無個性『筋肉』   作:ベルゼバビデブ

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今回はおまけのお話。


トレーニング00 筋肉は過去をも改変する

 俺の家は6人家族だった。…そこに1匹を加えてやらなきゃ可哀想か?まぁいい。

 父親母親姉貴に祖父母、それにえーっと確か…そうそう、ペットのモンちゃんだ。今思えば結構デカい家に広い庭、結構良いとこに住んでたんだな。幼い俺は原因不明の皮膚の痒みに苦しみながら…まぁ、普通に暮らしてた。一つ、普通の家庭と違うところを挙げれば『家でヒーローの話をしてはならない』というルールがあるくらいか。結果的に言えば父親の母親…つまりまぁ俺のお婆ちゃんがヒーローだったわけで、ついでに言えばただのヒーローじゃなくてあのオールマイトの先代だったとか。

 つまりまぁ、先生とバチボコにやり合ってたヒーローって事だな。そんな訳で先生と戦う自分の周りに自分の子供を置いておけないと判断したらしく、それが結果として親父の『自分の母親はヒーローであるために自分を捨てた』という考えに至る訳だ。少し前までほとんど思い出せなかった気がするが、最近は過去のことを思い出せるようになってきた。

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

「痒いの治らないね〜、嫌だねぇ」

 効きもしない塗り薬を優しく塗ってくれてるのは母さんか。いつも俺に優しくしてくれてた祖父母の姿も見える。だが、この家の権力者…つまり父親の前では誰も俺の味方をしてはくれない。ヒーローが日常にいる世の中で子供の付き合いとしてヒーローの話が出るのなんてのは当然だ。どんなヒーローが好きか、あの必殺技が凄かった、この前ヒーローに会った、テレビにヒーローが出ていた。だが、俺はその話についていけない。何故か、一言ヒーローの話をすれば父親の張り手が飛んでくる。

「何度言ったら分かるんだ転孤!ヒーローの話をするな…!!」

 幼い俺に父親の事情など理解しきれるはずもない。当然のように俺は何度かルールを破った。普段は優しく俺の味方をしてくれる母親も祖父母も黙って見ているだけだ。当然だろう。この家は結局父親の財が成した物。そこに住まわせてもらっている立場である俺達は家主である父親に逆らえない。当たり前の構図だ。

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

「…わかった、車で迎えに行く。」

 電話の相手は姉貴と買い物に行った母親からなのだろう。突然の雨で立ち往生しているらしく、父親が迎えに行くらしい。

「義父さん達は旅行に行っているから転孤は一人で留守番だが…できるよな?」

「うん」

 まぁ嫌いな父親と二人で居るより一人で留守番の方がマシだよな。そんな訳でデカい家の中に一人。父親が居ないことをいいことに俺はテレビをつけた。チャンネルは勿論ヒーロー関係だ。

 

 …待て、こんな場面あったか?…まぁいいか。俺が覚えてなかっただけなんだろう。多分…。

 

『と言う訳で本日のヒーローはこの方です!最近大活躍中の……です!』

 …?雨のせいか名前だけノイズで聞こえなかったな。それに視界にモヤが掛かってヒーローの顔が滲んで見える。髪の毛は緑色みたいだが…。

『このコーナーはヒーローをお呼びして直接質問を行ったり、事前に頂いたお悩みハガキに答えて頂くコーナーです。それでは行きましょう!まずは質問から、ズバリ…ヒーローとして必要なことは!?』

