虹夏ちゃんのギターヒーロー推し設定が原作において影も形も見当たらなくなってしまっていたので、自分なりの解釈と、ぼ虹要素を詰め込んでお送りしました。百合要素は薄いです。あくまで友情。
ぼっちがライブ時に来ている衣装は原作3巻の3話目の扉絵のイメージで書いています。


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愛を取り戻せ!

虹夏side

 

 それは平穏無事にSTARRYでのバイトが終わり、私こと伊地知虹夏が店のテーブルでお気に入りの動画を見ていたときのことです。

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「うわああああああああああああああああ!!?」

 

 急に後ろから断末魔を叫ばれました。

 

「なになになに!? ぼっちちゃん!? 急に真後ろで叫ばないで! っていうか顔が過去最高にやばいんだけど!!」

 

 一体どうしたって言うの!?

 ここ最近は確かに奇行は起こしていてもこれほどヤバイのは無かったっていうのに!

 

「にににに、ににににに虹夏ちゃ、ん。そそそ、それ、は、あ、あああ」

「それ? え? どれ?」

「その、スマホから再生されている、動画、は……」

「あ、ああ。これ?」

 

 ぼっちちゃんが何故か慄いてる動画、それは最近観るようになったオーチューバーで活躍している女性ギタリストの動画だった。

 

「これ最近オススメに出てたから見るようになってさー。ゴスロリ系の服着てて最初はコスプレメインなのかなって思ってたらめちゃくちゃギター上手くてさ。しかも演奏前は可愛いのに演奏が始まると顔つきも変わってかっこいいんだよねー」

 

 元々演奏が上手い人の動画を観るのが好きだったしこれだけ上手かったらそりゃ観ちゃうよ。ギターヒーロー見つけたのもそういう経緯だし。

 でもそれを説明してもぼっちちゃんの絶望顔は収まらない。10秒後に世界が終わると聞かされてもこんな顔はしないだろう。

 

「そ、そんな、でも確かに最近は……。うっ、うっ、うううううううう……」

「ちょちょちょぼっちちゃん!?」

 

 絶望顔で慄いてたと思ったら今度は蹲って頭を抱えだした。

 やばいやばいやばい、SNSを勧めた時だってこれほどヤバイ状態になったりしなかったのに。過去最恐のぼっちタイムだよ。

 

「うっ、ううう……、うわああああああああああああああ!!」

「ぼっちちゃああああああああああああん!!?」

 

 蹲ってたと思ったら今度は猛ダッシュでSTARRYを飛び出した!?

 流石にあの状態はマズイと思って急いで外に出たけどもうぼっちちゃんの姿は見えなかった。なんでこういう時の足は早いのかなぼっちちゃんは!

 う、うーん。ちょっと心配だけどまっすぐ家に向かってるよね?

 

「伊地知先輩、帰る時に駅に寄って駅員さんにギターを背負った上下ピンクジャージの奇妙な人が来なかったか聞いておきますから。もしそれで見かけてなかったらまた連絡しますので」

「そ、そう? じゃあ喜多ちゃんお願いね?」

 

 そう言って一礼して駅の方角へ帰っていく喜多ちゃん。まあ極限状態のぼっちちゃんが向かう先って言ったら家の押入れの中だし大丈夫でしょ。

 しかしさっきのぼっちちゃんはやばすぎたなー。一体どうしたんだろう。

 そして喜多ちゃんを見送ってSTARRYの中へ戻ると

 

「くっくっくっ……、ぶあっはっはっはっは!!」

「ふふっ……! うふふふふふっ……!」

「ぷぷぷ、ぼっちウケる」

 

 爆笑してるお姉ちゃん、PAさん、リョウがいた。

 

「ちょ、ちょっと何三人とも笑ってるの?」

「い、いや、ひっ、ひひひ……、ぼっちちゃんはホント可愛いなと思ってさ」

「ふふふふ……そうですねぇ」

「何言ってるの? めちゃくちゃやばかったじゃん」

「ふっ、罪な女だな。虹夏は」

 

 そう言って帰っていくリョウ。何なんだ、訳がわからない。

 

 

 

 

ぼっちside

 

 あれからSTARRYを飛び出した私は家に帰ってきて押し入れの中で蹲っていた。

 なんてことだ。まさか虹夏ちゃんが、ギターヒーロー以外のオーチューバーのギタリストを好きになっちゃうなんて!! いやそれは虹夏ちゃんの自由なんだけれども!

