今日は待ちに待ったコロシアムの国際交流戦の日だ。前回奴が来日した時は親善試合としてデクの奴が戦ったが、今回は俺の筋肉を賞賛して彼方から指名があった。嬉しいことだぜ。こうやって…俺は強い奴と戦う為に筋肉を鍛えてきたんだからな…!
「良い試合にしよう、ボウヤ」
「俺をガキ扱いとはな…!」
む、奴のあの動き…なるほど、恐らくデクからそう言う情報を受け取っていたのだろう。本来マナー違反とされる同じポージングでの返答…だが、昨今では一部の本気の相手には特定のポージングならばそれは例外となる時解釈されている。
例えば、圧倒的な脚力を自慢とするミルコが相手ならばその脚の厚みを強調できるサイドチェストが該当する。そして…本気の俺に対してもそう言ったポージングは存在する。筋肉冥利に尽きるってもんだぜ。
「流石ボディビル本場はキレが違うなアメリカ女…!ナイスバルク!!」
「ボウヤもその名に恥じぬ見事なモストマスキュラーね!ナイスバルク!!」
チィ…!まだポージングを決めただけだってのに衝撃波が飛んでくるとは…!だが、まだ俺は個性を使ってねえ。それに相手がアメリカナンバーワンだろうがここは日本だ。奴にとってはアウェーな分こちらが有利…!
…それにしてもつくづく筋肉ってのは便利だな。俺は勉学の方はからきしだが、言語は違えどその意思から放たれる筋肉の波動を受け、共鳴的筋肉からその意志を読み取るので奴が何を言っているのか分かるんだからな。さながら筋肉翻訳機といったところか。
「さぁ、まずは軽く撫でてあげるぜボウヤ!『上腕二頭筋は筋力が10倍になる』!!」
ッ!打ち出される瞬間に10倍に膨張する殴打だと!?だが、俺だって筋肉の量じゃ負けて無ェッ!
「へえ、それが個性…筋肉増強…。前面に敢えて柔らかい筋肉を展開することで衝撃を殺し、その背後に控える硬質的筋肉によって完全に受け止めているのね、強い相手と戦う為の手段を持っている…悪く無い!」
「はッ!テメーこそたった一回の攻撃で俺の防御を見抜くとはやるじゃねーか!」
オールマイトが引退した後、日本のナンバーワンヒーローは一時的にエンデヴァーだった。鍛えられた筋肉にプラスした炎、更にそれを巧みに操り索敵、捕縛、機動力、防御、攻撃…まぁ特に攻撃を得意としていたが、ヒーローに必要なすべての要素を兼ね備えた筋肉と個性を持つヒーローだった。今はデクがナンバーワンだがあれだけの筋肉があるのだから当然と言える。対して俺の目の前にいるアメリカナンバーワン、先ほど攻撃のタイミングで腕が膨張したところを見ると恐らく肉体強化系だろう。問題なのは奴の10倍という強化幅が最大値かどうかである。
「戦いの最中に考え事かい?」
掛かった…!奴が再度攻撃を仕掛けてきたこのタイミング…!これを待っていた!
「肉露鞭ッ!!」
「ッ!?地面から…!!」
足の裏から筋繊維を伸ばし地面を掘り進めておいた。どんな個性かは知らないが…
「なるほど、筋繊維から筋繊維を伸ばして作る筋肉の鞭か!脚を拘束されたね…それなら…『キャスリーン・ベイクは腕が10倍まで伸縮する』!」
ッ!?腕が伸びただと…!?能力の発動条件は不明だが、どうやら俺の筋肉増強のように筋肉だけを強化するような単純な個性では無いらしい…!ここは肉露鞭を解除して距離をとって回避だ…!
「今のを避けるなんて中々のスピードだね」
「驚いたぜ。腕が伸びるなんてなッ!だが、遅ェッ!!」
「!?背後に…!」
どうだ!これが脚部のみに瞬発的筋肉を集中して増加させ機動力と瞬発力に特化する俺のスピードフォルムだ!!デクのように常に全身が最強の筋肉に覆われた最強の男にはなれないが、瞬間的に一部を特化させるこの方法ならばデクにだって負けてねえ!!
「食いやがれ!!」
そして瞬時に筋繊維を主に腕部に集中させる事で破壊力に特化するアタックフォルムにチェンジだ!!その八つに割れた板チョコみてーな腹筋に捩じ込んで腹に風穴をブチ開けてやるッ!!
