おっちゃんと一緒   作:んごのすけ

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side イズナ
第76話


 

鳥の羽音で目が覚めた。

視界に映った天井は記憶にないもので、しばらくぼんやりとした後イズナは自身が今布団で横になっていることに気がついた。

 

「……ここは」

 

襖が締め切られた狭い部屋に、反対側には小さな窓が一つ。部屋の出入りは襖側からしか出来ない。

起きあがろうとして怪我を治療中だったことを思い出す。無理やり起きてはまた痛めてしまう。

眠っていた部屋の景色にも見覚えはなく、周囲に人の気配がないか耳をすませ探りながらイズナはここがどこかを考えた。

 

(ここはどこだ……俺はあの時……まさかあいつらに捕まったのか?)

 

敵対勢力に捕まるとはとんだ失態である。

イズナはため息をつきたい気分であったが、状況を悲観するのはまだ早い。着せられていた寝巻きの浴衣を胸元だけ少しはだけさせてみれば、胸囲は綺麗な包帯を巻かれていた。つまり誰かが取り替えているということだ。

 

(……生かしておく必要はないはずだ。俺をここに置いたのは千手柱間か?どれくらい気を失ってたんだ……)

 

イズナは両手を握る動作を繰り返した。特に痺れはない。ゆっくりと起き上がり、痛みをなるべく感じないよう慎重に立ち上がった。

 

(……逃げよう)

 

目が覚めたとなれば待っているのは尋問だろうか。イズナがいなくなってからどれほど時間が過ぎているのかもわからない。尋問したいのはこちら側である。

イズナはそっと襖に耳を当てた。人が来る気配はない。窓から一気に外に出たいが、負傷した状態ではいささか厳しい。

イズナが身を寄せていた襖から離れようとした時、いきなりそれは開かれた。気配もなく現れた突然の来訪者と目が合ったイズナは後ずさる。少しの間を置いて、来訪者は心底驚いたような表情で口を大きく開けて固まった。イズナは腹立たしさを醸し出しながら、来訪者の方をきつく見据えた。

 

「ーーあ、開けるなら声くらい掛けろよッ、千手柱間」

「……ス、スマン!」

 

 

 

怪我人が動くなと、柱間によってイズナは布団の中に押し戻された。

仕方なくイズナは言われるがまま布団の上に座れば、様子を窺ってくる柱間の視線に耐えきれず何の用があってここに来たのかと先に目的を尋ねた。

 

「……それで、俺のことをただ見に来たってわけじゃないだろう。何しに来たんだ」

「実はただ見に来ただけなのだが……」

「……」

「驚かせるつもりはなかった。すまんな、イズナよ。傷は痛むか?」

 

柱間は倒れたイズナのことが心配で、本当にただ様子を見に来ただけのようだった。そんなわけないだろうとイズナは疑って掛かるが、柱間は困ったように頬をかくだけである。

 

「……お前に心配される筋合いはない」

「顔色も酷かったが……うむ、良くなったようだな! それで、目が覚めたばかりだがイズナよ、今までどうしていたか聞いても良いだろうか?」

「……」

 

イズナは返答に困り黙り込んだ。柱間の聞き方からして、まるでイズナが暫くいなくなっていたかのように聞こえる。

そもそも元の時代に送り届けられるまで不穏な事態が起こっていた。何故柱間はこんなに親しげに話しかけてくるのか。イズナが目標としていた時間軸に辿り着けていない可能性がある。イズナも時空間忍術に詳しい訳ではないが、時代を行き来するような術が単純なものであるはずが無い。ほんの少しのトラブルも、波紋が広がり大きく事態が変わることがあるかもしれないのだ。

 

「まるで俺が居なくなったことを知っているみたいな言い方だ。逆に聞きたい、千手柱間。どうしてそう思った?」

「……どうしてとは? ううむ……そうだなぁ……いつからなのか正確な時期は俺達も分からんのだが、ある時からイズナの姿を見ていないと扉間がな、気付いてだな」

「扉間って……というか、さっきから……俺の名前を気安く呼ぶな。親しい仲でもないだろ」

「ッ⁉︎」

 

自然とイズナの名前を呼ぶ柱間に嫌悪感を抱き、眉を顰めながらきつい口調でそう言った。その言葉を真正面から受け止めた柱間は心底傷ついた顔をして俯いてしまう。

 