 でも確かによく考えてみたらここ暫く虹夏ちゃんからまともにギターヒーローの話題を聞いたことがない。それこそあの宅録の時が最後じゃないか? 他にあるとしたら知名度アップのためにギターヒーローの名前は使わないとかだ。

 

「よく考えたら最近作詞やバンドの練習が忙しくて更新頻度も落としちゃってるんだよね……」

 

 うううううう……、どうしよう……。

 私みたいなミジンコ、いやプランクトンが虹夏ちゃんの一番のギタリストでいたいなんて思うのは身の程知らずなのは分かってるんだけど、分かってるんだけど! でも! でも虹夏ちゃんが他のギタリストに夢中になっちゃうのは嫌だ!

 

「どうしたらいいんだろう……。更新頻度上げても意味がない気がするし……。……ん?」

 

 ロインだ。それも3件も。

 誰だろうと思って見てみると、それはリョウさん、喜多ちゃん、店長さんだった。

 

「まあ気持ちは分かる、頑張れぼっち。普段奢ってもらってるし気が向けば手伝ってやろう」

「協力してほしいことがあったらなんでも言ってね、ひとりちゃん!」

「可能な範囲でだけど手伝えることがあれば遠慮なく言いなよ」

 

 うう、有り難い。でもリョウさん、あれは奢りじゃなくてお金を貸してるだけです。

 でもギターヒーローの活動の話だし協力してもらおうにもあんまりお願い出来ることないんだよね……。

 それでも何かないかとギターヒーローの視聴者のコメントを見てみると気になるコメントを見つけた。

 

『ギターヒーローさんの生放送見てみたい!』

『ギターヒーローさん! 生放送とかしないんですか!?』

 

 生放送か……。興味はあるけどどうせ殆どまともに喋れないし今まで手は出してこなかったんだよね。

 それにまともに喋れずに演奏するだけなら普段の動画の投稿と変わり映えしないし、それに下手したら顔が映って視聴者の皆に不快にさせたで賞で八つ裂きにされかねないし……。でも憧れはあるんだよね。

 そしてもう一つ気になるコメントが見つかった。

 

『生放送も見てみたいけどギターヒーローさんのライブなんて見たら絶対惚れちゃう!!』

 

 ライブ……。でもそれは私がギターヒーローの正体を明かさないと無理なんだよね。

 でも結束バンドの一員として演奏するのも大好きだけど、一度でいいからステージの上でギターヒーローとして思いっきり演奏してみたいって気持ちはあるんだよなあ。と言ってもそんな大観衆の前で一人で演奏なんておっかなくて無理な話だけど。

 慣れてる人たちの前でだけなら出来るかもしれないけど。……ん?

 

「そうだ、大勢の人の前が無理なら……、それにどうせなら一緒にやっちゃえば動画を見てる人たちにも……。うん……、うん!」

 

 さっき店長さんも手伝ってくれるって言ったし、あ、後リョウさんと喜多ちゃんにも協力してもらおう!

 よーし!! 虹夏ちゃんのギターヒーローへの愛を取り戻すぞ! おー!!

 

 

 

 

 

虹夏side

 

今日はSTARRYの定休日。大体こういう日は何も予定が無ければ家の中の普段掃除が出来てないところの掃除までやってしまったりするんだけど、今日は

 

『次の定休日、18時にSTARRYに来てください』

 

 というぼっちちゃんから珍しいロインが来ていた。

 なんだろう、STARRYでのお仕事関係ならぼっちちゃんからじゃなくてお姉ちゃんから来るはずだよね?

