その魔法師、YAMA育ちの剣士につき   作:ヘッポコ魔法師

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入学編に勇くんの見せ場がねぇ……どうしたものか。
今のところ考えているのは、柴田美月に眼のコントロール(仙術の一端)を教えるついでに他の連中にもちょっと教えて、個人的に好きな壬生紗耶香パイセンを魔改造することくらいですかね。ああ、あと、ファランクスでもぶち抜きましょうか。

なんだか確認するかは人によりけりな感想への返信で、そこそこ重要な情報をポロポロしすぎてる気がしてきました。個人的には知っていようがいまいがどうでもよかったり、もしくは後で出てくる設定なので問題ないと思っているのですが……



あ! ここくもんでやったところだ!

 

「じゃあ、二科はこっちだから。深雪、勇に迷惑をかけるんじゃないぞ?」

 

「もう、お兄様ったら。私の歳を誤解していませんか? それに、迷惑をかけられるのは私の方ですよ」

 

「それもそうだな……」

 

 一科と二科、それぞれのクラスに別れた勇たち。勇はさりげなく不名誉な扱いをされたが、さっき達也に『登校中に自分が父親の会社で研究資料のリカバリー装置として扱われている事を知られそうになった』という激ヤバな告白をされた衝撃で、右から左に通り抜けた。

 もしそんなことになれば、登校に使われている電車がデカイ魚が吊るしてある冷凍室のようになっていたことだろう。もちろん吊るされるのは彼らの父親である。ああ無情……

 

 勇は達也に掛けられたプレッシャーの重みを感じながら教室までの廊下を歩く。

 ふと横を見ると、ひと目でわかるほど元気のない深雪が目に入った。それを確認すると、勇はすかさず死角に入り、深雪の耳元で囁く。

 

「せっかく同じ高校に入学したのに、何もかも別なんて寂しいわ! お兄様、あたし耐えられない!(裏声)」

 

「珍妙な声で読心するのはやめてください!」

 

 深雪を励まそうと渾身のモノマネ(3/100点)をした勇は、あえなく振り払われる。しかし、読心などしていないにも関わらず、深雪の内心を見事に的中させてしまったらしい。だが、こればかりはどうにもならない。どうにかなるとすれば、現会長である七草真由美か、その意志を継ぐ2年か……或いは深雪が、風紀委員長として変革を起こすしかないだろう。

 

 ……それはそれとして、勇には疑問があった。

 

(深雪はこんなに視線を集めてるのに、俺はなんで注目されないの? 神に愛されたバチクソイケメンフェイスはどこ……ここ……?)

 

 勇は(いぶか)しんだ。深雪はもはや視界内の全ての男という男を(ことごと)く振り向かせているレベルなのだが、勇は一瞬だけ女子と視線を交わしても次の瞬間には何事も無かったかのように逸らされる。Why?

 

「なあ、深雪。俺ってバチクソイケメンだよな?」

 

「バチく……確かに整ったお顔をされていらっしゃると思いますが、それがどうかしましたか?」

 

「だよなぁ……」

 

 今この瞬間も、深雪が1-Aの教室に入るとカイジかよってくらいにはザワついたのだが、勇には無反応だ。

 取り敢えず席に着き、なぜなのか悩んでいると、1人の女子生徒がこちらに近づいてくる。

 

(ちょうどいい、第三者から客観的な意見を──えっ)

 

「あ、あの、司波さ──はわっ、ぶっ?!」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「あ、すみません、ありがとうございます! 光井(みつい)です! 光井ほのかです! 」

 

「司波深雪です。光井さん、仲良くして下さいね」

 

「こちらこそ!」

 

 目の前で倒れたにも関わらず、勇は動けなかった。手を差し伸べることさえ出来なかった。

 

(な、なんだコイツ……)

 

