初めましての方は初めまして。
「通りすがりの幻想」という者です。
この小説は、「艦隊これくしょん」を原作とした、二次創作小説です。
それでは、どうぞ。
Weigh Anchor!
「…ふぁあ……」
午前5時。
空が白み始める中、俺は盛大なあくびをして、ベッドから起き上がる。
身だしなみを整え、敷地の正門のセキュリティを解除し、自身が寝泊まりしている小屋から出て、左の大きな建物に向かう。
「(コンコン)失礼しまーす。」
その中の一室のドアの前に立ち、ノックして挨拶する。
…しかし、返答がない。
「(コンコン)…おーい、提督?」
再度呼びかけるも返事がない。
試しにノブを回してみると、簡単に開いた。
「………」
…まさかとは思うが、何かあったか?
そう思った俺は、念のため、懐に忍ばせた拳銃に手を伸ばし、いつでも抜けるようにしながら、ドアを開けた。
…すぐさま、俺の心配は杞憂に変わる。
窓際においてある大きな机で、俺の雇い主である「提督」が、突っ伏して眠っていた。
机には、数多の資料、書類が広がっている。
…大方、また徹夜したのだろう。
机には、書類と共に、エナジードリンクの缶があった。
安堵と呆れが混じったため息をつきながら俺は、銃から手を離し、提督の肩を揺さぶる。
「…提督さーん。朝ですよー。」
提督「ん…んんぅ…あ、あれ、祐輔?なんかあったのか?」
祐輔「「なんかあったか」じゃねぇよ。今何時だと思ってんだ…?」
提督「へ…?」
寝ぼけた声を出した提督が、時計と窓の外を見て、悲鳴を上げたのは、また別の話だ。
提督「本当に、すみません…」
しばらくして、白い軍服に着替えた提督が、俺に頭を下げていた。
祐輔「…お前、また徹夜したんか?……雇われの身である自分がとやかく言う権利は無いが、もうちっと自分の体は大事にしてくれよ。また体壊したりしたら、「あいつら」が泣くぜ?…あれ、収めるの大変だったんだぞ?」
以前、無理がたたって提督が倒れた時は、それはもう皆大騒ぎだった。
このまま死んでしまうのではないかと泣き出してしまう奴もいたほどだ。
提督「う…き、気を付けます。」
俺の指摘に、提督はガックリとうなだれた。
提督「それじゃあ、祐輔。今日も一日、よろしく頼むぞ。」
そういって、提督は俺に向かって敬礼をする。
祐輔「おう。」
それにならって、俺も敬礼を返す。
それを見た提督がクスクスと笑い始めた。
…何かおかしかったのだろうか?
提督「祐輔、海軍ではこうやるんだ。」
そう言って、提督は、敬礼をしている俺の肘を下げ、脇を閉めさせた。
祐輔「あ、そうだった…これ言うのもあれだけどさ、自分軍人じゃないんで、これやる必要ないんじゃ…」
提督「まあ、それはそうだが…たとえ雇われでも、お前は俺たちの大切な仲間の一人だから、さ。」
祐輔「…こいつ、泣かせる事言いやがって。抱きしめてやりてぇよ。」
提督「バカ。そんなもん、俺に何の得があるんだ。」
祐輔「…まあ、それもそうか。」
そう交わして、俺は提督の部屋である「執務室」を出た。
「…さぁて、今日も、ぼちぼち頑張りますか。」
そう言って、俺はまた伸びをして、窓の外を見た。
そこには、朝日が反射して、輝いている海が広がっていた。
「(ボソッ)…眩しーな……」
ここは、千葉の沿岸部にある鎮守府。
この俺「久遠祐輔」は、高校時代の友人である提督に雇われている、しがない警備員だ。
数年前、突如出現し、人類から海を奪った、「深海棲艦」。
人類の既存の兵器では全く太刀打ちできず、人類は瞬く間に制海権を失った。
発生理由、行動目的、そのすべてが不明。
しかし、そんな中で深海棲艦に対抗できる、唯一の存在が生まれた。
かつての世界大戦で活躍した艦船の魂を宿した少女たちや、女性たち。
その名は、「艦娘」。
そして、その艦娘たちを束ねて指示を出したり、艦娘の装備を開発、およびその装備を操る(所謂船員)存在である「妖精さん」と意思疎通を図れるのが、「提督」と呼ばれる人物だ。
政府は海軍に要請し、その提督の素質の持つ人材をかき集め、日本全国に配置、提督と艦娘による基地「鎮守府」が、全国の沿岸部に設置された。
世界各国でも、同様の措置がとられた。
しかし、艦娘が、見目麗しい美少女、美女の姿をしているという事もあり、近隣住民による職務妨害(に近いもの)が行われたのも、わずかではあるが見られた。
実際、どこかの鎮守府では、のぞき行為に近いものが行われたという事例が上がった。
もちろん、海軍はそれを受けて、鎮守府に通常の海軍兵を常駐させるという対策をとった。
だが、兵の数にも限りがあるので、全ての鎮守府に兵が派遣されたわけではない。
深海棲艦の生息地などの前線地域に、積極的に出撃して戦っている鎮守府には、優先的に兵が派遣されたが、そうでない所は、後回しにされるか、派遣されないかのどちらかだった。
そしてそれは、俺の地元の鎮守府も同じだった。
戦力が無い訳ではないが、あまり前線には出ず、近海の哨戒や輸送船の護衛を主に請け負っている。
新年が明けたある日、俺は高校の友人だった彼から連絡を受けた。
高校卒業後、彼が海軍の学校に進学してからは、あまり交流が無かったので、久しぶりの会話を楽しんだ。
そして俺は、つい先日彼が、艦娘を束ねる「提督」の任を拝命した事、配属された鎮守府が俺と共に高校時代を過ごしたこの地域だった事、そして俺に、その鎮守府の警備員を任せたいという話を聞いた。
地域内に募集をかけてもよかったが、自分の地元で腕が立つ人物を考えたところ、俺が思い浮かんだらしい。
こちらとしても、コンビニのバイトで細々と暮らしていた所で、願ってもない話だったので、二つ返事で了承した。
格闘や拳銃も(我流ではあるが)なまじ腕に覚えがあったというのもあるが。
そして、その翌日に鎮守府を訪れ、「提督」となった彼と再会を果たし、簡単な説明を受け、その時点で鎮守府に在籍していた10人ばかりの艦娘たちに挨拶をし、俺の鎮守府勤めが始まった。
それがかれこれ、半年前の話だ。
この艦隊も今ではそこそこの規模になり、在籍している艦娘は90人ばかりだ。
勤務を始めた当初はもちろん、新たに艦隊に加わった時に、警戒していた艦娘達も今では気軽に話しかけてくれる。
これは、そんな鎮守府に勤める俺の、ある一日の記録だ。
いかがだったでしょうか。
この小説は、小説情報にも書かれてある通り、元々は大学のサークルに提出した前期のノルマ提出分の小説を、部長に許可を取って、掲載したものです。
今後も不定期で投稿していくので、よろしくお願いします。
また、現在主力で投稿中の「Sword Art Masked Rider」も読んでいただければ幸いです。(下のリンクからどうぞ)
https://syosetu.org/?mode=ss_detail&nid=267554