 皆目検討が付かないままSTARRYの扉を開けると、そこにはリョウ、喜多ちゃん、お姉ちゃん、PAさんが集まっていた。

 

「お、来たか虹夏。ちょうど準備が終わったところだよ」

「どういうこと? 何かするなら言ってくれれば手伝ったのに」

「バカ言え。観客に仕事させる店なんかある訳無いだろ」

「観客? 誰が?」

「お前だよ」

 

 どういうこと?

 誰かのライブのチケットなんて買ってないし、そもそも今日は定休日だからライブなんてあるはずないのに。ていうかよく見るとステージの後ろの壁のSTARRYの看板が布で隠されている。なんで?

 全く理解が追いつかないままでいると

 

「伊地知先輩! 今日は有名ギタリストが先輩のためにライブしに来てるんですよ! 楽しみですね!」

「もうすぐ始まるよ。準備は万全」

 

 そう言いながらリョウと喜多ちゃんがこっちに来た。

 有名ギタリスト? 私のため? どういうことだ?

 

「あの、PAさん。どういうことなんですか」

「うふふ、私は殆ど野次馬なので。それにもうすぐわかりますよ」

 

 ダメだ、全然情報が更新されない。

 そう思っているとお姉ちゃんがステージの前に近づく。……あれは、ノートパソコン?

 そしてお姉ちゃんがおそらくキーボードを少し触ると同時に、スマホからオーチューブの通知音が鳴る。

 

「ええっ!?」

 

 そこに表示されていたのは

 

『ギターヒーローゲリラ生放送ライブ、まもなく開始です』

 

 どういうこと!? ギターヒーロー、っていうかぼっちちゃんが生放送!?

 めちゃくちゃ観たい!! なんでよりにもよってこのタイミングで、って考えたあたりでふと気付く。

 今日は有名ギタリストがライブ……、通知がお姉ちゃんが操作したのと同時……、そして私のため……。

 もしかしてこれって……!

 

「お、来たな」

 

 ステージの横から現れたのは、肩が出ている黒のドレス、見覚えのある黒いギター、桃色の髪……でも後ろで束ねられている。そして黒いマスクで顔が半分隠れているけど私もよく知っている顔。

 そう、私のバンドに所属するリードギター、後藤ひとり、またの名を、ギターヒーローという私の憧れのギタリストだった。

 

 

 

 

 

星歌side

 

――二週間前――

 

営業終わりのことだった。

 

「あ、あの、店長さん。少しお願いがあるんですけど……」

 

 な、なんだ? ぼっちちゃんがモジモジしながらお願い事?

 もしかして、もしかしてなのか? いやしかし私は31歳で、ぼっちちゃんは17歳。大人として考えればちゃんと断ってあげるのが正しい大人の対応だ。

 だがしかし私達はロッカーだ。常識に囚われているなんて全然ロックじゃない。

 ……ふっ、いつかぼっちちゃんが虹夏と付き合って私の義妹になってくれないかと思っていたが、まさか虹夏の義姉になっちまうとはな。

 いいだろう、私も経験は多くはないが大人の女だ。ぼっちちゃんが安心して身を委ねられるように、今晩は優しく可愛がってやるぜ子猫ちゃん。

 

「あの、今度定休日にステージを貸していただけないでしょうか?」

「ちっくしょおおおおおおおおおおおお!!」

「え!?」

 

 

 

 

 

 

「すまん、つい取り乱しちまった」

「い、いえ……、あの、大丈夫ですか? 口から血が」

「大丈夫。自分への戒めだから」

「はあ……」

 

 甘美な妄想から正気を取り戻した私は自分に一撃喝を入れて改めてぼっちちゃんの話を聞いていた。

 

