「おはようむぅ! 四季・夏!」
ワタシが『四季・夏』のムジカートとして目覚めて最初に感じたのは、なんかちょっと視界が狭いなってことだった。
鏡を見てみたら、服装も髪型もすっごくイケてたけど、右目が傷ついて使い物にならないことに気づいた。
「ねえ、この目治らないの?」
「ムジカートは基本的に優れた治癒能力を持つが、それは素体の頃からの損傷だ。故にその目は治らないだろう」
「……そっか。じゃあ仕方ないね」
右目が見えなくても、力が溢れてくるのを感じるので、問題ないだろうと思い、ワタシはシンフォニカを走り回ることにした。
森林区は空気が気持ちいいし、コンクリの工業区も走りやすい。広々とした音楽堂は何周でもできそうだ。
食堂やトレーニングルームなど、メインの施設は全部見終わったワタシは、次なる面白い場所を探して、ガチャガチャと物音がする方へと吸い寄せられていった。
「こんにちはー!」
ワタシは勢いよく扉を開ける。
「おやおや、お客さんとは珍しいですね。私に何かご用ですか?」
そこには一人のムジカートがいた。黒ベースの衣装が可愛らしい。
「おや? 見たことないムジカートですね。私はこうもり。あなたのお名前は?」
「ワタシは夏! よろしく!!」
「ヴィヴァルディの四季のお一人ですね。よろしくお願いします」
「うん! この部屋すっごいねー!」
ワタシはこうもりのいる部屋を見回す。見たことない機械や道具で溢れかえっている。
「ええ、ここには私の発明品や研究の成果がいっぱい……あれ、ちょっと、勝手に色々触らないでくださ……」
「これは何!?」
「それはですね……」
「こっちは!?」
「それは……」
***
「はあ、はあ……興味を持ってくれるのは嬉しいですが、ここまで質問攻めにされたのは初めてです」
「ごめんごめん! 面白くってつい」
「いえ、構いませんが……ところで夏さん、その右目はどうしたのです?」
「あー、これ? これ素体の頃の怪我だから治らないんだって〜」
「なるほど。そういうことでしたか。……そうだ」
こうもりは、ワタシにある物を差し出す。
「これ何?」
「眼帯です。ルーペ機能なんかを付けようと試みたのですが、上手くいかず……とはいえ、普通の眼帯としては問題なく使えるはずですから付けてみて……ってもう付けてる」
「うわーかっこいい! こうもりとお揃いのブラック! どう? 似合う?」
「ええ、似合ってますよ。それはあなたにあげましょう」
「いいのー?! ありがとう! 大事にするね!」
「気に入ってもらえたのなら、なによりです」
「みんなに見せてくる!」
ワタシは、まだ他に友達もいないのに、嬉しくてこうもりの部屋を飛び出した。
もう傷は気にならない。友達もできたし、ムジカートとして楽しくやっていけそうだ。