 勇は混乱の最中にいた。彼女は何も無い所で自分の足を絡めて転び、顔面を強打し、そのまま動かなくなったと思ったら、まさかの深雪に初手自己紹介。その一連の行動は、逆超絶技巧によって仙人たる勇から速度を奪ったのだ。同じ時間だけ勇を拘束しろと言われても、出来る者は存在するかどうか……紛れも無い偉業である。

 勇がそんな風に感嘆していると、深雪と教室に入った時点でほのかと一緒にいた少女がこちらに近付いて来た。

 

(あれ、コイツ、なんか見覚えが……)

 

「この子おっちょこちょいで……すみません。司波さんと……勇? 勇!」

 

「ひどいよ雫! って、えええええええ?!!」

 

 ほのかが驚くのも無理は無い。なぜなら、少女がいきなり勇に抱き着いて来たのだから。

 

「なっ、何をしているのですか?!」

 

「し、(しずく)? 取り敢えず離れた方がいいよ?」

 

()……私、北山雫。久し振りだね、勇」

 

「あ、ああ……久し振り」

 

 次いでのように深雪に自己紹介をする雫に、勇は困惑していた。雫とは1度会ったっきりなのだが、何故こんなにも懐かれているのか。

 

(身体を擦り付ける仕草が猫みたいでグッとくるなぁ……ほーれほれほれ、撫でてやるぞ〜)

 

「ん♪」

 

「あなたも何を成されるがままになっているのですか!!」

 

「そうだよ雫、はしたないよ?」

 

「ん、勇は私の婚約者だから問題ない」

 

「ええええええええええええ?!!」

 

勇さん、弁明はありますか?

 

「待て、弁明でなく説明をさせてくれ」

 

 取り敢えず、室温が急激に低下し始めた教室が冷凍室になる前に、この深雪とほのかに引っ張られながら俺に張り付く美少女を引き離し……勇は深雪へと弁明、もとい説明を始めた。

 遡ること3年、沖縄での一件の後。学費は自分で稼げと、勇が祖父(クソジジイ)に傭兵家業をさせられていた時に護衛した少女。それが雫である。とはいえ、親戚の娘さんに対してのように接した記憶しか本人には無く、婚約者うんぬんと言われても困惑者にしかなれないのだが……

 

「ん……最初は、主人の夜会にも関わらず何食わぬ顔でテーブルから料理を取る、礼儀知らずの護衛だと思ってたけど、スープを飲みながら襲撃者を蹴散らしたのを見て……その……仲良くなった」

 

「……前も言った気がするが、俺に夜会でのマナーを期待する方が間違いなんだ。お前を守れと言われて、それを実行することだけ考えてたし」

 

「私のことだけを……っ!」

 

(あぁ……そういうことですか……)

 

 深雪は確信した。言葉を濁して頬を染め、もじもじと指を合わせているこのあざとい女は、自分の敵なのだと。それはそれとして冷気は全て勇に向かう()

 

 やめろォ!(建前) やめろォ!(本音)

 

「父ともお酒を飲みながら仲良くなったみたいで、婚約者にするって話になった」

 

「俺としては大歓げ──すみませんナンデモナイデス……あれは酔っ払った勢いだろう?」

 

 深雪の威圧に呆気なく屈した勇の言葉を聞いて、雫は上機嫌に首を横に振る。

 

「父は本当にあなたを気に入ってるよ。とっくに素面(シラフ)だけど、今でも婚約者候補の1人だしね」

 

「……塚原の血ですか」

 

 凍り付くような視線で雫を射抜きながら、深雪は2人の間に立ち、そう呟いた。

 

 日本が政府主導のお見合い(オブラート)によって魔法先進国となった側面があるように、基本的に優秀な魔法師ほど恋愛結婚は出来ない。

 かつて振動系魔法で名を馳せたAランク魔法師である雫の母も、相手は財界のみならず政界にも強い影響力を持つ大富豪だというのにかなり苦労したらしく、話をされた時の遠い目が勇の記憶には残っている。十師族でのそれは特に顕著だが、魔法師の質と量が世界規模での立場を揺るがしかねない現代では、魔法師の血は何よりも重要なのだ。