「で、ステージを貸してほしい? なんでまた?」

「あ、あの、私が個人で活動してるギターヒーローなんですけど、生放送が観たいってコメントが結構多くて……、そ、それで生放送やってみようかなって思ったんですけど、折角なら押し入れじゃなくてしっかりしたところでやりたいなって思って……」

「ふーん」

「そ、それと、あの、ま、負けたくないなって……」

 

 ああなるほど、あの時のこともあるってことか。

 確かにギタリストが最も輝く瞬間はステージの上でギターを掻き鳴らしている時だ。ステージの上でやれば動画的にも、あいつにもカッコイイ姿が魅せれるだろうな。

 

「なるほどね、まあ私としてもぼっちちゃんみたいな人気のある配信者にライブしてもらえるなら有り難い話だ。STARRYの宣伝にもなるし」

「あ、あの、その件なんですけど……、ライブハウス名を伏せさせてもらうことはできないでしょうか……」

「え!?」

 

 な、なんで? 私のメリットなくない?

 

「あの、本当に失礼なこと言ってるのは分かってるんですけど、で、でもそれだけは出来ないんです! せ、説明は出来ないんですけど……、でもごめんなさい、名前は出せないんです……」

 

 …………、ハッキリ言って、この話を受ける理由がない。

 休みの日に限定的にとはいえ店を開ける、宣伝はNG、普通にライブするための料金を払ってもらっても割に合わない。ふざけた話だ。

これでこんな話を受けるライブハウス経営者はいないだろう。いくらお気に入りのぼっちちゃんからの頼みごととは言えSTARRYは私の信念であり、人生そのものだ。好感度稼ぎに使うような真似は死んでもしたくない。

 だがしかし、ぼっちちゃんがこうも真摯に頭を下げてまで宣伝を断る理由、私には分からないが、何となくわかる気がする。そしてそれはとても尊いものだと、何となくそう思った。私の信念を、曲げても良いと思うほどに。

 

「ふー……、3つ条件がある」

「はっ、はいっ!!」

「1つ目、最低限の音響のセッティングはやってやる。だが照明などに関しての使用は禁止だ。そんな金は使えない」

「はい!」

「2つ目、今度撮影会するから写真を撮らせろ」

「はい! ……はい!?」

「これは条件であり私への報酬だ。文句あるか?」

「な、ないです!」

「そして3つ目。……あいつが惚れちまうくらい最高にカッコイイライブをやれ。以上だ」

「……! はい! が、頑張ります!!」

 

 

 

 

 

 そして今、ぼっちちゃんはステージの上に立った。

 しかしえらく気合の入った格好だな。写真を撮っておこう。

 

「ほ、本日は告知も無く急な生放送になってしまい申し訳ございません! 個人的な理由になりますがサプライズ的な形にさせて頂きたくゲリラ生放送となりました! 今回は名前は伏せさせていただきますがいつもお世話になっているライブハウスに協力して頂いてます」

 

 ふむ、緊張はしてるけど心の準備は出来てたのか割と普通に喋れてるな。顔や体が崩れるみたいなことは無さそうなのは一安心だ。あんなことが放送中に起きたら放送事故もいいところだ。

 

「ごご、ご要望が多かったので今回は意を決して生放送とさせていただいてますが、わ、私はしゃべるのが得意ではないので、結局いつも通りの形になると思いますがご容赦ください。それではリクエストを頂いていましたので何曲か弾いていきたいと思います。よろしくお願いします」

 

 コメントがいくつかつきはじめたな。急な生放送なのにかなりの数。流石はギターヒーローだな。

 

『ギターヒーローが生放送してる!!』

『マジかよ! マスクしてるけど顔初めて見た!』

『マスクしてるから可愛いかどうかはわかんないな』

『今日はピンクジャージじゃないんだな』

『てか胸大きくない?』

『おっぱいおっぱい!!』

 

