【ロキ・ファミリア】の団員らに見つかって確保された未来人フィルヴィスと出逢い、
フィルヴィス本人は「自身は未来人だ」と名乗り、あまり隠し事をせずに大体の事情を話したのだが、疑いたくはなくても全部を全部、そのまま鵜呑みにすることなんて出来なかった。
「おい、フィン、こんな大人数で尾行なんて…流石にレフィーヤがこの手のことに疎くても気付かれるんじゃないか?それに今【ヘスティア・ファミリア】は…」
「ああ、でも”これ”は直接【フレイヤ】の連中とは関係ない。数日前までのレフィーヤの様子を考えれば心配して着いて行くのは当然だろう?」
フィンとリヴェリアだけだったらまだ良かったのだが、レフィーヤと交流のある団員の殆どが、ついてきているような始末だ。
隠れきれていなく尾行の意味がない。まあそもそも目的地が判明している時点で尾行も必要ないのだが…ティオナとかは特に向いていないし…
「それにレフィーヤが『【ヘスティア・ファミリア】に会いに行く』と言ってから親指の震えが過去一になっているんだ。これは単純な勘だけど…きっと良い出逢いがあるはずだ」
「【ルビス】の仲間達とやらか…」
【ルビス】はフィルヴィスの偽名だ。基本的には「フィルヴィス・シャリアの親族」で通すことにしている。まあ【ロキ・ファミリア】は既に事情を知っているのであくまで大多数向けの設定に過ぎないのだが。ちなみに【リリカ】もリリルカの生き別れの姉という設定で通している。
マリーはアルフィア達の歳の離れた妹ということにしている。「ベルの叔母扱い」は全然構わないらしい。
そして竈火の館に辿り着いたレフィーヤは…
「こぉ~らぁ!ベル・クラネルゥ!説明しなさぁい!なんで【フレイヤ】と争っている貴方達のファミリアにフィルヴィスさんが所属しているんですかぁ!?というかフィルヴィスさんを【
「はあ、この頃の私は…」
「リヴェリアさんが見たらカンカンでしょうね五月蝿いったらありゃしない…おばさまが外出中で助かりました、ほらアイズも」
「あれ、私まで出る必要あるの…?」
勿論あるかないか、で言えばない。単に向こうのレフィーヤの驚く顔が見たいだけだ。他にもいるみたいだけど、まあ構わない。向こうのレフィーヤは落ち着きないな本当に…いやこちらも出会った頃はあんな感じだったか…
「レフィーヤ?他所のファミリアに怒鳴り込んでくるなんて非常識ですよ?」
「ひゃ…」
(見たことのないアイズさん並みの凄い美人!?)
「フィルヴィスが欲しいなら、私と、こちらの
「アイリア」はアイズの偽名、「レフィーナ」はレフィーヤの偽名だ。アイズの方は過去のアイズ自身に名前を聞かれた際に本名を言おうとしたが流石に不味いと気付き偽名を咄嗟に考え「アリア」と言おうとしたが、それも不味いと気付き「ア…ィリア」と発音してしまい、それ以来そう名乗っているのだ。
「アイズさん…!?とわたし…!?」
こちらのレフィーヤは頭を抱えている。過去の自分の醜態が恥ずかしいのだろう。こんな時私は殆どの並行世界で存在しないので安心する。
「ねえマリー、流石に意地悪じゃないかな?」
「…ちなみに貴女達のレベルは?」
「13です」「私は11」「9です」
私だけでこの時代のオラリオなら1人で潰せる戦力だ。というか意地悪も何もあげる気なんて欠片もないので当然である。
「私までがっ…レベル9!?」
「貴女じゃありません。私です。貴女と私はよく似ているだけの赤の他人というのをお忘れなく。フィルヴィスもです」
「…どうやら未来人というのは本当らしいですね…というかなんでアイズさんや”私”までが一緒にいるんですかっ」
「それは
「はっ!?【ヘスティア・ファミリア】が【
「どうやっても何も普通に勝ちましたけど。奇策なんか要らなかったし、というかフィンさんの頭脳でどうにかなるような戦力差じゃなかったし当時からレベル7や8、9まで普通に居ましたからね」
「フィルヴィスのレベルが12というのも聞いているのでしょう?彼女は私達一家を除けばウチで最強のエース格ですからね、そうホイホイあげられませんよ」
「ちなみにベルは不在ですよ…ダンジョンで特訓しているので…昼休憩まで帰って来ません」