 そういう意味で、覚醒した仙術使い──仙人を2人も排出している塚原の血は、宝石にも勝る価値があるだろう。もっとも、仙術の素養に血統は関係ないし、その事実は重々承知している筈なのだが……それでも、偶然と言える1人ならともかく、2人目の仙人を排出した塚原を無視できる者など存在しない。

 

「……父としてそういう思惑もあると思う。それは否定しない──でも! 個人的に気に入ったから婚約者にしたいっていうのもまた、本当のこと。私も、勇にはずっと会いたかった……改めて、よろしくね、勇」

 

「あ、ああ……俺も会えて嬉しいよ」

 

 深雪に首ねっこを掴まれてジタバタしている雫。何も無い場所でアタフタしている光井ほのか。怒気がバチバチと迸る深雪。混沌を極める現場は、オリエンテーションの開始を知らせるアナウンスによって()()()()()()解散された。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 時は流れて放課後。1日通しで雫と深雪に挟まれ多大な精神的ダメージを負った勇は、これでフィニッシュだと言わんばかりのトラブルに巻き込まれていた。

 

 その内情は、選民意識の強い一科生が二科生に理不尽を強いるというク*ったれなものなのだが……実を言えばこれ、本日3回目である。

 

 最初は昼の食堂だった。達也と座りたい深雪、深雪と座りたい深雪の周りに群がる一科生たち。当然のように彼らは選民意識を発揮し、深雪をイラつかせ、あわや第一高校の食堂メニューが冷凍食品オンリーになりかけた。身勝手で強引な言い草に、エリカとレオ──達也の前の座席の男子生徒、食堂でした硬化魔法トークで仲良くなった──は爆発しかけたが、達也が何も言わず席を立って事なきを得た。

 

 次は午後の遠隔魔法実習室、通称『射撃場』を見学していた際。その時はちょうど、生徒会長である真由美が所属する3-Aの実技が行われており、大勢の新入生が押しかけた。しかし、1クラスしか入らない実習室を新入生全員で見学できる筈もなく……これまた選民意識の強い一科生が出しゃばり、二科生はどいてろ云々(うんぬん)

 

 そして今、まさに進行中の第三幕では、なんと美月が一科生に啖呵を切っていた。その主張は、深雪が誰と帰ろうが、ましてや兄と帰るのに難癖つけるなという、至極真っ当なものである。

 丁寧な物腰からの正論。最初にぶっちした事といい、入学式で声をかけてきた事といい、美月は意外とアグレッシブらしい。

 

「僕たちは彼女に相談することがあるんだ!」

「そうよ! 少し時間を貸してもらうだけなんだから!」

 

「はっ! そういうのは自治活動(じかつ)中にやれよ。ちゃんと時間はとってあるだろうが!」

 

「予め本人の同意を取ってからにしたら? 高校生にもなって、そんなことも分からないワケ?」

 

 深雪のクラスメイトを、威勢よく笑い飛ばすレオと、皮肉たっぷりの笑顔と口調で返すエリカ。

 

「うるさい! 他のクラス、ましてやウィードごときが僕たちブルームに口出しするな!」

 

 一応は校則で禁止されている差別用語を公然と発する男子生徒。この暴言に最初に反応したのは、やはりというか意外というか、美月だった。

 

「同じ新入生じゃないですか。あなた達ブルームが、今の時点で一体どれだけ優れているというんですか!?」

 

「……どれだけ優れているのか……そんなに知りたいなら教えてやる!」

 

 抜き放たれるCAD。売り言葉に買い言葉といった状態だった先程までとは違い、これは法律違反の領域に踏み込んでいる。

 厳密には、CADの所持そのものは問題ない。CADはあくまで魔法の発動を補助するものであり、無くとも魔法は使えるのだから、所持を禁止する事に意味は無い。同時に、校内での所持は違反だが、今は下校中でここは門の外。しかし、人に向けるのは流石にアウトだ。