 ……ぼっちちゃんがコメント見えない位置で本当に良かった。見えてたらめちゃくちゃになってたところだ。

 そしてぼっちちゃんがギターをいつもの独特な姿勢で構える。……分かる。結束バンドで弾く時とは全く違う雰囲気。世界には自分とギターしかいない。そう言わんばかりの独りよがりな、だけどそれがきっとぼっちちゃんの本気の姿なんだろう。

 

 そして始まるぼっちちゃんのソロライブ。

 演奏しているのはまあ有名な楽曲だ。だがただコピーしているだけでなく要所要所にアレンジを入れて自分自身のものにしている。

 ……ハッキリ言って圧巻だ。私もかつてはバンドマンとしてリードギターを担当し、レーベルではあったが有名なライブハウスにお呼ばれもして結構知名度のあるバンドを組んでいた。

 だがぼっちちゃんのこれは、そんな私から見てもレベルが違う。全盛期の私でもこれほどは弾けない。

 今となっては和解したがあのぶりっこメルヘンライターはかつて、ぼっちちゃんはもっと上で活躍できる人間だといった。もちろんぼっちちゃんの性格を知る私たちからすればそれは難しいと思う。が、実力『しか』知らない人間からすれば正当な評価だ。

 ぼっちちゃんの動画はいくつか観たことはあるが、やはり生演奏は全くの別物だった。隣で聴いている虹夏もさっきまで困惑一色だったが、今は完全に聴き惚れている。

 

 曲の紹介などを挟みつつ、4曲目も終わり、5曲目。話ではこれで最後だと聞いている。

 てかさっきからスパチャが止まらないんだがこれ大丈夫か?

 

「そ、それでは次が最後の曲になります。……その前に少しだけお話を」

 

 お? 最低限しか喋らないと思ってたが意外だな。なんだ?

 

「わ、私は今、とあるバンドでリードギターをしています。そこでギターを弾くのもすっごく好きなんです。でも、ギタリストの方なら分かっていただけると思うんですけど、ギターボーカルもやってみたいなって気持ちもあります」

「や、やっぱりギタリストなら絶対に一度は憧れると思うんです。バンドの花形として、一番前で歌を歌って輝くのって。でも私はやっぱり怖いし、そんなこと出来ませんでした」

「で、でも今日は、私のライブです。だから……だから……」

 

 え、嘘。マジで?

 虹夏も、リョウも、喜多もカメラに映らないギリギリまで近づいている。

 

「……聴いてください。転がる岩、君に朝が降る」

 

 演奏が始まる。この原曲はそんなに聴き込んでいるわけではないが聴いた頃はある。記憶の中にある原曲と比べてもイントロの時点でやはり結構アレンジが入っている。

 

 そしてぼっちちゃんが歌い始める。

 

 やはり喜多とかと比べると声の張りが足りない。だが、透明感のある声をしている。

 少し声が弱々しいが、曲が進むほどに声に熱が篭っていくのを感じる。

 耳にスっと入ってくるような優しい歌声だ。ぼっちちゃんの声って感じがして安心する歌声。

 Cメロも終わり、曲は終盤へ。

 歌い始めの時と違って声も出てるし感情も篭ってる。弱々しさも感じない。

 きっとこれはギターヒーローのファンにとって伝説のライブ生放送になるだろう。ならない訳がない。

 

 そして曲が終わり、ぼっちちゃんは頭を下げ一礼し、顔を上げた。

 

「ありがとうございました」

 

 そこには全てをやりきった様な満足感に満ち溢れた、満面の笑顔をを浮かべるぼっちちゃんがいた。

 

 …………ん? 満面の笑顔……?

 あっ!!!!!

 

「ぼっ……、ひっ……、ギターヒーロー! マスク! マスク取れてる!!」

「えっ? ……えっ!?」

 

 慌てて手で顔を隠すぼっちちゃん。

 やば! 視聴者の反応は……!