『それは勿論…筋肉さ!』

「うわっ…!ナイスバルク…!子供の僕でもわかるなんてキレのあるサイドチェストなんだ…!」

 なんだよこのヒーローパンイチじゃねぇか。はち切れんばかりの筋肉があるから許されるのかもしれないが普通にパンイチは変態だろ。

『筋肉…ですか。個性が使えるのに?』

『個性が使えるからこそさッ!』

 やめろ。喋るたびにポージングを変えるな。

「うわぁ!バックダブルバイセップスだ!背中に鬼神が宿ってるみたい!」

 確かに俺の言う通りありえんほどに迫力のある背中してんな…。

『例えば…肩がよく回るという個性を持っているヒーローがいたとする。』

『はい。』

『でも、そのヒーローは筋肉がないからパンチに威力が無い。…どうです?』

 そんな奴ヒーローになれないだろ。

『頼らないですね…』

『でしょう?でもそのヒーローが圧倒的筋肉を鍛え、一撃の拳でコンクリートを撃ち砕けるほどのパンチを放てるとしたら?』

『…なるほど、確かに筋肉の有無で活躍に雲泥の差がありますね。でも、それは肉体にまつわる個性のヒーローだけでは?』

 確かに、単に肉体に関する個性を持つ者なら自然とその部位を鍛え武器に仕上げるはずだ。肩がよく回る個性なのに体鍛えてないような奴はヒーローになれないだろう。

『そんなことはありません!例えば、手から水を放つ個性のヒーローがいるとします。そして相手は己の筋繊維を増やし筋肉を増強する個性のヴィランだとします。』

『それはピンチですね…。さっきの理論で言うとそんな圧倒的な筋肉量のヴィランには勝てないのでは?』

 確かに、筋肉が強いのであれば筋肉を増やせるヴィランってのはそれだけ強いと言える。手から水を放ったところでどうにもならないだろう。

『いいえ、手から水を放てる個性のヒーローも圧倒的な筋肉量を日々の鍛錬で身につけておけば解決します!』

「確かに!」

 確かに!じゃねーよ。そしてお前はモストマスキュラーするな。

『なるほど!筋肉量が互角なら個性で水を放てるヒーローの方が有利ですね!』

『そういうことです!』

 どう言うことだよ。

『では、ヒーローとして大事なことは筋肉、と回答いただいたところで次に行ってみましょう。お悩みハガキから…えーっと、夫が子供達に教育と称して暴力を振るいます。止めたくても私は力が弱く止められません。どうしたらいいですか…と、中々複雑なお悩みのようですが…』

『簡単です!筋肉です。筋肉を付けましょう!』

『えぇっ!?ここでも筋肉ですか!?』

 多分こいつ筋肉以外の回答しないつもりだな?

『奥さんが旦那さん以上に身体を鍛え、圧倒的な腕力を手に入れれば教育と称して暴力を振るう旦那さんに鉄拳制裁の拳を捻じ込み、暴力を振るう事の愚かしさをその身に刻み込む事が可能です!』

 お前も結局暴力に訴えてるじゃねぇか。

「なるほど…!」

 おい俺!何納得してんだ!!…おかしいぞ、こんな記憶本当にあったか!?なんか怖くなってきたぞ!?

 

〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜 〜〜〜〜〜

 

 それから数ヶ月後の記憶を思い出した…はず、なんだが…。

 

 何故俺の身長が姉貴の倍くらいになっている???

「見てこれ!おばあちゃんなんだって!ヒーローなんだよ、凄いね!」

 姉貴はそんな俺の姿に全く動じてないな。…いよいよもっておかしいぞ。俺の記憶と食い違ってるなんだよこれ…!

「華!転孤!その写真は…!!」

「ま、まずいお父さんだ…!」

 なんかオチが読めてきたぞ。

「転孤ッ!!」

 父親のビンタを…俺?は仁王立ちで顔面受け、そして…微動だにしない。何故かって…そりゃ筋肉だからな。屈強な肉体、圧倒的なフィジカル、恐らく積んだであろう狂気的鍛錬。そうだ、俺の個性の崩壊は己の筋繊維を崩壊させそれを筋肉の超回復で鍛え直す事で摂理崩壊的鍛錬が可能だ。それを成長著しい子供時代に行ったとすればこうなってもおかしくはない…の、か?…いや、おかしい。普通に考えて。

「痛いじゃないか父さん」

 嘘吐け。

「ッ…!」

「フンッ!!」

 俺?の放ったフルスイングのビンタは父親の顔面にクリティカルヒット。見事に壁へとぶっ飛んだ。父親の顔面は見るも無惨にパンパンに腫れてやがる。一撃でああはならんだろう。

「転孤…!お前父親に向かって…!」

「父さん、僕はヒーローになりたいんだ」

「ッ!ヒーローの話を…!するなっ!!」

 ヒーローへの憎悪で狂気的に立ち上がり襲い掛かる父親だったが…僕の放った容赦ない正拳突きが鳩尾へ突き刺さっていた。

「ミ°ッ」

「父さん、お婆ちゃんの選択は仕方の無かった事だよ。大切な物だからこそ、側に置いておかない事だってあるよ。それに…なんだかんだ写真を持ってるくらいだ。お父さんだって…」

「…」

 この日を境に我が家からヒーローに関するルールは無くなった。

 

 僕はその後…特にヒーローになることも無くこの筋肉を活かして土木の現場で働いている。いつの世も人々が生きる基盤の整備は必要な物だ。

「志村!相変わらずの筋肉だな!肩にデッカい重機でも載せてんのかい!」「いつまでも惚れ惚れする筋肉だな!大胸筋が歩いてやがるぜ!」「ザッツァグレイト大腿筋!」

 

 やっぱ筋肉って…最高だな!

 

 …。うん?何かおかしいような…?まぁ、気のせいか!

 




筋肉…トレーニングとは継続する物

そして時間とは過去から現在、現在から未来に継続する物

つまり、継続的筋肉を鍛えれば現在から過去に干渉することも可能!!!

おかしいところなどない!!筋肉だ!!!

 筋 肉 は 全 て を 解 決 す る !


というわけで継続的筋肉により過去が改変された結果、死柄木弔が産まれない世界線。
余談だが更なる過去改変によりOFA初代が筋肉ムキムキマッチョマンになる為フィジカルでAFOをボコボコにブチのめしている。

ついでにウォーターホース夫妻がフィジカルでマスキュラーを返り討ちにし、改心させる世界線でもあります。

あとこの世界線のAFO
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