じゃ過酷な鍛錬には耐えられなかった。

 僕がこれだけの肉体を得られたのは勿論、栄養満点の食事を作ってくれたお母さんや互いの筋肉鍛錬を励ましあったキャスリーンを始めとして沢山の人のお陰だ。それでも一番はやっぱり…

 

 かっちゃんなんだ。

 

「それは…!…友達さ!!」

「友…達?」

 かっちゃんは幼い頃から凄い奴だった。僕のことを無個性だと馬鹿にしてきたのは確かにムカついたけど、それが僕のやる気に火を付けた一つなのは否めない。それに、雲の上の存在であるオールマイトと違って、すぐ近くにいたスゴイ奴であるかっちゃんは…何よりも僕の目標になった。僕が筋肉を鍛え、強くなって、かっちゃんを超えたと思ってもすぐに食らいついていつのまにか追い越される。

「競い合い、高め合う友達が…かっちゃんが僕には居たんだ!!だから…!!」

 僕のこの殴打だけでは仕留めきれない。だけどかっちゃんなら確実にこの状況をなんとかしてくれる。僕はそう信じてる。あの時僕の殴打が原因で死柄木には逃げられてしまった。それを間近で見ていたかっちゃんなら…!

「ったくしょうがねぇよなぁ!テメェはよォッ!!」

 さっきの『爆殺王』で片手を失いながらもかっちゃんは…爆破装甲で身体を回転させ、脚で機動力を得てこっちにやってきていた。やっぱり凄いや、かっちゃんは。

「ハウザー…インパクトォッ!!」

 

 僕の殴打と、かっちゃんのハウザーインパクトで…トドメだ!!

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 僕の高校一年生としての…あまりにも過激な一年はそうして終わった。僕とかっちゃんの殴打によって完全に敗北を認めた死柄木はこれまでの行いを反省し、大人しく捕まることとなった。死柄木は確かに凶悪な犯罪者ではあったけれど、その大半の理由は育てられた環境…つまり、オールフォーワンによって仕向けられたことが原因であるとされ、死柄木本人の反省も含め情状酌量の余地があるとされた。今ではその数多の個性を活用し、復興活動を手伝っているらしい。物を崩壊させる個性でも瓦礫の撤去や危険な廃棄物の処理なんかには役立つものだからね。

 

 結局、個性も筋肉もそれそのものに善悪なんて無い。力も要は使い道次第なのだ。

 

 更に、かっちゃんが倒していたはずのオールフォーワンは実は復活していて、でもそれをオールマイトが返り討ちにしたと言うことも聞いた。ダツゴクもほとんどが捕まり、一部は自首したので凶悪なヴィランの問題は全て無くなったとされる。

 でも、ヴィランが現れたら捕まえる、なんてのは結局対処療法でしかない。肝心なのはどうしたらヴィランが生まれなくなるか。とても難しい問題だよね。でも、大丈夫!

 

 筋肉さ!

 

 筋肉はそんな難しい問題も解決するんだ!

 

 何故なら筋肉に不可能は無いからね!

 

 凶悪なヴィランが生まれる理由…それは、力を使える場所が無いからさ!つまり!筋肉さ!!

 え?意味がわからない?難しく考える必要は無いよ。

 要はコロシアム、つまり力を振るって良い場所を用意すれば良いだけの話なんだ!

 

「乱波とか言ったな…お前、汗!見せろやァッ!!」「お前…良いなッ!!」

 

 かつては凶悪な犯罪者だった二人も今ではコロシアムの人気者の一人さ。個性、筋肉、殺害以外なんでもありのコロシアム。賭博としての一面もあるけど、その収益は全部筋肉支援事業に充てられている。無料のジムとトレーナー達、高タンパク低カロリーな補給食、適切な医療、十分な水分、教育、仕事の斡旋…。

 コロシアムを活用し鍛えることでヒーロー達はより強くなりヴィランに備える。ヴィランはそんな強いヒーロー達に睨まれることになるから生まれない。それに力を振るいたいならコロシアムに出場すれば良いからね!誰でも参加OKさ。

 そんな訳で始まったコロシアム政策も2年以上が過ぎた。僕はプロのヒーローとしての活動をしつつ、このコロシアムで日夜試合を続けているんだ。毎日刺激的で僕の筋肉も喜んでるよ。

『さあいよいよ本日のコロシアム最終戦。皆様お待ちかねのあの男、緑谷出久の試合です!最終戦も引き続き私実況の筒美と』

『解説の治崎がお送りします。』

 よし、僕の番だ!今日の相手は一体誰だろう?国際友好試合でアメリカのスター・アンド・ストライプ…というかキャスリーンが来た時はすごく盛り上がったんだよね。

『さあ、本日チャンピオンの緑谷出久に挑戦するのは…なんと!かつて雄英高校にて同じクラスだった人物のようです!』

『彼の力を間近で見てきた相手ですからね、これは面白い試合になりそうです。』

 …!そうか、今日の相手は彼か…!

「ウィ☆チャンピオンとしてスポットライトを浴びるのはやっぱりボクの方が適任だよね☆」

「青山くん…!」

 すごいや、しばらく見ない間にこんなに仕上げてきたのか…!バレンタインの板チョコかと見間違うほどの腹筋、世界を背負っているかのような背中に、泣く子も黙らせられるような大胸筋、はち切れんばかりの大腿筋に新時代を彷彿とさせる上腕二等筋肉…!!凄いぞ…!

「ノンノン!今のボクはヒーローとしてここに立ってるのさ☆だからヒーロー名で呼んでほしいな☆」

「うん、分かった!」

 でもまずは…

「ナイスバルクッ!!」「ナイスバルク☆」

 お互いのモストマスキュラーでしっかりと相手を称え合い試合開始だ…!

 

「じゃあ、行くよ!『Can’t Stop Training-ムキムキが止められないよ☆-』!!」

「ウィ☆」

 

 

《無個性『筋肉』 完!》






○爆殺王(ツァーリボンバ)…爆豪の最終兵装。期末試験以降使用していなかったコスチュームの籠手を用いた攻撃であり、爆豪由来の火力としては本作最高火力である。常人相手なら直撃すれば死ぬ。掠っても死ぬ。圧縮した汗を更に圧縮し詰め込むことを繰り返し凝縮されたもので使用すれば籠手どころか使用者である爆豪の腕すら吹き飛んでしまう。(緑谷でも腕がグチャグチャになる程野反動)ただしその破壊力はコロナブラストに匹敵する。

○青山のヒーロー名…『Can’t Stop Training-ムキムキが止められないよ☆-』。オールフォーワンが捕まった後、彼の内通者であることを自白したがそもそも緑谷やオールマイトは筋肉読心術によってある時期からそのことを知っていたため不問とされた。その後、物間がオールフォーワンの個性をコピーしオールフォーワンから個性を奪った際についでにネビルレーザーも奪って貰ったため、現在は無個性である。そこからは一から鍛錬を積み、無個性でもその圧倒的筋肉によりプロヒーローとして活躍するようになった。その際にヒーロー名を改名。やはり筋肉、筋肉は全てを解決する。


と言う訳で最終回です。こんな「筋肉」と言っておけば大体なんとかなると勘違いした作品を最後まで読んでくださりありがとうございました。
本作は最終回となりましたが、トレーニングに終わりはありません。故にトレーニングfinalとかではなく、∞にしています。

では、次回作『鋼の錬筋術師-ニクメタルアルケミスト-』でお会いしましょう。
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