「マリー…その娘は私に任せてください。現実というものを教えてあげるので」
「はあ、まあ程々にしてあげてくださいよ?同じレベル4でも向こうのリューさんほど強くはないでしょうし、彼女は…」
「はい、それじゃあベル達と同じ所でいいので」
「はいはいお昼には一緒に迎えに行くので頑張ってくださーい」
転移陣に2人を放り込んで揃って50階層に送り込む。
「さて、もうそろそろ出てきてくれても良いんじゃないんですか?【ロキ・ファミリア】の皆さん?」
「やっぱりバレバレだったか…レフィーヤ達はどうしたんだい?」
「50階層に送り込みましたウチのベルやおばさま、フィルヴィスやリリ達にこちらのベル達を鍛えさせているので、そちらに合流させました。
「世界を越えるようなことが出来るのなら同じ世界の中での転移も容易というわけか…君は【静寂】のアルフィアの関係者かい?」
「私は【静寂】の
「君達がこの世界にやって来た理由は?」
「まあ基本的には休暇とこちらのレフィーヤのランクアップが目的です。私達の世界ではダンジョンが失われて久しいですからね。基礎アビリティだけなら自己鍛錬と模擬戦で伸ばせますが、【偉業達成】のための相手を見繕うのが面倒ですからね。
偶にこうして過去のダンジョンのある世界に跳んで団員達のランクアップを図るのです。最近は大分安定してきたとはいえ、前は人間同士の戦争が増えてきてうんざりしていましたので、というか私の責任が重くなりすぎてプレッシャーが凄いから
これくらいしていないとやってられないのです」
「黒竜討伐とダンジョン完全踏破をした後の未来か…そちらにも非常に興味があるのだが…」
「あ、リヴェリアさん”それ”聞いちゃいますかあ?この世界には私やリュディ達も居ないですからね…その後に起こり得る諸々の問題は【ロキ・ファミリア】が中心になって問題対処に奔走することになりそうですが…
後はヘルメスとウラノス様と
あ、リリを使えるように仕込んでおくんでやばくなったら使ってあげてください求婚は許さないですけどね」
「人工魔石のレシピ」と「量産工場の雛形」を設計図付きで
「本当に戦力的にどうしようもないようなら私らが出張ってサクッと黒竜殺ってきてもいいんですが…もう何回も倒している相手ですし今回もそうすることも吝かではないのですけども…」
「ちなみに
まあサクッとダンジョンを機能停止させた後に黒竜も始末して、私達の世界から複数のファミリアを応援に呼んで、沸きまくっていたモンスター達を数ヶ月間掃討作業をして収めましたけどね…」
「う…それは僕達が負けてしまった世界ということか…済まなかったね尻拭いさせて」
「いえいえこちらのレフィーナも言ってましたけど所詮はよく似ているだけの赤の他人達のことですから…フィンさんが責任を感じるようなことは何もないですよ」
「私達は【フレイヤ問題】が解決したら去りますので…それまでの間せいぜい『利用出来るだけしてやろう』くらいのつもりで接して構わないですよ?」
「さて、みんな帰るよ、レフィーヤのことは向こうに任せても大丈夫だ。なんせ向こうにも【レフィーヤ】が居るからね」
「えっいいの団長…あの人達メチャクチャ強そうだけど…」
「だからこそ、だ。預け先として安心出来るだろう?」
「【
それも恐らくギリギリの勝負とかじゃない。無為な削り合いにならないように【ヘスティア】側が圧倒的だったのだろう。
「彼女がこの世界に居ないらしいのが非常に残念だ…」
──────
「こんなものですか…?レフィーヤ・ウィリディス…」
「ハッハッハァッ…つっ…強すぎるっ…」
「レベル差5…まあ私に勝てないのは当然です。その中途半端なスタイルはフィルヴィスさんの真似事のつもりですか…?」
レベル9…今の団長たちより更なる高みにいるわたし…勝てないのは当然だ。火力だけでなら一矢報いれると思っていたが…
【アルクス・レイ】は防具の性能と耐久の高さのお陰か当てても全く効かない、それ以上の長文詠唱魔法を使おうとするとすぐに出鼻を挫かれる。