「そ、そんなにショックを受けなくても」

「マダラの弟だと思い、馴れ馴れしかっただろうか……」

「馴れ馴れしいと言うか……昔から会っていた兄さんならともかく、俺はまともに話したことなんて無かっただろ。や、やめろ、泣くなよ、こんなことで。千手の頭領のくせに」

 

こんなやつが将来兄と里を創り統治していくことになるのかと思うと不安しかない。

 

「……」

「う、別にいいけれどさ……」

「そうか!」

「うわ。復活した」

 

イズナが仕方なく認めてやれば、ぱっと表情を明るくした柱間に心底引いた。

 

「そうなると……うちはとは停戦の条約を結んだことは知っているか?」

「停戦? まてよ、どことどこが?」

「千手とうちは。俺とマダラで取り決めを交わした」

「はァ⁈」

 

おっと心の声が漏れてしまったとイズナはすぐに口を結んだ。何があったらこうなるのか。

柱間は漏れ出たイズナの本音に少し悲しそうな顔をしたが、すぐに持ち直した。

 

「まあ、双方色々とあったがな!」

「そりゃ……そうだろ」

「……その様子ではやはり知らなかったようだ。姿が見えないことをマダラに聞いてみても何も教えて貰えなんだ。俺も、マダラの弟であるお前が勝手にいなくなるように思えないと何度か捜索はしてみたが……昨日はどうしてあの場にいたのだ? それにその怪我はどこで……治療はされていたが、軽いものでは無かったぞ」

「……」

 

怪我についての言い訳を考えていた途中だったのもあり、イズナは返答に困った。適当に誰かにやられたと言うには、イズナもそれなりの実力者だ。そんな手練れがゴロゴロいるわけもない。小さな怪我ならばともかく、そう簡単にまともに動けないような深傷を負うことはないのだ。千手とうちはの間で停戦の条約を交わしているのもある。うかつにどこか名の知れた忍の名を上げて余計な事態を引き起こすのは面倒だ。

 

(正しい選択が何かなんて、わかるわけない。あの里のあり方が完璧に正しいとも俺は思わない、けど……悪い結果に運ばないためには)

 

イズナは意を決して柱間の目を見据えた。

 

「実は俺は……」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「それで馬鹿正直に家出してきたと言ったのを信じたのか兄者は」

「あれは嘘は言っていない目だった!」

「はぁ……こんな時に家出する馬鹿がどこにいる。ましてやあの男がだ」

 

扉間の部屋に柱間がやってきたかと思えばイズナと話してきた事を伝えられた。かなり消耗していた様子からもう暫く眠っているかと思ったが、思っていたよりも早く目覚めたようだ。

 

「マダラと何かあったのかも知れん。先程だが、様子を見に行って良かった……危うく逃げ出すところだった。あの状態でどこかに行っては、また倒れてしまうかも知れん」

「怪我の原因はわかったのか」

「数日前に小競り合いに巻き込まれたとか。この辺りでは特に何も無かった気はするが……うーむ、他族との関係はどこも似たり寄ったりだしな」

「……うちはイズナが小競り合いに、か」

 

扉間の反応は疑わし気だ。

 

「扉間よ、イズナの目も覚めたことだ。明日にでもうちは側に接触を図り、なるべく早く引き渡してやりたいと思っているんだが」

「……書状は?」

「うむ、これからしたためるところぞ」

「停戦には漕ぎ着けたが、事の運びは慎重に行うべきだぞ兄者」

「わかっている。俺は、マダラにイズナの姿を早く見せてやりたい、ただそれだけだ。弟の無事を知れるだけでも心持ちは全然違うものぞ」

 

一旦のところ、千手とうちは間での争いは落ち着きを見せているが、それでもいきなりトップの柱間が訪れるわけにはいかないだろう。マダラと会うとなれば族長同士の対談になってしまう。今はあくまで停戦しているだけであり、同盟を組んだわけではない。いまだ敵同士ではあるのだ。気軽に会いに行ける仲ではない。

 

「……兄者は彼奴が脱走しないように気を配っていろ」

「ああ。扉間、任せたぞ」

 

下手をすれば行方不明になっていたイズナを千手が捕らえていたと疑われる。

扉間の怪我は手当がされているだけで完治はしていないが、柱間の言葉を代弁するのに扉間以外に適任者は他にない。武装していくわけではない。あくまでイズナを保護したと伝えるだけ。いきなり訪れる事になるため、適当に手土産を見繕うべきかと二人して今から用意できそうなものを考えた。

 

 

 

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