 道理は美月にある。だが、だからこそ、一科生たちは感情的に反発するしかないのだろう。理解はしよう。だが、これはやり過ぎだ。よりにもよって、向けられたCADは攻撃力を重視した特化型。

 

 特化型CADは、多様性を犠牲にする代わりに魔法の発動速度を重視したCADで、系統の組合せが同じ起動式を一度に最大9種類インストールできる。ちなみに、照準補助のサブシステムと一体化している物が主流だ。

 

(ここ、達也(くもん)でやったところだ!)

 

 こんな状況だが、勇にはまだふざけるだけの余裕があった。だが、早急に対処しなければマズイ事になるのは目に見えているので、即座に行動を開始する。

 というわけで、取り敢えず千里眼を広げて状況を把握したのだが……

 

(ほのかちゃーん! なーんで魔法を発動しようとしてるんだYO!)

 

 攻撃性は無いようだが、これはよろしくない。なぜなら、それを判断できる人間が、この現場を観測している者を含めても、当事者である勇と達也を除けば存在しないからだ。

 勇は達也に念話を送り、深雪の友達だから助けてやってくれと頼む。そしてCADを抜いた男子生徒の前に出た。

 

 周囲の人間からすれば、見物人の悲鳴をBGMに、拳銃の形をしたCADが突きつけられ……そして、次の瞬間にはいきなり2人の人間が現れたようにしか見えなかっただろう。

 1人は、男子生徒の手をCADごと警棒でぶったたいて弾き飛ばそうとしたエリカ。もう1人は、森崎のCADを上に逸らし、エリカの警棒を受け止めた勇だ。

 

「……なんで止めたわけ?」

 

「傷跡が残ると面倒な事になると思ったし、レオの手ごとブッ叩こうとしてたからだ」

 

「あちゃー、バレちった?」

 

「サンキューな、勇。……おいテメェ、俺も気付いてんぞ! 笑って誤魔化してんじゃねぇ!」

 

 笑って誤魔化そうとするエリカとそれを咎めるレオ。だが、エリカもレオが避けられるであろうことを察して動いた節があり、レオも本気で怒っている訳では無いだろう。

 

「くっ……離せ! お前も一科生だろ!」

 

「お前()? 一緒にすんじゃねぇよこのタコ。いいかよく聞け森中。他人を下げても、自分の位置は上がらない……あの、雫さん? 今は結構いいこと言ってる時間なんだけど?」

 

 喋っている最中、勇は雫に服を引っ張られていた。

 

「いいことは言ってた。けど、その人は森中じゃなくて森山」

 

「あ、ああ! スマン森山」

 

「僕は森崎だ!」

 

 違ったらしい()

 

 ちなみに、なぜ森崎の魔法が不発したかというと……先に述べた通り、特化型CADは照準補助のサブシステムと一体化している物が主流だ。このタイプは、銃口の位置にある照準補助機構と、銃を照準する魔法師のイメージで魔法作用先を指定するので、明らかに狙っている対象に当たらないような位置まで銃口を逸らしてやれば……こうなるというわけである。

 

(やはり達也(くもん)……達也(くもん)は全てを解決する……)

 

 勇は大丈夫だろうとは思いつつほのかの方を確認する。するとそこには……頬を赤く染めて達也に抱き止められるほのかがいた。

 どうやら達也は、普通に声をかけて止めるのではなく、展開中の起動式にサイオンの塊をぶつけて魔法を破綻させたようで……その予想外の衝撃にフラついた所を抱き止めて、至近距離からのイケメンフェイスで落としたらしい。汚いさすが忍者(の弟子)汚い。

 だが、起動式のみを破壊し、術者には何のダメージも与えない照準と出力制御。流石である。これを勇がやったら手を吹き飛ばしていただろう。

 

「馬鹿な!」

「ウィードのクセに!」

 

(あいつもウィードの仲間だやっちまえ、ってか? だーれが素直にやらせるかバーカ!)