「なるほど、様々な筋肉を使い分けて戦うことも可能か…!強いな!『キャスリーン・ベイクの筋力は10倍になる』『筋肉は10倍に圧縮される』『腹直筋は硬度が10倍になる』!」
…ッ!?な何ィ!?殴った俺の拳の骨の方が砕けただと!?馬鹿なッ…!!硬質的筋肉を拳に展開してナックルガードを形成していたのに…!!まぁ、折れちまった骨は筋肉で固定しつつ硬質的な筋肉を芯のようにすれば代用できるから治療はこの試合の後で良いとして、奴の腹筋、まるでデクを殴ったかのような硬さだったぜ…!
「やるなアメリカ女…!まるでデクかオールマイトと戦ってるかのようだぜ…!」
「ありがとうボウヤ、最高の褒め言葉ね」
チッ…!ウインクする余裕すらあるとはな…!
「次は私が攻める番だぜボウヤ!受ける準備は良いかい!!」
相手はオールマイトやデク並みの攻撃をしてくると仮定しろ…!と言うか考えてみれば当たり前のことだ…相手はアメリカのナンバーワン、ならば日本のナンバーワンたるデクや引退したオールマイトと同等の実力を持っているであろうことなんてのはな…!
肉露鞭による地面とのアンカー接続に前面に筋肉を集結させた俺のディフェンスフォルムで奴の攻撃を確実に受け切る…!奴のようにカウンターで骨にヒビを入れることは出来ないがせめて受け切って見せるくらいしなけりゃ折角指名してくれた奴に申し訳がないからな…!!
「『キャスリーン・ベイクは砕け無い』『筋肉は密度が10倍になる』『上腕三頭筋は筋力が10倍になる』『三角筋は筋力が10倍になる』『広背筋は筋力が10倍になる』『腹直筋は筋力が10倍になる』『背筋は筋力が10倍になる』『ヒラメ筋は筋力が10倍になる』「腓腹筋は筋力が10倍になる』行くぜボウヤァ!!」
今の長ったらしい詠唱、どうやらパンチを繰り出すようだが奴の能力のカラクリは恐らく何かをしつつ変化させたい対象の名を声に出して詠唱する事のようだな。しかもパンチに必要な筋肉一つ一つに呼びかけてるあたり、同時に付与できるキャパシティはそれなりに多いが、対象はしっかりと選ばなくちゃならないらしい。10倍10倍としきりに言ってるあたり可能な強化幅は10倍が限度らしい。とは言え、『筋肉』の密度が10倍になり各筋肉が筋力10倍なら実質的な筋力は元の100倍になっている。なるほど、うまく対照を選択すれば10倍の強化幅を100倍にも1000倍にもできるってわけか!更に奴は各部位の筋力を上げている。単純なパンチは元の比ではないはずだ…!
「それほどの相手と認めてくれてるとはな!嬉しいぜアメリカ女ァ!!」
「どういたしましてボウヤ!そしてこれが私の…SMASCLEッ!!!」
その衝撃は初めてデクと殴り合った時を思い出させた。なんて奴だ…俺の何百層もの筋繊維の装甲を容易くブチ破っていきやがる。…だが!!
「ん…!?この締め付けは…突き抜けた筋繊維の層を張り直す様に動かすことで私の腕を締め付けている…!?」
「その通りだぜ!筋肉の層はただの壁じゃねえ、突き抜けられた瞬間その穴を塞ぐ様に締め付けることでお前の腕を締め付け抑え威力を殺してるのさ!!」
「流石はデクも認める男!自分の個性と筋肉をよく理解して最大限に利用する術を知ってるようね…!なら、これはどうだい!『キャスリーン・ベイクは身体の大きさが10倍になる』!!」
なっ…これはまさしく…!!
『圧倒的筋肉があれば思い切り指を開くだけでも攻撃になるってね!!血狂いマスキュラー、お前の敗因はたった一つ!それは…筋肉さ!!』
一度殺した勢いを盛り返すあの時のデクと同じ攻撃ッ…!だがッ!!
「!?内側からの膨張を抑え込む程の筋力…!それに吹き飛ばせないのは…そうか、足から伸ばすあの筋肉の鞭をアンカーの様にしているのか…!…完敗だよモストマスキュラー!膨張する私の腕を筋肉に押さえつけられきった事で腕の骨が折れてしまった。やはり『砕け無い』を解除するべきじゃなかったね」
「へっ…何言ってやがるアメリカ女、俺の方こそ…負け、だぜ…今ので体力を使い、きっちまった、からな…!」
だが…良い勝負だったと思いたいぜ。アメリカ女、ナイスバルクだ…肩にホワイトハウスでも乗っけてんのかい!
なんでキャスリーンの話なのに視点がマスキュラーのみなんですか?
〜おまけ〜
ダークマイト「一つ問おう。新時代を作るには何が必要と思うかね?
そう…筋肉だ!!」