ごく自然な挙動がベートさんよりも速い。圧倒的なステイタス差…ここまで彼女は魔法を一切使っていない。いや単に「速い」だけでなく全ての挙動の起こりが「
経験の差と、判断が早すぎるのだろう。ステイタスの高さだけでない。それを十全に活かせるようにしただけでここまで見違えるのか。私でも至れるのか…ここまでの高みへ…
「無理に剣術を学んでも貴女の周りにはその手本になる人間もあまり居ないでしょう。強いて言えばアリシアさんあたりが良いお手本になるかもしれませんが…
アイズさんの真似は無理があるし…だからといって近接戦闘を疎かにして良いわけでないのですが…素手の戦闘は全ての基礎、基本です。対人や稀にモンスターの中でも魔法が効かないという相手は居ます。
武器も必ず手元にあるとは限らないです。その時最低限自衛出来る程度の腕がないと本物のお荷物になってしまいます。」
向こうのフィルヴィスは心配そうにこちらを眺めている。もう二度と会えないと思っていた人だけに嬉しいはずなのにこの情けない状況が嬉しい気持ちを打ち消してしまう。
「これは貴女の知らない仲間の受け売りなのですが『冒険者は
細かい武器戦闘技術はその次で構わないです。貴女は基礎もお粗末すぎてフィルヴィスさんの真似なんて出来る段階にもありません。ステイタスに寄りかかっているだけの論外の三流共と大差ないです。『魔法があるだけそいつらよりマシ』って程度でしょう。」
少し離れたところではベル・クラネルがそれより成長した恐らく同じ【ベル・クラネル】に
彼のほうが白兵戦に遥かに慣れており、自分は今まで殆ど前に出る機会がなかった。その差だろう。尤も彼女達からすれば向こうの大人のベル・クラネルはともかく、こちらのベル・クラネルはまだまだらしいのだが。
それから昼に迎えが来て全員で竈火の館に帰還する。昼食中にレフィーヤは思い切って
「あのう…もう黒竜も倒してダンジョンも消失してしまったらしいというのになんでまだ高みを目指せるんですか…?」
「確かにもう武力はあまり必要ない世界なんですけどね、他国同士の争いなんてレベル6が2人居れば収められますし…私の親友達が遥か高みに居るから『せめてレベル10までは』と思って鍛えているんです」
「魔法ちっとも見せてくれませんでしたけど…私と同じ魔道士なんですよね?」
「ええ、そうですよ。まあマリーの
「比較対象が悪すぎるだけで全然大したことあると思いますよ」
「
「黒竜とベヒーモスとリヴァイアサンが同時に出てきても瞬殺出来ると思う…」
(このベル・クラネルの姉という超美人さんがそこまでヤバい人なんですかぁ!?)
「まあ私の今の強さもマリー達あってのお陰ですからね…貴女もベートさんに師事なんてトチ狂ったことを考えていないでもっと周りを見てご覧なさいな」
「うーん、といってもレフィーヤの参考になる人もうあんまり居なくないですかぁ?魔法だけならリヴェリアさんに師事すればいいけど他のことにまでなると…」
「私がみっちり鍛えるので大丈夫です。少なくとも自分のスタイルを確立出来るようになるまでは…で、そのう、マリーには後で…」
「はいはい、【フレイヤ】問題解決したら私もそっち見ますよ。いっそ生っちょろい【フレイヤ】ごと【ロキ】もファミリアごと面倒を見てあげても良いかもしれませんね」
「マリー様
また、なのである。お節介焼きのマリーは自分のファミリアの団員たちにするように並行世界の他所のファミリアでもお構いなしに鍛えてしまうのである。勿論【ヘスティア・ファミリア】と敵対する可能性が低くなってからではあるのだが…
「まあ、もう慣れましたし構いませんよ。私自身貴女のそういった部分に助けられてここまで強くなれたのですから…皆多かれ少なかれマリー様のお世話になって引き上げてもらったのです。アルフィア様ですらそうですからね」
午後になるとロキ・ファミリアの幹部陣が押しかけてきて纏めて50階層にやって来た。ちなみに昼食はレフィーヤも頂いたがメチャクチャ美味かった。
「なぁーにが『フィルヴィスさんの遺志を継ぐ』ですかぁ!その答えがフィルヴィスさんの下手糞な真似っこですかぁ!?貴女禄にフィルヴィスさんのこと知らないでしょう!?