 

『可愛いいいいいいいいいいいいいいい!!』

『ウッソだろ。天使じゃん』

『こんなんスパチャ止まんねえよ』

『え? ギターが神で体はドスケベで顔が可愛いとか反則では?』

『やばやば』

 

 やべえ!!

 

「とにかく締めて!」

「あ、あばばばばば……! こ、今回はこれまでです! ありがとうございました!!」

 

 まさに伝説のライブ生放送になってまったな……。

 

 

 

 

「それで何でマスク取れちゃったの?」

「うー……、今日来る途中で奇跡的にマスクが木の枝に思いっきり引っかかったりしたから多分それで切れ目が……。もう二度と生放送しません!!」

「ははは」

 

 まあマスクが取れたのが最後の最後だったのは不幸中の幸いだったな。あれなら編集して投稿することも出来るだろう。

 

「さてと、今日は泊まっていきなよぼっちちゃん。疲れただろ? 虹夏がぼっちちゃんの分の唐揚げも作ってるって言ってたしさ」

「唐揚げ……! いただきます」

「では私もご馳走に……」

「あー! 私も食べたいです!!」

「アホ、そんなに量ねえよ。リョウと喜多は帰れ」

 

 ブーブー言いながら身支度を整ええる二人。

 そんな二人にぼっちちゃんが、

 

「あ、今日はありがとうございました。衣装選んでくれたり、髪のセットとか、メイクとか、助かりました! 今度改めてお礼させてください!」

「じゃあ今度デートしましょうね!」

「美味いもん奢ってくれ」

 

 そう言って二人はSTARRYを後にした。

 結束バンド、最初は全く結束力が無いなと思ってたけどいつの間にかいいチームになってるじゃん。

 

「じゃあ行こうかぼっちちゃん」

「あっ、はい」

 

 きっと虹夏の夢も叶う日がいつか来るだろう。どんな夢かは知らないけど、とても楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

虹夏side

 

「ふぅ……」

 

 ぼっちちゃんとご飯を食べて、お風呂も上がって今はぼっちちゃんが入浴中。

 今日は夢のような一日だったな……。

 ギターヒーローの生放送、そしてライブ。もうずいぶん前だけど私も観てみたいってコメントしたことがある。まさか観れるとは夢にも思わなかったけど。

 

「あ、あの、虹夏ちゃん。お風呂ありがとうございました」

「うん、気にしないでいいよー」

 

 お風呂から上がってきたぼっちちゃん。肌が白いからお風呂上がりでピンク色になってて何だか色っぽいな。っておっさんか私は!

 

「さてと、ぼっちちゃんも疲れたでしょ? ベッドで寝ちゃいなよ」

「え、そんな、悪いですよ」

「いいの。ほらほら」

「あ、ありがとうございます。……ってあ、あれ?」

 

 ぼっちちゃんをベッドに押し込んで私もベッドに潜り込む。

 

「一人用のベッドだからちょっと狭いけどさ。いっしょに寝ようよ。お話もしたいし」

「わ、分かりました……」

 

 そして部屋の電気を消した。

 

「でさ、急にどうしてライブ生放送しようって思ったの? 普段だったら絶対やらないよね」

「あ、はい。一つは生放送してほしいってコメントが結構あったんです。普段見てくれてる人たちに少しでも報いれるならって思って……。それと、あの、もう一つ理由があって……」

 

 なんかぼっちちゃんがモジモジし始めた。なんだろう?