 

 リーダー格の森崎が討ち取られ(討ち取られてない)、仇をとらんとばかりにCADに手を伸ばす一科生たち。しかし、勇が力を解放し、指向性を向けて彼らに放ったことで、その行動はキャンセルされた。というか、崩れ落ちて膝をついた。

 もちろん外気功を解放した訳では無い。ただ闘気を外に出したというだけで、制御して己が内に循環させている平時と比べ、むしろ自然な状態に近い。しかしながら、放たれた莫大な闘気に励起させられて、本来なら見えぬ筈の霊子が活性化、及び可視化。更にサイオンが嵐のように吹き荒れた事で、限定的ながらキャスト・ジャミングのエグい版を発生させていたのだ。

 

「止めなさい! 自衛以外の目的による魔法での対人攻撃は、校則違反である以前に犯罪行為ですよ!」

 

 声の主を見て、一科生たちは顔面蒼白だ。なにせそこにいたのは、現生徒会長である七草真由美だったのだから。

 

「1年生ですね? 事情を聞きます、ついて来なさい」

 

 少なくとも勇が目にしていた限りにおいて、常ににこやかだったその顔は、こんな時であってもそれほど厳しさを感じさせない。しかしその目には、並の魔法師を遥かに上回る規模の活性化したサイオン光が宿り、その身体を後光のように包むことで、逆らい難い威厳を与えていた。

 それに加え、隣に立つのは風紀委員長である渡辺摩利。彼女のCADは既に起動式の展開を完了しており、抵抗は無意味であると表しているようだった。

 

 エリカも、美月も、一科生たちも、動けない。反抗心では無く、その雰囲気に呑まれて。そんな中、毅然(きぜん)とした態度で、勇は歩み出た。

 

「すみません、悪ふざけがすぎました」

 

「悪ふざけ?」

 

 軽く一礼してから口を開いた勇に対し、摩利は眉を(ひそ)める。

 

「はい。森崎はとても優秀なので、後学の為にその手腕をご教授願ったのですが……あまりに真に迫っていたもので、思わず手が出てしまったようです」

 

 森崎も含め、その場にいた1年の全員が絶句していた。

 

(おーい顔! 顔に出すな!)

 

 目的は依頼の遵守、即ち達也を目立たせない事だ。それは変わりない。入学していきなり問題を起こすのは、例えこちら側に非が無くともマズイ。だから非しかない一科生も次いでに庇ってやっているのだが……達也を除き、全員が『お前マジか』と顔に書いてあった。

 

 摩利の視線が動く。エリカの警棒と森崎のCAD、魔法を使おうとした一科生を見て震え上がらせ、勇に戻る。

 

「ふむ、確かに森崎一門のクイックドロウは有名だからな。筋は通っていないこともない。だが、そこの女子生徒が攻撃性の魔法を発動しようとしていたのはどうしてだ?」

 

「ほのかさんは驚いたのでしょうね。条件反射で起動プロセスを実行できるなんて、流石は一科生です」

 

 クイックドロウを今思い出した勇が、いけしゃあしゃあと述べる。

 

「君の友人は、魔法で攻撃されそうになっていた訳だが、それでも悪ふざけだと主張するのかね?」

 

「彼女が発動しようとしていた魔法は、人を傷付けるものではありません。恐らくは閃光魔法だと思いますが……」

 

「閃光もやりようによっては失明させることさえ可能だが?」

 

(あー、クソ。すまん達也)

 

