千文字の短編ショートショート
ここは天国、雲の上。
転生する前にスキルガチャを回す。
ガラガラ ポン!
パンパカパーン!ファンファーレが鳴り響く。
SSR『Hが世界一上手いテクニック』を手に入れる。
神様は「おめでとう」と言った。俺は「ありがとう」と答えた。
これはなかなか楽しみだ。こうして俺は地上へと降り立った。
※ ※ ※
平凡なサラリーマン夫婦の家に1人っ子として育つ。
幼少期に『Hが世界一上手いテクニック』が役立つことは無かった。まぁ当然だろう。
高校生活。周りが色めきたってくる。けれど俺は彼女ができない。何、まだ慌てるような時間じゃない。
大学時代。サークルに複数所属、彼女作りをがんばるがコミュ症であると気が付く。そういえば高校時代から女の子と会話してない。何、まだ慌てるような時間じゃない。
親の事情で大学中退。いい機会なのでバイト代で放浪の旅にでる。旅先での出会いを期待する。結果?
ないない。
高卒で就職もできずフリーターで食つなぐ。彼女?何それ美味しいの?
20代半ば。そろそろ真剣に彼女が欲しい。まずは仕事だ。派遣社員になる。何、まだ慌てるような時間じゃない。
28歳。コンビニでマンガを買うとカワイイ店員さんに「このマンガ面白いですよね」と話しかけられる。コンビニ通い詰める。通報される。解せぬ。
30歳で転職する。派遣社員から派遣社員になる。時給が50円あがる。『Hが世界一上手いテクニック』が活躍する場面は未だ訪れないまま魔法使いになる。
40歳。母に「孫の顔を諦めたほうがいいわよね?」とある日突然言われた。いつ慌てる時間を過ぎたのか。
49歳。一年発起して高級風俗に行くことを決めた。一度は試したいSSRスキル。
眉の濃い垢ぬけない子が出てくる。「今日が初めてなんで」と言われる。俺も言いたかった。
途中で泣かれて未遂に終わる。金だけ清算して店を出る。
欄干で川を眺めていると警察にひきとめられた。
60歳。親を見送る。
90歳まで無駄に長生きする。
※ ※ ※
ここは天国、雲の上。
俺は神様に文句を言った。
「せっかくのスキルなのに使う機会がなかったじゃないか」
「君のスキルは?」
「『Hが世界一上手いテクニック』です」
「どれどれ」
神様が帳簿をみて俺の人生を確認する。
「ふむふむなるほど。そのスキルの持ち主は真に幸いなり。生れもって右手に恋人を宿しているのだから」
「・・・」
「ゆえになかなか恋人が作れない。必要ないから」
「・・・」
俺はじっと右手を見つめる。
その右手で転生するためのスキルガチャを回す。
ガラガラ ポン!
パンパカパーン ファンファーレが鳴り響いた。
SSRスキル『Hが世界一上手いテクニック』が出た。
俺は神様を睨む。
神様は目線を合わせない。
(了)
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