本人が死の間際まで何を考えていたのかなんてそんなモン、こっちのフィルヴィスさんですら理解りませんよっ!」
レフィーナの苛烈な鍛錬は続いた。もう既に【ロキ・ファミリア】より【ヘスティア・ファミリア】の在籍期間の方が長くなる彼女はすっかり染まっていた。戦闘好きの物騒な
全員が魔法剣士で近接戦闘もクソ強いため、なんとか着いて行くために試行錯誤した結果、身に着いたのが今の彼女の近接戦闘技術なのである。【「自分に厳しい」努力家】ということは皆も知るところではあったが、
「自分に厳しい」の方向性がちょっとおかしくなっているのはご愛嬌。普通は自分自身と出会うことなんてまずないのである。
「貴女のそんな下手糞な猿真似なんて誰も望んじゃいませんよっ”それ”だけはこちらのフィルヴィスさんも同じだったと自信を持って言えますねっ貴女の下らない回り道の言い訳にフィルヴィスさんを使うなっ!」
ボコボコにしながらも手も口も決して緩めない。リヴェリアやアイズ達はレフィーヤの知らなかった一面に驚いていた。
「荒療治にも程があるけど…自分自身の声だからこそ一番届くかもね…」
「レフィーヤ…概ねレフィーナの言う通りだと思うが、その…こちらの私もお前にそれだけ想われていたのなら絶望だけでなく、確かな幸せも感じ取れていたと思うぞ?私がお前と出逢った日…確かに救われたような気持ちを抱いていたのだから…」
仰向けに倒れ伏していたレフィーヤにフィルヴィスから声がかかる。その言葉でレフィーヤからぶわっと涙が溢れる。
「わだじっフィルヴィズざんのだすげになれでまじたがっ…」
「ああ、絶対なっていはずだ…そこまで想ってくれるのは嬉しいだろうがお前の足枷になることは私も望んでいないだろうよ…だからお前も自身の道を見つけて自分自身の道を歩め…」
この一件で完全に立ち直ったレフィーヤは、「自分自身を教材にして自分に勝つ」ことを目標にした結果成長補正スキルに目覚め、急速な成長を遂げ、【ヘスティア・ファミリア】に期限付き移籍をして、
【フレイヤ・ファミリア】相手に大暴れをするのだが、やべー連中の存在を感じ取ったフレイヤが「都市魅了」を思い留まったことにより【派閥連合】が組めなくなり、結局未来人達を何人も送り込むことになり、影が薄くなってしまったのはご愛嬌である。
小ネタ
偶に変身能力をフル活用して他所のファミリアごっこをやる。
一番好きなのは
アリーゼ役はマリー、輝夜役は亜夜、ライラ役はリリ、リュー役はそのまま本人である。
【暗黒期】に本人達に直接会ったことによりアリーゼの魔法も使える上に皆それぞれの解像度も高くバッチリである。
リューという素晴らしい人材を自身の命を捨てて生き残らせ繋げてくれたアリーゼパイセンはマリーにとっても超尊敬する先達の1人。
普通に仲良くなりアリーゼにとってもマブダチの1人である。自分達の姿を借りる件については「悪いことに使わなければオールオッケー」とのこと。
これだけだとアルフィアやベルが仲間外れになるので「絶対悪ごっこ」もある。ベルはエレボス役で、他は前の通り。
ベル君のアルフィアの呼び方
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おばさん
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お義母さん