 仙術の弱点。ここで違うと言っても、何故そんな事が分かるのかと聞き返されるだろう。しかし、仙術による敵意や悪意といった感情の読み取りは、再現性が皆無だ。

 達也は最終手段どころか手段としてカウントしてすらいなかった。切らないのが最善のカード。しかし、ほのかの表情と、自分の制服を掴む雫の手に力が入ったのを感じたのが、決定打になった。

 

「横から失礼します。彼女が発動しようとした魔法は間違いなく閃光でしたが、視力障害を引き起こすレベルではありませんでした」

 

「ほう……君は展開された起動式を読み取れるらしいな」

 

「実技は苦手ですが、分析は得意です」

 

「なるほど……」

 

 魔法式がどのような効果を持つのか。これは魔法師であろうが仙人であろうが、何となくでしか分からない。仙術を使えるなら攻撃性や出力くらいは分かるが、それでもその程度だけだ。起動式を読むということは、画像を表す文字の羅列を見て、その画像を頭の中で再現するようなもの。意識して理解することなど、普通はできない。

 

「勇さんの申した通り、本当にちょっとした行き違いだったのです。先輩方のお手を煩わせてしまい、本当に申し訳ありませんでした」

 

 値踏みするような視線を向けていた摩利だが、微塵(みじん)の小細工もなく真正面から頭を下げられ、毒気を抜かれた表情で目を逸らした。

 

「摩利、もういいじゃない。勇くん、本当にただの見学だったのよね?」

 

 頷くと、得意げな笑みを返される。勇はそれが貸し1つと言われているような気がした。

 

「生徒同士で教え合うことが禁止されているわけではありませんが、魔法の行使には細かな制限があります。このことは一学期のうちに授業で教わるので、魔法の発動を伴う自治活動は、それまで控えた方がいいでしょうね」

 

「……会長もこう仰られているし、今回は不問としよう。以後、このようなことの無いように」

 

 慌てて姿勢を正し、頭を下げる一同を一瞥(いちべつ)すると、摩利は踵を返した。……が、すぐに足を止め、背中を向けたまま問いかけを発した。

 

「君たちの名前は?」

 

「1年A組の塚原勇です」

 

「……1年E組、司波達也です」

 

『覚えておこう』と言い残し、摩利は真由美と共に去っていった。

 

 その後、森崎は捨てゼリフを残して去り、勇は一緒に帰ろうとほのかに誘われる達也に口笛を吹いて深雪に凍らされそうになりつつ、美月やエリカ、レオ達と共に家に帰った。

 





『読心』
・霊体の揺らぎやオーラの色を視る事で、どんな感情を抱いているのか何となく分かるが、読心と言えるほど心を読めるわけではない。思考の盗聴はむしろ現代魔法の分野かも? 本来の意味での読心も、やろうと思えば力技で出来ないことはない。
『念話』
・相手に遠隔で言葉を伝える仙術の技。受信機能は無いので、相手が念話を使えないなら一方通行になる。『こいつ、直接脳内に?! 』という訳では無く、脳内に響くような聞こえ方をするだけで、発動対象はどっちかといえば精神。害のある技では無いので、レジストしにくいが、しようと思えば着信拒否も出来る。

原作カップルを解体するのは主義に反するので可能な限り控えたいのですが、私はキャラが独り歩きするタイプの筆者なので、そこんところどうなるか分からないんですよね……
ぶっちゃけると、最初から司波兄妹を分解したいとだけは思ってました。状況が違うというのは分かっていますが、私はリアルに妹がいるので、どうしても兄妹の恋愛を忌避してしまうんです。なんというか、個人的な好悪ではなく、本能が拒むといいますか。さす兄! してるのは好きですが、結婚とかそういうのになると、ゲジゲジ(検索は自己責任で)とか、ガチムチ同士の汗臭いBLとかを見せられてる気分になります。
義妹モノは普通に好きになれるし妹萌えも理解できるので、本当に遺伝子に刻まれた人間という生物としての本能なのだと思います。司波兄妹のカップリングを期待している人には申し訳ない。
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