 

「あ、あの、虹夏ちゃんにやっぱりギターヒーローが一番かっこいいって思って欲しかったんです!」

「え?」

「虹夏ちゃんがこの前のギタリストさんの動画観てて、それもショックだったんですけど、それでよく考えたら、虹夏ちゃんがギターヒーローの話題を出したことってもうずっと無いなって思って……飽きられちゃったのかなって……」

「…………」

 

 そういうことか。

 確かに私はギターヒーローの話題を長らくしていない。そう、しなかったんだ。意図的に。

 それを話すのは正直気が引けるし気恥ずかしいけど、ぼっちちゃんにここまで言わせた以上、私も話さないのはフェアじゃない。

 

「あのね、ぼっちちゃん。私確かにギターヒーローの話はしなかったけど、動画は更新されるたびに欠かさずに観てるんだよ?」

「え?」

「私は話題に敢えてしなかったの。まずは、そうだね。恥ずかしかったの」

「恥ずかしい……? ハッ、た、確かに私のファンだなんて恥ずかしいですよね……。ごめんなさい……」

「違う違う! そうじゃなくてさ、バンド仲間の熱心なファンですとか言いたくないじゃん。なんか厄介オタクみたいだし」

「あ、そういうことですか……」

「うん。それからね。嫉妬してたの。ギターヒーローに」

「嫉妬……ですか?」

「うん」

 

 そう、これが私が話題にしなかった一番の理由。

 なんというかめちゃくちゃな理由だけど、ギターヒーローと結束バンドの人気は天地の差がある。業界に一目置かれるギターヒーロー。対して結束バンドはレーベルにこそ所属しているけどまだまだ階段の一歩目に足をかけ始めた段階。

 でも嫉妬してるっていうのは人気の差とかじゃない。まだそんなレベルじゃないし。

 私が嫉妬したのは。

 

 ぼっちちゃんが結束バンドのリードギター後藤ひとりである『前』に、ギターヒーローの後藤ひとりの様な気がしたのだ。

 そう、私はぼっちちゃんにギターヒーローの後藤ひとりである『前』に、結束バンドのリードギター後藤ひとりでいて欲しかったんだ。

 

 別にそんな大層な理由じゃない。頼るべきではない超えるべき壁であるとは思ってるけど憧れなのは変わらないし、そんなことより、ギターヒーローよりも結束バンドの方が大事でいて欲しいっていう、いわば独占欲だった。

 ぼっちちゃんを支えてきたのはギターとギターヒーローなのは分かってる。ぼっちちゃんの大切なものであることは。

 でも、私だってぼっちちゃんの事すごく大切なんだって、ギターヒーローにもその気持ちだけは絶対に負けないってそんな子供じみた理由。

 

「それが私が、話題にしなかった理由だよ。呆れたでしょ」

「……虹夏ちゃん」

「あ……、ぼっちちゃん」

 

 ぼっちちゃんが私の手を握る。暖かくて、柔らかくて、でも指先が固くなっているぼっちちゃんの手。

 

「確かに私にとってギターヒーローはすごく大切なものです。あれが無かったら私は、きっと壊れてました。ギターヒーローがひとりぼっちの私の心を守ってくれてました」

「…………」

「でも、それは虹夏ちゃんも同じなんです」

「……私も?」

「はい。ギターヒーローにさえ、私を外の世界に導くことは出来ませんでした。でも虹夏ちゃんがあの日私を引っ張り出してくれたんです。それが、本当に嬉しかった」

「私は別に、そんなつもりじゃなかったし……」

「それでも、です。私を守ってくてたのがギターヒーローなら、わたしを救ってくれた虹夏ちゃんはドラムヒーローです。……うへへ」

 

 ドラムヒーローか……。

 ネーミングは相変わらずダサダサだけど、だけどすごく嬉しいな。

 

「私は結束バンドの後藤ひとりです。ずっと虹夏ちゃんの隣にいます。だから、心配しないでください」

「……うん、ありがとう。ぼっちちゃん。後、それとさ」

「はい」

 

「ありがとう、STARRYの看板隠してくれて」

「あ、はい。STARRYを有名にするのはギターヒーローじゃなくて、結束バンドですから」

 

うん、うん。

本当にありがとうぼっちちゃん。

 

大好き。




後日
スパチャでとんでもない収益になっているのを見てぼっちは卒倒しました。

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